考察+α

『超幻想郷級のダンガンロンパ』の考察を書きました。

超幻想郷級のダンガンロンパ・二章考察(後編)

 

※注意。先にこちらをお読みください。

前編

https://genronkousatu.hatenadiary.com/entry/2021/11/13/161858

 

13

【裁判所】DAY07 2:30
 
マミゾウ「さて、議論再開じゃな」
妹紅「ああ。楽しい時間はもう終わりだ」
早苗「……」
マミゾウ「ほら、シャキッとせい! もうひと頑張りするぞ!」
魔理沙「そうだ。もう少しだぜ、早苗!」
早苗「は、はい!」
ルーミア「青娥、何か考えはある?」
青娥「そうですねえ。この際、DAY04までに起きた出来事は無視して考えるといいと思います」
レミリア「私達は謎がまだ未解決の証拠品を残しているものね」
咲夜「まずはこれですね。青娥の部屋のジュラルミンケースに保管しておいた、〈香水〉と〈消臭剤〉

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魔理沙「これは一体なぜ反応があったんだろうな? こいしはチルノ殺害に関わって居ないはずなのに
レミリア「気になるわね。でもとりあえず、残りの議論が終わってない証拠品を全て確認しましょう。次はこれ――〈水晶玉〉

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ルーミア「これはチルノちゃんが自分からDDSルームで取得した物だね。間違いないよ」
霊夢「そして最後はこれね。〈水晶玉〉を含めた、チルノの死体周辺の状況

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早苗「不可解と言えば――本当の所、死因はなんなんすかねえ?
魔理沙「死因? 〈ナイフ〉による刺殺だろ?」
咲夜「私の見立てでも〈ナイフ〉だと思いますが――おや、ルーミアさん。どうしましたか?」
ルーミア「うーん……。なんだろう? チルノちゃんの持ってた物なんだけどさ。なにかがしっくりこないんだけど
魔理沙「それって、黒い造花のことか?」

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ルーミア「うん……」
早苗「あの、遮ってすみません。ちょっとモノクマファイル③を見て貰えますか?」

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ルーミア「ええと、やっぱり『大型の刃物』って書いてあるね」
早苗「いえ。他の凶器である可能性も捨てきれないんですよ。チルノさんの周囲には、何が転がっていました?」
ルーミア「ええと、〈水晶玉〉と、氷?」
早苗「はい、その通りです」
レミリア「早苗が言いたいのはこういうこと? 『チルノを殺すのに水晶玉の破片、あるいは彫像の一部が使われた可能性がある』」
咲夜「お言葉ですが、お嬢様。私が創傷を見た限りでは、あれは間違いなく〈ナイフ〉による至近距離からの刺殺――それも正面からの物です
マミゾウ「だとすると――やはりなんらかの能力が使われた可能性が高いのう
早苗「能力、そうっすね。現場は密室だったんですもんね
レミリア「改めて証言するけど、私と咲夜は霊夢達の前で、能力の未使用を証明済みよ?
マミゾウ「それは今ならわしにも言える。妹紅を銃殺することに能力を使ったのだから、死亡推定時刻の能力未使用を証明出来る。これは皆に信じて貰うほかないが」
こいし「ねえねえ、咲夜」
咲夜「なんでしょうか?」
こいし「〈ナイフ〉の投擲で、シャッターの間から刺殺することも出来ない? ほら、チルノが死んだ後ならトラッシュルームで〈ナイフ〉を回収できるし、そのまま中央に〈ナイフ〉を置き直すことも可能じゃん
咲夜「それは――正直難しいですね」
こいし「そうなの?」
咲夜「ええ。チルノさんがトラッシュルームの使用中に殺されていたということは、施設の構造上、出入り口付近から〈ナイフ〉を投擲する必要があります。二つあるうちの奥側のシャッターは、中央に別のプレイヤーが居る場合は開きませんので
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こいし「うんうん」
咲夜「まず、刃物の投擲自体が相応の訓練を積まなければ難しいことです。外界では一種の娯楽として投擲を訓練し、安定して的の中央に当てられるくらいにまで技術を磨く人間も居ますが、人を殺せる技術にまで昇華させられるのかと言われると話は別です。トラッシュルームという視界が悪い場所で、動く標的に対して投擲による殺害を行うことは難しいですね。手前側のシャッターから狙いを定めてチルノさんを殺害することは、距離の関係で私にも不可能です
魔理沙身体能力も大幅に制限されているしな
こいし「プレイヤーの誰にも出来ない?」
咲夜「それが出来た可能性があったのは、鴉天狗や鬼の実力者である、文さんと勇儀さんだけでした。彼女達の筋力や瞬発力、あるいは視力といった物は、ここに居る私達とは比べ物になりませんので。勇儀さんならまず間違いなく出来たでしょうね。彼女は凶器の使用そのものを無粋だと考えていた節がありますが」
マミゾウ「勇儀なら――確かにな」
咲夜「ちなみに私がチルノさんを投擲で殺害する場合――背後を向いた瞬間に、心臓を一度だけ狙います。正面からなんて有り得ません
こいし「そっか。しつこく聞いてごめんね」
咲夜「こちらこそお力になれず、申しわけございません」
青娥「でも、モノクマファイルによるとチルノさんは複数回刺されてるんですよねえ。それも至近距離から。即死させることが出来たとしたら、なぜ投擲による犯行の後にあたかも『死亡確認』するかのように何度も刺す必要があるのでしょうか。トラッシュルームが使用可能になった時点で、チルノさんの死亡は確定しますのに
ナズーリン複数回刺された後に数分間生きていた事実とも矛盾するな。返り血も浴び放題だし、とても殺人に馴れた者の仕業とは思えない
妹紅「殺人の技術や経験が少ない――あるいはそもそも誰も殺したことがない人物が犯人、ということか?」
マミゾウ「そこはまだなんとも言えんな」
ルーミア「ねえ、こいし」
こいし「なあに?」
ルーミア「こいしはこの事件に全く関係ないんだよね?」
こいし「うん! 私は凶器を捨ててから、特に何もしてないよ」
ルーミア「じゃあさ、なんで〈香水〉と〈消臭剤〉がナズーリンの検索に引っかかったの?」
こいし「……私のこと疑ってる?」
ルーミア「うん」
こいし「はっきり言われたー!」ガビーン
てゐ「――そのことなんだけど、毒の使われ方について、一つの仮説がある。だけどこいしなら凶器を恐らくそんな使い方はしない。もちろんマミゾウと妹紅がやったとも思ってないよ? チルノを殺した真犯人が、という意味でさ。私の言いたいこと、暗器使いの青娥や刃物のエキスパートである咲夜なら察しが付くんじゃないの?」
青娥「ええ、わかりますよ」
咲夜「! 〈ナイフ〉には毒が塗られていた、と?」
てゐ「そういうこと。自然界には毒が無数にあって、様々な生物が人間を死に追いやる強さの毒を有しているんだ。有名所だと、フグ毒として有名な『テトロドトキシン』、タマゴテングタケに含まれる『アマニチン』、時の権力者が永遠の命や若さを得られると信じて服用したとされる『水銀』」
妹紅「……」
てゐ「だけど毒は生物に対して危険な存在であるのと同時に、人類が使用することによるメリットも存在するんだ。もちろん麻薬の話とかじゃないよ? 例えば医療にも使われる『モルヒネ』なんかがそうだね。ちなみに医療の世界では、これを厳密には『毒薬』に分類していて、『毒物』とは別の物としている。医療以外に毒が使われる機会と言えば、例えば現代でも『狩り』なんかには使われている。神話の時代からずっとね。代表的なのは、英雄ヘラクレスが矢に塗って用いたとされる、怪物ヒュドラの毒かな?」
魔理沙「魔法薬の研究なんて、いや、そもそも私の弾幕の研究だって、そういう物とは切って離せないからなあ」
ルーミア「え? 魔理沙の使う弾幕って毒なの? 今まで散々食らったことあるけど……」
早苗「弾幕ごっこ怖っ!」
魔理沙「そんなわけあるか! キラキラさせたり星の形を作ったり、とにかく魅せる弾幕を造る為に色々な素材を調合して反応を見ているだけだって!」
咲夜「凶器に塗って使われたとすれば、〈消臭剤〉のほうでしょうか? どちらにせよ〈ダウジング〉に引っ掛かってしまう気もしますが……
早苗「チルノさんと妹紅さんのモノクマファイルには、毒について何も書かれていませんもんね
てゐ「ま、そういう可能性もあるってだけの話さ」
妹紅「なあ、チルノの側で砕けていた水晶玉なんだが、妙だと思わないか?」
咲夜「妙?」
こいし「全然おかしくないんじゃない? だってルーミアが言っていた通り、護身の為にDDSルームで取得したんでしょ?」
レミリアだとすると――なぜそんな凶器で身を守ろうとしていたのかしらね。彼女は恐らく犯人に襲われた際、〈氷細工〉を瞬時に作り、自らを守ることも出来た
魔理沙武器としての安定性の問題かもな。〈氷細工〉の武器は初撃を外せば砕けちまうから。そもそもルーミアがチルノを説得した時の理屈だって、〈氷細工〉の武器にデメリットがあったからだろ?」
妹紅「私が最後に見た時に氷像を削っていた時刻は、死亡推定時刻よりもだいぶ前だった。それなら事件発生時、自らを守る為の武器――例えば氷の剣や盾なんかを作ることも十分に出来たはずだ
咲夜「やはり氷像は早い段階で一度処分されていて、チルノさんは死亡推定時刻付近にもう一度〈氷細工〉を作り出していた。だから身を守ることが出来なかったのでは?
ルーミア「うーん……。私に取られないようにする為に処分していたとしても、なんで彫像をもう一回作り直したんだろ。水滴をどこにも残さずにトラッシュルームに捨てに行けたってのも不思議だと思うし
妹紅「厨房の冷凍庫には――流石に入らないよな?」
咲夜「他の食品を全部外に出しても入りませんね。チルノさんに頼まれても私がお断りすると思いますが」
魔理沙「なら、スーパーマーケットのウォークインならどうだ? あそこならギリギリ禁止エリアじゃないと思うぞ」
てゐ「それなら大きさ的には十分だね。ただ、『ルーミアに回収されないようにする』ってことまで考えると、ちょっとリスクが高い気もするねえ。氷像を運ぶにしたって宿舎エリアは一階だけど、娯楽エリアは二階だから一苦労さね
早苗「だとすると、水滴とかの問題は結局どうしたのでしょう? 台車でも使って捨てに行ったんすかねえ? 倉庫とか、少し離れた所ですが体育館なんかには間違いなく台車くらいあるでしょうし」
ルーミアねえ、トラッシュルームで氷像を処分したにしても――その時メダルは誰に預けたの? 誰もその姿を見てないし、当たり前だけど私はチルノちゃんにそういうこと頼まれなかったよ?
妹紅「そうだな。氷像の処分に付き合ってくれ、なんて私も頼まれていない。それに記憶が曖昧なんだけど――私が見た時の氷像の出来って、そんなに悪くなかった気がするんだよなあ。私だったら捨てるのがもったいないと感じるくらいには
ナズーリン「付け加えると、龍の氷像そのものを護身に用いたとも思えないな。実際の氷像は、彼女の体格と比べてもかなりの大きさだったのだろう? 護身の為に一度砕いてから――例えば牙や鱗の部分を握りしめて牽制したのだとしたら、緊急回避には間に合わない。それなら彫像そのものを相手に投げつけたほうが、まだ犯人を撃退出来る可能性があるが、彼女にそれほどの力があったとも思えない
早苗「なるほどなるほど…………って、ありゃ?」
レミリア「どうしたの?」
早苗「そろそろ残りの証拠品について考察が終わっちゃいそうですよ? これ、本当に真犯人に辿り着けるんすかね?」
さとり「ええ。辿り着けると思いますよ――密室の謎が解ければ
てゐ「密室? そこってそんなに問題?」
妹紅「私の〈不死〉にだってトラッシュルームのセンサーは反応しなかったんだぞ? それにシャッターの間はスカスカだし、凶器の線から犯人を辿ったほうがいいんじゃないか?」
霊夢「いいえ。そこに拘ると、推理は泥沼化するわ」
魔理沙「ん? どういうことだ?」
霊夢「――みんな。こんな時間まで、チルノの為に一生懸命に議論を戦わせてくれてありがとうね」
咲夜「霊夢……」
ナズーリン「何を今更……」
てゐ「そんなの当たり前じゃん」
青娥「そういうことをきちんと言える女性って、とても素敵だと思いますよ?」
霊夢「だけど――ごめんね。今から貴方達全員、チルノを殺した容疑者になって貰うわ

14

てゐ「な!?」
ナズーリン「何を言い出すんだ霊夢!」
魔理沙「……」
レミリア「あら。博麗の巫女がご乱心ね」
早苗「ちょ、ちょっと説明してくださいよ。霊夢さん!」
霊夢「紫。『チルノと妹紅の死体が同時にトラッシュルームにあった時の状況』、すぐに再現して
紫「『再現出来るか』じゃなくて、『再現して』と来ましたか。ほんと、貴方がこの会場で一番人使いが荒いわねえ」
霊夢「みんな疲労も限界なのよ。貴方だってそうでしょ。それはわかってる。でもお願い」
紫「――こんな時にも、貴方は私を気遣ってくれるのね。いいわよ。ちょっと待ってて。霊夢、貴方もついてきて」
 
紫「はい、準備が出来たわ。みんな、スキマを通ってこちらに来て」
妹紅「ん? 五分も経ってないぞ? なにをしてきた?」
霊夢「みんな、一緒についてきて」
 
【特殊エリア・トラッシュルームを再現した空間】DAY07 2:35
 
咲夜「ここは!?」
こいし「あれ、さっきみたいにエリア同士を繋いだの?」
紫「少し違うわ。宿舎エリアのトラッシュルームとは完全に別の、事件当時と同じ状況を再現した空間よ
てゐ「……まあ、境界を操れる紫なら出来るんだろうけどさ」
マミゾウ「中央には〈ナイフ〉があって――地下入り口付近には〈暗視ゴーグル〉や手鏡まで置かれとるな」
ルーミア「全部再現したんだ。紫、凄いなあ――あれ? 手が物をすり抜けちゃうよ?」
紫「ええ。ホログラムに近い物だと考えて貰えればいいわ。だけどシャッターだけは質量がきちんとあって、なんらかの工作をしない限り通り抜けられないようになってるから
レミリア「ねえ、紫。貴方って本当は、この会場にお金なんてほとんど掛けてないんじゃないの? 藍から魔理沙が盗んだ経費の書類、あれはダミーだったの?

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紫「そんなことないわよ? ほら、宿舎エリアのおっきなお風呂があるじゃない? マヨイガにはあんな贅沢な物なんてないし」
青娥「入り口の扉は開かないですし、地下のバックヤードにも入れなくなってますね。妹紅さんやチルノさんの死体も再現されていません」
妹紅「そのほうがいいさ。私もチルノの死体をもう一度見るのは――正直辛い」
紫「さて、中央に置いてある〈ナイフ〉。見えるわよね」
咲夜「はい。ありますね」
霊夢シャッターだけじゃなく、あの〈ナイフ〉にもきちんと質量があるから、『犯人役』はそれを持って『被害者役』の私のところまで来てくれる?
こいし「犯人役!? はーい! はーい! 私やりた――むぐ」
さとり「別の方でお願いします」
霊夢レミリア、お願いできる?」
レミリア「――なんで私なの?」
霊夢「それなりに信用してるから」
レミリア「そう。だったらそれなりに引き受けるわ」
霊夢まずは『被害者役』の私がチルノの死体があった位置まで進む。その後で『犯人役』のレミリアは、私の所まで来て

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紫「はい、特別なメダルも一枚渡しておくわ。貴方の所持数とは無関係に、これ一枚で端末を利用できるわよ」

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レミリア「あら、虹色のメダルなんてあったのね。それはいいけど――霊夢。今から貴方が何をしたいのかは、なんとなくわかる。だったら具体的な方法を教えてくれない? そうしないと、再現しようがないわ」
霊夢「それは後から教える。他のみんなは一度裁判所に戻って?」
 
【校舎エリア地下・裁判所】DAY07 2:45
 
ナズーリン「裁判所に戻ってきたのはいいが――彼女はいったい何をするつもりなんだ?」
てゐ「流石に『霊夢が何をしようとしてるか』はわかるっしょ?」
ナズーリン『密室でチルノを刺殺する方法の再現』、だろう?」
てゐ「なんだ、わかってんじゃん」
こいし「あー、『犯人役』やりたかったなー」
ルーミア「ねえ、こっちに戻って10分くらい経ったよ?」
早苗「そんなに複雑なトリックなんすかね?」
妹紅「さあな。わからん。魔理沙は?」
魔理沙「どんなトリックなんだろうなあ。シャッターを生身で通過出来るとすれば、かなり大掛かりなトリックなのかもな」
マミゾウ「そういえばレミリアは〈蝙蝠化〉はまだ使えんのじゃな?」
咲夜「はい。まだ再使用の為のインターバルである一日が経っていませんので」
青娥「ね? 咲夜さんも、レミリアさんも、一度能力を発動させておいて良かったでしょう?」
マミゾウ「――! おい、スキマが現れたぞ!?」
 
咲夜「お嬢様! いったい向こうで何が――って、あら、霊夢?」
霊夢「状況が整ったわ。もう一度こちらに来て」
てゐ「レミリアはまだトラッシュルームに?」
紫「そうよ。はい、二つスキマを用意するから、みんなはそっちのスキマから入ってね」
早苗「え? 今霊夢さんが出てきたほうじゃなくてですか?」
ナズーリン「どういうことだ?」
 
【特殊エリア・トラッシュルームを再現した空間】DAY07 2:46

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早苗「ここは――先程入った、入り口側っすね」
ルーミア霊夢はー?」
てゐ「ん? レミリアはどこさ?」
妹紅「おい、最奥のシャッターの向こうにいないか?
咲夜「お嬢様!?」
レミリア「え、咲夜!?」
咲夜「そこで何をなさっているのですか?」
レミリア「こっちが聞きたいわよ! 霊夢は!?」
マミゾウ「さっき裁判所のほうにスキマで現れたんじゃが――何も聞いてないのか?」
レミリア霊夢がシャッターの最奥にいたと思ったら、貴方達が消えた直後、急にスキマでどこかに行っちゃったのよ。だから、部屋の中央の〈ナイフ〉だけ拾ってここまで来たんだけど。ねえ、霊夢はどこに行ったのよ!」
早苗「あれ? 霊夢さんってトラッシュルームからすぐに移動したんですか? でも、霊夢さんは10分くらいしてからこっちに来ましたよ
レミリア「10分? 私もそれくらいしてから痺れを切らして、普通に端末を操作して中に入ったんだけど」
咲夜「端末を操作? いったいどうやってですか?」
レミリア「どうやってって――だから普通によ? 霊夢がスキマで消えたと思ったら端末がニュートラルの状態に戻ったから、メダルを入れてから〈ナイフ〉を拾ってここまで――

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霊夢「はぁ。出来ればもう30分くらいのんびりしたかったわね」
紫「もう。それじゃ朝になっちゃうわよ」
レミリア霊夢!? 紫!?」
霊夢「あらレミリア、そんな物騒な物振り回してどうしたのよ。また異変でも起こすつもり?」
ルーミア「え!? 今トリックの再現中なんでしょ? そこに霊夢が現れたら駄目じゃん!」
こいし「そうだよ! まさかスキマを利用してそこに行くのがトリックだなんて言わないよね!? そんなの、能力なんて一つも持ってなくても再現出来ちゃうじゃん!」
てゐ「……そう。その通りさ。スキマを使えば誰でも出来る、ってことになっちゃったねえ。あーあ、これで私も立派な容疑者だ。普段から品行方正な兎であることを心掛けてたのに」
さとり「正確に言うなら『スキマが使われれば』、でしょうか」
咲夜「つまり、能力の未使用が証明されたプレイヤーも、能力によるシャッターの突破が不可能なプレイヤーも、全員が再びチルノさん殺害の容疑者となったということですね
こいし「え、どういうこと!?」
さとり「こいし。まだわかりませんか? これが実際にチルノさんの殺害時に使われたトリックです
妹紅「スキマでの移動は紫に頼めば、ゲームエリアのどの位置からでも可能だもんな」
マミゾウ「……盲点じゃった。こんな単純なやり方で良いのか」
ナズーリン「あ、ああ。確かにこれなら、な」
ルーミア「え? でもスキマを殺人に使うのはルール違反だよね?
さとり「ルーミアさん。思い出してください。レミリアさんは『犯人役』ですよ。そして霊夢さんが、『被害者役』、つまり霊夢さんの方がチルノさんの当時の動きを再現しているのです
ルーミアえ、スキマを使ったのは――チルノちゃんのほうなの!?
早苗「つまり、『犯人役』であるレミリアさんは『被害者役』の霊夢さんと二人になってから――」

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青娥「霊夢さんが『自分から』消えたのを確認した後に――

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てゐ「端末を操作して外側のシャッターを潜り抜け、中央の〈ナイフ〉を拾って――

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妹紅「そのまま内側のシャッターを潜ってチルノの死亡位置まで進んだのか。こんなのよく考えたな

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レミリアそしてチルノがスキマで戻って来るのを見計らってから、不意打ちで殺害した、ってこと?

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霊夢「そういうことよ。理解が早くて助かるわ」
妹紅「いや、ちょっと待て! チルノと犯人は私達が偽装現場を作り終えた後でトラッシュルームに来たんだろ? なんでそんな行動を取ることになったんだ? チルノがスキマを使った理由は?
マミゾウ「妹紅の言う通りじゃ。チルノはスキマの向こうへと『誘導』されたのか? それとも『脅迫』か? あるいは『偶然の産物』ということか?」
霊夢「とりあえず、裁判所に戻りましょ。もうここでやることは終わったわ。紫、もう一回スキマを出して」
紫「もう面倒だから全員いっぺんに飛ばすわよ? それでもいい?」
霊夢「いいわよ」
 

15

【校舎エリア地下・裁判所】DAY07 2:50
 
マミゾウ「ここは――証言台か」
ルーミア「一瞬で戻ってきちゃったね」
妹紅「! 霊夢、もう一度聞くぞ。チルノはどうしてスキマに入ったんだ? トラッシュルームは私とマミゾウが血を残したり〈ナイフ〉を設置した直後だったんだぞ?
てゐ「そこも気になるけど、チルノはトラッシュルームからスキマでどこに移動したのさ?
霊夢「――霊安室

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妹紅「霊安室?」
青娥「亡くなった二人の遺体が安置されている場所ですね」
ナズーリン私は霊夢と一緒に調査したが、その時は文の手帳以外何も無かったはずだが?
早苗「なんでそんなところへ? まさか手を合わせに行ったわけではないっすよね?」
霊夢チルノの遺体周辺の証拠品、そして霊安室の存在。何か気付くことはない?
てゐ「水晶玉、砕けた氷像、黒い花びら……ん? 氷像?」
魔理沙霊安室なら――氷像を保管出来る?
マミゾウ「霊安室は死体が腐敗するのを防ぐ為、室温はかなり低く保たれておる。氷像の保管は十分に可能じゃな
ルーミアつまりチルノちゃんは、トラッシュルームから霊安室へと氷像を運び出す直前に殺害された?
霊夢逆よ。チルノはスキマで氷像を霊安室からトラッシュルームに運び出した所を襲われたのよ。恐らく両手が塞がれていて、尚且至近距離だったから咄嗟の判断も間に合わなかった。チルノはね、氷像を早い段階で完成させていたの。少なくとも死亡推定時刻付近に〈氷細工〉を作り出す事自体は可能だった。残念ながら証拠品を見る限り、反撃は間に合わなかったし、〈氷細工〉をもう一度発動する余裕も無かったみたいだけど」
ルーミア「でもさ、チルノちゃんと霊夢が最後にあった時、チルノちゃんは氷像の飾り付けを続けるつもりだったんでしょ? チルノちゃんは二つ目の〈氷細工〉を作ろうとしてたんじゃないの?」

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霊夢「チルノは恐らく、既に霊安室に預けてある氷像の細部を調整したかったんでしょうね。あるいは一度細部を突き詰めた彫像を丸ごとコピーして、再び霊安室に戻した上で氷像を明日の朝まで保たせるつもりだったか
咲夜「氷像は早くに作り終わっていた。そして倉庫からトラッシュルームまでのラインには氷像から水が滴り落ちたような跡はなかった。倉庫内にも氷像を砕いてから運び出したような形跡は無かった。ということは――」
こいし「あー! 段々わかってきた! 倉庫内から直接霊安室に氷像を運んだんだ!
霊夢「そうね。氷像はスキマで直接倉庫から霊安室に運び込まれたんだと思う。そして事件当時、霊安室に保管されていた氷像は、チルノ自身の手で霊安室からトラッシュルームに運び込まれていた
さとり「チルノさんが偶然見つけ出してしまったこの方法――他のプレイヤーにも悪用される危険性がありますね。スキマで移動できる場所は非常に限られていますが、使用回数や使用可能エリア等で制限を設けたほうがいいかも知れません。追加ルール等も視野に入れて。犯人側の使用に対してのみで大丈夫だと思いますが、この方法を使えば極端な話、冷蔵庫や箪笥、あるいは洗面台のような大きな物ですら、労力を殆ど使わずにエリア間を秘密裡に運び出すことが出来てしまいます
魔理沙「どうするんだ、紫。現に今回の事件、スキマが使われちまってるぜ?」
紫「言われてみるとそうねえ。うーん……。ちょっと運営同士で相談してみようかしら」
ルーミア「ねえ、氷像を作り終えた後に、どうしてそれを霊安室に運ぶ必要があるの?」
てゐ「はぁ? そんなの、氷像が溶けるからに決まってんじゃん」
ルーミア「それはそうだけど、私に盗まれるのが嫌だったのなら氷像を砕いて捨てれば良かったんじゃないの? 水晶玉も一緒に処分出来ただろうし。今霊夢が言った、二つ目を作ろうとしていたかもしれない、ってのもよくわからないし
霊夢「それは――」
青娥「霊夢さん。ルーミアさんには私が説明します。ルーミアさん、しっかり聞いてくださいね」
ルーミア「うん……?」
青娥「チルノさんはまず、ルーミアさんの完成させた祭壇に飾り付けを始めました。この時点で既にルーミアさんの意図には気付いていたのでしょう。それでも貴方が折角作ってくれた祭壇だから、飾り付けを始めてみることにした」
妹紅「……」
青娥「そして貴方が盗み出した美術図鑑を見せられて、ルーミアさんが唐突に祭壇を作った意味について、きちんとした確信を得た。そのうえで、やはり彼女は氷像を完成させた。なぜかわかりますか?」
ルーミア「え? その時はまだ私に氷像や水晶玉を渡すつもりがあったからとか? 私に藍を殺害して欲しくて」
青娥「違います。そうではないんですよ。チルノさんは氷像の美しさで、貴方の心を変えたかったんです
ルーミア「氷像で、心を?」
青娥「しかしチルノさんはそれを断念しました。何度も倉庫を訪れてきた貴方の視線が、龍の氷像そのものではなく、常に『龍玉』の部分にのみ注がれていることを知ったからです。ルーミアさんは氷の造形に一切興味はなく、『龍玉部分に〈水晶玉〉が嵌め込まれているか』だけが気掛かりだったのですから、当然ですが」
ルーミア――でも、私が確認し続けていた限りだと、氷像は倉庫にしばらく置かれていたよ?
青娥「そうですね。自分自身で細部を磨くことで『魂』を入れてしまった〈氷細工〉の龍に対して罪悪感があったのでしょう。氷像を美麗に作ることが出来たことにより、破壊が躊躇われた部分もあるとは思いますが。だからルーミアさんが倉庫付近から離れた一瞬を狙って、チルノさんは氷像を霊安室に移しました。それと同時に〈水晶玉〉も一時的にそこに保管することに決めました。ルーミアさんがDAY06の夜からDAY07の朝の間には『氷像と〈水晶玉〉が霊安室の死体安置用のケースに保管されている』ことに気付かないと考えて」
ルーミア「でも、そんなに私を警戒していたのなら、自分の部屋とかにだって保管くらいは――」
青娥「部屋? 貴方は彼女の部屋に何度も遊びに行っているのでしょう? 貴方が怪しい行動を始めたとして、チルノさんには『遊びに来た』貴方を急に拒み始めることが出来ると思いますか? だから霊安室に凶器を隠したことは、一つの妥協点だったんですよ。遊びに来た貴方にこっそり家探しされたり、痺れを切らした貴方に〈暗闇〉で奇襲される危険性があったとしても、昨日までの友人をいきなり拒絶することなんて普通は出来ないと思いませんか?」
魔理沙「おい、青娥!」
ルーミア「そ、そんな言い方しなくていいじゃん! 私、そんなつもりなんて……」
マミゾウ「青娥。今一瞬、珍しく感情的になったな? 議論中とはいえ、子供に対してそのような言い方はいかんのう。適切な説き方ではない」
青娥「……そうですね。ルーミアさん、ごめんなさい」
早苗「霊安室に凶器を保管、ですか。そのへんの感覚って、チルノさんとルーミアさんで結構似てる感じがしません? 私だったらなんだか罰が当たりそうで、ちょっと気が引けますし」
青娥「かも知れませんね。お二人は似ている所が多いと思います。話を続けましょうか――チルノさんは最終的に、ルーミアさんときちんと戦うことに決めました。『最後に陰から様子を見てみよう。祭壇の飾り付けにも無反応で、倉庫内を物色し始めたら、直接相手を拒否するしかない』。チルノさんはそう考えました」
ルーミア「それで――ケンカになっちゃったんだ。やっぱりチルノちゃんが死んだのって私が原因なんだね」
青娥「……否定出来ません」
マミゾウ「――いいや。はっきり否定させて貰うぞ! それを言ったら、わしが〈ナイフ〉を現場に残したことにこそ、真の責任がある!」
妹紅「ああ。チルノが死んだ原因を作ったのは、私達だ。マミゾウ、『私だけが原因だ』とか善人ぶったことは言わないぞ? ボーナスルールでDDSルームから凶器を取り出したのは私だし、マミゾウに計画を持ち掛けられなければ、私は今日まで余計なことを何もしなかった」
てゐ「ねえ、そこなんだけどさ。妹紅達の計画ってマミゾウ側が持ち掛けたんだよね? だけど、うーん……」
妹紅「どうした?」
てゐ「ごめん。ちょっと考えがまとまらないから後にするよ」
咲夜「マミゾウさん。今貴方は『ナイフ〉がその場にあったことが直接的原因』と言いましたけど――それもどうでしょうか?
マミゾウ「なんじゃと? 何かおかしいことを言ったか?」
咲夜「――では、先程霊夢『トラッシュルームの突破に適していない能力者でも刺殺は可能』と証明しましたので、その視点から理論を展開してみましょうか? 本来〈ナイフ〉という凶器は――いえ、〈スタンガン〉等の近接武器全般に言えることですが、近接武器はチルノさんを殺害する際に安全な凶器とは思えないのです
早苗「ん? そうですか?」
咲夜「ピンと来ませんか? 私達はゲーム内では身体能力の制限がされているんですよ? ここがゲーム内で無ければ、トラッシュルームやDDSルームの仕掛けは、意味を成さないでしょう」
妹紅「ごめん。私にも言いたいことがわからない。〈ナイフ〉を持ったチルノが、私や霊夢に勝てるとも思えないんだが」
てゐ「それなら、妹紅にもわかりやすい例えを出そうか。妹紅が慧音に呼ばれて寺子屋に行ったとするじゃん。さて、たまたま庭を見ると12歳と16歳の、人間の男の子が喧嘩をしていました。両方とも体育の成績はそこそこだと思ってね。妹紅だったらその喧嘩を止める?
妹紅「うーん。女の子同士だったら口喧嘩で終わることもあるけど、男の子かあ。まあ、それぐらいの年齢だったら、そういう経験も少しは必要だとも思うからなあ。様子見、って所か」
てゐ「じゃあさ、小さい方の男の子がハサミや棍棒を持っていたら?
妹紅「――は?」
てゐ「続けて聞くよ。ハサミや棍棒の代わりに、短刀や手斧、あるいは包丁を持っていたら?
妹紅「なに言ってんだ!? 止めるに決まってる! そんなの、下手したら両方とも怪我じゃ済まないだろ!」
てゐ「わかった? 今の私達の力量なんて、その程度の差なんだよ。ここに更にスペルカードルールを度外視した身体能力差が加わるんだよ? ここでの私達の強さに『本当の』優劣を付けるとしたら、凶器の有無や能力だけじゃなく、人間基準の体格差や筋力差って奴を計算に入れないといけないんだよ」
妹紅「怪我も厭わなければ、誰だってチルノを殺せる気もするが……
てゐ「だけどここにいるみんなは、自傷した咲夜はともかく、目立った怪我なんて誰も負ってない。私だってそうさ。なんなら服を脱いで見せようか?」
妹紅「いいよ、そんなことしなくて。だけどそんなことを言い出したら、チルノを接近戦で殺害しようなんて誰も思わないだろ
咲夜「あの状況でチルノさんを正面から殺害することが出来た人物って、トラッシュルームの突破を抜きにしても、実はかなり限られていたと思うんですよ。それにチルノさん自身、そう大人しく殺されるタイプでもないと思いますので
ルーミア……チルノちゃんってさ、妖精の中でもかなり強い部類なんだよね。弾幕だって避けるのがめちゃくちゃうまいし、私やみすちーやリグルは妖怪なのに、妖精のチルノちゃんも全然引けを取らないぐらい運動神経がよくて」
早苗「ですが、青娥さんが文さんに渡したメモでは、バスケットボールをした時にかなり点数の開きがあったようですけど?

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ルーミア「それは単純にバスケットボールっていうゲームとの相性だと思うよ? 氷の棒かなんかでチャンバラなんてしたら、正直どっちが勝つかわからないと思う」
霊夢「映姫も以前同じようなことを話していたわ。チルノは妖精の域を大きく逸脱しているって」
早苗「うーん、言われてみれば、チルノさんってかなり複雑な弾幕を連続で展開出来ますもんねえ。もしも幻想郷の妖精が全員あのレベルだったら――と考えると正直ゾッとしますよ。人里から出ようと考える人間は、まずいなくなるんじゃないですかね?」
咲夜「では、これらのことを紙にまとめてみますので少々お待ち下さい。亡くなった方や運営である紫を含めて」
 

16

咲夜「――お待たせしました。こちらになります」

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早苗「どれどれ、ちょっと見せてください」

こいし「あ、この表おもしろーい!」
咲夜「かなり主観が入っていますが、まあ参考程度に。体格差が『○』以下であったり、種族差が『○』以下のプレイヤーは、何かしらの能力を用いなければチルノさんからの反撃を躱すことは難しいでしょう
ナズーリン「いや、冗談じゃなくかなり主観が入っている気もするが……」
早苗「身体能力が一般人レベルまで落ちてるのは相当大きいですもんねえ。文さんや勇儀さんはともかく。ですが、この表の通りだとすると――能力を使えばほぼ全員が近距離からチルノさんを刺殺可能ってことになっちゃいませんか?
咲夜「あ、あれ。そうなりますね?」
魔理沙「さっきまでの議論の意味はなんだったんだ……」
妹紅「この『経験』の部分――ざっくり年齢とかで決めてないか?」
てゐ「ちょっとちょっと! 私の『〈幸運〉の貸し出し状況は不明』ってところ、完璧に難癖でしょ!?」
マミゾウ「こうして表にしてみると、勇儀の身体能力が如何に優れていたかがわかるのう」
レミリア「……さーくやちゃん? この評価は何かしら?」
咲夜「はい? どの部分のことでしょうか?」
レミリア「なんで私がチルノにスペルカードで劣ってるのよ!? 流石におかしいでしょ!」
魔理沙「いや、その項目については私も異論はないぜ?」
レミリア「はぁ!?」
魔理沙「なんというか最近あいつ急成長してるというか。なあ霊夢?」
霊夢「『四季異変』の時ね。全く……なんで紫の旧友ってクソ迷惑なやつしかいないのよ?」
紫「それについては同意しておくわ」
ルーミア「この表……チルノちゃんの評価は高いのに、私の評価だけ妙に低くない?」
青娥「そんなことありませんって。少なくとも私はルーミアさんのことも高く評価していますよ?」
ルーミア「本当?」
青娥「ふふ。本当にそう思ってますよ? 数奇な運命とでも言いましょうか。たまたま知り合いとなった貴方とその遊び仲間の方達は、幻想郷が持つ側面の一方である『妖』を担っていくのに十分な実力を手に入れることになると考えています。精神面でも肉体面でもです。その時の幻想郷の勢力図が――今からとても楽しみです」
こいし「お姉ちゃん。この字ってなんて読むの?」
さとり「『さとりようかい』に決まってるでしょう。自分の種族を忘れないでください……」
ナズーリン「……なあ、君達。私個人としても非常に興味深い表なんだが、本題を忘れてしまってないか?」
マミゾウ「む……。確かに脱線しとったわい。真犯人を導き出さねばならんというに」
ルーミア「うーん……。もう少しで真犯人に辿り着けそうなんだけどなあ。後、何が必要なんだろ?」
てゐ「……やっぱりダイイングメッセージの解読じゃないの?」
ナズーリン「チルノが懐に隠し持っていた、謎の黒い造花か」
早苗「霊夢さん。あれがどういう意味なのかわかりますか?」
霊夢「なんとなくは、ね」
ナズーリン「本当か!?」
こいし「え! 既に解けてるの? 霊夢やるぅ!」
ルーミア「本当!? 誰が犯人!?」
霊夢ただし、造花そのものについての正体がなんとなくわかっただけなんだけど……
てゐ「ん? なんだか歯切れが悪くない?」
妹紅「どういう意味だ?」
霊夢「妹紅。出来ればこれは貴方に解いて欲しい謎なのよ。チルノが残したダイイングメッセージは、貴方に宛てた物なのよ
 

17

マミゾウ「妹紅への?」
霊夢妹紅。貴方は私と同じように生前のチルノと倉庫内で会っていた。だけど私と貴方には大きな違いがある。何だかわかる?
咲夜「妹紅さんのほうがチルノさんと親密だった、ということですか?」
霊夢「二人は仲が良かった。だからこそ、チルノはダイイングメッセージを妹紅に向けて残した。でも、咲夜の答えはちょっと違うわ。チルノから事前に美術図鑑の情報について知らされていたのが、妹紅だけだったからよ
ナズーリン「確かにほとんどのプレイヤーは、チルノが倉庫で飾り付けを行っていたことさえ知らなかったな」
ルーミア「え? 私だって美術図鑑については知ってたよ? そもそも私がチルノちゃんに渡した物だし」
青娥「ルーミアさん。大変申し上げにくいのですが、貴方は恐らくチルノさんから、トラッシュルームで何らかの犯行を起こした容疑者だと思われていました
ルーミア「え? 私が?」
青娥「はい。マミゾウさん達が工作した後のトラッシュルームにチルノさんが23:45に出向いたのは間違いないでしょう。その時の現場の状況から推測される『架空の事件』について、ルーミアさんが何らかの形で関わっているとチルノさんには思われていたんです。だからこそチルノさんは〈氷細工〉の龍や水晶玉の行方が気になり、霊安室へ移動したのでしょうね
ルーミア「……そうだったんだ。霊夢、話を続けて?」
霊夢「咲夜。確か貴方、花を回収していたわよね。今ここで出して貰える?」
咲夜「え、ええ。わかったわ」

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霊夢「ありがとう。きちんと預かっててくれたのね」
咲夜「蓋付きのバスケットに入れてそのまま持ってきたのよ。タオルに包もうか迷ったけど、かなり脆そうな作りだったから、花が血でタオルのほうに張り付きそうで――」
レミリア「……ん? ちょっと花びらを一枚貰うわよ。……あむ。やっぱり妖精の血の味って人間とは全く違うわね」
咲夜「お、お嬢様?」
てゐ「ちょっ! 何やってんのさ!」
こいし「うへぇ、悪食だなあ」
レミリア「んー。これくらいの血液の浸透率だったら――もしかしたら? 咲夜、花を丸ごと貸しなさい」
咲夜「はい? どうぞ」
レミリア「ありがと」
ベリッ! バリッ!
咲夜「――お嬢様! お止めください!」
妹紅「待て! それはチルノの遺品だぞ!」
早苗「それに大事な証拠品ですよ!? そんなことしたら――」
レミリア「はい、ビンゴ。みんな、これを見なさい」

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ルーミア「あれ? この花の根元のほう、少し青くない?
魔理沙「本当だ。なんで?」
マミゾウ「! おい、この黒い花はまさか――」
霊夢「そうよ。血が凝固して黒ずんでしまっているけど、本来は青い花だったのよ。この黒い花は、元々水晶玉の中に埋め込まれていた、青色のドライフラワーだったのよ
咲夜「……よく気付きましたね。霊夢も、お嬢様も」
ルーミア「――そうだったんだ。やっぱり黒い花なんて、どこにもなかったんだね」
青娥「あら。どうしてそう思われていたのでしょう?」
ルーミア私もチルノちゃんもさ、みんなと違って、黒い色に誰かを弔う意味合いなんて感じないんだ。だからチルノちゃんがしてた飾り付けにも、黒い色なんて一つもなかったでしょ?

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レミリア「――確かに、無かった気がするわね」
早苗「いや、でもルーミアさん。一般的にお葬式で使われる色というのは、黒って相場が決まってるんすよ。幻想郷でも同じように――」
ナズーリン「いや、案外彼女達の感性のほうが自然なのかも知れない」
早苗「はい?」
ナズーリン「日本で葬儀で着る喪服と言えば、元来白色だった。その後時代が進み上流階級の人間が黒い喪服を着るようになっても、基本的には白い喪服が用いられていた。日本で黒い喪服が一般化したのはつい最近で、欧州文化の影響だ」
早苗「はぇ~、マジっすか」
ナズーリン「いやいや、君はなぜ神職なのにそういう事情に疎いんだ!?」
青娥「私の故郷である中国でも、喪服は白い物ですねえ」
早苗「あの、すみません。ダイイングメッセージが黒い花ではなかったとして、それってつまり――どういう意味なんすか?」
レミリア「本来の色が『黒』じゃなくて『青』だったとして、そこから連想される物が多過ぎるわね」
霊夢「そうね。私にも解釈が難しかった。ごめん」
てゐ「えぇ!? 霊夢でも駄目だったの!? 博麗の巫女でもどうにも出来ない問題なんて――私達にどうしろって言うのさ!?」
霊夢「てゐ……」
妹紅「大丈夫だ、みんな」
てゐ「――妹紅?」
妹紅「チルノの言葉は、必ず私が見つけ出す。だからみんなは別の議論を進めてくれ」
 

18

ルーミア「ねえ、妹紅。大丈夫?」
妹紅「…………龍の彫像は…………意味はつまり…………チルノはどうして…………」
霊夢「集中しているみたいね。そっとしといてあげましょう」
ナズーリン「私達も議論を進めよう。なあ。もう一度これを見てくれないか」

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青娥「事件発生現場の全体図ですね」
ナズーリン「ああ。証拠品全てを網羅しようとすると、更にテーブルクロスやジュラルミンケース等も含まれる」
てゐ「トラッシュルームだけでもかなりの証拠品があるのにねえ」
ナズーリン「会場に残ってる証拠品は、マミゾウや妹紅の証言でほぼ全体が把握出来たが、真犯人が残した痕跡はほとんどない。そう思わないか?」
マミゾウ「強いて言えば、わしが設置した〈ナイフ〉くらいじゃろうな」
青娥「そうですね。〈ナイフ〉が凶器というのは確定でしょうね」
早苗「あの……それなら、ちょっとおかしいところがありませんか?」
咲夜「早苗は〈ナイフ〉ではないと思うの?」
早苗「いいえ、そうじゃないんです! ただ、真犯人はどうして〈ナイフ〉を処分しなかったのかなあ、って思って
てゐ「出来るわけないじゃん。そうでしょ? メダルを全部使わないといけないんだから
早苗「でも、〈ナイフ〉さえ無ければ推理はもっと難しかったような気もするんですよね」
ルーミア「それは無理でしょ? だってマミゾウと妹紅が自分から〈ナイフ〉のことを話してくれたんだし」
早苗「だけどそれは私達が議論を続けた上で、妹紅さんやマミゾウさんが味方になってくれたからですよね? 真犯人側としても有利でしょうけど、マミゾウさん達にとってもかなり有利な状況になったと思うんすよ」
マミゾウ「何を言っとる。〈ナイフ〉が無ければ〈リボルバー〉が隠せなかったはずじゃが――いや、そうでもないのかのう?」
早苗「でしょ? 仮にキッチンナイフだけ中央に設置してから〈リボルバー〉をバックヤードに隠したとしても――『中央から検出される証拠品が一件だけになる』ってことは、キッチンナイフが重要な証拠品だと錯覚されるだけ、ってことなんすよどちらにせよ、マミゾウさんには得しかなかったんです」
魔理沙真犯人が単独犯だってことは、確定かもな
早苗「ですよね? チルノさんを殺した犯人が、マミゾウさん達と同じ様に共犯だったのなら、〈ナイフ〉は処分していたと思います
てゐ「――マミゾウ」
マミゾウ「なんじゃ?」
てゐ「あんたもしかして、とんでもない大ポカをやらかしたんじゃないの? 二人にとって〈リボルバー〉はバックヤードに隠さざるを得ない凶器だったんだろうけど、〈ナイフ〉は現場の偽装段階で処分可能だし、トラッシュルーム内にあってもなくても同じような結果を生み出せたんでしょ?
ナズーリン〈ナイフ〉は服と一緒に処分。そしてトラッシュルームの中央には未使用であるなら何を置いても構わなかったし、バックヤードに〈リボルバー〉を隠した所でトリックは成立した、ということかね?
マミゾウ「これは――そういうことになってしまうな。現場を偽装することに頭を取られて、『〈ナイフ〉をトラッシュルームに残す必要性』について考えが至っておらんかった
青娥「――私の考えを言わせて貰うと、今回のマミゾウさん達の計画には、やはり〈ナイフ〉を現場に残すことは必要だったと思います。血塗れのテーブルクロスと、ゴミ箱の前の血液だけでは、事件現場としての『質感』が薄くなってしまうのですよ
ナズーリン「質感?」
青娥「まず、〈リボルバー〉という最初から隠し通すつもりだった凶器には効果が期待出来ません。誰にも発見されない凶器は、当然現場に質感を生みませんから。そもそも〈リボルバー〉は妹紅さんの死因とワンセットの物でしたし。〈暗視ゴーグル〉も一応は『極上の凶器』に含まれますが、それ自体に殺傷力の無い物が見つかった所で、架空の事件を想起させる為には全然足りないんですよ。そして〈氷細工〉で作られた彫像や〈水晶玉〉についても同じことが言えます。どちらも『氷』や『水』といった青く透明度の高いもので、チルノさん自身が用意したと連想しやすい凶器ですし。そもそも本来の計画では氷像も〈水晶玉〉も現場に発生することは無かったわけでして。『会場のどこかで人が死んだ』という質感を持たせる為には、実際に妹紅さんが自らを傷つけた〈ナイフ〉を設置することは必須でした
てゐ「もしかして――遠回しにマミゾウのこと慰めてるの?」
青娥「え? 逆ですよ? 貴方達は結局、二人殺してるんですよ。殺してしまったんですよ。もちろんチルノさんを殺したという意味ではありませんよ? 架空の存在を、です。架空の存在を意図せず殺してしまったことがきっかけで、会場に『厄』を呼び寄せたと――私はそう考えています
てゐ「あのさ、青娥。正直言って不愉快なんだけど? そんな非科学的なことをここでぶち撒けたって何も――」
青娥「非科学的? ここは幻想郷ですよ? そんなことを言いだしたら私達の存在って――一体何なんでしょうね? 知っていましたか? 外界の人達からすれば生身で空を飛べるヒトガタの生き物って、『化物』とか『悪魔』らしいですよ?」
紫「……」
マミゾウ「……」
ナズーリン「……マミゾウ。青娥の言うことなんて、真に受けるな。少なくとも君達はゲームを完全に終わらせる為に動いていたんだろ? 殺人についても妹紅の同意を得た上でな。そもそも『たった15分の間に真犯人に便乗されて起きた出来事』に、そこまで責任を持つのはいかがな物か」
こいし「ん? 15分? どうして?」
さとり「チルノさんは23:45まで生きていました。レミリアさんも大体日付がDAY07に切り替わるくらいにはトラッシュルームを訪れていたことでしょう。トラッシュルームの状況さえプレイヤーに知れ渡れば、その瞬間にマミゾウさん達の計画は成功したと言えたでしょう」
こいし「あー。15分間誰もトラッシュルームに入らなければ事件は起きなかったんだ
マミゾウ「……そうじゃな。DDSルームの見張りの都合もあったが、〈ナイフ〉や〈リボルバー〉を現場に持ち出す以上、状況発見までの時間はなるべく短くしようと考えておった」
さとり「たった15分だけ運がマミゾウさん達に味方すれば、こんな悲しい結末にはならなかった。しかし――」
早苗「真犯人はトラッシュルームの状況から即席の計画を作って、犯行を?」
さとり「はい。ですが杜撰な部分も相当ある計画です。真犯人がきちんと計画を立て、何らかの犯行計画を実行していたのなら、このような発見状況にはまずならなかったでしょうね
マミゾウ「踏んだり蹴ったりじゃのう。だが、わしらはここで終わるわけにはいかん! なんとしても真犯人を見つけねばな」
ルーミア「……ねえ、みんな。怒らないで訊いてね。マミゾウ達ってみんなのことを考えて行動したのが議論でわかったよね? 私なんかの独り善がりとは全然違った。例え真犯人を見つけられても、妹紅とマミゾウは処刑されるんだよ? だったら――」
マミゾウ「ルーミア。気持ちは嬉しいが、それでは駄目だ。これはお前達が勝たなければいけないゲームじゃ。特に霊夢魔理沙。お前さん達がわしらに負けることだけは許されん」
魔理沙「マミゾウ……」
霊夢「……」
マミゾウ「幻想郷では人間が食われてしまうことだってある。食物連鎖、あるいは存在意義の維持の為にな。だが『食欲以外の願望を満たす為に他人を殺めた』なんてことは、幻想郷でもそうは起きないはずじゃ。それをお前達が裁かないで、誰が裁く?」
魔理沙「いや、私達は異変のたびに首謀者を裁いているつもりはないんだ。そんな権限、幻想郷の管理者である紫からも与えられていない」
霊夢「妖怪にとっては遊びの延長に過ぎないことでも、放置していれば力の無い人間にとって一大事になることだって結構あるのよね。人里の住人とかには特にね。例えば人里に住む『小鈴』って子はある種の能力を持っているけど空も飛べないし、唯一無二の性質を持つ『阿求』も体が強いほうではない。だから私は誰かの力を借りて異変を解決することがある。積極的に命を取ろうとは考えていないけど。本当に危険な存在だと直感的にわかったら、遠慮なく退治するけどね」
魔理沙「ま、そういうことだ。それで、霊夢はどうする? お前がギブアップするなら、私がくじ引きでもして投票対象を適当に決めてやってもいいぜ?」
霊夢「馬鹿なことを言わないでよ。真犯人は、必ず暴き出す」
マミゾウ「頼もしいのう。それを訊いて、少し安心したわい」
ルーミア「――そっか。マミゾウ達はそう考えていたんだね」
マミゾウ「ああ」
ルーミア「それなら、頑張って推理してみようかな。霊夢のメモを確認しつつ――能力や凶器のカードを広げて、っと」
マミゾウ「おう、そうしろそうしろ」
ルーミア「……あ、やっぱり推理は無理かも」
マミゾウ「早っ!?」
ルーミア「だって無理だもん! 私はどちらかと言うと『犯人側』で動くタイプだし。そもそも真犯人もそうだけど、マミゾウ達の計画も細かい部分が多くて理解するのが難しいし……」
てゐ「度胸もあるしね。この計画、地味に廊下の移動距離も長いから隠密行動も大変だよねえ」
ルーミア「マミゾウと妹紅の立てた計画、本当に凄いなあ。私じゃ、こんなの無理だよ」
青娥「その通りですが、ルーミアさんの立てた計画も素晴らしい物でしたよ? ほら、霊夢さんだって最初は祭壇の意図に全然気付けなかったじゃないですか。チルノさんと一緒に飾り付けしていたのにも関わらず」
霊夢「なーによ、あんた。喧嘩売ってんの?」
ルーミア「でも。やっぱり凄いと思うんだけどなあ」
早苗「まあ、確かに……」
マミゾウ「何を言うとる。犯罪の計画に凄いもクソもあるかい」
こいし「ねえねえ、私の毒殺計画は!? 見立ては!? どう!? 凄かった!?」
ルーミア「…………え? う、うん。凄い?」
こいし「疑問形!?」
ナズーリン「確かにトリックもそうだが――道具を一通り揃えるのも難しい計画だ
ルーミア「でしょ? マミゾウってさ。計画の為の道具を沢山用意してたじゃん。道具を吟味するのだって大変じゃない?」
てゐ「ルーミア。あんただって図書室から美術図鑑を盗んだり、祭壇を作る為の素材を揃えたりしたじゃん」
ルーミア「見つかるリスクが低い所からは、ね。夜の図書室とかなら安心して侵入出来るし。でも厨房のキッチンナイフなんて、私だったら盗むのがちょっと怖いかなあ」
マミゾウ「そんなもん、九割度胸じゃ。後はプレイヤーの行動パターンを観察していれば、限りなくリスクは抑えられる」
レミリア「あ、そうだ! 咲夜! いくらなんでも厨房のキッチンナイフくらい毎日確認しておきなさいよ! こんなもん、紅魔館でやったら減給よ! 減給!」
咲夜「はい? うちの帳簿は私が管理しているのですが――どうしろと?」
レミリア「え!? そうだっけ? じゃあ、ええと――」
咲夜「むしろ私は、紅魔館に住み込みで働いている最中に危険なゲームに巻き込まれた被害者なのですが、労災は下りるのですか?」
レミリア「あれ、何も聞こえないわね? 〈幻惑〉が発動しているのかしら」
マミゾウ「人のせいにするでない」
てゐ「その理屈だとナズーリンも『上司』から仕事を与えられている最中だったね。労災下りるんじゃないの?」
ナズーリン「そんなもん毘沙門様に頼めるか!」
てゐ(案外がっつり財宝くれそうだけどね)
ルーミア「――キッチンナイフ、替えの服、テーブルクロス。ここまで用意しないといけないのかあ」
マミゾウ「それだけではないぞ? 未使用だからこそ検索に引っ掛からなかっただけで、道具は他にも用意しておいた。妹紅だけでなく、わしの替えの服も用意したし、犯行前には懐中時計も正確な時間に直した。妹紅を狙撃する際にはどんな風に血が飛び散っても良いように、入念な準備を行った。先程話に出た通り、結局の所は銃撃の際に人体の一部が別の個室まで飛んでしまっていたようじゃが……」
ルーミア「凶器だって二つも用意してたもんね」
マミゾウ「そこはほとんど妹紅任せじゃったがのう。妹紅が希望した〈暗視ゴーグル〉の取得については、要求を呑んだというよりも、妹紅がルーミアに殺人をして欲しくないという気持ちを尊重したんじゃが」
ルーミア「妹紅……」
ナズーリン「――ん?」
さとり「……!」
魔理沙「どうした?」
ナズーリンルーミアの言った通り、マミゾウの用意した凶器は、二つだったな?
マミゾウ「ああ。それがどうした?」
霊夢「……」
早苗「え? どうしました? 何の話っすか?」
ナズーリントラッシュルームの床に落ちていた、〈ナイフ〉。そして、地下のバックヤード内に隠されていた、〈リボルバー
青娥「……ふふ」
こいし「なになにー?」
ルーミア「……?」
ナズーリン「マミゾウ。訊いてもいいか? 君、〈リボルバー〉をどうやって入手した?
 

19

マミゾウ「……質問の意図がわからん」
ナズーリン「そうか。なら別の質問をしようか。君、DAY05できちんと謝罪していたが、どうして急に『人が死ぬような計画』を実行しようと考えた?
マミゾウ「あのな、ナズーリン。今更そんなつまらんことを聞くのか? はぁ……ナズーリンよ。わしはなんの妖怪じゃ?」
こいし「アライグマ!」
マミゾウ「狸じゃアホ! 化け狸に決まっておるだろ!」
こいし「いや、でも尻尾が――」
マミゾウ「これはそういう模様なだけじゃ! いいか!? わしは人語を操る化け狸じゃぞ!? あんな形ばかりの土下座に意味があるわけないじゃろう。わしに他人を騙すことへの躊躇なんぞあるか!
ナズーリン「……ふむ?」
てゐ「――そうだ! それそれ! 私、そこがどうしても納得出来ないんだけど」
マミゾウ「どうしてじゃ?」
てゐ「あんたがDAY05の朝に土下座した時、嘘偽り無い真摯な気持ちで謝っているように思えたんだよ。だからこそ私は、殺人未遂犯であるあんたとDDSルームの見張りを一緒にすることに決めたんだよね。妹紅だって、マミゾウがきちんと謝ることが出来る人物だからこそ協力したんじゃないの?

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マミゾウ「――仮にあの時本当に心を入れ替えていたとして、それが何だと言うんじゃ?」
てゐ「妹紅に計画を持ちかけたのって、その日の夜でしょ? そのタイミング以外有り得ないよ。たったそれだけの間に、どんな心境の変化があったのか気になって」
マミゾウ「だから、全部お前達を欺く為にやったことだと――」
ナズーリン「なら、もう一度訊く。君は〈リボルバー〉をどうやって手に入れたんだ?」
早苗「そういえば気になりますね。保管していた凶器を盗まれたことは完全に私達の不手際だとしても、そもそもどうやって〈リボルバー〉を見つけたんですか?」
ナズーリンDAY05から06の間に〈リボルバー〉を手に入れるには保管されていた場所から盗み出すしかないはずだが?
マミゾウ「妹紅には話したぞ? 『エリア全体を調べ直している時に、たまたま見つけた』と」
レミリア「――ん?」
ナズーリン「マミゾウ。それは、ちょっとおかしい。一応みんなにも確認しておくか。この中で魔理沙と早苗が大量に取得していたという凶器の在処を知っていた者は?
ルーミア「知らなかったよ? 知ってたら〈水晶玉〉じゃなくてそっちを狙ってた。チルノちゃんも知らなかったと思うよ?」
咲夜「私達も知りませんでした。ですよね? お嬢様」
レミリア「ええ。全然」
てゐ「私だって知るわけないじゃん」
青娥「私の場合、端末破壊事件の後に早苗さん達が取る行動の予測はしていたのですが、如何せん途中から身動きが取れなかったので探しには行けませんでしたね。そもそも盗む気もありませんでしたが」
さとり「私は〈読心〉能力のせいで皆さんの思考が読めてしまいますが――その情報を誰かに話してはいません。明確なルール違反になりますので」
こいし「はーい! 私は知ってましたー!」
早苗「えぇ!? どうしてですか?」
こいし「でも〈香水〉も〈消臭剤〉も手に入れたばっかりだったし、スルーしちゃった。また事件を起こしたくなったら取りに行くね」
さとり「止めておきなさい、って言ってもやるのでしょうね……」
霊夢「私も凶器の件はさっき初めて知った。凶器がそんな風に大量に取得されていたことも知らなかった」
ナズーリン「そうか。みんなありがとう。マミゾウ。君の主張はやはりどこかおかしい。魔理沙の〈盗み〉はともかく、早苗の〈奇跡〉をかけられたジュラルミンケースを盗み出すことは至難の業だぞ? どうやって凶器を見つけ出せたんだ?
マミゾウ「そんなこと言われても、見つけ出してしまったものは仕方なかろう?」
ナズーリンでは、鍵はどうした? 〈リボルバー〉が保管されている部屋やジュラルミンケースを開けるための〈マスターキー〉はDDSルームの中だった。〈リボルバー〉と違って、〈マスターキー〉については場所が判明していた凶器と言える。だが、そもそもマミゾウは既に二回DDSルームを使用済みだったな? DDSルームを安全に使用することは出来ないのではないか?
マミゾウ「おかしいかのう? 〈リボルバー〉も〈マスターキー〉も別に会場から消えたわけではないのじゃぞ? だったらDDSルームを限界まで利用していたのでもなければ誰だって〈マスターキー〉の取得は出来るし、そこから更に〈リボルバー〉を手に入れるチャンスはあったじゃろう? わしだって同じじゃ。DAY05にてゐと別れた後でDDSルームにチャレンジすることは出来た。2分の1くらいのチャレンジがなんだというんじゃ?
てゐ「へえ。だから見張りを始めたの? こっそり凶器を再取得するチャンスを伺ってたんだねえ」
マミゾウ「それについては――お主に謝るが」
早苗「あの――ルーミアさんもそうですけど、なんでボーナスルールを使い切った後もみんな普通にギャンブルにチャレンジしようとするんすかね……。わたしやてゐさんみたいな確率操作系の能力者ならともかく」
マミゾウ「だからどうしたというのじゃ? 少なくともわしはそうやって〈マスターキー〉を再び拝借出来たぞ?」
ナズーリン「一見正しい主張に聞こえるが――それならマミゾウはどうやって二人が隠した凶器を見つけた? 私のような〈ダウジング〉能力でもない限り見つけられるわけがないだろう。実を言うとな、早苗達が隠した凶器の位置は端末破壊事件の後に〈ダウジング〉で把握済みなのだが――まあそうそう見つかる場所には隠していなかったな。勿論ここで場所を言うつもりはないが……
マミゾウ「いや、水掛け論のようになってしまうが、実際問題会場から凶器が消えたわけではないのだから、誰だって鍵さえあれば取得自体は可能じゃろう? わしが凶器を見つけたのはほんの偶然じゃが。それにな、DAY06の朝までに凶器を取得していれば、朝にメダルは補充されるのじゃ。それなら〈マスターキー〉を使い終わった後に、メダルが配られる朝までにトラッシュルームで処分すれば問題はない
ルーミア「ねえ、〈マスターキー〉なんて手に入れなくても、普通に魔理沙か早苗のジュラルミンケースの、鍵だけを入手すればよくない? 魔理沙みたいに〈盗み〉の能力を持ってなくても、少し頑張れば盗めるんじゃないの? 宿舎エリアのお風呂に入っている時とか」
ナズーリン「いや、それでは無理だ。仮にルーミアが〈ナイフ〉を部屋で管理していて、魔理沙が盗んだ鍵で凶器を入手したとしよう。ご丁寧に部屋の鍵まで掛け直してな。さて、君が部屋に戻ってきたらどうなる?
ルーミア「――部屋が開けられないから、鍵が盗まれたことに気付く?
ナズーリン「そういうことだ。トラッシュルームで運良く鍵を処分出来たとしても、鍵の再発行は本人にしか申請不可能だ。使った鍵をポケットにでも戻してみろ。そんなことをすれば、鍵だって立派な証拠品だから、私の〈ダウジング〉に引っかかる
てゐ「あのさ、それなら〈マスターキー〉も〈リボルバー〉も無事手に入ったのに、なんであんなに面倒くさい計画を立ち上げたの? その二つさえあれば完全犯罪なんて可能でしょ。文の時の事件は相当異常な状況だったけど、あんなことがなければ普通に誰かを呼び出して銃殺したほうがずっと手っ取り早いし安全なんじゃないの? そうやってマミゾウがゲームに勝ち抜いて〈追放〉されたプレイヤーを含めて全員を解放すればいい話じゃん」
マミゾウ「ただプレイヤーを殺したかったわけではないんじゃ。それも話したじゃろ? 〈17人目〉を暴き出すことがわしらの真の目的だったのでな
ナズーリンだが、〈17人目〉についての議論が出たのは、マミゾウが謝罪した日の後日――DAY06だ。それじゃタイミングが合わない
マミゾウ「本気で言っておるのか? 〈17人目〉の危険性なぞ、端末破壊の件でとっくに知れ渡っていたじゃろうが」
ナズーリン「なぜそこまで危ない橋を渡る必要がある? 隠されていた凶器の場所さえ知ることが出来たのなら、妹紅に〈マスターキー〉を取得して貰ってから回収に向かえば良かった話だろう。どの道妹紅を共犯者として引き込むつもりだったのなら尚更だ
マミゾウ「そこはどうでもいいじゃろう。たまたま順番が逆だっただけじゃ。凶器の使い道はプレイヤー次第じゃ」
レミリア「総合すると――マミゾウはエリアを独自に捜索中に、たまたま魔理沙と早苗が隠していた大量の凶器を発見した。DAY05の朝にはみんなの前で謝罪したけど、なんらかの心境の変化があった。DDSルームの見張りを終えててゐと別れたマミゾウは、三回目のチャレンジで〈マスターキー〉を取得した。そして凶器の隠し場所まで行って〈リボルバー〉を拝借した。マミゾウは妹紅に〈リボルバー〉を見せつつ、共犯の約束を取り付けた。〈マスターキー〉は自分ひとりで内密に処分した為メダルを全て失ったけど、朝にはメダルが補充されたので問題はなかった。こんな所かしら?」
マミゾウ「ああ。矛盾なぞ一つも無い。どうじゃ、筋が通っておるじゃろう?」
レミリア「咲夜、どうかしら? 私も霊夢と同じように全体を要約出来たわよ?」
咲夜「そんな羽をパタパタさせてドヤ顔で言われましても……。お嬢様、この線でマミゾウさんに対して何かを糾弾するのは無理筋なのでは? そもそもマミゾウさんはチルノさんを殺した犯人というわけでもないのですよね?」
レミリア「そうね。彼女はチルノを殺していない。断言出来るわ」
早苗「……」
マミゾウ「ん? なんじゃ、その眼は?」
早苗「――何でもありません。議論を続けてください」
こいし「ねえねえ、マミゾウ」
マミゾウ「なんじゃ?」
こいし「リボルバー〉の他にはどんな武器があったのー?
マミゾウ「他の武器?」
こいし「魔理沙達はみんなに使われないようにする為に、沢山武器を集めてたんでしょ? だったら七つくらいは武器が隠されていたんじゃないの?」
マミゾウ「七つ? その根拠はなんじゃ?」
こいし「んー? だってさ、魔理沙はボーナスルールで、凶器を二つは安全に取得出来たし、早苗は〈奇跡〉で五つ取得出来たよね? マミゾウが実際に〈リボルバー〉を盗んだのなら、他の凶器だって見てるはずだよね?
マミゾウ「お主までわしを疑うのか? かーっ! 全く。世も末じゃな! こんな大勢が聞いている中で教えるわけがなかろう。凶器が誰かに狙われたらどうするんじゃ」
こいし「大丈夫大丈夫! また別の場所に隠せばいいんだし。いっそナズーリンに手伝って貰えばいいと思うよ? そのほうがもっと安全な隠し方が出来ると思うし。ね?」
ナズーリン「ああ、私は構わないぞ?」
こいし「良かったー! 交渉せいりつー。で、マミゾウ。凶器はどんなのがあったの?」
マミゾウ「――端末破壊事件にまで遡りつつ説明するか? まずDDSルームの端末が破壊された時、〈トラバサミ〉は設置済みでその取得可能凶器の中には含まれてなかった。ボーナスルール解禁直後、まずはお主が〈香水〉と〈消臭剤〉を取得し、その後でわしが〈金塗りの模擬刀〉と〈マスターキー〉を取得した。後からやってきたルーミアとチルノは、〈ナイフ〉、〈暗視ゴーグル〉、〈水晶玉〉をそれぞれ取得した。つまり早苗と魔理沙は残りの凶器の中から凶器を取得したということになるな?
こいし「うん! それで?」
マミゾウ「こいし、実は魔理沙は凶器を取得しとらんのじゃろ? わしを引っ掛けようとしても無駄じゃ。二人が頻りに『私達』という言葉を出していたのは『ブラフ』、あるいは『チームで動いていたゆえの表現』じゃ

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こいし「お?」
マミゾウ「つまり――魔理沙達がDDSルームから回収した凶器は〈リモコン爆弾〉、〈無味無臭の毒薬〉、〈リボルバー〉、〈セミオート〉、〈霊体ボウガン〉、この五つで間違いないな?
咲夜「……!」
レミリア「あら?」
こいし「おおー」
マミゾウ「言っておくがお前達、くれぐれも魔理沙と早苗から凶器をせしめようとするでないぞ? 盗んだわしが言うことでもないかもしれんが。隠し通すのが不安だと考えるのなら、これからは当初のアイデア通りに見張りを立てつつDDSルーム内での管理も――」
こいし「……………………うぷぷ」
マミゾウ「……ん?」
こいし「……ぷ、くくくく。あははははは! ざーんねーん! はっずれー! マミゾウおばあちゃん、ダウトーーーーーーー!」
マミゾウ「な、なんじゃ?」
こいし「五つも凶器はありませんでしたー! 本当は四つだよ! 騙してごめんね!
マミゾウ「そんな、馬鹿な……」
こいし「確かに魔理沙は凶器を取得していないよ! でもね、二人がジュラルミンケースの前で話し合っていた時、凶器は四つしかなかったんだよねー
マミゾウ「そ、それは……」
レミリア「あらあら。貴方が舌戦で一本取られるなんて、相当ヤキが回っていたみたいね。ねえ、咲夜。――咲夜?」
咲夜「――すみません。呆気に取られてしまいました」
ナズーリン「……なるほど、そういう攻め方もあるのか。こいし、感服したよ」
青娥(ルーミアさん、よろしいですか? もし凶器をもう一度取得する際には、このような場合に矛盾点を突かれないように言いわけを準備しておいてください。そうしないと間違いなく誰かにそこを掘り返されます)
ルーミア(う、うん。わかった)
マミゾウ「なあ。早苗、魔理沙、お前さん達――」
早苗「こいしさんの言う通りです。私達の話し合いを、本当に間近で聞いていたんでしょうね。ちょっとした理由があって、私は四つしか凶器を取得しなかったんですよ
マミゾウ「早苗……」
てゐ「それで、なんで魔理沙は一個も凶器を取得しなかったの?
早苗「……はぁ」
てゐ「ん?」
ナズーリン「早苗?」
早苗「………………紫さん!!!」
こいし「うわ! あー、びっくりした」
早苗「裁判前に預けておいたジュラルミンケース! 今すぐここに持ってきてください!」
紫「いいわよ。すぐに取り出すわ。――はい、怪我しないように気を付けてね」
早苗「……どうも」
ガシャン!!
ルーミア「わぁ!?」
青娥「ふふふ。神様がご立腹ですわね」
ナズーリン「も、もう少し静かに置いてくれても――」
早苗「皆さんの目で確かめればいいでしょう!? 私達がどんな風に考えて凶器を再取得していたのか!

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マミゾウ「――これは? セミオート〉、〈リモコン爆弾〉。そして〈無味無臭の毒薬〉、か……
レミリア「〈霊体ボウガン〉なんてなかったわね。保管していたプレイヤーは二人とも『人間』なのだから、読みは間違っていなかったと思うけど」
こいし「そうそう。こんな感じだった。部屋で見た時は、これに加えて、〈リボルバー〉があったねー」
早苗「ほら、手に取ってよく見てくださいよ」
ルーミア「――あれ? この毒薬の瓶、空っぽだよ?
霊夢「……やっぱりね」
ナズーリン「待ってくれ。爆弾の信管が取り外されているぞ!? 拳銃に至っては――弾薬が一つも装填されていないじゃないか!
青娥「ですが――確かに妹紅さんは銃殺されていました。これはどういうことでしょうねえ?」
てゐ「あ、あれ? それじゃあ、もしかして――」
ナズーリン「――ああ。それしか考えられないな」
咲夜「他の可能性を模索することも出来るけど、早苗の様子からすると恐らく……」
ルーミアねえ、――どういうことなの、魔理沙
魔理沙「……」
マミゾウ「――弾薬や信管を保管していたのは、魔理沙だったのか?」
早苗「違います!」
てゐ「え? そしたら早苗が保管していたってことになっちゃうんだけど――」
早苗「それも違うんです……違うはずだったんですよ!!」
咲夜「早苗……?」
早苗「毒薬は、部屋の洗面台で簡単に中身を処分出来ました……。他の凶器も同じように無力化した、はずだったんです……
ルーミア「それって、つまり――」
早苗「そうですよ! 弾薬も! 信管も! トラッシュルームで魔理沙さんと一緒に処分したはずだったんです! 何度も言ったじゃないですか! 『他のプレイヤーが殺人に用いないようにする為に』凶器を回収したんですよ!? 当然私達だって使うつもりはありませんでした! だったら私達が『ガワ』の部分はともかく、起動の要になる部品まで保管する必要性が無いじゃないですか!
レミリア「本来、この会場で銃殺が起きることは有り得なかった――そういうことね」
てゐ「それでさ、なんで魔理沙は凶器を取得しなかったの? 早苗が〈奇跡〉を魔理沙か施設そのものを対象として使えば、残りの凶器を全て回収することだって可能だったんじゃないの?
早苗魔理沙さんはDAY02の計画が失敗した件で、本当に心を痛めていたんですよ……。だから私がたまたま知ったボーナスルール解禁のことを教えた後でも、頑なに凶器の回収を拒んだんです。魔理沙さんは――ゲームが始まってから、一度もDDSルームを使っていません。そんな魔理沙さんだから、信じていたのに……」
魔理沙「早苗……」
早苗「魔理沙さん! 貴方、一体どういうつもりだったんですか! 今すぐ全部白状してください! この凶器に手を付けた意味、わかってるんですか!? 私は殺人が起こらないようにする為に協力していたのに! ずっとそう願っていたのに! 私がどんな気持ちで貴方と一緒に――」
妹紅「――そうか。魔理沙は端末破壊事件で、そこまで心を痛めていたんだな。だからマミゾウに共犯による殺人を持ち掛けて拒まれてからも、チルノを殺害することを選んだわけだ。自分だけが手を汚していない罪悪感に苛まれた末にな
レミリア「――妹紅?」
 

20

妹紅「チルノの残したダイイングメッセージ。やっと意味が解ったよ。チルノを殺した真犯人は『超高校級の泥棒』。『霧雨魔理沙』――お前だな
 

21

魔理沙「…………」
てゐ「妹紅、今――あんた、なんて言ったの?」
咲夜「魔理沙が――真犯人?」
レミリア「……」
ナズーリン「い、いや。そんな馬鹿な。妹紅、そんなはずはない」
ナズーリン「だってそうだろう!? 彼女は博麗霊夢と同じ、『異変解決者』側の人間だ! 人妖が幻想郷を脅かす行動を起こした時、対処するのが彼女達の役割だ。スペルカードルール制定前は、命を賭して異変解決に取り組んでいた。そう聞いているぞ!?」
マミゾウ「……妹紅。お主はどうしてわしが魔理沙に共犯による殺人を持ち掛けられたと知っていた? 誰に聞いた?」
妹紅「ん? 私なりに推理ってやつをしただけだよ。まず、お前一人の結論では共犯という結論に辿り着くはずがないからな」
マミゾウ「……なぜそう思う?」
妹紅「一回目の事件の時、お前は一人で動いていただろ? その時お前は自分一人で証拠品を管理出来る範囲でしか行動を起こしていない。身も蓋もないことを言えばマミゾウは、私なんか居ないほうが人殺しだってスムーズに終えることが出来たんだよ
マミゾウ「そ、それは――」
妹紅「次に、DAY05の朝に謝罪したお前が夜には心変わりした理由。そんなの余程のことがないとおかしい。お前は『義理人情』というものを大切にしているからな。お前の気持ちを変える何かがあるとすれば――誰かからの共犯の誘いくらいだろうな
咲夜「マミゾウさん、とても優しい方ですもんね。私が自傷した後も、軟膏を渡してくれましたし……」
妹紅「お前に共犯を持ち掛ける可能性が高いとしたら――命蓮寺内で繋がりのあるナズーリン、あるいは神霊異変解決後に知り合いとなったこいし、その当たりだな。だがこいしとは連絡を取り合うこと自体至難の技だし、ナズーリンが関与していれば現場から出る証拠品は今と全く違ったはずだ。お前がこの会場で本当に心を許しているプレイヤーは、実はそう多くない。ゲーム外にまで心を許している人物の範囲を広げるなら、『聖白蓮』、『寅丸星』、『雲居一輪』、『雲山』、『村紗水蜜』、『封獣ぬえ』、『幽谷響子』、『多々良小傘』、『秦こころ』、『稗田阿求』、『本居小鈴』――こんな所か?」
ナズーリン「関係者にずいぶん詳しいが――どうしてだ?」
妹紅「以前慧音が色々と教えてくれたんだよ。『幻想郷に素敵な思想を持った寺が生まれた』ってな。それに永夜異変の後から、多少は里の人達とも関わりを持つようになったんだ。そういう話を訊くこともある」
ナズーリン「そうか。慧音がそんなことを……」
妹紅「だけどな――幻想郷の交友関係には『特別枠』とでも言うべき『広い交友関係を持ち、且つ知り合った人妖の大半から好かれている二人』というのが存在する。そんな二人のうち、片方から頼りにされれば、ここにいるみんな、断り辛いと思わないか?」
ルーミア「それって、つまり――」
さとり「霊夢さんと、魔理沙さんですね
妹紅「ああ。仮に私の方からマミゾウに共犯を持ち掛けても、恐らく門前払いされていただろうな」
マミゾウ「そ、そんなことはない! お主は安全なプレイヤーだから、話くらいは聞いた!」
レミリアつまりマミゾウが殺人に関する交渉に応じたとすれば、霊夢魔理沙の、どちらかだと?
妹紅「ああ。だが霊夢魔理沙は既に強固な信頼関係で結ばれている。だったらマミゾウより先に、霊夢魔理沙の片一方が、マミゾウより先にもう片方に交渉を持ち掛けていてもおかしくはない
レミリア霊夢。貴方はDAY05に魔理沙から共犯の誘いを受けていたのね

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霊夢「黙っていてごめん……。魔理沙にはDAY05の時に『〈青娥〉と〈妹紅〉を標的とした共犯による殺人』を持ち掛けられていたわ
青娥「あら? それでしたら、私を遠慮なく狙ってくださっても良かったのに」
ナズーリン「れ、霊夢がそんなことするはずないだろう!」
青娥「どうしてですか? 能力的に〈絶望〉かどうかを判断し辛いプレイヤーは、霊夢さん、魔理沙さん、妹紅さん、そして私だけでしょう?
こいし「え? 私って〈絶望〉かどうかを、どうやって自分で判断出来るの?」
さとり「貴方が〈絶望〉なら、〈無意識〉を簡単に解除出来るに決まっているでしょう……」
こいし「あ、じゃあ無理だね!」
ナズーリン「同じように、さとりが〈絶望〉だったら深層心理を読むことも出来るだろう。早苗は〈奇跡〉の解除が可能だろうし、てゐに至っては〈幸運〉の無制限貸し出しすら出来るかも知れない。咲夜、レミリア、マミゾウ、それに私の場合は、インターバルや回数、あるいは発動時間の制限が撤廃されるということになる」
てゐ「それで、霊夢に断られた魔理沙は、どうして代わりにマミゾウを選んだのさ? 他にもプレイヤーは沢山いるじゃん」
妹紅「どうしてだろうな。マミゾウの腕を買っていたから、あるいは〈幻惑〉能力が犯人側の能力として有用だから、か?」
青娥「ふふ。あるいはこう考えられませんか? 『マミゾウさんは魔理沙さんに無い物を持っていたから』
妹紅「それって一体、なんだ?」
青娥「さあ、なーんでしょうねえ。大人の色気かしら?」
ナズーリン「そんな煙に巻くようなことを言うな。もっと現実的な理由でだろう? 『文の事件の時に、殺人の為に動ける人物だと明確になったから』だな?」
ルーミア「私もその時に動いたけど、マミゾウは私みたいに頭が悪くもないもんね」
レミリア「――それで、妹紅。ダイイングメッセージの意味については、いつ話してくれるの?」
妹紅「ああ。今教える。まずはこれをもう一度見てくれ」

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咲夜「黒い造花は、本来青い造花だったんですよね」
妹紅「その通りだ。『青』から、『黒』だ。だけど花の色には、その間にもう一段階別の色が存在する。何かわかるか?
ナズーリン「ん? 血が付いたから変色したわけだろう? それ以前になんらかの薬品に浸されていた、ということか?」
ルーミア「もしかして――血、そのものの色?
妹紅「正解だ。チルノが抱いていたドライフラワーは最初『青』色だった。そこに『赤』い血の色が加わり、『黒』に変色したわけだ
早苗「確かに、青い花をダイイングメッセージとしたかったら、指を差すなりすればいい話ですもんね? 逆にしっかり抱きかかえてしまえば、今回のように血で色が変わってしまいますし
咲夜「それとは逆に、抱きしめることで血液を花に浸透させることが目的だったんですね
てゐ「血液ってさ、みんなが思うよりもずっと速く凝固するんだよね。チルノは自分の死体が15分以内には発見されると踏んでいたのかもね。時間的にレミリアがトラッシュルームを使う前だったし。だけどそれじゃ他のプレイヤーに『血で赤く染まった花』を見せる為には全然間に合わない。鼻血でも出した時、ティッシュが黒ずむまでの時間、今度測ってみな?」
妹紅「花の色については納得してくれたか? 次はこれを見てくれ。さっき霊夢から貸して貰った美術図鑑の本体だ」

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ルーミア「これ、私がチルノちゃんに渡したやつ? 持ってきてたんだ」
妹紅「ああ。ルーミアとチルノって確か、慧音の寺子屋に通ってたよな?」
ルーミア「え? うん。どちらかと言うと休み時間にみんなと遊びたくて通ってるけど」
妹紅「そうか。だったらこの記述――『龍の花生け』について書かれた部分は読めるか?
ルーミア「ん? ええと、『ちょう……しょうがくせいきゅうの、ずこうのじかん…………なんとかせいの、はないけで』、? えーと――」
てゐ「本当に寺子屋で勉強してるのー?」
ルーミア「や、やってるって! 大ちゃんみたいに真面目にはやってないけど!」
妹紅「よし、だったら、これが作られた経緯や、芸術の趣旨についての部分はわかるか?」
ルーミア「え、そんなの無理だよ! 『花は龍の口に生ける』ってところは一応読めたけど。『龍』って漢字が彫像のことを指しているのはなんとなくわかったけど、習ってない漢字だって沢山あるし。だって、図鑑をパラパラってめくってから、水晶玉を嵌められそうな見た目でそれを選んだんだよ? 文章なんてあんまり読んでないし、深夜のうちにパッと持ち出したんだから、書かれていることを気にしている余裕なんてなかったもん」
妹紅「――なあ、ルーミアこの龍は、何をしている所だと思う?
ルーミアえ? この持っている物を食べようとしているんじゃないの?
早苗「え!?」
咲夜「はい?」
てゐ「おいおい……」
妹紅「ルーミア、多分違うと思うぞ? 私も厳密には何をしようとしているところなのかはよくわからないけど。チルノも同じ認識だったのか?」
チルノ「うん。チルノちゃんに『これって何なの?』って聞かれたから、『口の所に花を生けられるらしいよ』ってことは話しておいたけど
ナズーリン「――龍は『昇龍』と『降龍』の二種類に分けることが出来る。一般的に昇龍をモチーフにした作品の龍は、龍玉を持っていないんだ。龍は天に昇ってから、龍玉を取って降りてくると考えられているからな。この龍が何をしているところなのか、ということをあえて定義するならば『龍が宝玉を手に入れて地上に降りてくる所』だろうな。龍をモチーフにした作品の作り手全員がそれを理解しているとは全く思わないし、その必要性もないと思うが」
ルーミア「そ、そんなことまで考えてこれを選ぶわけないじゃん!」
てゐ「だろうねえ」
レミリア――チルノもルーミア同様、龍の像の、作品としての趣旨を大きく勘違いしていた?
妹紅「ああ。私もそう考えている」
青娥「妹紅さんは、そこからどうダイイングメッセージに繋げたのですか?」
妹紅「最も重要な部分は当然ここだ。『花は龍の口に生ける』。つまりここから花の色を踏まえて連想していけばいい
こいし「口に、って――あ!」
妹紅「お前も気付いたか? 多分そういうことだよな? 『花は龍の口に生ける』ってことは、チルノが抱えていたあの花は、口に咥えさせればいい、ってことだ」
早苗「そういう意味だったんすか。チルノさんは、プレイヤーの誰かが『赤い花』を咥えていたのを目撃していたってことすか?」
てゐ「……何さその奇妙な状況。意味がわかんないし」
妹紅「私もそこで推理が詰まった。だからもう少し踏み込んで解釈することにしたんだ。そもそもダイイングメッセージに〈水晶玉〉の中のドライフラワーを選んだ理由はどうしてか?
てゐ「いや、そこにそれしかなかったからじゃないの?」
ナズーリンだったら花の絵を血で床や壁に描けばいい話だ血文字で出来た、赤い花の絵をな。五分近く生きていて、花を懐に抱える力が残っていれば出来る
妹紅「その通りだ。つまり私は――こう考えた。床に落ちていた割れた〈水晶玉〉も含めて、一つのメッセージなんだとな
早苗「凶器が、ですか?」
妹紅「そうだ。〈水晶玉〉は『花』の部分と、凶器である『水晶』の部分に分けられる。そしてチルノは、ドライフラワーは抱えていたのに、水晶部分のほうは一切抱えていなかった
レミリア「ええ。確かにそうね」
妹紅「だったら、こうは考えられないか? チルノが創造し、想像した龍は、『花と水晶部分を分けることが出来た存在』だと
ルーミア真犯人も――同じことが出来た?
妹紅「ああ。真犯人も凶器と無害な部分を分けることが出来たんだ
ナズーリン「待ってくれ。その凶器とはなんだ?」
妹紅「――『毒』だよ
てゐ「毒? それってもしかして――〈香水〉のこと?
早苗「でしたら、〈花〉を意味するのは、お茶のことですか?
こいし「でもさ、お茶ってどちらかと言えば花じゃなくて葉っぱのほうじゃない? それだと意味がちょっと――」
咲夜「――いいえ、合ってますよ。あの紅茶は、『花』でもあるんです
こいし「え?」
咲夜「お嬢様、DAY05に淹れたお茶が何か覚えてますよね?
レミリア「あの〈香水〉が混じってたやつ? 後から咲夜に厨房で訊いたから知ってるわよ。『ローズヒップティー』だったんでしょ?
魔理沙「……あ!」
妹紅「そうだ。魔理沙お前はDAY05には紅茶に違和感を覚え、DAY06の朝食の際にもそれを指摘していたな。赤いローズヒップティーと、チルノが抱えていた『赤い花』。この奇妙な符合はなんだろうな?

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魔理沙「……」
ナズーリン「――待ってくれ。紅茶自体はほぼ全員が飲んでいるんだぞ。いくら二回とも魔理沙がそれを指摘していたと言われてもなあ
ルーミアそれに咲夜だって〈香水〉を飲む前に気付いてたよね? レミリアが味についての指摘をした時に
妹紅「そうだな。だけど私達が毒を飲まされそうになったタイミングは――その二回だけじゃないんだよ
てゐ「他に〈香水〉が仕組まれたタイミングなんてあったっけ?
妹紅「ああ。その時は私だって飲んでないし、誰も飲んでいない。そんなもん一口でも飲んでいたら、ここにいる誰も助からなかっただろうな」
早苗「あ、あの、まさか……」
てゐ「え?」
早苗「私が〈奇跡〉を使って〈絶望〉に飲ませようとした、〈無味無臭の毒薬〉のことですか!?
レミリア――咲夜、一応確認するけど、その時淹れたお茶は?
咲夜「――ローズヒップティーです! DAY05に、皆さんにお出しした紅茶と、全く同じ物です! 赤い薔薇の花の、赤い実から作られた、紅茶です……

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妹紅「ああ。その時も毒殺を回避出来たのは――魔理沙の手柄だったな

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ナズーリン魔理沙は、三度も毒を指摘していたのか……」
妹紅「チルノのメッセージの意味、納得して貰えたか?」
咲夜「妹紅さん。聞かせてください。チルノさんはなぜ、紅茶や毒の件をダイイングメッセージに用いたのでしょう?
ルーミア多分、チルノちゃんが、妖精だからだよ
レミリア「妖精?」
ルーミア私が『血』に対する嗅覚が強いように、チルノちゃんや大ちゃんのような妖精は『植物』に関する嗅覚が敏感なんだ。だからチルノちゃんには、異物が混入したローズヒップティーの印象が強く残ったんだと思う
妹紅「魔理沙、何か言いたいことはあるか?」
魔理沙「……知らない」
妹紅「知らない、ってどういうことだ? じゃあ、トラッシュルームにあった花はなんだ!? どうしてチルノは懐でしっかりと抱えていた!?」
マミゾウ「――いい加減にしろ! 小童が!」
 

22

魔理沙「!」
紫「……」
妹紅「……マミゾウ」
マミゾウ「魔理沙が人殺し? ふざけるのも大概にせい! 此奴のような臆病者に殺人者が務まるわけがない! 断じて、有り得ん!
咲夜「……『臆病者』?
てゐ「どういうこと?」
マミゾウ「こいし! 早苗!」
こいし「は、はい!」
早苗「な、なんですか?」
マミゾウ「ゲームは明日以降も続くんじゃ! それなのに〈リボルバー〉の件をバラしてしもうて――次に魔理沙の命が狙われることも有り得るのじゃぞ!? なんでもかんでも推理で暴けばいいわけではない!」
こいし「で、でもダイイングメッセージは?」
マミゾウ「――妹紅には申しわけないが、魔理沙のことを指しているとは到底思えん。事実、この中で魔理沙がチルノを殺したという考えを受け止めることが出来た奴はおるのか?」
ルーミア「出来るわけ、ないじゃん。魔理沙が人殺しだなんて、考えられないよ……」
こいし「私だって、そうだし……」
マミゾウ「そうじゃろう。だったら訊かせてやるわい。DAY05の夜にあった出来事をな
妹紅「――魔理沙が共犯の交渉に訪ねてきた時の話か?
マミゾウ「そうじゃ! わしは魔理沙の話を一通り訊いた後に、交渉を一度突っぱねてやったのじゃ! わしに言わせれば、挨拶代わりの軽い挑発のつもりじゃった。『お主は霊夢に比べて心が圧倒的に弱い』、『そんな杜撰な犯行計画では話にならない』、『どうせ霊夢に断られたからここに来たんじゃろ』、とな」
霊夢「……」
マミゾウ「一度魔理沙を突き放してから、その後にきちんと交渉に応じるつもりじゃった。だからわしは一先ず一服する為に、部屋にあった灰皿を空にした。その後――何が起きたと思う?」
レミリア「……」
マミゾウ「空になった灰皿の前で火を付ける前に何気なく魔理沙の方を振り向いたら――此奴は泣きながら〈リボルバー〉の銃口をこちらに向けておったのじゃ
ナズーリン銃口を――マミゾウに向けただと?」
咲夜「そんなことが!?」
早苗「魔理沙さん……」
マミゾウ「『私は強いんだ』、『一人でも出来るんだ』、『仲間だって沢山いる』、『霊夢にだって負けないんだ』と呟きながらな。そうやって――照準が全く合わない銃を構えていた」
てゐ「なんだよ、それ……」
ナズーリン魔理沙、君は――」
魔理沙「――おい! ふざけるな! 出鱈目を言うな!」
霊夢魔理沙……」
マミゾウ「だからわしは瞬時に距離を詰めて、魔理沙を叩き伏せ、〈リボルバー〉を奪った。〈幻惑〉を使う必要すらなかったわ。更に数回打ち据えてから、こう言い放ってやった。『凶器だけ渡せ。こっちで勝手にやるから、一切手出しをするな』と。『DAY06の夜は誰かと一緒に居るか、部屋で待機していろ』とも、魔理沙には厳命しておいた」
咲夜「では、魔理沙が犯人ではないと考える理由というのは――」
マミゾウ「ああ。あの時の姿を見れば、魔理沙がまともに殺しが出来る人間だとは誰も思わんはずじゃ」
青娥「マミゾウさん」
マミゾウ「なんじゃ?」
青娥「魔理沙さんは一体どのような計画を携えて、交渉に訪れたのでしょうか?
マミゾウ「――わしが〈リボルバー〉と〈幻惑〉で妹紅を殺し、魔理沙が〈セミオート〉で青娥を殺す。そして〈リボルバー〉と〈セミオート〉をトラッシュルームで処分し、ボーナスルール未使用の魔理沙がDDSルームで二つの銃を再取得。もう一度トラッシュルームに行き、二人で弾薬を処分した後で、そのまま凶器を元あった所に戻す。捜査が開始されたら、わしと魔理沙はお互いのアリバイを証言する。こんな所じゃな。今にして思えば、弾薬を処分する理由についても一旦魔理沙に訊いておくべきじゃったが」
てゐ「ああ。だからさっき魔理沙が凶器を取得していないことも知ってたんだね
こいし「なんか、普通によく出来た計画だと思うけどなあ」
ナズーリントラッシュルームを経由することで〈リボルバー〉と〈セミオート〉の証拠品判定を消すのか。悪くない」
レミリア「完全犯罪が成立するように思えるわね――魔理沙に人を殺せる度胸があるのなら
マミゾウ「そうじゃ。いくら綿密に計画が練られていたとしても、肝心要の殺人で躓いたら話にならん」
ルーミア「でも、それならマミゾウが二人とも殺して、魔理沙がDDSルームを使えば――」
マミゾウ「なんじゃと? なんで向こうさんが手を汚さず、わしだけ二人も殺さんといけないのじゃ? そんなもん、筋が通らん。それにな、そういう卑怯な人間は大抵自分から人を誰も殺しておらずとも、裁判で良心の呵責に耐え切れず、自白してしまうのが関の山じゃ」
妹紅「だけど、私は自白したぞ?」
マミゾウ「お前さんはいいんじゃよ。まず、二回も命を投げ出したのじゃからな。それにギリギリまでわしを守る為に口を閉ざしてもくれたし、裁判の勝利よりもチルノへの友情を優先した。お主は間違いなく共犯者として、わしの期待に答えてくれた」
妹紅「――私はそんな大層な人間じゃない。竹林に隠れ棲む、一体の化物だよ」
早苗「化物だなんて、そんな……」
ルーミア「チルノちゃん、妹紅といる時、すっごくリラックスしてるように見えたよ。だから一週間も経たないうちに、殺人ゲームに対するモチベーションが下がっちゃったんだと思うな……」
妹紅「……」
霊夢ごめん、それでも私も――魔理沙が犯人だと考えている。妹紅とは別の理由でね
 

23

魔理沙「……」
咲夜「霊夢、貴方も?」
マミゾウ「――なぜそう思う?」
霊夢捜査時間中に私は、さとりの提案で青娥を解放しに行ったのよ

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さとり「ええ。そうでしたね」
霊夢私は九割ぐらいの気持ちで青娥を解放することには反対だった。だけど一割くらいは、『そうするしかない』という気持ちもあった
青娥「あら? どうしてでしょう?」
ルーミア「青娥が〈絶望〉についての鍵を握っていたから?」
霊夢「『鍵』か、ちょっと近いわね。このままでは青娥の部屋の鍵が開けられないと考えたからよ
早苗「部屋の鍵、ですか?」
霊夢「ええ。捜査時間中に必ず調べなければならなかった部屋は二つ。チルノの部屋と――青娥の部屋。チルノの部屋も鍵が手に入るか怪しかったけど、青娥の部屋の鍵は魔理沙と私で処分したことが確定していたのよ? だったら青娥の力を借りなければ、部屋が調べられないじゃない
レミリア「それはそうよね。ジュラルミンケースに鍵をして〈香水〉と〈消臭剤〉を処分したのなら、青娥の部屋の扉だって施錠するに決まってるものね。私だったらそうするわ」
ナズーリンああ。一回目の殺人事件が起きた時に、橙は青娥の部屋を訪ねてきた。橙は既にシリンダーが抜き取られたドアを交換済みのはずだ

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咲夜「あれ? でも私達が部屋を訪ねた時、青娥が鍵を再発行したり、〈壁抜け〉で錠を外したりしていましたっけ?
青娥「いいえ。〈壁抜け〉で扉の鍵なんて開けていません」
ナズーリン霊夢、そこから導かれる結論を訊かせてくれ。もう大体読めているが」
霊夢部屋の鍵は、私と魔理沙ジュラルミンケースに凶器を保管した時点では掛かっていた。だけど事件発生後は鍵が外されていた。理由は――鍵を掛け直したくても出来なかったから。鍵を処分した後ではね
こいし「出来なかった? なんで? どこに処分しちゃったの?」
霊夢青娥の部屋の中よ
ナズーリンそれは――マミゾウ達と同じ手口か!?
霊夢〈香水〉と〈消臭剤〉は今回の事件で一切使われていないわ。つまりジュラルミンケースの近くに保管しておけば、証拠品を二つまで隠すことが出来る。逆に言えば、証拠品を丁度二つ用意しておかないと〈ダウジング〉で矛盾が出てくるってことだけど」
こいし「はいはーい! 異議ありー! ジュラルミンケースをそういう使い方するのって無理でーす!」
霊夢「どうして?」
こいし「わたしも早苗達がジュラルミンケースを使うの見たことあるけどさ、ジュラルミンケースは自動でロックが掛かるタイプの錠前じゃないでしょ? だったら鍵を入れちゃったら、閉めることなんて無理だよ?

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霊夢「そうね。私もそれは確認してる。――だけど、鍵をケースに入れる必要なんてないのよ
こいし「え?」
霊夢「確かにケースに鍵を入れることが出来れば万全だけど――要はナズーリンの〈ダウジング〉さえ掻い潜ればいいの。引き出しの裏に鍵を貼り付けようが、机の下に置こうが、どこでも構わないわけよ。納得出来た?」
こいし「うん、納得した!」
咲夜「つまり、お嬢様。魔理沙霊夢に処分を託した鍵というのは――」
レミリア魔理沙の部屋の鍵だったんじゃないの? だから事件発生時、トラッシュルームを使わずに証拠品を処分することが出来た
早苗「あの、それってつまり――魔理沙さんが霊夢さんを騙した、ってことになりません? 殺人に使う道具を手に入れる為に?
ルーミア「……」
ナズーリン「……」
咲夜「……」
てゐ「……あのさ。そんな幻想郷の終わりみたいな結論、急ぐの止めとこうよ。――それに〈マスターキー〉さえあれば、部屋だろうがジュラルミンケースだろうが、鍵なんて簡単に開けられるじゃん
マミゾウ「――いや、確かに可能じゃが、その場合は余計に鍵が掛かっていないとおかしい
てゐ「マミゾウ?」
マミゾウ「ジュラルミンケースの鍵を掛けてからトラッシュルームに捨てに行くまでには、当然部屋の扉も通過する。鍵を処分するついでに部屋を施錠しないのは、可能性が無いとは言わんが、行動心理としておかしい
てゐ「いや、そもそもさ。部屋に施錠されていることって、そんなに重要? 捜査する側になって考えてみなよ? 私や早苗もいるんだよ? その気になれば青娥に頼らなくても鍵を開けることなんて――
マミゾウ「捜査時間中にDDSルームを使う? そんなこと、大半のプレイヤーが許すと思うか? 〈マスターキー〉は証拠隠滅にも使えるし、咲夜やわしの能力なら捜査時間中にも〈マスターキー〉は簡単に盗めてしまうぞ? そのような提案、真犯人ならまず拒否するじゃろうな。それにDDSルームは基本的に、『凶器を自分一人で密かに保管する』ことを前提として回収する為の場所じゃ。護身にしろ、殺人にしろな。裁判後は回収した〈マスターキー〉を処分することを皆に要求されるじゃろうし、『余程の奉仕精神を持ったプレイヤー』と『他プレイヤーからの同意を得られる状況』が同時に存在しなければ、〈マスターキー〉を手に入れることは出来んよ」
ナズーリン魔理沙自身が部屋の鍵ではなく〈マスターキー〉を入手して使った場合でも、同じことが言えるな。その場合部屋に保管された物も多少変わってくると思うが」
てゐ「――わかった。そこまで言うならもう少し反論させてね? 確か宿舎エリアにある部屋のドアってそこまで頑丈な作りじゃなかったよね? 流石に勇儀みたいに蹴破ることが出来るやつなんて他にはいないと思うけど、力を合わせれば捜査時間中にドアをこじ開けることだって出来るんじゃないの? それならドアにはジュラルミンケースと違って、犯行のための道具としてそこまでの信頼性はないんじゃないの?」

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ナズーリン「てゐ。勇儀が霊夢の部屋のドアを蹴破った時、どうしてそれを直すことが出来たと思う?
てゐ「は? 馬鹿にしてんの? 霊夢が紫に申請したからでしょ?」
マミゾウ「では青娥が自らの部屋を犯行現場に仕立て上げるためにドアのシリンダーを抜き取った後は、ドアの修理は誰が申請したと思う?
てゐ「……青娥自身じゃないの?」
青娥「はい。その通りですよ」
てゐ「ほら、やっぱりそうでしょ? だったら捜査時間中にドアをこじ開けたとしても後から青娥が――」
ルーミア――多分青娥は自分の部屋のドアなんて直さないと思うよ? だって裁判が終わったら青娥をまた拘束するつもりなんでしょ?
てゐ「え?」
青娥「……ふふ」
こいし「えー、なんで? 〈香水〉と〈消臭剤〉は明日からも青娥の部屋で管理しなくちゃいけないんでしょ? 私はもういらないけど」
てゐ「! そ、そうだった……。こいしの言う通り、DAY08以降も凶器は青娥の部屋で管理しないといけないんだっけ……。処刑されたプレイヤーの部屋の鍵やジュラルミンケースは運営に返却する決まりだったから、〈香水〉と〈消臭剤〉を勇儀や文の部屋で管理することは出来なかったんだ。だったら犯人がドアの鍵を掛けることにも、ちゃんと意味があるってことなんだ……
ナズーリン「裁判終了後に調べたところ、文と勇儀の部屋はドアの施錠が開いたままだった。てゐの言う通り、鍵とケースを運営に返却した状態でな。だからこそ我々は『文か勇儀の部屋のケースに〈香水〉と〈消臭剤〉を保管する』という選択肢はなかったわけだ。つまり――我々が捜査時間中に青娥の部屋のドアをこじ開けてしまえば、非常にまずい状況になっていたんだ」
早苗「……あのー、青娥さん。つかぬことをお聞きしますが、青娥さんって私達がドアをこじ開けた場合って、直す気はあるんすか? そもそも霊夢さんに解放されて自分の部屋の前に戻ってきた時に、施錠を外す気ってあったんすか?」
青娥「――私は確かに言いましたよね? 『皆さまの味方です』と。『貴方達を皆殺しにする』とも。つまり私の役割って探偵助手と殺人幇助犯をダブルでやっているようなものなんですよね。勝手に私の懐から盗み出した鍵で、勝手に私の部屋に凶器を持ち込んで、勝手に私の部屋のケースに入れて、勝手に私の部屋に鍵を掛けて、勝手に鍵を焼却処分した気になっていたのは他でもない貴方達ですよね? それを『部屋でもう一度凶器を管理したいから鍵とドアについて運営に申請してくれ』なんて頼まれて、私が素直に従うと思いますか? もしそう思うのでしたら、ちょっと私を買い被り過ぎかもしれませんねえ」
さとり「それだけではありません。裁判が終わった後に保管することになる凶器は〈香水〉と〈消臭剤〉だけではないんです。犯行に使われた〈ナイフ〉と〈暗視ゴーグル〉も保管場所を決めなくてはなりません。チルノさんの足元に砕け散っていた〈水晶玉〉や、地下に隠されているはずの〈リボルバー〉についても同様です。破片の処理さえしなければDDSルームに送られることはないわけですから」
咲夜「お待ち下さい。それなら結局はドアが壊れてても壊れてなくても同じような気もするんですが……。まず捜査時間中には手段を問わなければドアをこじ開けることも出来ます。ですが明日以降に青娥の部屋にある凶器を狙う何者かがいた場合、その人物だってドアをこじ開けることが出来てしまいます。無論、〈マスターキー〉がなければドアを突破出来てもケースの中の凶器を盗むことは出来ませんが」
レミリア「そうね。一見すると確かにそう思えるわね。ところで咲夜。宿舎エリアには誰にも使われていない『〈17人目〉の部屋』があるわよね? 紫に『あの場所は好きに使って貰っても構わない』と言われたら、貴方だったらどんな風に利用する? ただし『部屋の鍵は渡されず、鍵は開け放しのまま』だとしたら?」
咲夜「はい? それでしたら私なら生活全般で使用するものを部屋や倉庫からいくつか移動しておくと思います。鍵を掛けられないのでしたら、私個人として使うよりも休憩室として皆さんと共用で使うかもしれません。あるいは――」
レミリア「あるいは?」
咲夜「――深夜に誰も使うこともない、しかも他のプレイヤーの部屋にも非常に近い場所なら、犯行中誰かに見つかりそうになった時に身を隠す避難場所としても活用出来ますね。殺害対象のプレイヤーを一時的に監禁しておくことも可能です。バスタブ、あるいはベッドの下などに」
レミリア「あら、物騒なことを考えるわね。一体誰に似たのかしら?」
咲夜「お嬢様がおっしゃりたいことはわかりました。ジュラルミンケースの鍵が開けられないとはいえ、青娥の部屋に自由に出入りできる状態は非常に危険』ということですよね? ジュラルミンケースそのものは〈マスターキー〉を使うか、青娥の力を借りなければ開けることは出来ません。逆に言えばドアが開放された状態でしたら、『中身は取り出せないけどジュラルミンケース自体は持ち去ることは可能』ということですよね? 自らの所有しているケースとのすり替え、発見や回収が困難な場所へのケースの移動、あるいはプレイヤーの進入禁止エリアにケースだけを放り込んでしまう……。今私が思いついたプレイヤーへの妨害行為って全部、〈17人目〉だったら本当にやりかねないことですよね?
早苗「――あれ? そういえば青娥さんは最初の事件の後にドアの鍵を直すように申請していたみたいですけど、そもそも橙さんは『命令を受けた』って言ってたんすよね? 直したのって他でもない紫さんの命令なのでは? ゲームの運営だったら誰も何も言わなくてもドアを直してくれそうじゃないすか?」
紫「ええ。仮に捜査時間中になんらかの要因でドアが破壊されたら、私達が自発的に直すと思うわ。貴方達がゲームの外で寛いでいる間にでもね」
早苗「そうなんすか!? それでしたらあまり考えたくありませんが、今後事件が起きた際も捜査時間中に『ドアを破壊して』捜査することになっても問題ない、ってことになりません? つまり今回の事件に関して言えば、鍵を掛けておく意味ってないんじゃないですか?」
さとり「――確かに『ジュラルミンケースが保管されていない部屋』に対してはそう言えるかも知れません。しかし、先ほども話しましたが、私達が管理場所を選択しなければならない凶器は、これから四つ追加されるのですよ? その場合に凶器の再保管や鍵の回収前に青娥さんの部屋のドアを直して貰ったとしましょう。裁判終了後、ジュラルミンケースの『外側に』鍵が設置されている状態で部屋の鍵が締められることになりますが――それでも構いませんか? DAY08の朝に『一番最初に覚醒するプレイヤー』が、必ずしも私達にとって有益な選択をするとは限りません」
早苗「ゆ、紫さん。ドアは直しても、鍵は掛けないでおくってのは駄目ですか?」
紫「うふふ。どうしようかしら?」
青娥「早苗さん。端末破壊の件は忘れていませんよね? 紫さんに対してその手の交渉を持ちかけることって、私に同じような交渉を持ちかけてることと大して変わらない気がするのですが――そこはどう思います?」
早苗「で、ですよねー……」
青娥「うふふ。それともう一つ。『運営なら何も言わなくても備品を直してくれるはず』という考えからは、一つ重要な視点が抜け落ちています。それが何かわかりますか?」
早苗「へ? 自分が与えられた部屋なんですよね? 壊れた物とか失くした物は、プレイヤーに権利が残っている間なら運営に融通して貰えるんじゃないですか?」
青娥「はい。そのとおりですね。大抵の要求は通ると思います。例えば、そうですね。妹紅さんに聞いてみましょうか」
妹紅「なんだ?」
青娥「貴方は『自分から』ほぼ全ての部屋にあった備品を運営に返却していましたが――。仮にゲーム初日、手違いから備品がほぼなかった状態だったとします。その場合貴方はどうしましたか?」
妹紅「ん? まあ、別に必要ないから、家具を運んで貰ったりはしなかったと思う」
青娥「では、もう一つお尋ねしましょうか。備品が無いことに加えて『部屋の施錠が掛けられない』状態だったとしましょう。その時貴方なら運営に何かを要求しますか?
早苗「いや、流石にそれなら――」
妹紅「いいや? それだって運営には特に何も言わないと思うぞ? ドアのことを謝られたら――そうだな。うん、『別にそのままでいいや』って返すと思うな」
早苗「そ、そこは素直に交換して貰いましょうよ!? そんなの私が紫さんに言って無理にでも鍵を直して貰いますよ!?」
紫「ごめんね、早苗。ゲームの運営上、そういうことってちょっと出来ないのよねえ……」
早苗「『運営上』、ですか? なにかルールに引っかかりましたっけ?」
紫「『居住権』を持っている妹紅さん自身に『ドアを直さないでくれ』って頼まれたら、運営としてはそれに従うしかないのよ。本人以外のプレイヤーに頼まれてもドアは直せないのよねえ
早苗「まあ、それは確かにわかる理屈っすけど……」
青娥「如何でしょう? その理屈でいきますと、私の部屋のドアが何者かに壊された場合でも、私自身が運営に対してたった一言だけ、『ドアは絶対に直さないでください』とお願いすれば、裁判後も直すことは出来ないわけです。それどころか――〈香水〉と〈消臭剤〉が部屋で管理出来たことは、私自身のおかげだったということ、今ならわかって貰えません?」
早苗「え、ええ?」
青娥「もし私が拘束初日に『部屋のドアを取り外してください』と運営に申請したとしましょう。なんなら妹紅さんの部屋と同じ様に、私物も家具も処分していただくのもいいですね。そんなまっさらな部屋を目の当たりにして、それでも皆さんは『私の部屋で凶器を保管する』という手段を取りますか?」
ナズーリン「……取るわけないだろう」
こいし「ねえねえ。紫」
紫「あら、何かしら?」
こいし「文と勇儀の部屋って、今は誰も住んでないよね? 私が言えば部屋の鍵とかって貸して貰えたりする?」
紫「いいえ。住んでいるプレイヤーがいない状態の部屋の鍵は運営が保管しているけど、鍵は貸せないわね。その二つの部屋は今現在所有しているプレイヤーがいない状態になってるわね。部屋は開けてあるから、好きに寝泊まりして貰っても構わないけど」
こいし「なるほどなー。それじゃさ、もう一つ質問があるんだけどいいかな?」
紫「どうぞ?」
こいし「『〈17人目〉の部屋』の居住権って、誰が持ってるの? 運営が管理しているだけの状態?
紫「いいえ、居住権を持ってるのは〈17人目〉よ?
こいし「……へー」
ルーミア「えーと、〈マスターキー〉を使った場合と、こじ開けた場合の違いは……なんだかややこしいなあ」
霊夢「――はい、ルーミア。良かったらどうぞ」

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ルーミア「あ、ありがと……」

マミゾウ「なあ、てゐよ。仮にドアをこじ開けるしかなかった場合、今度は凶器をどの部屋に保管すればよいと思う?」
てゐ「どこ、って……」
マミゾウ「ふむ。お前さんからその答えがすぐには出てこないというだけで、犯人にとって部屋を施錠する意味は十分にあったと言える。わしだって彼女が真犯人とは考えたくないところじゃが……」
ナズーリン「そうなると最悪DDSルームで全プレイヤー交代で凶器を見張ることになるわけだが――ちょっと現実的ではない気がするな。仮に明日以降もゲームが続いたとして、会場からは更に人数が減るし、〈無意識〉を任意で解除できないこいしも見張りに参加することは難しい。多忙な咲夜に見張りを頼むのも酷だと思う。すると残りは何人になる? そもそも〈17人目〉が既に紛れ込んでいる状況で、交代制での見張りは危険だ。……てゐ、大丈夫か?」
てゐ「……」
咲夜「……あの、お嬢様。今現在青娥の部屋のジュラルミンケースの中には、何が入っているのでしょう?
レミリア「恐らくチルノを刺殺した時に返り血を浴びた服でしょうね」
咲夜「そんな決定的な証拠品が、あのケースの中に?」
青娥「もう取りにいけませんけどね」
レミリア「あの時あんたがチャチャッと回収してくれれば良かったんだけどねえ」
青娥「頼まれてもいないことは無理ですわ」
魔理沙「――あはははは! そうだ。確かに無理だ!!」
ルーミア「ま、魔理沙。どうしたの?」
マミゾウ「……」
ナズーリン「お、おい。大丈夫か?」
レミリア魔理沙。貴方、自分の部屋の鍵をここで出せる?
魔理沙「……鍵?」
 

24

魔理沙「……」
レミリア「どうなの?」
魔理沙鍵なら――ほら、ちゃんとあるぜ

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咲夜「そ、そんな!?」
てゐ「なんでさ! 霊夢の推理は間違ってたの!?」
レミリア「……」
ナズーリン「なんてことだ……。ここまで進んだ議論を根本から覆すなんて、とても……」
早苗「鍵、持ってたんですか。それなら魔理沙さんが犯人ではなかったんですね。良かった……」
魔理沙「いっやあ、なるべく黙って訊いてたが、本当に面白い推理だったなあ。マミゾウに私の失態をバラされた時は、ちょっとムカついたけど」
マミゾウ「……済まなかった」
魔理沙「別にいいさ。余計な疑いが晴れたんだし。私がチルノを殺しただって? で、霊夢はそれでも私を疑ってるのか」
霊夢「……もう、終わりにしましょうよ。魔理沙
魔理沙「あ? 何をだよ」
霊夢「――貴方が肩肘を張るのをよ。貴方は十分に頑張ったわよ」
魔理沙「はは。やっぱりお前も私がチルノを殺したと思ってるわけだ。それだったら、お前とはもう絶交だな」
早苗「え、え? ……そんな、冗談ですよね?」
魔理沙「こんな時に冗談を言うと思うか?」
ルーミア「だ、駄目だよそんなこと! そんなの、嫌だよ……」
てゐ「はいはい。絶交ね。子供みたいなことを言うねえ。魔理沙。そんなこと言ってもさあ。絶交なんてしたら、次の異変はどうするつもりなのさ」
魔理沙「は? 二度と行かねえよ、そんなもん」
てゐ「……え?」
魔理沙「先に言っておく。ここにいる連中、もう二度と異変を起こそうとしたり、あるいは異変に加担しようとは考えないほうがいいぜ? スペルカードルールがあろうがなかろうが、霊夢が――博麗の巫女が本気を出せば、ここにいる奴ら全員を無傷であっさり殺せるぐらいには強い。紫が直々に面倒を見ているからな」
紫「……」
魔理沙「――というわけでだ。私なんかいなくても、霊夢が幻想郷の秩序を守ることなんて簡単なんだよ。圧倒的な暴力でな。まあ、別にお前らと縁を切ろうとは思っていない。用があったら気軽に魔法の森を訪ねて来いよな!」
ルーミア「い、嫌だよ。二人が友達じゃなくなるなんて。う、ひっぐ、うぇえええええ……」
さとり「ルーミアさん……」
早苗「わ、私だって御免ですよ!? 絶交なんて言わないでくださいよ! これ、単なるゲームですからね!? それがこんなことになるなんて――」
魔理沙「そうかそうか。お前はこれが単なるゲームに思えるのか。紫みたいなこと言ってんなあ。さてはお前が〈17人目〉だな? だから私が盗んだ機密ファイルのことが心配になって、私と霊夢を尾行してたんだな
早苗「――え!?」
魔理沙「あっはっは! 冗談だよ! 適当に言ってみただけだ」
こいし「ね、ねえ。私って、魔理沙と友達だと思ってたけど、違うの?」
魔理沙「ん? 私はそう思ってるよ。でも、お前だって結局は霊夢に味方するんだろ?  私と霊夢のどちらかが死ぬとしたら、ここにいる全員が霊夢を生かすことを選ぶよな。ほら、どうなんだ? ここで今、私のほうにつく奴なんているのか?」
こいし「え、そんなこと言わないでよ。私、霊夢も、魔理沙も、大切な友達だって思ってるし、その――」
魔理沙「おいおい、無理すんなって。お前が考えていることなんてわかってんだから。ほら、さっさと処刑でもなんでも――」
 
バンッ!!
 
魔理沙「ん? なんだ?」
青娥「魔理沙さん――いい加減にしてください」
ルーミア「――青娥?」
青娥「貴方は私のような『悪党』とは違う。それなのに神聖な議論の場で友情を盾にすることは、人道に反していると思いませんか? 香霖堂を営む恩人の前で、人形の館で帰りを待つ親友の前で、妖怪の山で工学に励む盟友の前で、大図書館で知識を共有してくれる学友の前で、あるいは尊敬する師匠の前で――今話したことをそのまま口に出すことが、貴方には出来るのですか?」
魔理沙「人道、ねえ。どの口で言ってんだか」
青娥「なんと言って頂いても構いませんよ? 所詮私は豊聡耳様達を騙した、人間の屑に過ぎませんので。 ――お尋ねしますが、貴方は捜査時間終了直前に、どうして『あのような』証言をしたのですか?

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魔理沙「あ?」
青娥「魔理沙さんからすれば一見不利になるとしか思えないこの証言、これは明らかにルーミアさんに罪を擦り付ける為に口にした物ですよね? 言い争いの相手がわからなかった、というのは真っ赤な嘘です。それにこの証言は偽装現場の製作タイミングが23:30から23:45の間だと容易に特定可能な証言でもあります。魔理沙さん。貴方は交渉に応じて動いてくれたマミゾウさん達すら切り捨てて、自分だけ助かろうとしましたね?
マミゾウ「馬鹿な! そんなわけあるか! 魔理沙はそういう人間のはずは――」
青娥「では、どんな人間だと思っています? 少なくとも彼女は『強い』人間ではありません。それなら仲間を切り捨てられるはずがない。ところが彼女は『弱い』人間でもありません。だけどそれは、計画的に人を殺せる種類の強さとも違う。彼女は――『脆い』んですよ。外界で学校に通う普通の少女達と同じくらいには」
マミゾウ「――脆い?」
青娥「そうです。だから特定の状況下に置かれた時に、彼女は霊夢さんと違って踏み止まることが出来ないんです。つまり――目の前に状況さえ揃ってしまえば、誘惑に勝てない。一線を越えてしまうんです
マミゾウ「わしは、霧雨魔理沙という存在を見誤っていたと?」
青娥「そうなりますね。魔理沙さんに殺人を犯して欲しくなかったのなら、〈リボルバー〉を受け取った時点で霊夢さんに相談するべきでした。そこまでしなければ今回の件が無かったとしても、いずれ彼女は貴方の言う所の『義理』に従って、私をなんらかの方法で殺しに来たと思います」
妹紅「そうか。やっぱりマミゾウ一人に殺しを任せたことに罪悪感を覚えていたのか……」
マミゾウ「魔理沙との交渉は、わしの中では『凶器の提供を含めた殺人の依頼』として成立してたんじゃが……」
妹紅「だが――魔理沙はそう思ってなかったんじゃないか? それに魔理沙からすれば、私達が同意の上で片一方を殺したこと』なんて知る由もなかったんだからな」
青娥「それだけではなく、事件の動機には罪悪感以外にも――霊夢さんに対する『競争心』のようなものもあったのかもしれません。殺人という行為は私や妹紅さんのように『血生臭さ』に慣れていない人間にとって、様々な感情が心に去来するものでしょうから」
妹紅「それならなぜ、魔理沙は早苗とトラッシュルームを利用した時、凶器の部品を手放さなかったんだ? この部分は紛れもない『悪意』そのものとは違うのか?」
青娥「――私はそうは思いませんよ? チルノさんとトラッシュルームで二人きりになった時と同じです。『状況が揃ってしまったから誘惑に勝てなかった』だけなんだと思います。一人の人間の同じ体には、感情がいくつも同居します。『異変解決者でもある自分自身の手でゲームを終わらせるべきだという使命感』、『汚れ役を押し付けてしまったという罪悪感』、『複雑なトリックを成功させたという達成感』、『自らが殺人者になってしまったという絶望感』。そして、『自分を信用している人間を出し抜き、貴重な物を掠め取ることが出来たという、後ろ暗い快感』
妹紅「――っ!」
青娥「目を逸らさないでください。いいですか? 魔理沙さんが起こした今回の一連の事件は、彼女の精神構造と全く矛盾していないんです。彼女は『psychopath』でもなんでもありません。貴方が何億回と憎悪した相手もそうだったのでしょう? 同じように物を考え、穀物を食べて、心を打つ詩を詠むことも出来る、私達と何も変わらない存在だった。だからこそ貴方は『彼女』を『殺し切る』ことが物理的に難しいとはいえ、『追い返す』ことすら未だに叶っていない」
妹紅「……それは……今は……関係ないだろ…………」
青娥「――はい。確かに関係ありませんね。失礼しました」
霊夢「……」
魔理沙「くくく……青娥にプロファイリングされる日が来るとはな。でも私は殺しなんてやってないんだ。青娥の部屋の鍵なんて、あの時霊夢と一緒に捨てちまったんだから」
レミリア「……」
咲夜「お嬢様?」
レミリア「――ナズーリン『ゲーム初日に霧雨魔理沙に配られた鍵の場所』を〈ダウジング〉して
ナズーリン「いや、しかし回数制限が――」
レミリア「いいから。それで〈ダウジング〉はもう必要なくなるから。霊夢、最後の権利を貰ってもいいわよね?」
ナズーリン霊夢、どうする?」
霊夢「……お願い」
ナズーリン「! よし、わかった」
魔理沙「あーあ。最後の貴重な一回なのに。勿体ねえなあ」
ナズーリン「……よし、検索完了だ」
レミリア「結果は?」
ナズーリン「――魔理沙、その鍵はなんだ? 『ゲーム初日に霧雨魔理沙に配られた鍵の場所』で検索したら0件だったぞ
咲夜「! 今持っている鍵は、再発行された物なんですか!?
魔理沙「――ああ。そうだぜ? 少し前に無くしちまったから紫に頼んでな。みんなには言ってなかったか?」
レミリア「そう。それなら魔理沙、貴方自身が紫に申請して今ここに鍵の紛失記録を取り寄せて貰いなさい。まさか貴方の部屋の鍵が事件に関係するはずがないもの。出来るわよね?」
魔理沙「いいぜ。紫、頼む」
紫「本来は捜査時間じゃないから用意出来ないけど――今回は特別よ? ちょっと待ってて」
 

25

紫「お待たせ。これが貴方の鍵の紛失記録よ」
魔理沙「ああ、ありがとう」
早苗「ええと……昨日の朝食後に鍵の再発行が申請されているみたいですね?
ナズーリン――ん!? 例の香水事件が起きた直後くらいだぞ!?
魔理沙「ああ。確かにその付近に私は自分の部屋の鍵を紛失した。それは間違いない。だがそれとこれとは話が別だ。鍵のすり替えなんて行ってない。霊夢にはあの時青娥の部屋の鍵を渡した」
てゐ「魔理沙、もう諦めなって……」
魔理沙「え、何をだよ? それにしても――お前ら状況がわかってんのか?」
てゐ「え?」
魔理沙今私が容疑者になっているが、そうなると私の証言の効力が失われるよな? するとチルノの死亡推定時刻も変わってくる。DAY06の23:30から23:45の間にチルノが殺された可能性すら出てくる。三十分もあれば、妹紅やマミゾウにだって簡単にチルノを殺せるんじゃないのか?
マミゾウ「魔理沙……」
妹紅「お前――いい加減にしろよ?」
魔理沙「それだけじゃないぜ。証拠品の処分についてケースが使われた話が出たが、私が出来たことって、実際に鍵を処分した霊夢にも出来ることだよな? もう〈ダウジング〉は使えないだろうけど、霊夢が確実に鍵を処分したことを証明出来なければ私を一方的に容疑者扱いすることも出来ないぜ?
こいし「ちょっと待ってよ魔理沙! 霊夢が人を殺したって言うの!?」
咲夜「魔理沙! さっきも言ったじゃない! チルノを正面から殺せるプレイヤーなんて――」
魔理沙「ああ。覚えてるさ。〈氷細工〉を持つチルノを相手にすることは大半のプレイヤーには困難だ。だけどチルノは両手が塞がっていたんだろ? それなら誰だって無傷であいつを殺せてもおかしくはないぜ?
魔理沙「あ、そんな小難しいこと考えなくても、お前らは『ルールで』私を処刑することも出来るんだっけ? 怪しきは罰しろ、だっけ? なんだったっけ、忘れちまった。だったらそうすればいいんじゃないのか?」
レミリア「……紫」
紫「何かしら?」
レミリア「貴方は私達に何をさせたいの? これなら普通にみんなで殺し合ったほうが、遥かに気が楽なんだけど? 運営者は他ならぬ貴方自身じゃない。それなのに――どうして貴方はそんな悲しそうな目で魔理沙を見つめているの?」
紫「……」
霊夢「……わかったわ、魔理沙。だったら貴方の部屋の鍵については、もう何も言わない。ナズーリン。いいかしら?」
ナズーリン「なんだい?」
霊夢霍青娥の部屋の鍵』それがどこにあるのか『探し出して』?」
ナズーリン「――! ああ、いいぞ」
魔理沙「おいおい……。お前は今日既に三回の検索を済ませているだろ? 捜査時間中には『事件に関係ある証拠品』で検索し、裁判中は『〈リボルバー〉の位置』で検索し、さっきレミリア『ゲーム初日に私に配られた鍵の場所』を検索するよう頼んだ。もう能力を使えないだろ? 〈絶望〉でもない限りな」
ナズーリン――いや、レミリアに聞かれた件は〈ダウジング〉していない
レミリア「はぁ?」
魔理沙「う、嘘だ……」
霊夢裁判前、念の為にナズーリンと打ち合わせをしていてね。〈ダウジング〉の際にこっそり意思疎通する方法を考えたの
魔理沙「どうやって!?」
霊夢「それは後で教えるわ。ナズーリン、改めて言うけど、『探し出して』?」
ナズーリン「いいぞ。確か『霍青娥の部屋の鍵』だな。任せておけ」
魔理沙「……くそ!」
ナズーリン「……………………」
てゐ「……どうなのさ?」
ナズーリン「……………………」
てゐ「……ナズーリン?」
ナズーリン「…………魔理沙
魔理沙「…………なんだよ」
ナズーリン「…………霍青娥の部屋内に一件反応あり』、と出た」
てゐ「……そっか」
レミリア「――鍵がその場所にあるということは、本来有りえないわね」
こいし「それなら本当に――魔理沙がチルノを?」
魔理沙「……はは」
早苗「え?」
魔理沙「はははははは!!!」
ルーミア「ま、魔理沙?」
魔理沙「――負けなんて認めるかよ妖怪共が!!」
ルーミア「!」
さとり「魔理沙さん……」
魔理沙「仮にジュラルミンケースの中身がお前達が考えた通りの物だとするなら――ここにそれを持ってきてみろ! それを拒否して私を〈追放〉してもいいが――そんなの議論無しで私を〈追放〉するようなもんだぜ!? ほら、どうするんだ!?」
青娥「――魔理沙さん」
魔理沙「なんだよ!?」
青娥「これが何かわかりますか?」

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魔理沙「…………そ、そのジュラルミンケース。どうしたんだ? まさか、お前――
青娥「ええ。裁判直前に自室から持ってきたんですよ。魔理沙さんと霊夢さんが〈香水〉と〈消臭剤〉を保管していた物です
魔理沙「――で、でも〈マスターキー〉でも無ければ開けられないはずだ! 勇儀がいないんだから、こじ開けることも無理だ! 〈壁抜け〉で中身を取り出そうとするなよ!? みんなの前できちんと開けなければ、そのケースの中身であることを証明出来ないぞ!」
青娥「あら、御親切にどうもありがとうございます。そういえば鍵の方は見当たりませんでしたね。では運営さん――諸事情から鍵を持っていないのですが、今すぐ再発行して頂いても構いませんか? 私の部屋の鍵なのですから、今からでも申請可能ですよね?
紫「――ちょっと待っててね」
魔理沙「おい。やめてくれ。頼む。私は裁判に勝ちたいんだよ。みんなを助けるには――」
青娥「違う。今の貴方の心の大半を占めているのは、そんな殊勝な気持ちではないでしょう? 貴方は勇儀さんが受けたような処刑を、自分も受けることが恐ろしい――それだけです」
紫「はい――これが鍵よ」
青娥「ありがとうございます。では皆さん、開けてみましょうか」
霊夢「……」
ガチャ…
ルーミア空っぽの香水〉の瓶と、中身が残っている〈消臭剤〉の瓶。それと――ゴミ袋?
咲夜「折り紙や紐が少し湿ってますね。この中に氷像を削ることで出た欠片も捨てたのでしょうか?
ナズーリン「おい……これはなんだ!?」

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魔理沙「お……終わりだ……ああ」
ルーミアこれ、本物の血だよ……臭いでわかる
霊夢「――紫。投票に移りましょう。魔理沙もそれで構わないわね?」
魔理沙「……」
紫「ええ。そうしましょうか。それでは議論を終了し、犯人二人の指名を――」
妹紅「……」
 
ガシッ
 
魔理沙「ぐっ……」
妹紅「おい。巫山戯るなよ。お前がチルノを殺したのかよ? 幻想郷の外に出たことも無ぇ、●●●だって知らねえ、ケツの青い親不孝者のクソガキが!!」
マミゾウ「妹紅! やめんか!」
レミリア「気持ちはわかるけど、落ち着きなさい!」
魔理沙「あ、あ……」
妹紅「なんだその顔は!! 被害者面すんじゃねえよ! 弾幕ごっこみてえな妖怪に手加減して貰えるお遊戯が、ほんの少しうまいくらいでいい気になりやがって!! お前は地底でも山でも行って、高位の妖怪の首一つでも取ってこられるのかよ!? あぁ!? 私みたいなババアを殺すならともかく――なんでチルノなんだ!!! 私だって化物だろうが人間だろうが相当ぶっ殺して来てるが、まだ化物になる以前の、あの時の最初の殺人は千年経ったところで――」
魔理沙「…………」
妹紅「――クソ!」
早苗「魔理沙さん! ――気絶してますよ!?」
霊夢「熱も出てる!? 魔理沙! 大丈夫!? しっかりしなさい! まずは横にしないと! それから――」
てゐ「――そんなに騒がなくても大丈夫だよ。緊張の糸が切れたんだろうねえ。はいはい、ちょっと診せてね。うん、熱発してる。三点クーリングしよう。裁判場の隅に移動させて、少し寝かせてあげれば大丈夫。紫。氷枕と冷湿布を用意して。解熱剤も。今ルールがどうとか言ったら、ゲームが終わった後でぶっ殺すよ?」
紫「怖いわねえ。そんな顔しなくても、用意してあげるわよ」
てゐ「みんなも今のうちにもう一度休んでおくといいよ。裁判で疲弊してるでしょ?」
霊夢「――わかった。じゃあ、お願いね。てゐ」
てゐ「『お願い』? 『探し出して』じゃなくって?」
霊夢「……気付いてたの?」
てゐ「ナズーリンに許可を求められた場合の『言い回し』と――後は、そうだなあ。『瞬きによる検索件数の指定』って所?
霊夢「……当たってる」
ナズーリン「私が提案したんだがな。あまり複雑すぎるのもよくないと思って、そんな感じの暗号で意思疎通していた」
てゐ「いくらなんでも簡単すぎ。あんな暗号、ぜんっぜん駄目だよ。下手すると魔理沙に気付かれてたよ?」
咲夜「お嬢様、これは――」
レミリア「勝負あり、ね」
 

26

【宿舎エリア・魔理沙の部屋】DAY06 23:45
 
魔理沙「あー、遊んだ遊んだ。とりあえず早苗と仲直り出来て良かったなあ……」
魔理沙「……」
魔理沙(仲直り、と言えば――)
魔理沙チルノと喧嘩してた声、多分ルーミアだよな?
魔理沙(……たまには喧嘩することもあるか。子供同士だもんな)
魔理沙……少し様子を見に行ってみるか?
魔理沙「――いや、駄目だ駄目だ! マミゾウが妹紅を殺すのに動いてるんだもんな」
魔理沙「……」
魔理沙(でも、うーん……。やっぱり気になるなあ)
魔理沙(――ちょっと見に行ってみるか)
 
【宿舎エリア・倉庫】DAY06 23:47
 
チルノ「うぅ……ルーミアちゃんなんか……」
コン コン
チルノ「……? 誰?」
ガチャ
魔理沙「おーい。まだいるのかー?」
チルノ「魔理沙?」
魔理沙「あれ、チルノだけか。 ――泣いてたのか?」
チルノ「魔理沙……あのね、私ルーミアちゃんと喧嘩してね……その」
魔理沙「そうかそうか。まあ喧嘩する程仲が悪いって言うだろ。そう気にすんな」
チルノ「……やっぱりそうなのかなあ」
魔理沙「おいおい、冗談だって。何があったんだよ」
チルノ「魔理沙……わたし……ルーミアちゃんにひどいこと言っちゃったよ…………ひっぐ……いつも湖でやってるような喧嘩じゃなくて……もう……絶交しちゃうかも知れない……でも……ルーミアちゃんだってひどいこと私に……」
魔理沙「……チルノ、ちょっといいか?」
チルノ「……なに?」
魔理沙「昨日私は、この会場で最も信頼しているプレイヤー二人と意見の相違があったんだ。片方とは険悪な状態になっちまったし、もう片方とは覚悟を決めてから相当やばい交渉を持ち掛けたんだけど――あっさり断られちまった」
チルノ「……交渉?」
魔理沙「ああ。会場にいるみんなの為に行ったことだ。だけど恐らくあいつからは――ゲーム中に二度と信用されなくなっただろうな」
チルノ「――魔理沙も、喧嘩しちゃったんだね」
魔理沙「ああ。厳密には喧嘩ともまた違うんだが――概ねそんな感じだ。私の言いたいことはな。お前とルーミアに何があったのかはわからないが、明日には仲直り出来るってことだ。現に私だって片方とは、一応元の関係を取り戻せたぞ?」
チルノ「――明日の内に? 仲直り? 本当?」
魔理沙「ああ。お前達なら大丈夫だ。もしルーミアと話し辛いなら、仲を取り持ってやってもいいぜ? とにかく、マジでさっさと和解しておけよな。いずれ必ず、生き残っている全員で力を合わせないといけない状況が来る。私はそう考えている。その時私は居ないかもしれないがな」
チルノ「……魔理沙強いね」
魔理沙「強い? 私が?」
チルノ「……ううん。なんでもない。話を訊いてくれてありがとね。――実は魔理沙に付き合ってほしい所があるんだ。飾り付けで出たゴミを処理したいから、一緒にトラッシュルームまで来て貰っていい?
魔理沙「ん? ああ、構わないぜ。――って、おいいいいぃ!? この飾り付け、お前がやったのか!?」
チルノ「お、おかしいかな?」
魔理沙「正直言ってかなり個性的だが、なかなかその――クールなんじゃないか? 氷精だけに」
チルノ「あはは。ありがとう。……ちょっと用意するから待ってて」
 
【宿舎エリア・トラッシュルーム】DAY06 23:50
 
魔理沙「じゃ、早めに頼むぜ」
チルノ「任せて! とりあえずあたいのメダル、一枚残しで全部預かってて貰える?」
魔理沙「任せとけ。――あれ? ずいぶんメダルが少ないな。結構散財したのか?」
チルノ「うん。飾り付けに使ったからね」
魔理沙「そうだったのか。おい、間違ってもてゐからメダルを借りるなよ? 後でぼったくられるぞ」
チルノ「あはは。実は借りたことあるんだよね。うん、わかった。今度からそうする。ええとメダルを入れて――」
チャリン……
ガララララ……
魔理沙「開いたな。よし、行って来い」
チルノ「うん、行ってきます!」
魔理沙「いってらー」
チルノ「ええと、真ん中が焼却炉で、ゴミ箱は確か――
魔理沙「……ん、おいチルノ? 部屋の中央に落ちてるのなんだ?
チルノ「……え? ええ、と!? 魔理沙! 見て!」
魔理沙なんだこれ……極上の凶器の――〈ナイフ〉?
チルノ「これ、誰かの血が付いてない?」
魔理沙「! 本当だ! 何があったんだ!? ――隣にあるのは、厨房とかにあるキッチンナイフか?」
チルノ「こっちは全然血が付いてないね? それならどうして――」
魔理沙「駄目だ! それに触るな!!」
チルノ「え!?」
魔理沙「私達のいるこの場所――恐らく殺人事件の現場だ! どこかに死体があるはずだ!!」
チルノ「え、死体って、どこに? 誰が殺されたの?」
魔理沙「それはまだわからない。だけどアナウンスが流れない以上、まだ誰にも見つかってないはずだ。だったら〈ナイフ〉に一切触らずに、現場を保存しないと駄目だ!
魔理沙(いったいどうなってる!? ここでマミゾウが妹紅を殺したのか? ――だけど有り得ない! マミゾウは〈リボルバー〉を持っているはずなのに、なんで〈ナイフ〉まで落ちてるんだ!? あいつはもうDDSルームは使えないはずだろ!?)
チルノ「で、でも――」
魔理沙「まずはトラッシュルームを奥まで調べるぞ。チルノは先に入り口まで――」
ガララララ……
ガシャン!
魔理沙「――クソッ! やっぱり駄目か! 確かメダルを使ったプレイヤーしか最奥には行けないんだよな。よし、チルノ。お前が捜査しろ。私が入り口のほうから指示を出す
チルノ「う、うん!」
魔理沙「よし、ここまで戻れば大丈夫、かな?」
ガララララ……
ガシャン!
チルノ「え!? 一番手前のシャッターも下りるんだっけ!?
魔理沙「ああ。そういう仕組みなんだよな、この部屋。だけど問題ない。チルノ、トラッシュルームの奥に進んでみてくれ!
ガララララ……
チルノ「あ、今度は開いたね。じゃあ、進むよ?」
魔理沙「ああ」
ガララララ……
ガシャン!
チルノ「え!?」
魔理沙「大丈夫だ。最奥のシャッターが下りただけだ。チルノ、声はそっちに届いてるな!?」
チルノ「届いてるよ! 室内でかなり反響してるし!」
魔理沙「そうか。それならまずは焼却炉のボタンを見てくれ。赤い色の『燃焼ボタン』と、緑色の『キャンセルボタン』だ。どちらかを押さないとお前はこちら側に戻って来られない

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チルノ「うん! 確かにあるね」
魔理沙適当な物――例えばチルノが今持っている、ゴミの入った袋でも入れて“燃焼ボタン”を押せば、シャッターが開き、こちら側に戻って来られる。だけどそれだけは絶対にやめろ。なんでかわかるか?」
チルノ「ええと――」
魔理沙ここが本当に事件現場なら、焼却炉の中に何らかの証拠品が残ってる可能性が高いからだ。それなのに今焼却炉を使うのは、非常にまずい。一緒に証拠が燃えちまうからな。これから霊夢達と共に現場を捜索することになるから、下手すると私達は、証拠品を処分しようとした容疑者になる
チルノ「ええ!? それはやだなあ……」
魔理沙「大丈夫だ。私はともかくお前はみんなに信用されているから、それなら互いのアリバイを証明出来る」
チルノ「それなら、左奥にある方のゴミ箱は? レミリアちゃんがゴミ捨てに使ってるのを見たことがあるんだけど……」
魔理沙「日常で出たゴミを捨てる方だな。知ってるよ。ゴミ捨てをする時にメダルを預かって貰うにしても、焼却炉を利用すればゴミの処理をするたびに一枚のメダルを消費しちまうからな。咲夜とレミリアは調理や清掃で出たゴミを処理する際に、いつも左奥のゴミ箱にゴミを捨てて、それからキャンセルボタンで外に出ている。そうすればメダルも節約出来るしな
チルノ「じゃあこっちに――」
魔理沙「だけど、そっちにゴミを捨ててくるのもやめろ。ゴミ箱を開けて中を確認しなくてもいい。凶器の中には〈リモコン爆弾〉や〈ピアノ線〉もあるから、なんらかのトラップが仕掛けられている危険性もある。それは二人以上で、シャッターのすり抜けが可能なプレイヤーが一緒に行うことだ。トラッシュルームを出たら、お前は入り口で見張っていてくれ。私が霊夢を呼んでくる」
チルノ「うん。ゴミ箱も確認しなくていいんだね? だったら今から私はどうすればいい?」
魔理沙ゴミ箱と焼却炉の前に、何か見つからないか?
チルノ「――ゴミ箱の前辺りに、血溜まりがある!
魔理沙「そうか! 血の量はどうだ!? 気分が悪くなったら離れていいぞ!?」
チルノ「ありがとう! でも大丈夫だよ! ――ええと、血溜まりは確かに大きいけれど、もし誰かの血だとしても、致命傷、って程じゃないように見えるかなあ……」
魔理沙「そうか――一応聞くが、私くらいの体格の人間なら助かってそうな血の量なのか!?
チルノ「うん……そうだと思う。永遠亭の人達じゃないから自信ないけどね! でも私がこの量の血を流したら恐らく――
魔理沙「よし! もう十分だ! チルノ、焼却炉付近を調べ終わったら、ゴミ袋を持ったまま、キャンセルボタンを押して戻ってこい!
チルノ(そういえば……)
チルノ(ルーミアちゃんは藍を殺そうとしていたみたいけど、武器も無いのに殺しには行かないよね?)
チルノ(紫にスキマで案内して貰った霊安室。氷の保管が可能な気温や湿度が保たれている場所後で一度だけみんなに氷の彫像を見せたかったから直接氷像を運んだんだっけ
チルノ(霊安室の保管庫の一つに――龍の彫刻は保管されている。〈水晶玉〉も一緒に。自分で肌見放さず持っていても、もし取っ組み合いになったらルーミアちゃんに奪われちゃうし
チルノ(――そういえば、氷像と〈水晶玉〉は無事かな? ナズーリンの〈ダウジング〉なら場所を特定出来る。ナズーリンが盗んでいくとは思えないけど……)
チルノ(――もう、保管は無理かな。完成した氷像をみんなに見せたかったけど、氷像も〈水晶玉〉も処分しないと
チルノ(この血溜まり……この量の出血だと、私だけじゃなくルーミアちゃんも危険だよね?)
チルノ(そういえばルーミアちゃん、私が〈水晶玉〉と氷像を隠して、倉庫で喧嘩してから――どこに行ったんだろ? 部屋に戻ったのかな?
チルノ(もし霊安室の存在に気付いて、氷像と〈水晶玉〉を保管庫の一つから探し当てていたとしたら?
チルノ(――よし、氷像が無事ならルーミアちゃんの無実を証明できるし、氷像と〈水晶玉〉を持ってこよう! 魔理沙が一緒に居るなら大丈夫だ!
魔理沙「おーい! どうした立ち止まって! 早く戻ってこい!」
チルノ「……ごめん、魔理沙! すぐに戻ってくるから、そのままそこにいて!
魔理沙「え?」
チルノ「紫! 今すぐ来て!
紫「はいはーい。……ふわぁ、寝不足になりそうねえ」
チルノ「霊安室まで案内して!
紫「ええ。いいわよ」
魔理沙「え? え? 何がどうなってるんだ……」
 
魔理沙(……)
魔理沙(……ん?)
魔理沙(あれ? トラッシュルームの端末が、使えるようになってる?
魔理沙(そうか。チルノが部屋からいなくなったから、メダル使用前の状態に戻ったんだな
魔理沙(あはは。このままメダルを入れて奥まで進んだら、戻ってきたチルノを驚かせることが出来るな
 
ドクン……
 
魔理沙(…………あれ?)
ドクン……ドクン……
魔理沙部屋には何者かが残していった凶器がある。誰かが私より先になんらかの事件を起こし、それが今もまだ進行中なのは間違いない。これならもしかして――
ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……
魔理沙――もうひとつの事件に乗じて、完全犯罪が可能か? この状況でチルノを殺せば、密室を作ることも可能か?
ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……
魔理沙冷静に考えてみると――この状況全部をマミゾウが作り出した可能性もあるのか? だけど仮にマミゾウが残した物だとしても――私さえ勝ち抜ければ、みんなを救えるよな?
 
 
ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……
 
魔理沙(……)
 
チャリン……
 
魔理沙(……)
 
ガララララ……
ガシャン!
 
魔理沙(……)
 

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魔理沙(………………………………………………これなら、霊夢に勝てる)
 
チルノ「――よいしょ、っと」
 
ガララララ……
ガシャン!
 
魔理沙「……」
チルノ「ごめん! お待たせ! って、わっ!? 魔理沙じゃん! びっくりした~。どうやってここまで来たの!? びっくりするじゃん。危うく氷像を落とすところだったよ」
魔理沙「……ああ。驚かせてやろうと思ってな。もう用事は済んだか?」
チルノ「――うん! 紫。夜遅くにありがとうね」
紫(…………!!! この状況は――まさか!!?)
魔理沙「私からもお礼を言うよ。ありがとう、紫。――なあ、チルノ。この氷像、そこそこ重いな」
チルノ「だよねー。氷で出来ていても、その重さだと――え? え? あれ、どうして、魔理沙の手に」
ガシャン!
チルノ「な、なんで――」
魔理沙〈盗ませて〉貰った。――悪いな
ザクッ…
チルノ「……あ」
ザクッ… ザクッ… ザクッ… ザクッ…
チルノ「……あ、まって、まり、さ……」
ザクッ… ザクッ… ザクッ… ザクッ… ザクッ… ザクッ… ザクッ… ザクッ… ザクッ… ザクッ… ザクッ… ザクッ…
 
魔理沙「……」
チルノ「かはっ……ぐぅ……はあ……うあ…………」
紫「……」
魔理沙「――なに見てんだよ? 殺すぞ?」
紫(……魔理沙の、こんな眼。初めて見るわね)
紫「――そう。ごめんなさい」
 
魔理沙「……」
魔理沙「あ、あ、あああ」
 
魔理沙「ああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
魔理沙「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
魔理沙「ごめん!!! チルノ!!! ごめんなあああああああああああ!!! 許してくれえええええええ!!!!!」
 
チルノ「……ま……まりさ……あの…………」
魔理沙「そんな眼で見ないでくれ……わたしは……わたしは……」
チルノ(ゲームに勝って……みんなを助けたかったんだよね……? ルーミアちゃんと同じだね……。だったら……そんな辛そうな顔しないで……って言おうとしても………もう…声が……出ない……)
カチッ カチッ カチッ
魔理沙あれ!? ボタンが反応しない! チルノがまだ生きているからか!? でも服に返り血が……処分……しないと…………それなら、とどめを刺さないと……
チルノ「……」
魔理沙む、無理だよ……そんなの……私には…………
魔理沙ええと、服をここで燃やさないと――いや駄目だ、今更メダルを調達するなんて……無理だ……じゃあ、どこに捨てれば
魔理沙そ、そうだ。焼却炉! マミゾウが残した物が何か一つは――

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魔理沙「あ、あった! これを焼却炉の下に置いて……
魔理沙チルノが持ってた氷の塊みたいなのは――私が落としてバラバラにしたから、回収は無理か……
魔理沙急がないとレミリアか咲夜がゴミを捨てに、ここに来る。ああ……何からどうすればいいんだよ」
チルノ(魔理沙……なんだか凄く可哀想……大丈夫だよ……私は……魔理沙を告発しない……魔理沙さえ勝ち上がればそれで……みんなを……)
チルノ(……あ)
チルノ(……それじゃ……駄目なのかな……?
チルノ(魔理沙の持ってる〈ナイフ〉……最初から血塗れだったってことは……誰かが既に使った後……だよね? ……さっきもそう話したし……
チルノ(もし……物凄く悪いやつがゲームで勝ち抜ければ…………魔理沙が……文姉ちゃんや勇儀姉ちゃんや私を生き返らせたところで……みんな殺される…………?
チルノ(それ、なら……誰かに……私を殺したのが誰かを伝えないと……
チルノ(でも……誰に……? ……どうやって?)
チルノ(……そうだ!)
チルノ(魔理沙……ごめん…………妹紅………………後は頼んだよ…………)
ガシャン
魔理沙「な、なんだ!? 何が割れた!?」
チルノ「……」
魔理沙「……おい、チルノ? お、おい……チルノ……ああ……もう……死んでるのか……私が……あああああああああああああああああああああああ!!」
 
魔理沙「はぁ……はぁ…………」
魔理沙「ん? これは――」

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魔理沙……最後の力を振り絞って水晶玉を割ったのか? 私に証拠品を隠蔽されないようにする為? それだけか?
魔理沙――『隠蔽』? そうだ。チルノは他にも何か残しているかも知れない。確認しないと、駄目だよな? まず部屋の鍵を死体から――
チルノ「……」
魔理沙い、いや……無理だ! 死体を調べるなんて私には!
魔理沙……せめて飾り付けの入ったゴミだけでも回収していくか。急いでここを離れないと!)
魔理沙(――そうだ! メダルは!? ええと、チルノがまず一枚のメダルを使ってトラッシュルームを利用して、それからスキマで移動したから、その分は消費されたんだよな? それで、次は私がメダルを全投入して、ここに入った。だから『燃焼ボタン』か『キャンセルボタン』、このどちらかを押さないと私は出られない
魔理沙焼却炉を使えば着ている服やゴミ袋を全て処分できる。だが、メダル0枚では絶対にみんなに疑われる!
魔理沙よし――とりあえず『キャンセルボタン』でトラッシュルームを出よう殺しに使った〈ナイフ〉は――そのまま中央に戻しておくか
 
【宿舎エリア・魔理沙の部屋(シャワー室)】DAY07 00:00
 
ザーーーーーーー
魔理沙「大丈夫……大丈夫だ」
魔理沙(――こうやって血をしっかり洗い流しておかないと、後でルーミアに臭いで気付かれる
魔理沙アリバイ作りは無理だが――証拠品の隠し場所には心当たりがある
魔理沙(これから行う計画――落ち着いてやれば、10分から20分あればなんとかなる
魔理沙(――やってやる!)
 
【宿舎エリア・魔理沙の部屋】DAY07 00:05
 
魔理沙「紫! 今すぐ出てこい!」
紫「――魔理沙。大丈夫?」
魔理沙「これをどうにかして欲しいんだ!」
ジャラ…
紫「それは巾着袋ね。メダルが入ってるみたいだけど
魔理沙そうだ。このメダルを全て新品に替えろ! チルノから預かったメダルが証拠品に引っかかる! 所有権は私に移ってるから交換可能なはずだ!
ジャラ…
魔理沙「え? 袋が勝手に――」
紫「はい、袋の中のメダル、全部新品に交換したわよ? それでそのメダルは検索には引っ掛からないわ
紫(気付かなかったら気付かなかったで、証拠品の判定なんて消すつもりだったけど。裁判がつまらなくなっちゃうし
 
ピンポンパンポーン
『死体が発見されました! 一定の捜査時間の後、学級裁判を開きます!』
 
魔理沙「――クソ! 早すぎる! もう死体が見つかったのかよ!」
紫(あーあ。妹紅さん。三人に見られちゃったのね
魔理沙チルノがスキマで向かった場所を調べる余裕は無いか。だったら次は――」
 
【宿舎エリア・青娥の部屋】DAY07 00:08
 
魔理沙「紫、このゴミ袋に入っている物を確認してくれ」
紫「あら? 返り血を浴びた服と、チルノさんが飾り付けで出したゴミね
魔理沙なあ、このゴミ袋一つで、証拠品の判定は一つにならないか?
紫「うーん……」
魔理沙「頼むよ! これが成立しなければ、私は証拠品を隠せないからおしまいだ! 急いでくれ! もう時間がない!」
紫「うーん。そのゴミ袋はチルノさん自身が用意した、言うなら事件とは無関係のゴミね。大目に見て、血のついた服は全てワンセットで証拠品として判定するわ
魔理沙「――本当か!? ありがとう! 助かる!」
紫「だけど――その鍵はきちんと証拠品として判断するわよ?
魔理沙「部屋の鍵か。それなら問題ない。まず、引き出しを外してから――机の下に
紫「へえ。そんな所に。それなら大丈夫そうね」
魔理沙「――もう、みんな部屋から出てきてるはずだよな。慎重に戻らないとな」
紫「それはいいけど――部屋の施錠はどうするのよ?
魔理沙「そんなのどうでもいいだろ! 他の証拠品を見られるよりはマシだ!」
 
【宿舎エリア・魔理沙の部屋】DAY07 00:10
 
魔理沙「なんとか間に合った、のか?」
魔理沙「……」
魔理沙(恐らく問題ない。私はほとんど証拠品を残していないからな)
魔理沙あの〈ナイフ〉は一体なんだったんだ? マミゾウは〈リボルバー〉を使わなかったのか? 昨日の今日だし、動くとしたらマミゾウしか考えられないが……
魔理沙(クソ……捜査や裁判の様子を見ながら証言するしかないか
魔理沙「よし、そろそろ部屋を出るか」
 
【宿舎エリア・廊下】DAY07 00:12
 
魔理沙「おい、何があったんだ?」
てゐ「――魔理沙も今起きた所?」
魔理沙「ああ」
ルーミア「ねえ。霊夢。大丈夫?」
霊夢「……ええ」
魔理沙「おい、霊夢どうしたんだよ。何があった?」
霊夢「よく聞いて。さっき、トラッシュルームで――」
 

27

投票内容(藤原妹紅は死亡後の為投票権無し) 
藤原妹紅を殺したと思われる人物は誰か?
二ッ岩マミゾウ、12票。他0票。
②チルノを殺したと思われる人物は誰か?
霧雨魔理沙、12票。他0票。
 
結果
〈クロ〉二名の特定に成功。
『超高校級の幻惑者』二ッ岩マミゾウ→処刑。後に〈追放〉。
『超高校級の泥棒』霧雨魔理沙→処刑。後に〈追放〉。
『超高校級の不死者』藤原妹紅→裁判終了後に〈追放〉。
 生き残った他のプレイヤーはゲームを続行。
 

28

【???】DAY07 11:00
 
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「…………………………あー……」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………ここ、どこだっけ?」
早苗「……………………………………………………………………あ、私の家か」
 

29

【宿舎エリア・魔理沙の部屋】DAY00 16:31
 
トントン
魔理沙「――誰だ?」
早苗「まーりささん! あーそびましょ!」
ガチャ
早苗「じゃじゃーん! 遊びに来ましたー」
魔理沙「……ああ」
早苗「テンションひっく! どうしたんですか? そんな辛気臭い顔して」
魔理沙「当たり前だろ。これ、殺人ゲームだぞ?」
早苗「それはそうですけど――」
魔理沙「もしかしたらと思ったんだけど――部屋のどこにもマジックアイテムが無い。紫の奴、ミニ八卦炉まで取り上げやがったぞ」
早苗「私の御幣は取られてなかったんですけど、神力がごっそり抜けちゃってる感じで……」
魔理沙「それなら、霊夢も同じ感じだな。参ったなあ。この『事件』。どう考えても『異変』として処理するタイプの物じゃないよなあ。首謀者は紫だし」
早苗「『事件』? 『異変』? 流石にそれは言い過ぎでは?」
魔理沙「馬鹿言うなって。人が死ぬ危険性があるんだぞ? 早苗は紫から何か訊いてるか?」
早苗「いいえ、全く。紫さん、何を考えてこんなゲームを始めたんですかね」
魔理沙「それはこっちが訊きたいな」
早苗「そういえば、魔理沙さんって何の能力を割り当てられたんすか?」
魔理沙「ええと、『超高校級の泥棒』って奴だな」
早苗「泥棒? どんな能力ですか?」
魔理沙「早苗、部屋に何があった?」
早苗「ええと、メダルとか、ルールブックとか――」
ジャラ……
魔理沙「ああ。私と同じ枚数だな」
早苗「え!? あれ、いつの間に!?」
魔理沙「はは。こういう能力さ」
早苗「すっご! 手品みたいっすね」
魔理沙「いや、自分でも驚いてるよ。こんな簡単に盗めるなんて。――早苗の能力は?」
早苗「――私のメダルを、床にチャラチャラって落としてみてくれません?」
魔理沙「――え、こうか?」
チャリン…… チャリン……
早苗「7枚」
魔理沙「え?」
早苗「『7枚のメダルで表が出ますように』って念じたんですけど、合ってます?」
魔理沙「――本当だ! 確かに7枚ぴったり表だ! お前こんなこと出来たのかよ!」
早苗「まあ、ゲームで割り当てられた能力ですけどね」
魔理沙「あー。びっくりだ。他のプレイヤーの能力にも少し興味が湧いてきた」
早苗「魔理沙さん。ちょっと元気出ました?」
魔理沙「え? うん、まあ……」
早苗「ほら! どうせなら会場を探検しましょうよ! ほら、行くっすよ!」
魔理沙「お、おう! そうだな。元気出さないとな」
 
【娯楽エリア・娯楽室】DAY00 22:07

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魔理沙「あー、クソ! また最後の最後で外した!」
早苗「イエーイ! 私の勝ちー!」
魔理沙「そもそも全然ゼロに届かないぜ。削りきれる気がしない」
早苗「ルールを変えます?」
魔理沙「いーや、もう少しこれでやる。それにしても意外と難しいな。早苗、よくこんなの当たるなあ」
早苗「要は慣れっすよ。慣れ。幻想郷に来る前は、ネカフェに置いてあったからよく遊んでたんすよ」
魔理沙「学校の友達と行ってたのか?」
早苗「……一人カラオケに飽きた時とかにやってました」
魔理沙「す、すまん――」
早苗「あ、謝らないでくださいよ! なんだかめっちゃ惨めじゃないっすか!」
魔理沙「え? 『正直ちょっと笑いそうだった』って続けるつもりだったんだが?」
早苗「……魔理沙さん。こっちはクッソ強い凶器持ってるの、忘れないでくださいね?」
魔理沙「……くく。そういえばそうだったなあ」
早苗「な、なんすか?」
魔理沙「さーてな」
早苗「次の先行はどちらにします? ミニゲームとかやってみますか?」
魔理沙「それなら次は私が先攻で。もう一回501で――」
ガチャ
勇儀「ん? この部屋って何だ? 賭場でも開いてるのか?」
早苗「あ、勇儀さん!」
魔理沙「どうしたんだ、こんな所で」
勇儀「おう! お前ら一緒か!」
早苗「勇儀さんは一人っすか?」
勇儀「ああ。ちょっと散歩をしてただけだ」
魔理沙「――おわっ! 酒臭っ!」
勇儀「だっはっは! だけどここってあんまり強い酒無いんだよなあ。味はそこそこ良いんだけどよ」
魔理沙「酒ばっかり飲んでると、メダル足りなくないか?」
勇儀「ははは! からっけつだな! 宵越しの金なんて持たないタチなもんで! ――ところで何やってたんだ?」
早苗「ええと、的当てっすね。二人で交互に投げて点数を――」
勇儀「つまり、勝負事だな? どうだ! 二人の残りのメダル全部賭けて、私と一戦交えないか? 私が負けたら、そうだなあ。明日の朝に配られるメダル全部やるよ!」
魔理沙「へえ。面白そうだな」
早苗「勇儀さんとですか!? 絶対やばいですって!」
魔理沙「大丈夫だって! ――いいか、早苗。カウントアップ形式で勝負するんだよ。ハンデとして点数を二人の合計点にして貰えばいい。早苗も素人のふりをするんだ」
早苗「勇儀さん既に酔っ払ってますし、それならまあ――」
魔理沙「だろ?」
勇儀「おーい。さっさとやろうぜ。なんなら二人掛かりだって構わないぜ」
魔理沙「! よし来た! 勝負しようぜ」
 
魔理沙「う、嘘だろ? このルールでなんで負けんだよ……」
勇儀「わはははは! 私の勝ちだな!」
早苗「スコア1392点……で、出鱈目過ぎる……」
勇儀「なっさけねえなあ。二人で1200点くらいは取れるだろ?」
早苗「む、無理ですってそんなん!」
勇儀「そんじゃ、メダルは貰ってくぜ~。まだBARってやってんのかなあ」
魔理沙「お前――いつ酔いが覚めたんだ?」
早苗「あれ? そういえば今全然酔ってないような――」
勇儀「さーてな」
魔理沙「勇儀が一枚上手だった、ってことか」
勇儀「そういうこった。じゃあな――あ、そうだ」
魔理沙「なんだ?」
勇儀「一緒に遊んでくれた上に、メダルまでくれたんだ。ちょっと情報でも置いて帰るか。――さっき、新聞屋の部屋に、青髪の姉ちゃんが入るのを見た
早苗「青娥さんが、射命丸さんの部屋に?
魔理沙「――二人は何をしてたんだ?」
勇儀「わからん。だが二人の動向には注意しろ。この二人はゲームに積極的に参加するタイプだからな
早苗「二人のどちらかが――殺人を起こす?」
勇儀「どうだかな。ま、お前らなら大丈夫さ。じゃあな」
ガチャ
魔理沙「――私達も何か行動を起こすべきかもな」
早苗「行動? とりあえず明日からにしませんか」
魔理沙「ああ。状況を少し見守ろう」
 
【娯楽エリア・スーパーマーケット】DAY01 19:13
 
早苗「魔理沙さん。本当に、やるんですね?」
魔理沙「当たり前だろ。というか――ゲームそのものを無力化するには、これしかないだろ
早苗「うまくいくといいんすけどね」
魔理沙「大丈夫だって。青娥や文が積極的に動いている所で、結局はまだ日にちが経ってないんだから。つまり――どのプレイヤーもまだゲームに慣れてないんだよ。ほら、時間潰ししなくちゃいけないんだから、面白そうなボドゲ選ぼうぜ」
早苗「あ、夜食も必要じゃないっすか?」
魔理沙「だな。一緒に買ってくか。だけど――あんまり贅沢出来そうにないなあ」
早苗「ですねえ。深夜に二人でメダルを14枚も消費することになりますからねえ
 
【宿舎エリア・廊下】DAY02 02:05
 
魔理沙「……よーし。流石にみんな寝てるよな」
早苗「……」
魔理沙「どうした?」
早苗「最後に確認しますよ? 私達、この計画に何も『見落とし』なんてありませんよね?
魔理沙――どういうことだ? 〈マスターキー〉だって先に盗み出しといたぜ?
早苗「確かにそれと、〈盗み〉と〈奇跡〉さえあれば今からやることは可能ですけど――これが成功したとしても、更に運営と一戦交えることになると思うんです。そこはどう思います?
魔理沙「へえ、そこに気付くか。流石だな」
早苗「え?」
魔理沙「大丈夫。紫と論戦になっても問題ない。何を言ってくるかはだいたい想定してある」
早苗「それなら、もう止めませんよ。で――誰の部屋から行きますか?」

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魔理沙まずは内側の部屋から見ていくか。早苗の部屋の隣――レミリアの部屋からだな
早苗「わかりました。タイミングは、私が教えます」
魔理沙「そうか。わかった」
早苗「……」
魔理沙「……」
早苗「はい。今なら大丈夫です。多分」
魔理沙「多分、ってなんだよ。ずっこけそうだったよ」
早苗「ほら! 急いでください!」
魔理沙「はいはい」
 
【宿舎エリア・廊下】DAY02 02:15
 
早苗「……ずいぶん時間が掛かってますね」
ガチャ
魔理沙「……」
早苗「魔理沙さん!」
魔理沙「早苗、まずいことになった」
早苗「ま、まさかレミリアさんに見つかったんすか……」
魔理沙「そうじゃない。どこにも無いんだよ
早苗「無い?」
魔理沙ジュラルミンケースはあったんだよ。だけど――凶器は入ってなかった
早苗「な!? どういうことっすか?」
魔理沙「考えられる可能性は、一つしか無い。――レミリアは咲夜に凶器を預けてある
早苗「つまり咲夜さんは――みんなの前で嘘をついた?」
魔理沙「……実は昨日のデモンストレーション、私も圧倒されちまったんだが、少し不審な点もあるように思えるんだ」
早苗「不審な点、ですか?」
魔理沙「まだ確信は持てないんだけどな――まずは咲夜の部屋を確認しよう。またタイミングを教えてくれ」
 
【宿舎エリア・廊下】DAY02 02:31
 
魔理沙……咲夜の部屋にも、凶器は一つも無い。どういうことだ?」
早苗「誰かに凶器を譲渡した後なんですかね?」
魔理沙「咲夜以外の誰にだ? ここには美鈴もパチュリーも居ないんだぜ?」
早苗「あの、やっぱり止めておきませんか? なんかヤバい気もしてきたんですが」
魔理沙「逆だよ」
早苗「はい?」
魔理沙レミリアと咲夜は、昨日あれだけのことをやった後なんだぜ? その上で貴重な凶器を紅魔組以外の誰かに譲ったのなら――そのプレイヤーは紅魔組の間に入り込めるくらいの信用を得ている誰かだと言うことだ。つまりそいつには殺人への強い意欲がある、ってことにもなる」
早苗「――その凶器を見つけ出さないと、近いうちに殺人が起きる?」
魔理沙「ああ。だから私達はここでやめるわけにはいかない」
早苗「わかりました。では、次はルーミアさんの部屋ですね」
魔理沙「ああ、タイミングを頼む」
 
【宿舎エリア・廊下】DAY02 02:33
 
ガチャ
魔理沙「……見つけたぜ」
早苗「あ、お帰りなさい!」
魔理沙「普通にテーブルの上に置いてあったぜ。ジュラルミンケースもな」
早苗「不用心っすね~。ルーミアさんらしいと言えばらしいですけど。ぐっすり寝てました?」
魔理沙「ああ。ほっぺたをぷにぷにしても起きなかった」
早苗「何やってるんすか!?」
魔理沙「いや、寝顔が可愛かったんで、つい」
早苗「で、なんすかそれ? サイコ・ショッカーみたいなデザインですけど」

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魔理沙多分〈暗視ゴーグル〉だな。さっき室内で使ってみた」
早苗「へえ。確かにルーミアさんの〈暗闇〉と相性抜群っすねえ」
魔理沙「――で、ここからが本題だ。DDSルームの使い方、覚えてるよな?
早苗「はい? 凶器の番号を入力してチャレンジに成功すれば、対応した凶器を取得出来る場所ですよね?
魔理沙「そこで、だ。今からお前にはジュラルミンケースに貼られていたラベルの、凶器番号を教えてやる。〈暗視ゴーグル〉の対応番号をな。万が一の為だ。確か番号は――」
早苗「――魔理沙さん!」
魔理沙「おぅ!? そんなでかい声出すなって! みんな起きてくるだろ」
早苗「私達――凶器を使われないようにする為に、こうして盗んでるんですよね?
魔理沙「……ああ」
早苗「だったら番号なんていりませんよ。いいですか? 私の能力は〈奇跡〉ですよ? DDSルームのチャレンジなんて簡単にクリア出来るんです。凶器の番号を教えられてしまったら、つまり――
魔理沙狙った凶器を取り放題、ってことか。気付かなくて済まなかった。お前を信用してたから、つい教えそうになった。ごめんな」
早苗「いいえ。私の方こそ大きな声を出して済みません」
魔理沙「早苗。お前を相棒にして良かったぜ」
早苗「そんなの、今言わないでくださいって……。それに、魔理沙さんの相棒は、霊夢さんでしょ?」
魔理沙「……霊夢か」
早苗「え? 違うんすか?」
魔理沙あいつは今、文と一緒に動いている。それにさ、こういうゲームに対して、私と全く同じように動くのかって訊かれると、どうにも自信がな……
早苗「あの。でも、異変の解決って二人がメインですよね?」
魔理沙「異変だったら、な。だけどこれは――『異変でもない何か』だ。紫が力を封じている以上、私達にはこれを異変として処理出来ない」
早苗「……」
魔理沙「よし、次行くか。次は勇儀の部屋だ」
早苗「その後はどうします? 中央の部屋は彼女で最後ですけど」
魔理沙「それが終わったら、外側の部屋を北東から順番に片付けていこう。トラッシュルームの横から順番にな」
 
【宿舎エリア・廊下】DAY02 02:55
 
魔理沙「……くくく。いやー集まった集まった」
早苗「こうして並べると、壮観っすねえ。〈マスターキー〉を合わせて13個。DDSルームの〈ナイフ〉と〈無味無臭の毒薬〉を合わせれば――15個! やりましたね!」
魔理沙「……」
早苗「あの、レミリアさんの部屋に無かった凶器のことは、もういいじゃないですか。明日の朝、直接交渉しましょうよ?」
魔理沙「ん? ああ。そっちの心配はしていないんだ」
早苗「え?」
魔理沙早苗、トラッシュルームのすぐ横の部屋。あれ、なんだと思う?

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早苗「!」
魔理沙一体誰の部屋なんだ?
早苗「予備の部屋? とか、そういうのっすかね?」
魔理沙そんなもん、作る金あったのか? ここの会場、相当金が掛かったから、いくつか施設を削ってるんだろ?
早苗「まあ、そう言われれば……」
魔理沙「それに、予備の部屋だとすると、位置がおかしい
早苗「え?」
魔理沙仮にあそこが予備の部屋だとすると――プレイヤーが校舎エリアや娯楽エリアへアクセスしやすいように、使う予定が立っていない予備の部屋は、とりあえず東側に作っておくんじゃないのか? 地図を見てみろよ。ほら、例えばてゐの部屋の位置と入れ替えれば、トラッシュルームにも近い。他のエリアへのアクセスが一番悪いのは、てゐの部屋だろ? 凶器の中には破壊力の高い物もあるから、部屋そのものが使えなくなる危険性もあるだろうな。それはわかる。だったら予備の部屋を、てゐの部屋の位置に作ったほうが合理的だと私は思うんだ
早苗「うーん。でも、そもそもそんなに距離は変わらないじゃないっすか。そこまで場所が重要ですかねえ……」
魔理沙――提案なんだが、念の為に空き部屋を調べておかないか? 〈マスターキー〉を処分する前にな」
早苗「はい? いいですけど……」
 
【宿舎エリア・空き部屋】DAY02 03:01
 
魔理沙「うーん。ベッドがあって、ゴミ箱があって……普通の部屋だな
早苗「ですね。流石にジュラルミンケースもルールブックも見当たらないっすけど」
魔理沙「だとすると――本当に特に意味は無い部屋なのか?」
早苗「一応確認しましたけど――シャワーも普通に出ましたね」
魔理沙「……」
早苗「魔理沙さん?」
魔理沙この部屋――何か違和感があるんだが、早苗もそう思わないか?
早苗「そうでしょうか? で、どうします? もう少し調べていきます?」
魔理沙「いや。廊下の見張りだってあるんだ。捜査は切り上げようぜ」
早苗「それならまずはトラッシュルームに行きません? こっちのケース、実はめちゃくちゃ重くて……」
魔理沙「お、おう。すまん。そっちに〈グングニル〉が入ってるんだもんな」
 
【宿舎エリア・トラッシュルーム】 03:10
 
早苗「はい。今の〈ピアノ線〉でラストっす」
魔理沙「……や」
早苗「や?」
魔理沙「やったああああああああああああああああ!」
早苗「――!」
魔理沙「ついに任務完了だな!」
早苗「は、はい! 我々は成し遂げました! 隊長!」
魔理沙「よし! 端末を見に行こうぜ!」
早苗「ラジャー!」
 
【校舎エリア・廊下(DDSルーム前)】03:12
 
『施設は現在利用可能です』
『現在のストック数:15』
『ストック:ナイフ・霊体ボウガン・スタンガン・金塗りの模擬刀・セミオート拳銃・香水・葉隠流水晶・暗視ゴーグル・消臭剤・ピアノ線・無味無臭の毒薬・グングニルの槍・リボルバー拳銃・リモコン爆弾・マスターキー』
 
魔理沙「……やばい。少し泣きそうだぜ」
早苗「明日、記念に一杯やりますか? クイッと」
魔理沙「ああ、そうしよう。みんなで宴会しようぜ」
早苗「……思ったより、あっさり行き過ぎた気もしますがね」
魔理沙「そうだな。でも、ここからが重要だ。すぐに戻って、廊下の監視を始めよう
 
【宿舎エリア・廊下】DAY02 03:30

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魔理沙「はい。『徴税の路地裏』セット」
早苗「えぇ!? 1ターン目でいきなりやめてくださいよ!」
魔理沙「ははは。クロワに先攻を明け渡すお前が悪いぜ」
早苗「魔理沙さん……すっごく眠そうですけど、大丈夫ですか?
魔理沙「ゲームしてるうちに目が覚めるかな、って思ったんだけど、そうでもないな……」
 
【宿舎エリア・廊下】DAY02 04:05
 
魔理沙「……早苗。すまん。ちょっとゲーム中断しようぜ」
早苗「はい。私は構いませんよ?」
魔理沙「……少し壁にもたれ掛かるわ」
早苗「大丈夫っすか? 私が見張ってますから、少しくらい寝ても良いんですよ?」
魔理沙「大丈夫……大丈夫だって……」
 
【宿舎エリア・廊下】DAY02 04:07
 
魔理沙「……」
早苗「……魔理沙さん? 寝ちゃったんすか?
魔理沙「……zzz」
早苗「……そうですか。お疲れのようですし、少しゆっくり休んでくださいね」
早苗「……」
 
早苗「もしもーし紫さん、こちらに来てください
 
藍「……呼んだか?」
早苗「紫さんは?」
藍「就寝中だ。スキマだけお借りしている」
早苗「今、私は数枚のメダルを所有しています
藍「ああ。確かにあるな」
早苗「このメダルをこうして――
チャリン……
早苗「魔理沙さんの巾着袋に入れると、メダルの所有数は、今現在どうなっていますか?
藍「……早苗のメダル所有枚数は、現在一枚だ
早苗「そうですか。ありがとうございます。戻って頂いて結構です」
藍「そうか。では戻るぞ」
 
早苗「……」
早苗(『この場所に戻ってくるまでの間、会場にいる全てのプレイヤーが誰も起きませんように』
早苗「……」
早苗「わー!」
早苗「……」
早苗「わー! わー! わーーーーーー!!!!」
早苗「……」
早苗「ぜんっぜん起きないなあ、みんな」
早苗(本当に便利だなあ、この能力。実はタイミングを見計らったりしなくても、余裕で隠密行動が取れるんですよねえ
早苗「――まーりささん!」
チュッ
魔理沙「……zzz」
早苗「行ってきま~す。ゆっくり寝ててくださいね」
 
【校舎エリア・DDSルーム】DAY02 04:10
 
早苗「うーん。やっぱり『銃』が欲しいっすねえ
早苗「――よし! コイントスで決めちゃおっかな。今日はDAY02だから、『No.2』!」
ピンッ
早苗「あー!! 裏かぁ。それなら、これは? 神奈子様の苗字から、『No.8』!」
ピンッ
早苗「はい、表でたー! これにしよっと。端末で8番を指定して、っと」
早苗「……」
早苗(……ロシアンルーレットかあ。〈奇跡〉を持ってるのはわかってるんですが――めちゃくちゃ怖いなあ)
早苗「――よーし、やるぞー!」
カチャ……
早苗「……ふー。クリア」
ガチャン……

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早苗「おー。出てきた出てきた。リボルバー〉ゲットー!
 
【校舎エリア・廊下(DDSルーム前)】DAY02 04:13
 
バンッ!
バンッ!
バンッ!
早苗「――端末が起動しませんね。流石に、三発も弾を打ち込めば壊れますよねえ
早苗「後は〈リボルバー〉を――」
 
【宿舎エリア・トラッシュルーム】DAY02 04:16
 
早苗「リボルバー〉の処分完了、と
早苗「……あー、面倒くさかった」
 
【宿舎エリア・廊下】DAY02 04:17
 
チャリン……
早苗(メダル、預かっててくれてありがとうございました)
早苗「――魔理沙さん?」
魔理沙「……ん? うわぁ!?」
早苗「おお!?」
魔理沙「おい! 私どれくらい寝てた!?」
早苗「え? ジャスト10分ですね」
魔理沙「あー、クソ! 一睡もしないつもりだったのに」
早苗「でも、少しは休めましたか?」
魔理沙「ああ。完全に目が覚めた。早苗は? 疲れてないのか」
早苗「実は、少し疲れてます」
魔理沙「よし。お前も休めよ。私が5時くらいまで粘ればもう大丈夫だ。咲夜が起きてくるだろうからな」
 
【宿舎エリア・廊下】DAY02 04:55
 
早苗「……zzz」
カチャ
魔理沙「お?」
咲夜(ええと、家事を始める前に〈トラバサミ〉を再設置してから、まずは――)
魔理沙「おはようさん。よく眠れたか?」
咲夜「――え? 魔理沙!? 早苗!? 何やってるのよ、そんなところで!?」
魔理沙「大した用事じゃないさ。それじゃ、私達は部屋で眠るぜ。朝食が始まる頃には起きるよ」
咲夜「え、ええと。おやすみなさい?」
魔理沙「早苗ー。起きろよ」
早苗「……んぅ? あ、おはようございます。咲夜さん
咲夜「――話は後で訊くけど、とりあえず今は部屋でゆっくり休みなさい」
 
【校舎エリア・DDSルーム前】DAY02 09:55

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勇儀「――で、なんで新聞屋が凶器のリストを持ってんだよ?」
文「だから、信じてくださいよ! これは青娥さんの罠だったんですって!」
てゐ「……本当? 青娥とこっそり会ってたこと、まさか私達が知らないとでも思ってたの?」
文「だ、だからそれは、向こうが勝手に――」
勇儀「――それで、竹林の兎。お前までリストを受け取ってどうするつもりだ? 適当に言いわけして武器を取得でもしたら、お前だって誰かが殺された時点で容疑者入りしちまうぞ?」
てゐ「はぁ? あんたは〈怪力〉持ちだからそんなこと言えるけど、こっちは身を守る手段がないんですけどー? そもそも、なんで私がリストを受け取ろうとしてるってわかるのさ?」
霊夢「ほら、喧嘩はやめなさい!」
咲夜(……お嬢様。如何なさいますか? 〈トラバサミ〉について情報を公開し、処分を魔理沙達に任せる、という手もありますが)
レミリア(論外よ魔理沙達は『凶器を全て処分した』と発言したのだから。あんな場面で嘘をつくプレイヤーなんて、絶対に信用出来ないわ)
チルノ「……ルーミアちゃん。ちょっといい?」
ルーミア「なに?」
チルノ「凶器、取得するつもりなんでしょ? だったらやめたほうがいいって。死ぬ確率は、1/6なんだよ? 死んじゃう危険性だってあるんだよ?」
ルーミア「……1/6って、何パーセントだっけ?」
チルノ「ええと、つまり――」
マミゾウ「およそ16パーセントじゃ。そんな分が悪い賭け、やめとけやめとけ」
ルーミア「ねえねえ、妹紅。相談があるんだけど――」
妹紅「だ、駄目だぞ? お前の代わりに凶器を取得するつもりなんてないからな?」
ルーミア「ブーブー」
ナズーリン『射撃三発による端末の破壊』、か」
さとり「どうしました?」
ナズーリン私ならこんな手段は使わない。工具を使って静かに無力化すると思う。音が反響すれば、他の誰かに気付かれる危険性もあるからな
こいし「だよねえ。実は私、校舎エリアのトイレに居たんだよね。寝てたから全然気付かなかったけど。お姉ちゃんはどう思う?」
さとり「ナズーリンさん。この事件の謎は、解くまでの時間が何よりも大切です。殺人が起きるまでがタイムリミットでしょうね」
こいし「あー、やっぱり誰も私のこと見えないんだ。しょんぼり」
 
早苗「〈17人目〉のプレイヤー、ですか。相当厄介なことになってきましたね」
魔理沙「……」
早苗「魔理沙さん?」
魔理沙「なんてことだよ。早苗にまで協力して貰ったのに……。私、浮かれて馬鹿みたいだった」
早苗「……魔理沙さん。どうします? 交代でDDSルームを見張っていくように、もう一回提案してみませんか?」
魔理沙「いや、もう無理だ。私の行動のせいで、みんなの心が更にバラバラになっちまった……」
早苗「……」
 
【宿舎エリア・空き部屋】DAY02 12:30
 
早苗「――紫さん、来てください」
 
紫「あら? こんな所に呼び出してどうしたの?」
早苗「どうもこうも無いですよ! なんで私の部屋の鍵で、〈17人目〉の部屋の扉も開けられるんですか!?
紫「え? だってプレイヤーに対して〈17人目〉のヒントを出しておかないと、フェアじゃないでしょう?
早苗「ふざけないでください! 私は夜にあそこまで動いて運営をサポートしたんですよ!? 昨日魔理沙さんと部屋を調べた時にたまたま思いついたから、こうして試しに自分の部屋の鍵を使ってみたんですが――こんなの一人一人の鍵を調べられたら、一発でバレるじゃないですか!」
紫「大丈夫よ。他のプレイヤーはまだ『プレイヤーは全部で17人いる』って勘違いしてるでしょうから
早苗「でも――」
紫「それに、プレイヤーの誰かが殺されれば、いくら〈17人目〉が特定されたところで、もうゲームは止まらないわよ」
早苗「それは、そうかも知れませんが……」
紫「近い内に間違いなく殺人は起きるけど、しばらくは再び貴方が大きく動くことになる状況は来ないと思う。それでも〈奇跡〉の使い道については注意してね。貴方が〈17人目〉だと特定されれば、貴方を殺そうとするプレイヤーは間違いなく出てくる。多少はこっちからもサポートするけど」
早苗「――わかりました。しばらくはゲームを静観します」
紫「その代わり、他のプレイヤーからちょっとした野暮用を頼まれたら、私の代わりにやって貰えるかしら? プレイヤーへの干渉を極力控えないと、『ゲームマスター権限』が書かれているカードに拘束力が無いことがバレちゃうのよね
早苗「そのくらいは、まあ……」
紫「それよりも、貴方ルールブックは肌見離さず持ち歩いてる?」
早苗「? はい。いつも懐に――え、ルールブックが光ってる?
紫「ちょっと開いてみて頂戴」
早苗「は、はい」
 
『極上の凶器16種類中、10種類以上が処分されて一定時間が経過いたしました』
『ゲーム運営者一同、総力を挙げてゲームの円滑な進行に砕心いたしておりますが……』
『このままでは、ゲームの進行が停滞してしまうことが予測されます』
『そこで、皆さまにスペシャルなボーナスを用意させていただきました!』
『デッドリー・デッド・ストック・ルームは各プレイヤー様最大5回まで利用できる施設です』
『つまり、各プレイヤー最大5回の凶器再取得のチャンスがあることになりますが……』
『これを拡張させていただきます』
 
早苗「チャンスの、拡張?
紫「ふふ……」
 
『各プレイヤー様、最初の二回までのDDSルームご利用におきまして……』
『装填する弾丸数をゼロ、とさせていただきます』
『二つまでの凶器がノーリスクで入手できるボーナスというわけです』
『配信時刻:12:00』
 
早苗「……」
紫「どう? 貴方と魔理沙のおかげで、無事ゲームが続けられそうよ」
早苗「それは――訂正してくれませんか?」
紫「え?」
早苗「魔理沙さんは、ゲームを止める為に動いていたんです。それを否定することなんて誰にもさせません」
ガチャ…
バタン…
 
【校舎エリア・青娥の部屋】DAY02 12:34
 
コンコン
青娥「はーい。開いてますよー」
ガチャ…
早苗「失礼します……」
青娥「あら、早苗さんじゃないですか? どうかなさいました?」
早苗「私にも凶器のリスト、頂けませんか?
青娥「お断りしますわ」
早苗「な、なんでですか?」
青娥「だって貴方、凶器の番号なんて知らなくても、適当に番号を打ち込めば好きな凶器を取得出来るじゃないですか。違いますか?
早苗「そ、そんなこと出来ませんって!」
青娥「あら? それでしたら、私の勘違いでしたわね。はい、どうぞ」

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早苗「……ありがとうございます」
青娥「うふふ。ねえ、早苗さん」
早苗「はい?」
青娥「本当は貴方――このゲーム、凄く楽しんでません?
早苗「……! 笑えない冗談ですね」
青娥「そうですか。それは失礼」
 
【校舎エリア・DDSルーム】DAY02 12:40
 
早苗「ケース、おっもいなあ……。〈リモコン爆弾〉はいらなかったかなあ。ひとまずこれで私は、DDSルームをこれ以上使えないわけですね
早苗「さて、戻りましょっか」
こいし「重そうだねー。手伝ってあげよっか? よいしょ――と」
早苗「あ、あれ? 少し軽くなったような……」
 
【宿舎エリア・魔理沙の部屋】DAY02 12:45
 
魔理沙――〈無味無臭の毒薬〉、〈リモコン爆弾〉、〈リボルバー〉、〈セミオート〉。こんなに凶器を再取得してきたのか」
早苗「はい! これなら危険なプレイヤーに凶器が渡らずに済みます!
こいし「すっごーい! 凶器がいっぱいあるねー」
魔理沙お前、凶器の番号はどうやって手に入れた?
早苗「……青娥さんに凶器のリストを頂きました。独断でやってすみません……」
魔理沙〈マスターキー〉は取得しなかったのか?
早苗「それも――ごめんなさい。〈マスターキー〉は私がDDSルームに着いた時、既に誰かに再取得された後でした
こいし「ん? それって多分マミゾウだよ
魔理沙そういえば早苗は〈奇跡〉で凶器を5個取得可能だろ? なんで1回だけ回数を残したんだ?
早苗「念の為っすよ? 危険な凶器がDDSルームに送られた時の保険ですね
魔理沙「なるほどな……」
早苗「今回取得した凶器は殺傷力や取り回しとかで判断したんですけど、チョイスはこんな感じで良かったっすかね?」
魔理沙「ああ、悪くないと思うぜ。何の問題もない」
早苗「それで魔理沙さん。この四つの凶器、どうします?」
魔理沙――無力化した上で、改めて私達で保管すればいいと思う
こいし「えー!? そんなの勿体ないよ!」
早苗「そうですか。それで、魔理沙さんはどうしますか?」
魔理沙「何を?」
早苗「何を、って。魔理沙さんだって凶器の取得は出来るんですよ? ほら、ルールブックを見てください。追加ルールが――」
魔理沙「それは――とっくに見た」
早苗「だったらここでゆっくりしている場合じゃないですって! そもそもボーナスルールが無くたって、私の〈奇跡〉を合わせれば、魔理沙さんだって5回分取得することが――
魔理沙いや、私は、DDSルームは使わない
早苗「どうしてですか!?」
魔理沙みんなから凶器を盗もうなんて言い出したのは私だぜ? その私が凶器を取得するなんて――筋が通らない
早苗「確かにそうかも知れませんが、このままだと凶器は――」
魔理沙「悪い。何を言われようと、そればかりは聞けないぜ。早苗の言いたいことはわかる。だけど、今の私には、凶器を取得する資格なんてない」
早苗「――わかりました! それでは、〈無味無臭の毒薬〉を部屋で処分してから、トラッシュルームに行きましょう」
魔理沙「ああ。いいぜ」
 
【校舎エリア・廊下(DDSルーム前)】DAY05 14:25
 
早苗「……ほら、見てください」
魔理沙「……」
 
てゐ「あー、しんどい。これを後二十日以上も続けるのー?」
マミゾウ「だから見張りは、わし一人で十分だと言ってるじゃろう。ほら、これでなんか飲み物でも買ってこい」
てゐ「へえ。奢ってくれるんだ。そんじゃ行ってくるよ~」
 
早苗「どうします? てゐさんはずっと見張ってるわけではないですし、マミゾウさんだってさすがに深夜は見張りを解散すると思いますよ?
魔理沙「そうだな。深夜まで交代制でやるなら、会場にいるプレイヤー全員で見張りをするしかない」
早苗「これなら〈マスターキー〉も取得出来るんじゃないですか? 魔理沙さんもチャレンジしてくれれば、〈暗視ゴーグル〉を取得してルーミアさんの犯行を防ぐことだって出来ます
魔理沙「……とりあえず、部屋の前に見張りがいるならそれでいいさ。二人に任せよう」
早苗「本当にいいんですか? 魔理沙さんって『本当に私がDDSルームを後一回使えるのか』、ちょっぴり疑ってたじゃないですか
魔理沙「少しだけ、な。でも大丈夫だ。お前のことを信じるよ」
早苗「信じる、ですか。私だって――魔理沙さんのこと、信じてますからね?」
 
【裁判所】DAY07 03:45
 
魔理沙「――早苗。勝手に凶器を使って、本当にごめんな。私のことを信じてくれていたのに」
早苗「いいんですよ! そんなこと! 私だって謝らなくちゃいけないこと、沢山あるんですから!」
マミゾウ「いやー、久々に脳みそをフルに使ったわい。老体には堪えるのう」
妹紅「魔理沙、マミゾウ……」
紫「それじゃ、そろそろ始めましょうか。二ッ岩マミゾウ』及び『霧雨魔理沙』の処刑と、『藤原妹紅』の〈追放〉を
マミゾウ「うむ」
魔理沙「ああ。さっさと始めようぜ」
早苗「魔理沙さん、あの――」
魔理沙「おいおい。そんな顔すんなって。さっきは結構ビビってたけど、少し寝てからすっきりしたし、覚悟は決まった。みんな、後は頼んだぜ!」
チャキ…
霊夢「紫――あんた、いい加減にしなさいよ!!」

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ナズーリン霊夢! その〈セミオート〉、いつの間に!?」
霊夢「今から魔理沙を処刑するですって!? 冗談じゃないわ!」
紫「あら? 貴方にそんな武器、まともに扱えるのかしら? 針や札ならともかく」
魔理沙「おい、その中には弾が……」
霊夢魔理沙。貴方って盗むのは得意だけど、盗まれることには慣れてないのね」
魔理沙「――あれ!? 帽子の中にしまっておいた弾が……」
霊夢「紫! 今すぐゲームを終了しなさい!」
紫「何度も言ってるじゃない。誰かがクロとして勝つことが出来れば、全員生き返らせることも出来るって。処刑の記憶だって後で消すつもりよ?」
霊夢「関係ないわよ! 傷付けばゲーム外と同じ様に痛みを感じるこの場所で、プレイヤーを処刑するなんて有り得ないわ!」
紫「……ふふ。霊夢に殺されることって、妖怪としてこれ以上の幸せもない気がするわねえ」
霊夢「本当に――撃つわよ?」
紫「――どうしても?」
 
バンッ!
 
パサッ…
てゐ「!」
咲夜「霊夢!」
レミリア「――そうよね。貴方って、『やる時はやる』人間だものね」
紫「あら。この帽子気に入ってたのに」
霊夢「次は――急所を外さないわよ」
ガシッ
藍「おっと――そこまでだ」
霊夢「ぐっ……離しなさい!」
橙「霊夢さん! 動かないでください! さもないと――今から一人ずつ首を掻き切りますよ!?」
さとり「こいし!」
こいし「お姉……ちゃん……たすけ、て」
霊夢「……卑怯者!」
藍「公開処刑は取り止めだ。今からお前達を強制的に、数時間後の幻想郷に飛ばす」
紫「プレイヤー全員の一部の記憶を改竄するわ。貴方達の手に入れた情報はDAY07時点で余りにも多過ぎる」
妹紅「ざけんなよ! チルノを返せ!」
紫「それでは――皆さん、また会いましょう」
霊夢「紫! まだ話は――」
 

30

【守矢神社・早苗の部屋】DAY07 11:10
 
早苗「……」
諏訪子「おーい、そろそろ目を覚ましたかなあ――早苗!?」
神奈子「おい! もう大丈夫なのか!?」
早苗「神奈子様……諏訪子様……」
諏訪子「大丈夫? また二日以上目を覚まさなかったんだけど……」
神奈子「心配したんだぞ? 今からご飯を用意するからな。ちょっと待っててくれ」
早苗「……黙れよ。偽物共が」
諏訪子「ん? 何か言った?」
神奈子「本調子じゃないんだろう。もう少し寝てていいぞ」
早苗「はい。休ませて頂きますね」
 
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「…………………………あー……」
早苗「……………………」
早苗「………………魔理沙さん……」
早苗「……………魔理沙さん………」
早苗「…魔理沙…………………さん」
早苗「……………う………」
早苗「………うう……………」
早苗「…………うわああああん…………」
早苗「……………………」
早苗「…………………魔理沙さん…」
早苗「……死んじゃったよぅ………………」
早苗「…………………うぐ…ひっぐ………もういやだよお…」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「…もう…いっその事……みんなにバラしちゃおっかなあ…………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「まだ最後のルールが残
 
 
 
 
【超幻想郷級のダンガンロンパ・第二章考察終了】

超幻想郷級のダンガンロンパ・二章考察(前編)

 

はじめに

現在ニコニコ動画内には『東方Project上海アリス幻樂団)』と『ダンガンロンパシリーズ(スパイク・チュンソフト)』の二次創作作品に当たる、NOH氏制作の『超幻想郷級のダンガンロンパ』(以下、東方ロンパ)という作品が存在します。
本作は、東方ロンパの『第二章』に対する考察をSS形式で行う、所謂東方Projectの三次創作となるSS作品となっております。
未視聴の方は必ず、NOH氏がニコニコ動画に投稿されている東方ロンパを最後まで視聴済みの上で読み進めてください。
あるいはNOH氏により配布予定がある、PCゲーム版の東方ロンパを第二章裁判前までプレイ後に本考察を読み進めてください。
まだ未視聴の方はネタバレ回避のために、ブラウザバックをおすすめします。
なお、本考察は既に判明している一章の真犯人、まだ本編で未判明である二章の真犯人、及び〈17人目〉の正体について言及しています。
本考察には本動画内から切り抜かれた画像等が含まれていますが、東方ロンパという作品の都合上、流血等ショッキングな画像が一部含まれていますので、鑑賞の際はご注意ください。
本考察が二章で起きた事件を読み解く上での、皆さんの参考になれば幸いです。
 

本考察の表現や記号の使い方について

・日付や時刻について……文章として違和感を覚えることもあると思いますが、例を挙げると『二日目』を『DAY02』等と表現しています。東方ロンパ中には『ゲーム初日』(ゲームの0日目に当たる日)が存在します。文章とタイムテーブル等を比較した際に理解をスムーズに行うためです
・特定の語句、極上の凶器、超高校級の才能……言葉に〈〉を付けています(〈17人目〉、〈リボルバー〉、〈盗み〉)
・区切ったほうが適切だと思われる言葉。台詞内台詞等……言葉に『』を付けています
・その他の強調したい言葉……太字で文章を強調しています
 

画像が読み込まれない場合について

文章量と画像添付数の関係で一部の画像が開けない時があります。その場合はブラウザを再読み込みしてください。
 

本考察の『推敲』のスタンスについて

本編第一章から第二章にかけての情報量は膨大であり、当ブログにアップロードした文章についても何度も追記・修正を繰り返しています。
読みにくい漢字の平仮名表記への変更、セリフの流れが矛盾している箇所の変更、本編画像や表の追加、わかりづらかった部分への追加解説などはこれからも続けていきます。
ただし、『真犯人の正体』など特に重要な情報については、第零稿から変更を加えていませんし、これからも変更する予定はありません。
 

各種リンク

超幻想郷級のダンガンロンパ(NOH氏による公開マイリスト)

https://seiga.nicovideo.jp/clip/1011831

超高校級のダンガンロンパ(ゲームルール一覧)

https://seiga.nicovideo.jp/clip/1293062

超幻想郷級のダンガンロンパ(極上の凶器一覧)

https://seiga.nicovideo.jp/clip/1139799

超幻想郷級のダンガンロンパ@非公式WIKI

タイムテーブル

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メモ(第一の事件関連)

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01

【裁判所】DAY07 1:30
 
紫「どうしました? まだ10分くらいしか話し合っていませんよ? それなのに口が止まっているようですが」
早苗「そう言われても……。今回の事件、どうにも証拠品がゴチャゴチャしてて何が何だか。結局〈リボルバー〉も見つかりませんでしたし
咲夜「一度DAY04まで遡ってみましょうか? まず裁判後に私達は紫から休息日を与えられました。その次の日の早朝すぐに発覚したのは――」
レミリア「何者かの手によって、14体の人形が食堂に仕掛けられていたことね。その後にマミゾウが全員の前で謝罪したり、DDSルーム前の見張りが提案されたり。その一方で、ルーミアは〈絶望〉の情報を聞き出すために、霍青娥を朝から長時間拷問に掛けた」
ルーミア「う……。青娥、あの時はごめんね」
青娥「いえいえ、私は全然気にしていませんよ。ルーミアさんが皆さんのためを思って実行したことなのですから」
マミゾウ「DAY05に仕掛けられた人形の意味も謎じゃが、その次の日に起きた出来事も相当不可解じゃな」
妹紅「例の毒殺未遂事件だな。貯水槽前で見つかった〈香水〉と〈消臭剤〉は青娥の部屋で保管することになった。その時に魔理沙が運営の橙からビデオテープを盗み出していて、その中身を少しだけ確認したんだっけ?
魔理沙「ああ。ビデオテープと、黒く塗り潰された書類だ。それに加えて霊夢写真も拾っていた。全部紫に没収されたけどな」

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さとり「資料を直接目にしたわけではありませんが――話に聞く限りでは、なかなか興味深い内容でしたね。他には八雲藍さんが〈17人目〉である疑いが浮上したり、霊夢さんが『死者のコトダマ』を発見したり――」
てゐ「霊夢ナズーリン霊安室を見つけたんだよね。勇儀と文の遺体もそこにあったんだっけ」
ナズーリン「みんなはBARや娯楽室等で思い思いの時間を過ごしていた。しかし今日の0:10頃には――」
レミリア――死体発見アナウンスが流れ、捜索の末にチルノの遺体が発見された。その直後には私がトラッシュルームの外で見張っていたのにも関わらず、妹紅がトラッシュルーム内の、バックヤード入り口付近で銃殺されていた
咲夜「捜査開始が0:15頃。そこから1時間の捜査時間が与えられました。私とお嬢様は死亡推定時刻のDAY06、23:30から24:00に能力を使っていないことを証明するために、今日の0:30になる前には霊夢達の前で能力を発動しました
青娥「私が急にお願いしてしまったんですよね。疑ってしまってすみません」
レミリア「別にいいわよ。私としては、出来れば能力発動にインターバルが設けられているプレイヤー全員から確認が取りたかったところね」
マミゾウ「……」
レミリア「マミゾウ、貴方のことを言ったんじゃないのよ?」
マミゾウ「いや、わし以外に誰がいるんじゃ。だが確かにレミリアの言う通り、死亡推定時刻から一時間以上経過してしまえば、能力の未発動は証明不可能じゃ。私やルーミアの〈幻惑〉と〈暗闇〉に関しては、使われていないことを信じて貰う他ないのう」
魔理沙〈幻惑〉はともかく、〈暗闇〉は使われてないんじゃないか? ほとんどのプレイヤーがまだ起きてた時間だし、〈暗闇〉が発動していたら誰かが気付くだろ
ナズーリン「――よし、一度付近の時間の流れを確認しよう。チルノの死亡推定時刻がDAY06の23:30~24:00。更に魔理沙の証言により、23:45分まではチルノが倉庫内で生きていたことが判明している。霊夢が修理したビデオカメラに記録されていた時間は0:00で、そこには生前の妹紅が映っていた。死体発見アナウンスが0:05であり、実際に死体が発見されたのは0:10。捜査開始が0:15で、捜査終了が1:15。二度目の裁判が始まり、今現在の時刻が1:30を少し上回った所。こんな物か?」
てゐ「今回も深夜からの裁判開始になっちゃったねえ。あたしほとんど寝られなかったよ。犯人は、私達の頭が回らなくなる時間でも狙ったのかねえ」
ナズーリン「それもあるかも知れないが、私の〈ダウジング〉能力も関係してると思う」
てゐ「どういうこと?」
ナズーリン「私の〈ダウジング〉は日を跨いだ時に回数がリセットされる。0時前に事件が発覚すれば、日付を跨ぐ前後を合わせて最大六回の検索が可能なんだ
てゐ「あー、そういうことね。日を回ってるから、もう三回しか能力を使えないんだっけ」
ナズーリン「いや、『今回の事件に関係ある証拠品』で一度検索しているから、残り回数は二回だ

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レミリア「それなら残りの〈ダウジング〉は慎重に使わないといけないわね」
咲夜「捜査時間が終わり、こうして裁判所にいる間は、裁判が終わるまでは他のエリアの捜索は出来ません。何かを〈ダウジング〉するとしても、証拠の確認が取れないことを承知の上で検索しなければいけませんね」
ルーミア「……ねえ。議論とか推理とか裁判とか、もうほんっとに、どうでもいいよ」
咲夜「はい?」
早苗「な、なにを言い出すんですかルーミアさん!」
ルーミア「もう、いい加減名乗り出て欲しいんだけど。誰がチルノちゃんを殺したの?」
ルーミア「チルノちゃんってさ、ここでなんか悪いことしたっけ!? 私が殺されるんだったらわかるよ? 文の事件の時は部屋に青娥を殺しに行ったし、実際DAY05の時には教室で青娥を半殺しにしたから。でも、チルノちゃんは誰も傷つけてないよね!? 会場で私達と一緒に遊んでただけじゃん! 違う!?」
マミゾウ「ルーミア。少し落ち着け。十分捜査をしたのだから、後はそれに基づいて推理し、犯人を特定すればいいだけじゃ。聞くがルーミア、今回の事件でお主は一切動いていないんじゃな?」
ルーミア「……当たり前じゃん! もうDDSルームのボーナスを使い切ってるんだから、凶器なんて取得出来るはずないもん!
妹紅「その通りだ。私みたいな死への抵抗が薄い蓬莱人ならともかく、普通の感覚では3/6以上の確率で死ぬ賭博に何度も挑めるわけがない」
マミゾウ「少なくともルーミアは三回目のチャレンジなぞしとらんじゃろうな」
てゐ「はぁ。みんなお子様には本当に甘いねえ。ま、いいや。そんなことよりさ――ねえ?」
早苗「え、ええと――?」
咲夜「そうですね。議論が始まってから、まだ一度も発言をしていないプレイヤーがいますね」
魔理沙「――霊夢。そろそろ考えを聞かせてくれてもいいんじゃないか?」
さとり「霊夢さん……」
レミリア「貴方、今日は本当におかしいわよ。大丈夫?」
霊夢「……」
妹紅「どうした? まだ調子が悪そうならあんまり無理しなくても――」
マミゾウ「そういうわけにもいかんじゃろう。嫌でもいつものキレを見せて貰わんと、わしら全員裁判で負けてしまうぞ?」
レミリア霊夢。議論に参加するのが辛いなら、代わりに私が進行するわよ?」
霊夢「――私は」
レミリア「……」
霊夢もう一人のプレイヤーをこの場に呼ぶべきだと思う
早苗「プレイヤー? 〈17人目〉っすか?」
ルーミア「昨日話してた八雲藍のこと?」
霊夢「……全く、そうじゃないでしょ? あーもう! ほんっとうに厄介ね! あいつの能力!」
さとり「ご迷惑おかけします……」
ナズーリン「――あ」
霊夢「そうよ。思い出した? さとりの妹、古明地こいしよ! 今から紫に頼んでここに呼んで貰うけど、さとりもそれで構わないわよね?」
さとり「はい。もちろんです。今回の裁判には彼女の証言が必須ですから」
魔理沙「本当に来てくれるのか? 学級裁判には参加義務が無いし、こいしもルールブックを持ち歩いているからそれを知っているはずだ

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早苗「いや、そもそも既に裁判は始まってるんすよ? 途中参加って可能なんすか?」
さとり「ご心配なく。姿は見えなくとも、彼女がどこにいるのかは、いつも大体の予想がついていますので。――紫さん」
紫「何かしら?」
さとり「議論台の前にいる古明地こいしの〈無意識〉を解いてください」
早苗「ええ!? 今そこにいるんすか!?」
さとり「はい。先に言っておきますが――彼女はゲームの外であろうと中であろうと、とても不安定な存在で、身内以外の人間にとっては特に危険な一面を持ち合わせています。それでも構いませんか?」
咲夜「……どうぞ」
レミリア「別にいいわよ。慣れてるから」
紫「――たった今本人の参加意思が確認されたわ。ついに彼女と直接議論する時が来たわね。それでは『超高校級の無意識・古明地こいし』。出廷しなさい」
 

02

こいし「しゅってーーーーーーーーーーい!! はーいみんなーーーーーーー!! こーんばーんはーーーーーー!!!!! 古明地こいしでーす!!!」

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さとり「こいし……」
こいし「おねーちゃーーーん! やっとわたしが見えるようになったんだねーー!」
ギュッ
さとり「は、恥ずかしいでしょう。ほら皆さんにご挨拶を」
てゐ「ふーん、姉妹で性格が正反対なんだね?」
さとり「……それ、勇儀さんにも言われたことがあります」
こいし「ええと、誰だっけ?」
てゐ「迷いの竹林に住んでる、因幡てゐ。よろしく」
こいし「よろしくね! あ、魔理沙霊夢だー! また弾幕ごっこしようねー!」
魔理沙「おう、こいし。相変わらずだな」
霊夢「あんたは騒がしかったり、どこにいるのかもわからなかったり、本当に両極端ねえ」
マミゾウ「こいし、元気にしとったか?」
こいし「マミゾウおばあちゃんとナズーリンだー! またお寺に遊びに行っていいかな!」
ナズーリン「うん。聖もご主人も喜ぶと思う。命蓮寺のみんなで歓迎するよ」
こいし「やったー!」
ルーミア「ええと、こんばんはー?」
こいし「……どうも」
ルーミア「……?」
早苗「あの、どうなさいました?」
こいし「あ、早苗じゃん! 実はお願いがあったんだけど――」
早苗「――お空さんの件は特例みたいなもんで、『あのこと』について私に何度お願いされても無理っすよ?」
こいし「ぶー、けちー」
レミリア「……」
咲夜「お嬢様。やはり彼女の雰囲気は妹様と、とてもよく――」
こいし「こんばんは。ええと、神社であったことある?」
レミリア「こんばんは。私のほうも神社の宴会で見覚えあるわね。挨拶をしようと思ったらいつの間にか見失ってたけど」
咲夜「初めまして。レミリア・スカーレットの従者、紅魔館のメイド長の十六夜咲夜です」
こいし「あ! いつもご飯作ってくれてる人だよね! 何度もお洋服を洗濯物に混ぜちゃってごめんね!」
咲夜「いいえ。会場の家事一切は私に任されておりますので、こいしさんのお召し物も毎日出していただいて構いませんよ?」
こいし「あー、良かったー。今度あった時怒られるかと思ってた。ありがとね!」 
妹紅(ええと。地底の怨霊と灼熱地獄跡を両方管理しているってことは、やっぱりさとりって幻想郷の大物なんだよな? 勇儀が旧都の妖怪達のまとめ役で、さとりが地霊殿の主。その妹だから、もしかしてめちゃくちゃ偉い人なのか? とりあえず初対面だし敬語で――)
こいし「あー!」
妹紅「おわぁ!? な、なんでしょう!?」
こいし「ねえねえ。そっちの脚、よく見せて!
妹紅「あ、脚ぃ?」
レミリア「――え?」
咲夜「!」
魔理沙「……」
こいし「すっごい! 全然傷跡がないじゃん! どうやって!? くっついたの!? 生えてきたの!? あーあ、最後までよく見てれば良かった」
妹紅「お、おい! それを言ったら――」
レミリア「――こいし。貴方、あの場にいたの?」
こいし「うん。みんな忙しそうだから、ドーナツだけ貰ってから出ていったけど」
ルーミア「え、なんの話?」
早苗「くっついたとか、生えてきたとか、さっきから何を言ってるんですか?」
こいし「あれ? え? なんでみんな知らないの? 妹紅が変な罠みたいなのに引っかかって、脚がちぎれるくらいの大怪我してたじゃん
 

03

ルーミア「――大怪我?」
てゐ「――罠? なんのこと?」
こいし「ほら、咲夜がいつもご飯を作ってるところにあったやつだよ」
早苗「――もしかして、厨房の大量の血のことっすか!? いやいや待ってくださいよ。あの血溜まり事件って、妹紅さんの怪我が原因だったんすか!?
妹紅「いや、その。参ったなぁ……」
ナズーリン「こいし。君が言っているのは、DDSルームの端末破壊事件があった日――つまりDAY02に射命丸が厨房で発見した血溜まりの話かい?

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こいし「DDSルーム? そうそう、その日だね」
てゐ「ずっと疑問だったんだよねえ。あんたが放浪と修行の末に得たっていう『火炎操作』のほうはともかく、蓬莱の薬を飲んで得た『再生能力』。『不老不死』だけじゃなく、『あらゆる傷が瞬時に治る』ってやつ。実はそれもそのままなんじゃないの? これは例えば――勇儀や文の、種族としての筋力や身体能力と一緒だ。チルノが長時間サウナに入ると溶けてきちゃうのとも同じ
咲夜「――お嬢様。これはやはり私の責任です。どんな処罰も受け入れます」
レミリア「もう、何度も言っているでしょう。全部私が悪いのよ。このメンツで最初から隠し通せるはずもなかったのね。みんな、ちょっとごめんね。今回の事件とは少し関係ないことを打ち明けたいのだけどいいかしら? 今話に出た厨房の一件なんだけどね――」
咲夜「あの血は私の仕掛けた罠に脚を踏み入れてしまった妹紅さんが、怪我をした時に発生した物なのです
マミゾウ「罠と言えば――極上の凶器の〈トラバサミ〉か?
咲夜「はい。私が配られた凶器は、皆さんの前でお見せした〈ナイフ〉。そしてお嬢様に配られた凶器が〈トラバサミ〉でした

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早苗「そんなことが……。だから、あんな大量の血があったんすねえ。それに――」
魔理沙「ああ。私達が部屋から盗み出した凶器のうち、一つだけ見つけられなかった物があったんだ。それが今話に出た〈トラバサミ〉だった。ずっと厨房に仕掛けられてたのなら、確かに回収は無理だな
霊夢「あんた達、凶器は全部回収したんじゃなかったの?」
魔理沙「だ、黙ってて悪かった……」
レミリア「悪魔の館に侵入し、無礼千万にも吸血鬼との謁見を望む不届き者を返り討ちにするための牙。ふふ。私にぴったりの凶器でしょう?」
早苗「――え? 以前神奈子様達と一緒にお邪魔した時、私達のことめっちゃ歓迎してくれませんでした? 宴会だって紅魔館の皆さんが主催で何度も開いていますし。大図書館に個人的に遊びに行った時だって、小悪魔さんがお茶まで出してくれましたよ?」
レミリア「……咲夜。とりあえず帰ったらパチュリーに言って、大図書館の適当な所にでも罠を設置させなさい」
咲夜「それは恐らくパチュリー様の許可が下りないですね。小悪魔を始め、出入りする妖精やホブゴブリンが怪我をする危険性が出てきますので」
レミリア「……先を続けなさい」
咲夜「それでは失礼します。私がお嬢様にお借りした〈トラバサミ〉を厨房に仕掛けたのは、ゲーム初日の夕食後からです。その日は誰も罠に掛かることなく、次の日にも罠はそのままでした。皆さんが厨房に入りそうな時は罠を適当な場所に隠しつつ、食堂に誰もいない時を狙って罠を設置しました。深夜には一切〈トラバサミ〉は設置せず、厨房の隅に隠しておきました
青娥「つまり咲夜さんの〈ナイフ〉によるデモンストレーションの後、ほとんどの時間に〈トラバサミ〉が設置されていたのですね?」
咲夜「はい。DDSルームの端末破壊事件――その日の午後に妹紅さんが厨房の〈トラバサミ〉を踏み、大怪我をしてしまいました」
妹紅「ああ、でもみんなに助けられたんだよ。私一人の力じゃ、〈トラバサミ〉を外せなかった」
てゐ「みんなって、誰さ? まず、〈トラバサミ〉を仕掛けた咲夜が手伝ったのはわかる。でもそいつ、片手を怪我してるじゃん。咲夜一人の力では絶対に〈トラバサミ〉を外せるわけがないよね? 妹紅自身で罠を外すことも出来るかもしれないけど、それでも人数が足りないんじゃないの?

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咲夜「妹紅さん、さとりさん、皆さんにお話してもよろしいですか?」
妹紅「うん。私は構わないよ?」
さとり「ええ。お願いします」
てゐ「へ? なんでそこでさとりが出てくるのさ?」
咲夜「――妹紅さんの足に食い込んだ〈トラバサミ〉を外すためには、片手を怪我している私一人の力だけでは到底無理でした。具体的には①私と、②近くを通りかかったさとりさん、③お部屋からお呼びしたお嬢様、この三人の力で〈トラバサミ〉を外しました
レミリア「そう。そこなのよ! 聞いてくれる? 部屋にいた私に咲夜が報告しに来たんだけど、この子ったら私も手伝うって言ったら、やれ『従者の失態ですので』だの『お召し物が汚れます』だの、頑なに手伝わせようとしないのよ。全部無視したけど。そんな状況、命令した私に全責任があるに決まってるじゃないの」
咲夜「お嬢様……」
レミリア「罠を外すのに力を貸しただけじゃなくて、ちゃんと厨房の掃除も手伝ったわよ? 掃除用具一式はトラッシュルームでまとめて処分したけど。血の量が本当に多過ぎて、厨房の奥の方の掃除が間に合わなかったのよ。掃除をしているうちに勇儀が夕食を作りに来たから、急いで作業を中断したわ
早苗「そういえば勇儀さんが食事当番だった日もありましたね」
ルーミア「夕飯がお茶漬けしか出なかった時だ……」
さとり「私は皆さんの心が読めます。このままでは誰かが近いうちに怪我をする――不安に駆られた私は図書室と厨房の間を何度か行き来していました。だからこそ妹紅さんの身に起きた事にも気付くことが出来ました
ナズーリンそもそも、何故厨房に〈トラバサミ〉を仕掛けたのだ? 咲夜にとっては、ほとんど自分の領域みたいな物かも知れないが、厨房に罠を仕掛けることになんらかのメリットがあったのか?
咲夜「それは――」
ナズーリン「妹紅にだって訊きたいことがある。仮にも〈トラバサミ〉だぞ? いくらなんでも昼間の厨房に居て、そんな大きな罠に気付かないはずがないだろう
妹紅「――あの時さ。お茶が飲みたいと思って食堂に行ったんだよ。ほら、私の部屋って、さっき見て貰った通りなんもかんも空っぽで、急須とか冷蔵庫とかそういう生活用品を一切置いてないから

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ナズーリン「ふむ?」
妹紅「それで食堂に行ったらさ、咲夜が鼻歌混じりに掃除してたんだよ。だから邪魔しちゃ悪いと思って、勝手に厨房に入ったんだ。それで急須と茶葉を探していたら、うまそうなドーナツがラップに包まれた皿に置かれててさ、それで――」
ナズーリン「足元の罠にも気付かずに、ドーナツをつまみ食いしようとして大怪我をしたというのか?」
てゐ「……呆れて物が言えない、ってこのことだよ。あんた、竹林の中でもそうだよね。鈴仙の次にしょうもない罠に引っかかるし。そもそもあんたも姫様も死なないからか、身を脅かす物に対して警戒が薄い所があるしねえ
咲夜「私は妹紅さんとさとりさんに謝罪をしました。そしてお二人は私とお嬢様を許してくださいました。お詫びとして、犯行に使われた〈トラバサミ〉を譲渡しようと考えました
妹紅「私は受け取らなかったぞ? 部屋に誰かが遊びに来た時に引っかかるのも嫌だし、DDSルームのルール解禁なんて知らなかったから
さとり「妹紅さんが固辞したので、代わりに私が受け取りました。もちろんどこにも仕掛けていませんよ? 誰かが罠にかかってしまう危険性がありますので。ただ、トラッシュルームに凶器を処分することに気が引けたのも事実です。何人かの心を読むことで、DDSルームのボーナスルールについても知りましたので
レミリア「――ねえ、妹紅。改めて私達のことを許してくれる?」
妹紅「ほんの出来心だったんだろ? 私を殺すつもりだったら、あの後一生懸命に私を助けようとするわけがないからな。もう終わったことなんだし別にいいって」
レミリア「! 妹紅、ありが――」
魔理沙「おい、待てよ。レミリア、咲夜。お前らそこまでぶち撒けといて、なんで最後まで真相を話さないんだ? みんなも疑問に思ったろ? なんでさとりは頻繁に食堂を確認しに行っていたのか
ナズーリン「ふむ?」
霊夢「……」
魔理沙霊夢。お前も既に気付いてるんだろ? レミリア達は不特定の対象を罠にかけようとしたんじゃない。こいしをピンポイントで殺すつもりだったんだよ
 

04

こいし「え! 私が狙われていたの!? どうしてどうしてー?」
妹紅「お、おい。魔理沙、なに言ってんだよ? あれは勝手に私が引っかかっただけであって――」
魔理沙レミリア、私はどうにもお前が気に入らない。お前、フランのことを――妹のことを大切にしていただろう。それなのに、どうしてさとりの妹の命を狙った?」
早苗「魔理沙さん、あの――」
魔理沙レミリアには、こいしと似た妹がいるんだ。『フランドール・スカーレット』という名前のな。早苗も会ったことがあるはずだ。こいしに対して有効な凶器を持ち合わせていたとはいえ、それがこいしを狙う理由にはならない。レミリア、はっきり言えよ。他人の家族なら、別にどうなっても良かったのか?」
レミリア「……」
マミゾウ「魔理沙よ。勝手に話を進めるでない。レミリア達がこいしを狙ったという論拠を示さんかい」
魔理沙「まず、何人かのプレイヤーはとっくに気付いているだろうが、咲夜は利き手を負傷した後でもそれなりに会場の仕事をこなしている。マミゾウ。お前なら、これがどういうことかわかってるよな?」
マミゾウ「――利き手を潰したはずの咲夜は、わしが見る限りでも仕事にそれほどの影響はなかった。わしは最初、咲夜が左利きなのではないかと疑った。だが利き手でないほうを傷つけてしまっては、咲夜はレミリアの命令に背くことになる。その疑問の答えは一つ。咲夜が実は両利きだからじゃろう?」

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魔理沙「その通りだ。そして咲夜は利き手のことで食堂にいた何人かのプレイヤーを騙した後、貴重な凶器であるはずの〈ナイフ〉まで放棄した。どうしてか? ルーミア仮にお前がその段階で〈暗視ゴーグル〉以外の武器を持っていたとして、お前だったら誰を狙う?
ルーミア「……?」
青娥「ちょっと意図を汲み取り辛い質問だったかも知れませんね。ルーミアさん、あの時はまだ私が凶器のリストを拡散する前でしたよね? 咲夜さんは『利き手が使えない状態』かつ『一切の凶器を所持していない』ことを示しました。さて、その段階で一番命を狙われやすいのは誰だかわかりますか? もし貴方だったら誰を狙いますか?

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ルーミア「え? そんなの私なら咲夜を真っ先に狙うよ? だって『一切抵抗する手段が無い』ってわかってるなら、安心して奇襲を仕掛けられるし
魔理沙レミリア達は何故不可解とも言えるデモンストレーションを行ったのか? その答えはな。あの時食堂に居た『とあるプレイヤー』に自分を狙わせるためだったんだよ。幻想郷で咲夜との交流が薄い、そんなプレイヤーにな
早苗「……そういうことだったんすか。まず、私や霊夢さんや魔理沙さんのような、咲夜さんと比較的交流のある人物は絶対に騙せませんよね? 主であるレミリアさんだって当然咲夜さんの利き手を知っています」
ナズーリン大抵のプレイヤーは共同生活を送っていくうちに咲夜の嘘に気付くことが出来る。例えば夕食の準備を一緒に行っている時、などにな。つまり――」
マミゾウ「会場の生活ルールを決める際、姿が見えなかったがその場には居た可能性が高い人物――こいしに対してのデモンストレーションだったわけじゃな
こいし「うん! 確かに最初の日に私もあの中に居たよ!」
ナズーリン確か咲夜は『普段個人で携帯している武器の有無』についても確認していたな。あれは我々の所持武器を確かめるためではなく、自分自身が持ち歩いている武器が皆無であることを、こいしに伝えるためだったんだな?

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早苗「いや、魔理沙さん。ちょっと待ってくださいって。うろ覚えですけど、咲夜さん何か言ってませんでしたっけ? 『毒は入れない』とか、『食事中のプレイヤーを殺さない』とか」
魔理沙「『料理に毒を入れさせるな』、『食事中に殺人を起こすな』、だろ? あれは別に出鱈目や嘘じゃないんだ。だからこいしがドーナツを食ってる時に殺す気もなかったんだろうよ。ドーナツにありつく前に、あるいは食い終わった後に殺すつもりだったんだから

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早苗「そんな……」
咲夜「――魔理沙私は決してこいしさんを殺そうとなんてしていないわ
魔理沙「ふん。つまらない嘘をつくなって。そうだ。これも聞いておくか。DAY03のメッセージも、お前が朝に書いたやつだよな? もう片方の利き手でな」

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レミリア「……え?」
魔理沙「咲夜。DAY03の朝、お前はすぐには私達の前に姿を現さなかったよな? 飯の準備をしていたとかで
咲夜「……ええ」
魔理沙「普段のお前だったら有り得ないだろ。朝食を作る手を止めてでも、まず私達に挨拶に来るのがお前なんじゃないのか? 本当はあの時厨房にお前はいなくて、時間を止めてから厨房に入ったんじゃないか? 偽物のメッセージについてのアリバイを作るためにな
早苗「え、そうだったんすか?」
咲夜「はい。お察しの通り、私は皆様が会話をしている途中で入室しました。皆様の後に厨房に入ることになったのは、完全に私の失態です。皆さんの世話はお嬢様から直々に仰せつかっておりますので。私にとって一番恐ろしいのは、本来の仕事を遂行出来ないことであり、皆様の後に朝の食堂に行くことなど、言語道断です。早朝の飲み物を所望されればすぐに用意し、蒸したタオルが必要な方には渡す。それくらいでないと――紅魔館のメイド長失格です」

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レミリア――待って。メッセージの件については把握してないわ。私はそんな命令は出してないわよ? 確かに一度は古明地こいしを標的にしたけど
ルーミア「それってつまり、魔理沙の言った通りだったってこと?」
魔理沙「ふん。ようやく認めたか。そうは言っても、咲夜の他に誰がそんな物を書くってんだ? レミリア、お前が書いたのか?」
レミリア「そんなことするわけないじゃない。妹紅の件があって、こいしは完全にターゲットから外したんだから」
ナズーリン魔理沙。口を挟ませて貰うぞ。あのメッセージは咲夜が書いた物ではないんじゃないか?」
魔理沙「どうしてそう思う?」
ナズーリンあの文字は青娥が書いた物の可能性が高いんだ
青娥「あら?」
ナズーリンあの後で私は、素人なりに筆跡鑑定を行ったんだ。体育館前のメッセージと見比べてみると、筆跡は青娥が書く癖のあるものに非常によく似ていた
てゐ「ふーん。あんたも『凶器のリスト』を取得してたんだねえ」
ナズーリン「……あ」
てゐ「十中八九あんたは凶器を取得していると思ってたけどねー。〈ダウジング〉を使えるのがわたしだったとしても、同じことをすると思う。検索系の能力を持つのが会場に一人だけってことは、他のプレイヤーから凶器の有無を指摘されることがないからねえ」
ナズーリン「きょ、凶器は手に入れていないぞ!? どうしてもゲームで無駄なく動くためには凶器のデータは必須なのであってだな。それに私は――」
てゐ「はいはい」
魔理沙さとりが直に見た鑑定でもそうだったらしいな。『癖の強い字を書く』って

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ナズーリン「ああ。それに咲夜が体育館前にメッセージを残すとしたら、普段の仕事に差し支えがない時間に済ませるに決まってる。夜の分の家事が終わった後、とかな
青娥「ナズーリンさん。魔理沙さん。議論中ごめんなさいね。これからもっと議論が楽しくなってくるのに、そこを説明しとかないと面倒くさいので、私が全部教えちゃいますね」
魔理沙「なんだ?」
青娥「あれって実は、私が咲夜さんに頼んで急遽書いて貰った物なんですよ
さとり「……」
ルーミア「え?」
魔理沙「お前が咲夜に書かせたのか!? なんでだ!?」
青娥「ほら、私って結構朝が弱いじゃないですか
ルーミア「そうだよね。青娥も私みたいにのんびり起きるほうだよね」

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青娥「はい。だからDAY03もゆっくりお着替えして、お化粧して、それから皆さんの部屋を〈壁抜け〉で一回りしたんですよ
てゐ「は!? 何さらっと人の部屋に不法侵入してんのさ!」
青娥「まあまあ。それで誰の部屋にもこいしさんのメッセージが無いのを確認してから、『これじゃまずいんじゃないか』と思いまして。だから咲夜さんにお願いしちゃいました。咲夜さん、本当にご迷惑おかけしました」
咲夜「……私は青娥に脅迫されました。『昨日の件を黙っていて欲しいのなら、一つだけ願いを聞いて欲しい』と。そうやって、偽装メッセージの原文を渡されました。『筆跡を真似つつ、今日中に必ず誰かの目に止まる場所にメッセージを書き残してください。メッセージを書いた後は、この原文は処分しておいてください』と
レミリア「……」
てゐ「なんで筆跡まで真似させたの?」
青娥「え? 私何度も文さんにアプローチを仕掛けていたじゃないですか。だから今回も意図に気付いて私に会いに来てくれるかも知れないなーって思って。残念ながら事件に巻き込まれ、DAY04には帰らぬ人となってしまいましたが」
マミゾウ「青娥。言葉は慎重に選べよ? 一回目の事件は、全てお主の差し金だったじゃろうが」
ルーミア「ねえ、青娥が書かせたメッセージの意図って、なに? 偽物のメッセージって、どうしても身内であるさとりにバレちゃうでしょ?
こいし「私も訊きたいなー」
青娥「――こいしさんが忘れ去られないようにするためです。ルーミアさん、最後にこいしさんの本物のメッセージが残されていたのはいつでしたっけ?」
ルーミア「最後? DAY01の、マミゾウの部屋にあったやつだっけ?」

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青娥「その通りです。そしてそれ以降、今日のDAY07まで古明地こいしさんが残したと確証の持てる証拠品は会場から消えます。最後のメッセージから、五、六日も空いてしまうわけです。これがどういうことかわかりますか?
てゐ「――プレイヤー全員が、こいしの存在を忘れる危険性がある、って言いたいの?」
青娥「御名答ですわ。普段姿が見えないとはいえ、こいしさんだって私達と共同生活を送るプレイヤーです。それが皆さんに忘れ去られるなんて、余りにも悲しいとは思いませんか?」
ルーミア「……なんだ。やっぱり青娥って優しいじゃん」
青娥「あら、惚れ直しちゃいました?」
ルーミア「それはないかな」
さとり「青娥さん。――その言葉の半分は嘘、ですね
紫「古明地さとりさん。今回は許しますが、〈読心〉で得た情報を他人と共有するのはルール違反です」
さとり「……」
マミゾウ「青娥よ。わしにもお主にそんな殊勝な心掛けがあるとは思えんなあ。こいしが忘れられることを避けたい、という部分は本当のことじゃろう。だが本当は、こいしの学級裁判における一人勝ちを防ぎたかったのではないか? なんせ、『存在を覚えていないプレイヤー』に投票することは出来ないのじゃからな
妹紅「ん? それってそんなに意味があることなのかなあ。ほら、例えばプレイヤーカードなんかには、しっかりこいしの写真が載ってるだろ?」
青娥「本当に皆さん全員で、確実にこいしさんを覚えていられるかしら? さとりさんがいなくなっても、皆さんはこいしさんを一日も忘れずに覚えていられますか? 現に例のビデオテープに映っていた被害者は、古明地さとりさんだったらしいじゃないですか

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妹紅「そう言われてみると、うーん……自信なくなってきた」
咲夜「――お嬢様、独断で動いてしまい申しわけございませんでした」
レミリア「別に貴方が必要だと思ったら、好きに行動してくれて構わないわよ。私が直接下した命令には、従って貰いたいけど。それと青娥、一ついい?」
青娥「なんでしょうか?」
レミリア「自分一人で出来ることを、なんで咲夜にやらせたのかしら?」
青娥「えー? だって塗料でお洋服が汚れてしまうじゃありませんか。きゃははは!」
レミリア「……ふん。次はないわよ」
魔理沙「まあ、青娥にそういう意図があったんなら別にそれでもいいさ。それで誰かを直接殺そうとしたわけじゃないのなら。それよりレミリア。一番気に入らないのは、『さとりは〈読心〉で得た情報をみんなに話せない』ことを見越してこいしを狙ったことだよさとりが食堂に対して注意をはらっていたことだって、本当はこいしが心配だったからだろうからな。本当に最低だよお前ら」
霊夢魔理沙! それは違う!」
魔理沙霊夢。お前は紅霧異変が終わった時から、どちらかと言うとレミリアのほうに肩入れしているみたいだが、私は違う。私はずっとフランの味方だぜ? 妹を長期間閉じ込めていたこいつを、私はまだ完全には信用していない」
霊夢「……魔理沙レミリアは恐らくこいしの動きを止めた後、ずっとどこかに隔離するつもりだったのよ。当然さとりにも事後承諾を得た上でね。決して殺そうとしたわけではなく、きちんと治療も行うつもりだったはずよ
魔理沙「おい、本気で言ってんのかよ。〈トラバサミ〉だぞ? こいしの細い脚を見てみろよ。恐らく罠を踏んだ瞬間に真っ二つだぞ? レミリア。お前、やっぱり何も変わってないな。そういう手段でしか扱いに困る物に接することが出来ないのかよ」
霊夢「――魔理沙、あんたいい加減にしなさいよ」
魔理沙「――あ?」
霊夢レミリアは幻想郷で今、フランの姉としての務めを立派に果たしているわよ? 既にフランを外とも交流させているし、異変解決の際にレミリア自身が出向いたこともあった。紅魔館の住人でもない部外者の貴方に、家庭の問題にとやかく口を出す権利があるの?」
レミリア霊夢……」
魔理沙「はいはい。紫やお前は、幻想郷が第一だもんな。そこに住んでいる一人一人のことなんていちいち気にしてられないよな」
霊夢「――は? 何が言いたいのよ? 私が本当はあんた達のことなんかどうでもいいと思ってるとでも?」
てゐ「はいはい、そこまでにしときなって!」
マミゾウ「二人ともやめんか! 霊夢魔理沙、今日はどうしたんじゃ?」
霊夢「……頭に血が昇ってたわ。ごめん」
魔理沙「……ああ。こっちこそ悪かったよ」
紫「魔理沙。先程の発言、幻想郷の管理者に対する忠告として受け取っておくわ」
レミリア「……こいし、さとり」
さとり「はい」
こいし「なーに?」
レミリア「……本当にごめんなさい。償いはするわ」
さとり「結構です。私はいいのですが、こいし――貴方は彼女を許しますか? 今までの話を聞いた上で、それでも一人のプレイヤーとしてゲームに参加し続けますか?」
こいし「なんで?」
さとり「なんで、って……。貴方は紅魔館の二人だけでなく、ほとんどのプレイヤーから危険な存在だと思われているのですよ?」
こいし「うんうん」
さとり「命を狙われるのは当然だとして、逆にその力を利用しようとするプレイヤーも出てくるでしょう。私の意見としては――貴方は私達の生活から完全に離れて、どこかに隠れているべきだと思います。他の能力ならともかく、〈無意識〉には可能なのですから」
こいし「へー」
さとり「……本当に貴方との会話は要領を得ないですね。それで、どうですか? 貴方は今までの皆さんの行動について、どう思いますか?」
こいし「どう、って――」
さとり「……」
こいし「――めっちゃくちゃ嬉しい!」
さとり「……はい?」
マミゾウ「なに!?」
妹紅「命を狙われたんだぞ!? なんで?」
こいし「レミリア達に命を狙われていたことも嬉しいし! 青娥が私の存在が忘れ去られないように計らってくれたことも嬉しい! 私が議論の中心になってるの、すっごくいい!」
霊夢「……あんたの妹、ほんとに変わってるわね」
こいし「そんなことないよー! だって、みんなの中から存在が消えるのって、いっちばんイヤなんだもん!」
さとり「こいし……」
霊夢「さとり。気持ちはわかるけど、やはり貴方の妹を野放しには出来ない。だから私達は絶えず、彼女を一人のプレイヤーとして認識し続けなければならない。そのことで彼女がゲームに敗北することがあったとしても。もちろん彼女の命を奪おうとは思っていないけど。そこはわかって貰える?」
さとり「ええ。大丈夫です」
こいし「だからこの裁判が終わってからも、私はゲームに積極的に参加するから、みんなよろしくねー! いぇーい!」
早苗「なんとも、個性的な子ですねえ……」
ナズーリン「全くだな。だが聖は彼女のその精神性に、可能性を感じてもいるのだが……」
さとり「貴方も皆さんと共に議論に参加し、事件の真相に迫りたいと思っているのですか?」
こいし「やりたーい! 殺人犯役も面白かっただけど、名探偵役も面白そう!」
さとり「――わかりました。それでは皆さんの輪の中に入るために、まず貴方には先にやるべきことがあるのです。それが何かはわかりますね?」
こいし「みんなにギフト券を配るとか?」
さとり「違います。今回の事件で貴方が関与した部分について、きちんと話せばいいのです。紫さん、〈読心〉で得た情報以外なら、あるいは私自身が得た情報から推理して生まれた結論なら、私の口からでも皆さんと共有して構いませんね?」
紫「ま、そのへんはゆるーく判断していくわ」
こいし「楽しみだなー。DAY04以降に私が動いていたって証拠、お姉ちゃんには見つけられるかなあ。うふふ」
さとり「……あのねえこいし。貴方が関与していたことなんて、そんなのとっくにわかってるに決まっているでしょう。あのカチナドールはうちのリビングにあった物なんですから
 

05

てゐ「嘘!?」
こいし「あー! それ普通にバラしちゃ駄目だよ! 推理とか全然関係ないじゃん!」
魔理沙「――あれ、やっぱりそうだったのか?」
さとり「ふふ。『部屋で人形をじっと見つめていたら、なんだか地霊殿の中でも見たことがある気がしていた』ですか。はい、正解です。あれは旧都のアンティークショップで見掛けて購入し、リビングに何年か前から飾ってあった物です」
てゐ「……え? あんな悪趣味な物、あんたんとこの居間に飾ってあったの?」
魔理沙「おいおい。異国情緒溢れる、かっこいい人形だろ? 後でアリスにも見せてやりたいぜ」
霊夢「いや、さとりが本来の持ち主だってわかったんだから、きちんと返しなさいよ」
さとり「いいえ、魔理沙さんに差し上げます」
魔理沙「本当か? サンキュー」
早苗「あの、すみません。こいしさんに聞きたいんですけど、最初の二日間にメッセージを書き残しましたよね? あれってなんでやめちゃったんですか?
こいし「え? メッセージなんて書いたっけ?」
さとり「こいし、貴方が書いた物なんだから忘れないでください。紙に書いて説明します。間違いがあったら指摘してください」

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早苗「ええと、これで合ってると思いますよ?」
てゐ「表がスカスカだねえ? ん? DAY06のメッセージは、本来の日付より一日ずれてない?
マミゾウ「一日程度のずれなら、発見時のタイミングも関係あるのかも知れんのう」
ルーミア「……」
早苗「DAY03の時に体育館前にあったメッセージは、青娥さんが咲夜さんに書かせた物なんすよね? じゃあDAY06の、図書室内にあったメッセージって誰が書いたんすかね?
咲夜「それについては後で議論しましょう。さとりさん、表に書き出した意図は?」
さとり「――今から書き足すことが、こいしが部屋に書いたメッセージの真相だからです」

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魔理沙「なんだこれ? もしメッセージが毎日書かれてたらこうなってたってことか?
早苗「そういえばこいしさん。どうして最初にさとりさんとマミゾウさんの部屋を選んだんですか?」
こいし「え? 私がお姉ちゃんやマミゾウおばあちゃんを真っ先に狙うわけ無いじゃん
マミゾウ「なあ、こいしよ。前にも言ったが、わしはお主より年下じゃぞ? まあ、構わんが……」
早苗「あの――もしかして、部屋にメッセージが書かれた人物は、殺害対象から外れていた、ってことっすか?」
こいし「あったりー!」
咲夜「そういう意図でしたか。ですがそれだとDAY13の殺害決行期日には、最終的に一人ではなく、二人が指名されないままになりますね。何故一人ではなく、二人なんですか?
こいし「だってルールブックに書いてあったじゃん。一人のプレイヤーが殺せるのは二人までだって。一人殺すよりも二人殺したほうが裁判に勝つ確率が上がるでしょ?

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咲夜「そ、それは、どうでしょうか?」
レミリア「……こいしにとってはそういう計算になるのね。ちなみに、DAY02以降にメッセージを書こうと思っていた部屋は?
こいし「ええとね。DAY02には、ナズーリンの部屋にメッセージを書こうと思ってたんだ。聖のお弟子さんだし、お寺で優しくしてくれたから。その次は、地底で私やお姉ちゃんがお世話になっている勇儀さん。後は、そうだなあ。以前お空の暴走を止めてくれた人達かなあ。霊夢魔理沙みたいに」
魔理沙怨霊異変の時か。あの時にいたメンバーでプレイヤーにも居るのは、私と霊夢と文――」
早苗「――そして私、ですか」
霊夢「いや、あんたあの時地底に潜ってすらいないでしょ。そもそもあんたの所の神様が――まあいいや」
ナズーリン「私は厳密には聖の弟子ではないのだが……。それならばこいし、どうしてDAY02以降にメッセージを書くのを止めたんだい?
こいし「それがね――そこのおばさんが後出しするのが悪いんだよ!
紫「お、おばさん!?」
霊夢「あら、ご指名よ? 紫おばさん」
紫「――只今を持ちまして、今回の学級裁判は博麗霊夢一人の敗北とさせていただきます」
ナズーリン「ふむ。では帰らせて貰うか。私は朝が早いものでね」
てゐ「やったー! みんなお疲れ様ー。霊夢の処刑が終わったら、この前の裁判後みたいに休憩の日?」
早苗「じゃあ、明日は?」
魔理沙「早苗――そのネタだけは絶対に拾わないぜ? 何があってもだ」
早苗「す、すみません……」
霊夢「あんた達本当に仲良いわね」
こいし「……あの、続けてもいい? 私はわざわざスーパーマーケットからペンキを盗ん――借りてきて文字を書いたの。それなのにDAY02の朝にDDSルーム前でこの会場にはまだプレイヤーがいるって言ってたじゃん? そんなことされたら、殺害予告のカウントダウンがずれるんだよ! わかる!?」
レミリアそれってもしかして、〈17人目〉のことかしら?

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こいし「そうそう! 今更日付をずらしたらみっともないじゃん! だからカウントダウンは止めちゃったの
青娥「カウントダウンが残り一日になった時に、予告されていないプレイヤーが三人も居ることになりますものね
さとり「……そんなことだと思ってたわ。貴方って飽き性だものね
咲夜「そのカウントダウンの中断が――DAY05の人形設置に繋がってくるわけですか
妹紅「あの人形、私達はプレイヤーの全滅を狙って設置した人形だと結論付けたんだけど、実際の所はどうなんだ?
こいし「ええとね。休憩日の前に聞いたんだ。そこのおば――」
紫「……」
さとり「こいし。言葉には気を付けなさいと常日頃から言っているでしょう?」
こいし「――紫が言ってたんだけど、プレイヤーが全滅すると誰も報酬を貰えないんだよね?
妹紅「私もそう聞いた。――ということはチルノと同じ質問を紫にぶつけたプレイヤーって、こいしのことだったのか?

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こいし「そうだよー」
ナズーリン「ふむ。疑問だったんだが、何故14体なんだ? 〈17人目〉を含めればプレイヤーは15人のはずだろう? 君は〈17人目〉のことを、DDSルーム前で既に訊いていた。なら人形も15体のはず。その14体は誰を想定して設置したんだ?
てゐ「何言ってんのさ。まんまじゃん。あの時残っていたプレイヤーが15人で、こいしを含めないなら14人であってんじゃん」
ナズーリン「部屋のメッセージの話では、何人かのプレイヤーは見逃す対象だったのでは?」
こいし「うーん、確かにみんな友達だけど、絶対に殺したくないってわけじゃないんだ。私がこの会場で何があっても殺すことがないのは、お姉ちゃんだけだよ。ごめんね」
マミゾウ(この子は――こういう事を、さらっと言ってしまうのか)
マミゾウ「それでは、何故14人なんじゃ? それならばお主とさとりを含めない、生き残っている12人のプレイヤー+〈17人目〉で人形は13体のはずじゃ
こいし「え? 私自身は別にどうしても死にたくないわけじゃないよ? だってそういうゲームなんでしょ?
魔理沙「おい、まさか――」
早苗「こいしさん自身も、こいしさんの殺害対象に含まれてるんですか!?」
こいし「もし全滅狙いだったらね。でも、多分私がお姉ちゃん以外の全員を殺したら、直後に『追放』ってのになるだけなんじゃないの? そんなの全然怖くないよ。だって処刑されるわけじゃないんでしょ?」
さとり「こいし、貴方はなんでそんな風に……」
咲夜「お嬢様。これは一体――」
レミリア「彼女ってフランに似ているから、考えていることもなんとなくわかるわよ」
さとり「レミリアさん……」
レミリア「こいしはきっとね。〈17人目〉を含め、姉以外を全滅させようとしていた。そして自らも死ぬか追放されるつもりだった。さとりだけを生き残らせるためにね
咲夜「ちょっとわかりません……。それならば姉妹でゲームに勝つほうがずっと建設的だと思うのですが」
レミリア「建設的? 逆よ。彼女は破滅的な思想を持っているの。こいしは試したかったのよ。さとりが一人で優勝した後に何を望むのか? こいしを生き返らせるのか、あるいは他の願いを叶えるのか。あるいは――死を選ぶのか
てゐ「……」
早苗「……」
妹紅(難しい子だな。月から来た『あいつら』も何を考えているのかわからない時があるが――この子は恐らく、普通に何かを考える能力そのものが欠如しているのかも知れない)
さとり「皆さん、気持ちはわかりますが、もっとこいしの話を聞きましょう。人形を設置した貴方は、次に何をしましたか?」
こいし「ん? もちろん〈香水〉を試しに使ってみたんだよ?

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魔理沙「え!? おい、やっぱりDAY05の昼飯の後に飲んだ茶には〈香水〉が入ってたのか?
こいし「うん! でも〈消臭剤〉はその時一切使ってないから安心して!」
早苗「いやいや、そういう問題じゃないっすよ!?」
マミゾウ「こいしや。凶器の種類と番号は青娥が配った凶器のリストで知ったのじゃな? 誰かのリストを盗み見て、他の凶器の存在を知った上で、その二つの凶器を選んだのか?」
こいし「そうだよ! 新ルール解禁とほぼ同時にルールブックが光っていることに気付いたから、それで〈香水〉と〈消臭剤〉をゲットしたんだ。〈香水〉と〈消臭剤〉がワンセットなんて、すっごく面白そうじゃん! 凶器の色合いだって私とお姉ちゃんっぽいし。ちなみに、他の凶器は手に入れてないからね? 万が一運試しで死んだらゲームに参加出来ないし。それでティータイムの話なんだけど、お茶に全然口を付けない人もいたね。魔理沙は飲んでたけど」
魔理沙「……あぁ、変な味だったな」
レミリア「私も飲んだけど、二度と飲みたくない味ね」
こいし「ちなみに、その場に居なかった青娥には飲ませてないよ
青娥「皆さんの話を聞いていると、そこまでおかしな味なら飲んでみたくなってきますねえ」
ナズーリンこいしは全員に確実に〈香水〉を飲ませるために、夜になってから貯水槽に直接〈香水〉を投入した。そういうことか?」
こいし「せいかーい! もちろんみんながお風呂に入ったりとか、水を使いそうな時間を狙ってね。それなら結構な数のプレイヤーが〈香水〉を身体に入れると思ったし。でもね。確認のために宿舎エリアのトイレに入って、洗面台の水を流したんだだけど全然緑色に染まってなかったんだよ。おかしいよね!?」
ルーミア「確かに変だね。〈香水〉って色が付いているんでしょ? だったら蛇口からは緑色に染まった水が出てくるはずだよね。貯水槽は緑色に染まっていたのになんでだろ?」
ナズーリン「ああ、それなら貯水槽内で油のみが上部に分離したせいだ。確か極上の凶器の〈香水〉は油性が強かったはずだ
魔理沙「あー……そういえばそうだっけ。よくそんな一文覚えてたな。全く、私もあの時なんで気付かなかったんだか」
こいし「え、意味わかんない。どういうこと?」
ナズーリン水と油を混ぜると、油の部分が表面に浮かぶんだ。油というのは水より軽いからな
魔理沙「分子同士が引き合う力を表面張力って言うんだが、水には水の、油には油の表面張力がある。似たような表面張力の液体なら溶け合うんだけど、水と油には表面張力にかなりの開きがあるんだ。だから界面活性剤でも混ぜないと、水と油は溶けない。界面活性剤っていうのは――ほら、石鹸とかに含まれてるやつだ」

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早苗「あれ、なんで魔理沙さんって、そういうこと詳しいんすか? 私もどちらかと言われると理系人間ですけど」
魔理沙「そりゃあ毎日のように、薬品の調合とか、魔法の開発とかやってりゃ、嫌でも詳しくなるっての。基本は魅魔様に叩き込まれているしな」
ナズーリン油と水は分離したはずだが――実際には〈ダウジング〉の結果は上水道全体を示した。紫。運営の慈悲として、これだけでも我々に情報を与えて欲しいのだが、いくら水槽に多少なりとも浄化装置があり、尚且つ〈香水〉単体で見ればそれほどの量ではなかったとはいえ、上水道には既に〈香水〉に含まれていた毒の成分が行き渡っているのだろう?
紫「確かに不安の中でコロシアイなんてしたくないわよねえ。それくらいは教えてあげてもいいかしら。私達が使う水の中に、既に毒は混じっているわ。貴方達全員、〈香水〉を既に体内に取り込んでしまっている。ちなみに運営も全員毒を口にしているわ。私達がここで生活に使っている水は、貴方達と同じ物だからね」
ルーミア「え、嘘!?」
早苗「うへぇ……」
レミリア「まあ、〈消臭剤〉さえ飲まなければいい話だけどね」
咲夜「ん? それでは、こいしさんは運営に危害を加えたということになりませんか?
青娥「あらあら。ここで〈追放〉されちゃいますね」
こいし「えぇー!? まだ誰も殺してないのに!」
さとり「いや、それはもう止めなさい」
紫「うーん。そうは言ってもねえ。こういう〈香水〉の使い方って、本当に想定外だったのよ。だって自分も使用する上水に、普通毒なんて入れる? 本来ならルール違反で〈追放〉するべきなんでしょうけど、知っての通り私達は、〈17人目〉の情報を隠しているわよね? 『〈17人目〉への数少ない攻撃手段を思いつき、それを実行しようとした』と解釈して、今回は大目に見ようかしら」
こいし「あー良かった。〈追放〉されるのかと思った」
紫「それと、私達は確かに〈香水〉を飲んだけど、妙なことは考えないでね? 例えば橙を騙して〈消臭剤〉を飲ませたりなんかしたら――同じ手段で報復した後に、学級裁判抜きでそのプレイヤーを〈追放〉するわよ?」
霊夢「……」
魔理沙「……了解」
さとり「こいし、DAY05について他に話すことはありますか?」
こいし「他に? DAY05からDAY06になってすぐの時かなあ。つまり咲夜もレミリアも部屋に戻ってからだね。ええとね、水の色が変わってないのがなんでかよくわからなくて、念のため厨房の水道から出る水も確認しに行ったんだ。やっぱり緑色の水なんて出てこなかったけど。そしたら食堂で変な物を作っている人がいた
魔理沙「ん? もしかして祭壇のことか? ルーミアが夜に作ってた、ってやつ

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こいし「うん。ルーミアは祭壇を作り終えた後で――図書室に向かった
ナズーリン「図書室……?」
マミゾウ「ということは、だ。つまり――」
ルーミア「え? 全部こいしに見られてたの!?」
こいし「見てたよ。――ペンキでデカデカと文字を書いてたよね。しかも本の上から

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マミゾウ「そしてペンキで『残り8日』の文字を書いた後、書庫に文字を書く過程で生じた道具は捨てたというわけじゃな
こいし「そう。本当に最悪だよね」
マミゾウ「む……?」
こいし「読書家のお姉ちゃんがまだ読んでない本だって、いっぱいあったのに。信じられない」
ルーミア「ええ、と?」
さとり「こいし、貴方は少し勘違いをしていますね」
こいし「なんでさ。お姉ちゃんだって嫌だったんじゃないの? ルーミアが落書きした本の中にはまだ読んでいない物だって含まれていたかもしれないし」
さとり「あの棚の本は、既に全部読んでありました」
こいし「え?」
ナズーリン「いや、棚一つと言っても、かなりの分量だぞ!? たった一週間そこらで読み終えてしまったのか!?」
霊夢「そういえばあんた、図書室の本を読破する勢いで読んでたらしいわね」
咲夜「こいしさん、塗料が付着した本の中身って――確認しましたか?」
こいし「ん? してないよ?」
咲夜「ソフトカバーの書籍ならともかく、分厚いハードカバーの本でしたら、塗料はそれほど内部に浸透しません」
こいし「え、そうなの?」
さとり「……」
ルーミア「……」
こいし「え、ええと……」
レミリア「ほら。今はそのことを話している場合じゃないでしょ。こいし、人形のことについて訊きたいのだけど――」
こいし「ん?」
レミリア「あの人形は『アガサ・クリスティー』の著書、『そして誰もいなくなった』から着想を得た物よね?」
こいし「うん。以前読んだことがあったから」
レミリア「そう。貴方もミステリー小説を愛好しているのね。他には何か『見立て殺人』の計画は立てていたの? あの人形で最後にするつもりだった?」
咲夜(お嬢様は普段から読書は嗜んでいませんし、この前もミステリー『漫画』を読んでいただけですけどね)
こいし「ううん。魔理沙が人形を持っていったから、代わりの物を用意しようとしてた。だけどルーミアがいたでしょ? だから何も出来なかった」
早苗「代わりの物、と言いますと?」
こいし「最初の日みたいに、食堂にペンキでメッセージを書こうとしてたんだよ。でもさ、書庫のほうにメッセージがあって、更に食堂にメッセージを書くのって、なんだかおかしくない? かっこよくないっていうか。もう、本当に台無しだよ! 全部!」
早苗「あれ? ルーミアさんがずっと祭壇を作っていたから何かを仕掛けられなかったわけではないんすか?」
こいし「違うよ。犯行予告が二つもあるのって、なんだかださくて嫌だと思ったから書かなかっただけ」
ナズーリン「こいしの感性は、本当によくわからないな……」
霊夢ルーミア。今の話は本当なの?」
ルーミア「……うん。食堂で祭壇を作った後、図書室にメッセージを残した。だけど、こいしが近くにいたなんて全然気付かなかった」
さとり「こいし。DAY06には、具体的にどのように動いたのですか?
こいし「私は少し眠ってから、〈香水〉と〈消臭剤〉の瓶を持って、朝の食堂に待機してた。そして、全員のお茶に〈香水〉を入れた
さとり「どうしてですか?」
こいし「以前どこかで見たトリックを使ってみたいと思ったんだ。『全員が同じ物を食べたのに、一人だけが毒を盛られて殺されちゃう』、って感じのトリック
早苗「あー、たまに見ますねえ。刺激物を料理に混入しておいて、取り乱す被害者に渡した水の方に毒を入れておくとか」
こいし「そうそう。そんな感じのやつ。私は上水道を使って全員に毒を飲ませるのは無理だと思ったから、ピンポイントで一人を狙うことにしたんだ
魔理沙「実際は全員、水道から摂取したことで、何かしらのタイミングで毒を体内に取り入れてたんだけどな」
咲夜「料理や洗濯、入浴に水が使われないことなんて有り得ませんものね」
こいし「うん。それに気付いてれば、多分全員の料理に〈消臭剤〉だけ入れてたと思うけど」
霊夢だけど貴方は、あの場に居た私達の料理には〈香水〉だけを入れ、〈消臭剤〉は入れなかった。どうして?」
こいしルーミアの料理にだけ〈消臭剤〉を盛ることにしたんだ。直前でね。量にしたら、ほんの一口分だけど
ルーミア「…………そ、そうだったんだ。もしかして、私が料理を口にした順番によっては――」
霊夢「恐らく、毒で死んでいたわね。でもそこでアクシデントが起きた。こいしが緑茶に〈香水〉を混ぜてしまったことで、朝食そのものが中断されてしまった。なんで緑茶に〈香水〉を混ぜたの?
こいし「いや、他に緑色っぽい食べ物もなかったし。昨日だって、紅茶に入れても誰も気が付かなかったから、今回も気付かれないかなって思って
魔理沙「いや、紅茶と緑茶じゃ全然味も臭いも違うだろ。普通に気付くわ!」
こいし「てへ☆」
マミゾウ「馬鹿者! 茶化せることではないだろう! こいしよ。姉が不健康に入り浸っている書庫へ落書きをされた、というのが未遂とはいえ犯行の動機なのか!?」
こいし「う、うん。ごめんなさい」
さとり(あれ? 今、私なんだかマミゾウさんにひどいことを言われたような)
マミゾウ「全く……厄介なことをしおって。〈消臭剤〉は油性でもなく、無臭なのじゃぞ? 誰かが同じように上水道に投入してしまったら、わしらは全滅じゃ」

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早苗「そう考えると、やっぱり〈香水〉って使いにくいような……。実際の所、〈香水〉ってどうやって使うのが正しいんすかね? それこそ臭いの強い紅茶とかでもないと、混入が難しく無いっすか?」
咲夜「いえ。出来なくはないと思います。例えば蒸発させて粉末状にし、食事に練り込んでしまうなど」
てゐ「違う違う。そもそも〈消臭剤〉を先に飲ませればいいんだよ。こいしみたいに〈香水〉を先に仕込めば、誰かに勘付かれて次の食事から警戒されるかもしれないけど、〈消臭剤〉を先に飲ませておけば、少し飲んでから気付いても後の祭りってやつじゃん。すぐに吐き出しても間に合わない危険性がある。医者の所に住まわせて貰ってる身としては、あんまり推奨したくないけど」
さとり「こいし。計画が失敗した貴方はどうしましたか? 何故バックヤードに〈香水〉と〈消臭剤〉の瓶を捨てたのですか?
こいし「え? 決まってるじゃん。もう〈香水〉と〈消臭剤〉に飽きちゃったからだよ。気持ちが萎えたっていうか。私ならいくらでも他の武器を調達出来るし
さとり「……やはりそうでしたか」
てゐ「ちょっと待って。あんた、妹の犯行だって最初から気付いていたの?
さとり「はい。DAY05の時点で、ほぼ間違いなく妹が関与していると確信していました
ルーミア「……家にあった人形が置かれていたから?」
さとり「それもありますが、DAY05のティータイムの時、私の紅茶にだけ〈香水〉が仕掛けられていませんでした
てゐ「へ? いや、だったら教えてよ! 一歩間違えれば本当に全滅していた危険性があったんだよ!? ギリギリルール違反にはならないでしょ?」
霊夢こいしを刺激しないため、でしょ?」
さとり「その通りです。私が〈香水〉の件をその場で話せば、自棄になったこいしが二つの凶器から〈無味無臭の毒薬〉を作り出し、毒を誰かに無理やり飲ませてしまうことも考えられました」
てゐ「……あー。普通にやりそう」
こいし「や、やらないし! 〈無味無臭の毒薬〉なんてつまらない凶器、面白いトリックが作れないじゃん
さとり「上水道への混入は私にも予想外でしたが……。彼女の身内とはいえ、こんなだいじな事を黙っていて、本当にすみませんでした」
マミゾウ「お主はこいしを溺愛しているからのう。そこは庇いたくなるのも仕方がない。だが、どの道こいしの目論見は外れていたことじゃろう。あの状況で茶に毒を混入できるのは、わしかこいしか咲夜くらいじゃからな
ナズーリン「ん? いや、待て。それでは〈ダウジング〉のタイミングと合わない」
魔理沙「タイミング?」
ナズーリンああ。そこをはっきりさせておきたい。まず〈香水〉と〈消臭剤〉は共に朝食に仕掛けられていたのだから、食堂の検索結果については何も問題はない。だがバックヤードの方の反応はどう説明する? 私は食事の中断後すぐに〈ダウジング〉を行った。ところがこいしは毒が仕掛けられる直前まで食堂にいたのだろう? どうやって瓶をバックヤードに移動した?
早苗「バックヤードの瓶? それは最初からそこにあったのでは――というのは無理っすね。こいしさんは食堂でルーミアさんに〈消臭剤〉を使ったわけですから。瓶の中身だけ別の容器に移しておいたんすか?
こいし「ううん。そんなことしてないよ?」
霊夢「――こういうことじゃない? まず食堂の反応は〈香水〉と〈消臭剤〉で一つずつだった。〈香水〉は食堂にいた全員のお茶に入っていたけど、カップ自体は密集していたから1カウントだった。そして〈消臭剤〉もルーミアの料理のみに含まれていた分で1カウント。もし話に出たように二つの凶器が混ぜて使われていたら――つまり〈無味無臭の毒薬〉が精製されていたら、ナズーリンの検索結果はまた違う物になっていたでしょうね。ちなみにこいし自身が手に持ったままの瓶は、〈無意識〉が発動することでカウントされないはず

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さとり「……」
霊夢「ではバックヤードの方はと言うと、〈香水〉は貯水槽に注がれていたのだから一応説明がつく。でも〈消臭剤〉にまで反応があるのはおかしいわよね? つまりね、こいしはナズーリンが〈ダウジング〉をするより前に――食堂から遠ざかっていた
こいし「さっさと逃げちゃった。走れば〈ダウジング〉の前に〈消臭剤〉を捨てられると思って」
青娥「貯水槽の近くに〈香水〉と〈消臭剤〉を放棄した理由というのはなんでしょう?」
こいし「えっとね。どこに〈香水〉と〈消臭剤〉の瓶を捨てるか迷ったけど、貯水槽の近くに捨てておいたほうが、上水道に〈香水〉を入れたことに気付いて貰えると思って。上水道に〈香水〉を入れたことって、ナズーリンの〈ダウジング〉にちゃんと反映されるかわからなかったし
早苗「え? なんすか、その変な優しさ……」
咲夜「気まぐれ過ぎて……何がなんだか……」
ナズーリン「こいし、君をプロファイリングするなら、『気まぐれな劇場型犯罪者』、といった所だな」
こいし「あ、それかっこいい! 採用!」
ルーミア「ええと、げき、じょう? なにそれ」
さとり「劇場型犯罪』、それが演劇の一部であるかのような犯罪の事を指します。ゲーム初日からDAY01に掛けてのメッセージ、14体の人形による犯行予告、一見無駄な部分が多い〈香水〉と〈消臭剤〉の使い方――ナズーリンさんの見立ては正しいと思います」
霊夢「もう一度まとめると、〈香水〉の検索結果である三件は①料理に入れられた物②空き瓶も『凶器』としてカウントされるシステム上の物③貯水槽を含めた上水道全体を示す物。そして――
魔理沙〈消臭剤〉の検索結果二件は①ルーミアの食事に仕掛けられた物②こいしが頑張って走って捨てた、バックヤードの瓶。こういうことか」
こいし「あーあ。全部ばれちゃったね。次はもっと頑張るから! 多分今度は毒を仕掛けないと思うなあ。ご飯が丸ごと捨てられちゃうってわかったし
てゐ「! あたし、今の一言が、一番納得いったわ! あんたは初日からずっと、食事や間食をつまみ食いしてたわけだ。つまり咲夜の料理の味を知っている。確かに美味いもんね、咲夜の料理。貴重な凶器を二つも放棄したそもそもの理由はそれなんだね」
咲夜「てゐさん……」
てゐ「ま、さっきみたいなことがあったけど、これからも生活全般に関してはよろしく頼むよ。乾パンなんか食べてたんじゃ、残りの日数持たないし」
咲夜「――はい!」
さとり「こいし」
こいし「なあに?」
さとり「能力のせいで孤立しているとはいえ、これからも皆さんと共同生活を続けていくのです。まずはルーミアさんに謝っておきましょう」
こいし「えー。元はと言えばルーミアが――」
さとり「こいし!」
こいし「ひゃあ!」
さとり「……」
こいし「わ、わかったよ、ちゃんと謝るって。そんな怖い顔しないでって。……ルーミア、ごめんね?」
ルーミア「い、いいよ。私もみんなで読むための図書室の本を汚しちゃってごめんなさい」
こいし「でも、なんで図書室の本の上にメッセージを書いたの? 体育館の前でもトラッシュルームの中でも、一日のどこかで目につく所ならどこでも良かったじゃん
ルーミア「! それは、その……」
早苗「まあまあ。いいじゃないですか。とりあえず、こいしさんの毒では誰も死なずに済んでよかったですよ。これにて、一件落着っすね!」
魔理沙「いや、その真逆だろ。まだまだ解決していないことが多過ぎる」
霊夢「そうね。ルーミア、次は貴方の番よ」
ルーミア「え?」
霊夢どうして祭壇を作ったの?
ルーミア「ええと、それは……」
青娥「――ルーミアさん」
ルーミア「ん?」
青娥「少し風向きが変わってきています。ここは皆さんに対して、全てを打ち明けてしまうべきでしょう」
ルーミア「――その方がいいの?」
青娥「ええ、間違いなく。ルーミアさんもチルノさんを殺害した犯人を特定したいのでしょう? それでしたら、隠していることを包み隠さず皆さんに話してしまうべきです。祭壇を作った理由が、チルノさんを騙して凶器を奪うためだったことも含めて
 

06

ナズーリン「チルノを騙して、凶器を?」
早苗「チルノさんとルーミアさんって、仲が良さそうでしたよね。違ったんすか?」
ルーミア「それはそうだけど……」
青娥「どうですか? ここにいる皆さんは頭の良い人達です。彼女達なら必ず――」
ルーミア「いや、やっぱり駄目だって! この中にチルノちゃんを殺した犯人がいるんでしょ!?」
青娥「それはそうですが、ここにいるのは今回の事件の真相解明を望む人がほとんどです。DAY04からDAY07の中で、貴方が起こした行動を理由も踏まえて――」
マミゾウ「青娥。待たんかい」
青娥「はい?」
マミゾウ「ルーミアに入れ知恵したのは、お主じゃな?」
青娥「ふふふ。どうしてそう思うのでしょうか」
マミゾウ「とぼけるでない。それじゃ話が先に進まんじゃろう。まずは『縛られていたから会場の様子を知らなかった』とかいう、くだらん証言。あれを撤回して貰おう」

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青娥「あら? 私は能力を使えないように完全に拘束されていましたし、医務室に移された後も自由に動けませんでしたよ?
マミゾウ「青娥よ。お主は捜査時間中に霊夢が訊ねに行く前に、医務室の中で誰かと話していたそうじゃな。もしかしてお主、八雲紫と話していたのではないか?」

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青娥「さあ、それはどうでしょうねえ」
ルーミア「えー!? 私、青娥に沢山情報を渡してあげてたのになんで!? ――あ」
青娥「あらら。バレてしまいましたわね」
マミゾウ「かっかっか。ルーミア、ワンナウトじゃな。だが少し話しやすくなったのではないか?」
ルーミア「……むー。そんなことより青娥。紫からも情報を仕入れていたんだよね。それならなんで私からも情報を欲しがったの!?」
青娥「ルーミアさん、怒らないでくださいよぅ。私はただ、貴方とお話する時間が楽しかったんです。ごめんなさい」
ルーミア「……まあ、それならいいけど。たくさん相談にも乗って貰ってたし
てゐ「待った。拘束中に紫自身から情報を仕入れたって? それ、運営としてどうなの? ゲームマスター権限の6番に抵触するんじゃないの?

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レミリア「ん? ああ。咲夜と二人の時に話し合ったけど、その線で運営を糾弾するのは無駄よ。そのカードには運営に対する拘束力が一切無いから
妹紅「拘束力が無い? でも現にこうして、このカードには7つのルールが書かれているぞ?」
咲夜「権限の7番を見て頂けますか。そこには『ゲームのルールには従わなければならない』と書いてあります。つまり、運営は現在判明している15個のルールに従って行動しなければならないだけであって、そのカードに従って行動する必要はないのです
妹紅「む……。そうだったのか」
霊夢「まあ、干渉について言えば、私も個人的に紫を何度も呼び出してビデオカメラについて相談してるのよね。バッテリーの交換までやって貰ったし。〈17人目〉を経由する、という体裁でだけど」
ナズーリン「そのカードはあくまで運営の能力の説明のためにある、ということか。運営はプレイヤーに対して平等でないといけないからな」
霊夢「――それで、改めて聞くけど。ルーミア、貴方、いったい何をしようとしたのよ」
ルーミア「……私はある人物をDAY06のうちに殺そうとしてたんだ
早苗「!」
マミゾウ「……ほう?」
こいし「誰かな? わたし? それとも青娥?」
さとり「〈17人目〉――ですね?」
ルーミア「……そうだよ。正確にはね、今一番〈17人目〉に近いと疑われている人物――『八雲藍
こいし「あの狐のお姉さん? 彼女って普通に運営っぽいけど、そうじゃないの?」
ルーミア「はぁ!? こいしや青娥は居なかったかも知れないけど、みんなで出した結論なんだよ!? 今更そんなこと言われても困るよ!」
こいし「ご、ごめん……」
てゐ「いや、確かにそこに着地したけどさぁ」
ルーミア「ただ、今の私が誰かを殺そうとしても、避けて通れない問題が一つあったんだ」
てゐ「問題?」
青娥「はい。ルーミアさんは皆さんも知っての通り、極上の凶器を持ってなかったのです
ルーミア「うん。まずは凶器を手に入れる必要があった。だからそのことについて、青娥に思い切って相談したんだ
マミゾウ「青娥。ルーミアは最初の事件を起こしたばかりじゃぞ? それをわかっていて拐かすなぞ――」
ルーミア「違う。青娥は全然悪くない! 軽く痛めつけた後なのに、それでも青娥は相談に応じてくれたんだよ!?」
ナズーリン(……『軽く』?)
早苗(『軽く』ってなんでしたっけ)
ルーミア「私は青娥に、安全に凶器を取得する方法について教えて貰ったんだ」
青娥「付け加えるのなら、穏便に、です。何故穏便に事を進めたかったかと言うと――ルーミアさんが凶器の有無と種類を確実に把握している人物、それがチルノさんだけだったからです
早苗「それってつまり、私達が皆さんの凶器を回収して、例のボーナスルールが配信されてからですよね。う~ん、ああ見えて抜け目ないっすねえ」
レミリア「チルノも貴方と同じように、虎視眈々とゲームの勝利を狙っていたの? 貴方や青娥ほどには攻撃的なプレイヤーには見えなかったのだけど」
咲夜「そのことについてですが、よろしいですか。文さんが殺される前、戯れに早苗さんが皆さんに聞いていましたよね? 殺意を持っている人は手を上げてください、と
てゐ「そんなこともあったね。あんたんところのご主人様もチルノと一緒になって手をあげて――って、あれ? チルノも手をあげていた?
咲夜「そうです。チルノさんはゲーム初日、何らかの理由からゲームに積極的に参加するつもりがあったのです

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ナズーリン「ゲームに勝利して、何か手に入れたいものでもあったのだろうか」
ルーミア「多分、とくに欲しい物なんてなかったと思う。DAY02の追加ルール解禁ってお昼の12時だったでしょ? チルノちゃんが手を上げていたことは当然覚えていたから、私がルールブックの追加ルールに気付いた時、チルノちゃんにもそのことを教えてさ。私達はDAY02の12:30くらいに凶器を取りにDDSルームに行ったの
早苗「へえ。ずいぶん早く気付いたんすねえ」
ナズーリン「なるほど。ルーミアがチルノを誘ったのか」
ルーミア「でもいざDDSルームの目の前に行ったらさ、チルノちゃんはなかなか部屋を利用しようとしなかったんだ。その頃には既に、誰かを殺そうとする気持ちは失せてたんだと思う。そもそも青娥が配っていた凶器のリストを、チルノちゃんは午後になっても持ってなかったし」
青娥「そうですね。その日たまたまチルノさんと会った時、凶器のリストについて直接聞いてみたら、『私はリストなんていらない』とはっきりおっしゃっていました
ルーミア「それでも私は食い下がって、チルノちゃんにこう言ったの。『すぐに壊れちゃう〈氷細工〉だけじゃなくて、護身用にしても何か武器を持っておいたほうがいい』って。それから私は〈暗視ゴーグル〉と〈ナイフ〉を取得して、チルノちゃんも一つだけ極上の凶器を取得した
こいし「へーえ。何の武器?」
ルーミア「――〈水晶玉〉だよ」
さとり「極上の凶器No.14、〈葉隠流水晶〉ですね」

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こいし「へーえ。でも他にも強い武器っていっぱいあるよね。もしかしてDDSルームについた時、凶器が残り少なかったのかな?」
ルーミア「そんなことないと思うよ? 私がDDSルームに着いた時には確か、残りの凶器の数は11個だったかな
レミリア「まず、私達が所有していた〈トラバサミ〉は保管されていなかった。これは間違いないわ
こいし「それなら、私が〈香水〉と〈消臭剤〉を取得したのが一番最初だね
マミゾウ「こいしが一番最初に二つの凶器を取得し、その次がわしが取得した二つの凶器――〈マスターキー〉と〈金塗りの模擬刀〉じゃな
ナズーリンその後にDDSルームに向かったのが、ルーミアとチルノだったわけか」
早苗「こいしさん。確認したいのですが、貴方がDDSルームに着いた時、端末は直っていましたか?
こいし「うん。新品のピッカピカだった!」
魔理沙「紫。お前は『運営の裁量次第で、端末はいつ直すかわからない』みたいなことを言ってたが、実際の所はさっさと端末を交換してたわけだ

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紫「だって、ボーナスルールを追加するなら、端末を復活させることもセットで行わないと意味がないじゃない?」
魔理沙――お前、私達の行動に合わせて、DAY02の方針を変えるつもりだったな? 私達が団結すれば延々と修理を先延ばしするつもりだっただろうし、私達がすぐにバラバラになって解散したから、さっさと端末を直したわけだ。全く、いやらしいことをしやがるぜ」
紫「ふふ。でも、破壊したのは〈17人目〉よ? 貴方達と同じプレイヤーのね」
青娥「ルーミアさん。先をどうぞ」
ルーミア「う、うん。私が凶器を選んだ理由は、〈暗視ゴーグル〉は能力と噛み合うから当然だとして――音が出る武器ってあんまり使いたくなかったんだよね。〈無味無臭の毒薬〉を使うことも考えたけど、やっぱり自分の手で直接始末出来る武器のほうが安心感があったし。幻想郷で『狩り』をする時には『調理器具』や『解体道具』なんかは用意することがあるけど、武器そのものは持ち歩かないんだけどね」
早苗「ルーミアさんって普段『何』を狩ってるんだろ……」
ルーミア「あ、チルノちゃんは一番相手を傷つける危険性が低い凶器を、嫌々一つだけ選んだ、って感じだったよ。でも〈水晶玉〉の見た目自体は、綺麗だから気に入ってたみたいだけどね」
早苗「ということは一回目の学級裁判の時にチルノさんは――」
ルーミアそうだよ。私の凶器のこと、ずっと黙っていてくれてたんだ
マミゾウ「人数もほとんど減っていない、あの緊迫した議論の中でか? なんとも剛毅なことじゃ……」
ナズーリンルーミアはどうやってチルノの所持する〈水晶玉〉を手に入れようとしたんだ?
青娥「――それについては私が説明しますわ」
青娥「突然ですが皆さん、頭の良い人を騙す方法ってご存知ですか? 例えば博麗神社でも守矢神社でもいいんですが、そこで『毎日念じ続ければ空を飛べるようになる御札』を売ろうとしたとしましょう。祈祷すら済ませてない、妖怪に対して何の効力もない御札です」
霊夢「何よその悪どい商売」
早苗「……」
魔理沙「早苗、そんなのこっそり売り始めたら、流石の私でも神奈子達にチクるぜ?」
早苗「や、やりませんよそんなこと! 私は霊夢さんみたいにお金にがめつくありませんから!」
霊夢「早苗。幻想郷に戻ったら覚えておきなさいよ」
青娥「ふふ。みんなで戻れると良いですわね。――例えばそんな御札があったとして、これを一般の人に売ろうとする場合、まず幻想郷で空を飛べる人物のリストを見せます。もちろん御札の力で実際に飛べるようになった人達ではありませんよ? 『みんなこの御札を持っています。これを買えば貴方も空を飛べるようになりますよ』とアピールして騙すのがオーソドックスなやり方でしょうね」
レミリア「そんなのに引っかかる人間がいるのかしら……」
青娥「そうですね。賢い人なら引っかかりませんよね。だから頭の良い人に対しては、少しやり方を変えます。結論を示さずに、情報だけを与えるんです。神社で授与している物品のリストと、ここ数年の購入者の傾向のみを示します。もちろん嘘の情報が混じった資料をね。資料だけを与えることで、『御札を買った人間はみんな空を飛べる。もしかしてこの御札を大切に持っていれば、いつか空を飛べるようになるのでは』と、自ら推測させるんです。自ら頭を捻って出した結論ならば、それを自分で疑うことは難しいんですよ」
ナズーリン「ほう?」
青娥「だから聡明なチルノさんには――自ら結論に至って貰おうと考えたんですよ。私がルーミアさんに示した奪取方法は――『自分が誰かに命を狙われている』とチルノさんに相談することでした。ルーミアさんが私に対して行った尋問を鑑みれば、他プレイヤーから危険人物だと見做されていて、その結果生命の危機に晒されているという主張もおかしくありませんよね?」
レミリア「あの時、その場にいたみんなドン引きだったからねえ……」
ルーミア「え、そうだったんだ……ごめん」
レミリア「い、いや、そうでもないかも? なんというか、その――」
咲夜「いいえ、ルーミアさん。貴方はあの後、すぐに美味しい夕食を作ってくれたではありませんか。安心してください。みんなルーミアさんのことが大好きですよ」
ルーミア「え? うん。そうだよね。あー、良かった!」
てゐ「あのさ、レミリア。そろそろ自分の失態を、部下にフォローさせるのやめない?」
レミリア「な、何よ! わかったわよ。今度は私が料理を作るから!」
咲夜「え? もう厨房に入らないで欲しいんですが……」
レミリア「私へのフォローはないの!?」
マミゾウ「青娥。先程ルーミアの口から、〈水晶玉〉と〈氷細工〉の話が出たな。能力のほうにはデメリットがある話が。それについてはどう考える?」

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青娥「話が早くて助かりますわ。そうです。チルノさんは自分を守るために必要な凶器を、いつだって無から作り出せるんですよ――氷の凶器を。対してルーミアさんは違う。緊急の対策として闇を作り出せても、自分自身でさえ〈暗視ゴーグル〉無しでは闇の中を自由に動き回れない。最初の事件の時にマミゾウさんがそうしたように、壁伝いにその場から逃げることは出来ますが。ですが――チルノさんが四六時中ルーミアさんの隣にいるわけにもいきません。ルーミアさん自身の護身のためには、必ず何らかの凶器が必要なんです」
ナズーリンその凶器というのは、〈暗視ゴーグル〉の単独使用も含めての話だな? 武器はなくとも、〈暗闇〉と〈暗視ゴーグル〉さえあれば、大抵の殺人者の襲撃は回避出来るだろう。〈暗闇〉はエリア全体が対象だから、襲撃された段階で他のプレイヤーがルーミアの捜索を始めるだろうからな
マミゾウ「言われてみれば、『逃げ』にもだいぶ活用出来る能力じゃのう……」
ルーミア「――私は青娥にアドバイスされた通りに、チルノちゃんにその話をしたんだ。ところが、だよ? チルノちゃんは、『それならずっと一緒にいて、あたいがルーミアちゃんを守ってあげる。一緒の部屋で寝てあげる』って言ったんだ。しかも本気で。私があんなことをした直後なのに、守ってくれようとしたんだ
魔理沙「チルノ……」
ルーミア「正直傍迷惑だったよ。そもそも私は自由に動き回りたいのに。だから私は思い切ってやり方を変えようと思った。だけどそのやり方って、少し技術的な問題があったから、手先が器用そうな青娥に改めて方法を聞いたんだ」
ナズーリン「なるほど。それが仏壇に対して独自の飾り付けを施した祭壇だったのか
青娥「はい。ルーミアさんがチルノさんから〈水晶玉〉を手に入れるために考えた方法はそういうものでした。正直私も訊いた時に最初びっくりしたんですが……」
てゐ「まあ、ルーミア一人で設計したにしては、本当によく出来た祭壇だったものねえ。『そもそもどこで仏壇の作り方なんて覚えたの?って感じだった。外界ならともかく、幻想郷ではまだそこまで仏教は浸透していないはずなのに
ナズーリン「う……耳が痛い話だ」
早苗「あの――それって別に祭壇じゃなくても良かったと思うんですが?」
ルーミア「私が『どうせなら勇儀と文を弔える物を作りたい』って言ったら、青娥がいろいろなアイデアを出してくれたんだ。その中から祭壇を選んだんだ」
青娥「あ、あの。飽くまでも『仏壇』として制作をお手伝いしたのですからね? 素敵な作品が出来上がったと思いますが
ルーミア祭壇が倉庫に運ばれるとチルノちゃんは私がそうしたように飾り付けを始めた。私が図鑑をチルノちゃんに見せたのも、その時だよ
咲夜「図鑑? では、チルノさんの部屋にあったあの本――龍の彫像について書かれた美術図鑑は、ルーミアさんが図書室から持っていった物なんですね? 美術室に偽物の犯行予告をしたのもルーミアさんだという話ですが、その一連の行動は『盗まれた本は何なのか』を特定されないために行ったことなのでしょうか? 塗料に塗れた本がまとめて処分されれば、そのなかに美術図鑑が混じっていたとしても気付かれないと考えたのですね

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さとり「メッセージが上書きされた書物は一切処分していませんよ。背表紙が多少汚れたとはいえ、貴重な本ばかりですからね。蔵書の目録だってあるのですから、一つ一つ確認することだって出来ます
ルーミア「……う。目論見が外れちゃったわけだ。その後の事を話すと、凶器が無事手に入って八雲藍を殺害出来たら、美術図鑑はこっそり処分するつもりだったんだ。図鑑さえなければ私がチルノちゃんに依頼したって証拠も消せると思って」
魔理沙「いや、チルノの証言ならみんな信じるだろ……。ルーミアの計画、どこかで破綻した気がするなあ」
霊夢まとめると――貴方は青娥と相談して、チルノから凶器を手に入れる方法を考えた。DAY05の夜のうちに祭壇を作り終えた貴方は、図書室にメッセージを残してから、美術図鑑を盗んだ。祭壇はその後倉庫に移され、チルノは出来上がった祭壇を見て、自分も同じように飾り付けをしたいと考えるようになった。作業に没頭するチルノに対して貴方は『こんな物を〈氷細工〉で作ってはどうだろう』と提案した。チルノは氷で龍を具現化し、細部を図鑑の完成品に合わせて削り始めた。全く、面白いことを考えるわね」
青娥「本当に面白い発想ですよねえ。チルノさんやルーミアさんのように、言い方は悪いですが『野良の妖怪や妖精』にとって仏壇というのは、ちょっとおもしろい形をしたオブジェに過ぎないのですね」
ナズーリン「罰当たりと言えば罰当たりだが――魂入れを終えた御本尊も無いのなら、そこまで責められるべき行いではないのかも知れないが……」
妹紅「私がチルノに直接聞いた話とも一致してるな」

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てゐ「うん、矛盾はないね」
妹紅「だけど、ちょっと待ってくれ。ルーミアが図鑑をチルノに見せたとして、それでどうやって〈水晶玉〉が手に入るんだ?
青娥「……はい?」
てゐ「いや、流石にわかるっしょ!?」
妹紅「え? いや、すまん。龍の彫刻と何か関係があるのか?」
ルーミア「……あの図鑑、よく見た? あの彫刻の龍ってさ、なんか丸っこい物を持ってたよね? その丸い物がある部分に、チルノちゃんが〈水晶玉〉を使ってくれると思ったんだ
ナズーリン「『龍玉』――仏教では『如意宝珠』と呼ばれている物だな。元々はインドの蛇神信仰による伝説が古代中国に伝わり、蛇神が龍のことだと翻訳されると、龍が持つ宝玉であると解釈された」
ルーミア「だけど、何度様子を見に行っても、チルノちゃんは龍の手の部分に〈水晶玉〉をはめる様子がなかったんだ。もちろん私から『そこに〈水晶玉〉をはめるとどうかな?』なんて催促するわけにもいかなかったけどね」
妹紅「そうだな。私が見に行った時も、龍玉の部分は、体全体と同じように氷で出来ていた。でもその時それが〈水晶玉〉だったら流石に私でもチルノに注意すると思う」

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早苗「――それから、何があったんすか?」
ルーミア「ええと、その後は――」
青娥「ここで魔理沙さんの証言が生きてくるんですよ。チルノさんと言い争いをしていたのは、ルーミアさんだったんです

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ルーミア「……うん」
妹紅「そうだったのか。ルーミア、その時間に何があったんだ?」
ルーミア23:30くらいにチルノちゃんの様子を見に行ったらさ、無くなってたんだ。龍の氷像
早苗「え? 無くなってたんすか!?」
ルーミア「そう。跡形もなく。他の飾り付けはそのままだったよ。氷や水の跡も無かった」
てゐ「ん? 倉庫の中にも、その周辺にも氷像を移動した形跡が無かったってこと? つまり、室内で氷像を壊した後で、ビニール袋にでも入れてトラッシュルームに捨てに行ったってこと? 室内で無理やり焼却処分しようとすれば火災報知器がなっちゃうだろうし」

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レミリア「まあ、何らかの方法で処分したのでしょうね。床に叩きつけられたと思わしき氷像は、目視でわかるくらい形が保たれていたけど」
咲夜「それは――妙ですね」
青娥「――気が付きましたか? 捜査時間中もその話が出ましたが、チルノさんの遺体の近くにはまだ形を残した氷像が残っていました。いくら能力で具現化した氷像とはいえ、23:30より前から常温の場所で保管されていたのなら、まずあの形を保てません。それに氷像をトラッシュルームまで運ぶ際には、どうしても床に水跡を残すことになります。しかしナズーリンさんの〈ダウジング〉にも引っかからず、目で見えるような跡は倉庫からトラッシュルームへの道筋には一切残っていませんでした
ルーミア「私が見た時も、そういうのはなかったと思うけどなあ。氷像から落ちた水滴や小さな氷の欠片は乾いちゃったんじゃないの?」
早苗「どういうことなんすかね?」
ルーミア「続けるよ? 私は氷像がチルノちゃんに隠されたことにはすぐに気が付いた。これじゃまずいと思って、倉庫を少し探してから慌てて廊下に出ようとしたんだ」
こいし「慌てて? なんでー?」
ルーミアチルノちゃんに凶器だけじゃなくて、〈暗視ゴーグル〉まで隠されると思って
魔理沙そういえばルーミアはDDSルームのボーナスルールを使い切ってたよな。どうやって〈暗視ゴーグル〉を取得するつもりだったんだ?
マミゾウ「……てゐが先程言っていたな。〈幸運〉や〈奇跡〉がなくても、DDSルームのチャレンジ自体は可能じゃ。つまり――」
ルーミア「うん。私はDDSルームで三回目の賭けに挑戦するつもりだった」
マミゾウ「そこまでの覚悟で――八雲藍を仕留めようとしていたのか」

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早苗「三回目!? 3/6の確率で弾が飛び出してくるんですよ!?」
ルーミア「だって――それで文と勇儀が救えるならいいじゃん」
青娥「霊夢さん。この証言を捜査時間中にメモして頂いた意味がわかりましたか? ルーミアさんが既にボーナスルールを二回とも使用済みだったからです」
霊夢「……そういうことだったのね」
てゐ「――ルーミア
ルーミア「何?」
てゐ「そこまでして武器が欲しいんだったら、今度は私に相談して。ロシアンルーレットなんかで死んじゃ駄目」
ルーミア「――え?」
てゐ「本当はあんたに誰かを殺して欲しくないけど、『みんなを救うため』に動いているルーミアが、あんな機械に頭をぶち抜かれて死ぬくらいなら、〈幸運〉を貸してあげるから。ここにいる他の奴らになんて、貸さないけど」
ルーミア「てゐ……」
マミゾウ「おい。待たんかい。てゐとルーミアの気持ちはわかる。だが、その交渉については異議を唱えたい」
てゐ「は? 別に勝手じゃん。私の能力をどう使おうが」
ナズーリン「私も反対に一票だな。私は君達と何度も〈ダウジング〉の結果を共有している。異議を唱える資格は十分にあると思うぞ?」
てゐ「えー、あんたって本当に検索結果を全部共有してるのー? 毎日三回までダウジングを使えるはずなのに、それにしては私達と共有している情報が少ない気がするんだけどなー?
ナズーリン「ぐっ……」
魔理沙「おいおい。喧嘩すんなって。まずはルーミアの話を最後まで聞こうぜ。ルーミア、倉庫の外に出ようとした時、何が起きた?」
ルーミア……チルノちゃんが扉を開けて中に入ってきた
魔理沙「!」
ルーミア「そのまま扉を閉めて、私の目を真っ直ぐ見てこう言った。『もう止めよう。ルーミアちゃんが私に何をさせたかったのか、全部わかってるから』、って」
早苗「――チルノさん、私達が思うよりもずっと賢い妖精さんですからね。〈水晶玉〉についての目論見も全部お見通しだったわけっすね」
レミリアルーミアは、〈水晶玉〉と〈暗視ゴーグル〉さえ手に入れば、確実に八雲藍を殺害出来ると考えていたのよね?」
ルーミア万が一〈水晶玉〉が手に入らなくても、磨かれた氷像の一欠片でも見つかれば殺人は決行するつもりだったけどね。氷像の背中には尖った部分がたくさんあったでしょ? それさえあれば、八雲藍の寝首をかくことも出来ると思った。私は、武器さえあれば殆どのプレイヤーを仕留められる自信があるし
レミリア「ごめん。もう突っ込ませて貰うわよ。八雲藍が運営だったら、私達プレイヤーと違って、能力の制限を一切されてないのよ? 仮に〈17人目〉だとしても、霊夢のように能力が不明。そんな相手に向かっていったら簡単に返り討ちにあうし、下手したら殺されていたわよ?」
ルーミア「え? だからなに? どんな能力を持っていたとしてもしくじらなければいい話だし、レミリアの言う通り運営で私が返り討ちにあっても、〈17人目〉が八雲藍じゃないことさえ判ればそれでいいじゃん。みんなの前で殺害予告を出す貴方よりはよっぽど納得しやすい理屈だと思うんだけど?」
レミリア「……私が悪かったわよ。それで? チルノと対峙した貴方は、彼女に対してどう反論したの?」
ルーミア「反論なんてしなかったよ。『つべこべ言わないで、凶器の場所を教えて』って言い放った」
ナズーリン「ほう……」
妹紅「私の知らない所で――そんなことがあったのか?」
ルーミア「当然断られたけどね。その後は――言い争いになった
レミリア「言い争い?」
ルーミア「チルノちゃんに『無理だよ。ルーミアちゃんに〈水晶玉〉を渡したら、絶対に藍を殺しにいくつもりでしょ?』って言われたから、『だったらチルノちゃんが八雲藍を殺しにいけばいい』って返したんだ。そしたら『確証もないのに殺しに行くのは絶対におかしい!』って強い口調で言われたから、私も『だったらチルノちゃんは今日まで何をしてたの! 少なくとも私はゲームを終わらせるために動いていた!』って言い返しちゃった。その後もしばらく応酬が続いてさ」
青娥「……」
ルーミア「――私さ、うっかり口に出しちゃったんだよね。『妹紅のことだって死なない体だから物珍しがっているだけで、そこまで大切なやつだと思っていないんでしょ!』って。そしたらチルノちゃんが、『青娥みたいなやつに騙されてるルーミアちゃんが言うな! 文と勇儀を殺したのは青娥だ!』って言われて。なんだかそれが、すっごく頭にきて、『私がやってることが理解できないなら、お前はやっぱり駄目なやつだ!』……とか……そう言ったら……『一度誰かを殺そうとしたお前に説得力なんてない!』……って……言われて…………んぐ、ひっぐ……そして、わだじが……『お前はやっぱり馬鹿な妖精だ! そうやって独り占めしている氷に刺されて死ね!』……って……いっだら……『お前だって駄目な人喰い妖怪だ! 二度と妹紅とあたいに近づくな!』……って……ひっぐ、うぐ、うわあああああああああああああん!」
咲夜「――ルーミアさん!?」
ルーミア「わたし……チルノちゃんを殺したりなんかしてないもん……チルノちゃん、なんで殺されちゃったの……ひっぐ…えっぐ……うえぇ…」
青娥「ちゃんとわかっています。ルーミアさん。チルノさんを殺したのは決して貴方ではありません」
早苗「チルノさんとルーミアさんが最後に交わした言葉が――口論、だったんですね」
青娥「皆さん、あまり心配しないでください。一度私の目の前でたくさん泣いてますので。少し悲しみがぶり返してしまったみたいですね」
霊夢「――そう。なら、ルーミアのことは貴方に任せるわ。一応確認するけど、貴方の証言にはアリバイに関する嘘があるわね。それは認める?」
青娥「はい。DAY06の23時頃からずっとルーミアさんと会話をしていたと話しましたが、あれはルーミアさんを庇うための嘘です。ごめんなさい。実際には23:45頃に突然ルーミアさんが訊ねてきて、祭壇に関する一連の出来事について涙ながらに打ち明けてくれたので、私は聞き役に徹していました。日が変わる時にはお別れしましたが。霊夢さん、すみません。私とルーミアさんは議論台を少し離れますね」

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霊夢「ええ。ルーミアをよろしくね」
青娥「さ、ルーミアさん。いっぱいお話して疲れたことでしょう。少し向こうの傍聴席で一緒に休みましょう」
ルーミア「……うん」
紫「飲み物でも用意する?」
青娥「ええ。出来れば二つお願いします」
魔理沙「……とりあえずルーミアが隠していたことは大体わかったな」
咲夜「ルーミアさんの貴重な話は確かに頂けました。しかし、このままでは――」
早苗「どう考えても証言が足りないっすねえ。証拠品の中には今の話に全然出てきていない物もありますし」
こいし「うん。ぜーんぜんわかんない」
マミゾウ「一応訊いておくか。こいしは誰かがチルノを殺した瞬間を目撃しておるか?
こいし「え? トラッシュルームとは全然違う所にいたから見てないよ? 今回の事件だって、みんなが捜査を開始してから後ろをついて回ってただけだし」
ナズーリン「まあ、他の証言が欲しい所だが、無い物ねだりも出来ないだろう。一度この状態から推理を始めるしかないのでは?」
てゐ「……ううん。もう十分だよ」
ナズーリン「何?」
てゐ「犯人の目星は、大体ついてる」
ナズーリン「なんだって!?」
魔理沙「誰だ!?」
てゐ「この中に一人、DAY06の行動にむちゃくちゃ怪しい所があるのに、一度も槍玉に上がってない奴がいるじゃん
霊夢「……」
レミリア「……そうね。確かに一人いるわね」
てゐ「そうだよね。妹紅
 

07

妹紅「……」
てゐ「妹紅。さっきのルーミアの姿を見て、何か思うことは無かったの?」
妹紅「……」
てゐ「チルノが死んだっていうのに、いつまで意味もなく隠し事を続けてんのさ。刺されても抉られても死なないあんたが、たかだか一妖怪が行おうとしている〈追放〉がそんなに怖い?」
早苗「ゆ、紫さんがたかだか一妖怪?」
紫「あら、辛辣ですわね」
妹紅「……」
てゐ「――私が竹林でのんびり暮らしていたら、最初に姫様達が勝手に住みだして、その後であんたが姫様を追ってきて、慧音があんたを心配するようになって、月が二つ浮かんだ日に霊夢達がやってきた」
妹紅「……そうだったな」
てゐ「何千何万回と姫様を殺したあんたと、私自身は直接喧嘩したことは一度もないけど、あんたが延々としらばっくれるつもりなら。藤原妹紅――その根性、私が叩き直してやるよ」
妹紅「叩き直す? もう、千年以上生きてるんだぞ? 今更直せる部分はないと思うがな。体の組織構造だって、まともな人間とは違うんだ。もう普通の人間のようには生きられない」
てゐ「本当かね。慧音や霊夢と出会ってから、あんたはすっかり人が変わっちまったように見えるけど。いーや、それ以前からあんたはずっと『成長』し続けているよ。あんたも、姫様も、同じ速度で、同じくらいに」
妹紅「……あいつと一緒にするな」
てゐ「あんたを『治す』ことなら永琳の研究にでも任せるしかないけど、今何かを間違っているかもしれないあんたを『直す』ことなら、私達にも出来るだろうさ」
早苗(あの、霊夢さん――)
霊夢(静かに。今はてゐに任せましょう)
てゐ「妹紅。あんたはDAY06になってから、いくつもミスを起こしてるんだ。なんかのテレビゲームだったら、とっくに残機はなくなってるよ」
妹紅「そうなのか? だったら聞かせて欲しいな。そのミスってやつを」
てゐ「オッケー。じゃあ、一番わかりやすい所からいくよ。あんたが銃殺されたのはチルノの死体が見つかった後だね?
妹紅「ああ」
てゐ「それなら、モノクマファイルの記述におかしい所がある。比較のために、文のファイルも見せるよ」

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妹紅「? これはもう何度も精査してるだろ?」
てゐ「そうだね。内容はひとまず置いといて、ファイルの番号を見て欲しいんだよ。文のファイルが①番、妹紅のファイルが②番、チルノのファイルが③番だね。チルノが殺されたのが二番目で、妹紅が殺されたのが三番目なら、ファイルの順番が逆のはずだよ――妹紅もそう思わない?」
妹紅「ふん。私とチルノのファイルが、似たタイミングで作られただけだろ。くだらない」
てゐ「他にもあるよ? あんたさ、アナウンスの後に『既に誰かが死体を見つけた』ことに驚いてたみたいだけど、私が知ってるあんたなら、『死者が出たことそのもの』に驚くと思うんだよね。それじゃまるで『死んだのは自分のことだから、驚くことではない』って感じの言い方だ」

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妹紅「……」
てゐ「まだあるよ。妹紅ってさ、確か『誰も見ていないし、怪しい音を何も聞いていない』って言ってたよね?
妹紅「うん。言ったな」

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てゐ「妹紅は銃殺されたんだよ? 銃から出るガスの音や、弾丸が生む衝撃波の音は、当然ながら大音量だ。これを聞いていないのはおかしいんじゃないの?」
妹紅「聞いてない物は仕方ないだろ。お前達だってそんな音を聞いていないんだろ? だったら、おかしいところなんてないさ」
てゐ「次の根拠。0時頃、BARで一人飲んでいたあんたは、霊夢とスーパーマーケットの前でバッタリ会ったんだよね? 部屋に戻ろうとしていた時に
妹紅「ああ」
てゐ「それもおかしいねえ。スーパーマーケットはBARよりも校舎寄りだ。つまり、一人酒をしてまっすぐ部屋に戻るつもりなら、校舎エリア側に歩けば回り道になる

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妹紅「スーパーマーケットが開いてるかも知れないと思ったから、ちょっと寄ってみただけだぞ? そもそも酒を飲んだ後の行動だ。そこまで責任を求められてもなあ」
てゐ「――まだしらばっくれるんだ。じゃあ聞くけど、あんたは撃たれてから、なんでしばらくの間起き上がらなかったの?

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妹紅「……」
てゐ「代わりに言ってあげようか? 妹紅の能力カードをよく読むと、わかるんだけど――妹紅の能力に対する表記って『死んだらいつ生き返ることが出来るのか』が曖昧に書かれてるんだよね

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妹紅「……それが?」
てゐ「私は最初、『妹紅は死んだ直後に開かれる学級裁判の時に復活する』と勘違いしていた。でも実際は、死亡直後にでもすぐに動ける能力だった。実際に妹紅は、五分もしないうちに復活している。でも逆に言えば――そのまま死んだふりをしていれば、容疑者から完全に外れることが出来たわけさ」
妹紅「……」
てゐ「いつでも起きられるけど死んだふりを裁判開始まで続けていれば、『妹紅は自身の能力を使って、死亡後の工作が出来ない』とみんなに思わせることが出来る。しかもみんなが周囲にいなくなった後ならいくらでも動き回れるんだよね」
妹紅「なら、なんでそうしなかったんだ? 私はトラッシュルームに入ってきたみんなの前で起き上がったんだぞ? 例えてゐの言った通りの使い方が出来たとしても、実際にはそうしなかった。その後はみんなで私を監視していたわけだし、疑いの目を向けられる筋合いはない」
魔理沙「いや、疑ってたっていうか――」
早苗「あの、それは――」
妹紅「まあ、別に慣れてるからいいよ。そういう眼で見られるのは。昔からな」
てゐ「――お酒」
妹紅「は?」
てゐ「本当に飲んでたの?
妹紅「それは今話しただろ?」
てゐ「霊夢はね。チルノと出会った後に、紫とも会っているんだってさ。その時の紫はね、就寝前だから寝間着だったらしいんだ

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妹紅「……」
咲夜「――寝間着? それは、おかしいですね」
魔理沙「いくらなんでも客に寝間着で酒は出さないもんな。それに酒を出さない時は、BARには鍵が掛かってるはずだぜ。どうしてお前は0時まで酒を飲むことが出来たんだ?」

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てゐ「だよねー。妹紅にしたって、咄嗟の言いわけなんだから、そこで言質を取られても困るよね」
妹紅「そんなこと言われても、店が開いていたから飲んだ、としか言えないな」
てゐ「はぁ?」
妹紅「私は一人で確かに飲んでいたんだ。それを今紫に聞いた所で、『捜査時間に調べておけ』としか言われないだろうがな。こいし、23時以降にBARの中を確認したか?」
こいし「ううん? 見てないよ」
妹紅「そうだろ。だったら私はてゐの言い分を認めるわけにはいかない」
てゐ「……どんだけ往生際が悪いのさ、あんたは。じゃあそれはもういいさ。もう一つ聞くけど。あんたが撃たれた後に口から吐き出した弾丸。どうしてナズーリンの〈ダウジング〉に引っかからなかったの? さっきも話に出たけど、『今回の事件に関係ある証拠品』で検索したなら、銃弾だって検索に引っかからないとおかしいでしょ

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妹紅「――銃本体ならともかく、弾丸だぞ。引っかかるわけ無いだろう」
てゐ「それはおかしいねえ。『プレイヤーを射殺可能かつ、弾丸が証拠して残る凶器』は、〈リボルバー〉と〈セミオート〉の二種類あるんだよ? DDSルームに備え付けてある拳銃も含めれば三種類だ。弾丸から凶器の持ち主を特定出来る可能性が1%でもあるなら、証拠品として判定されないことは不自然さ」
妹紅「逆に聞くが、何故その弾丸は検索に引っかからなかった? そこを説明してほしい」
てゐ「それはね――あの時のあんたが、既に死んでいたからだよ
妹紅「!」
てゐ「それなら説明つくっしょ。だってプレイヤーは死んだら『物』になるんだよ? 例えば『机を破壊した斧』があったとして、『殺人に使われた斧の場所』で〈ダウジング〉したとしても、検索には引っかからないわけだ。例え方はあんまりよくないかも知れないけど、同じことさね」

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妹紅「へえ、ずいぶんと面白い意見だな。既に私は生者じゃなかったと?」
てゐ「――妹紅は捜査時間中にさとりに聞いていたらしいね。『証拠品はこれで全部なのか?』って。それってもしかして、口から吐き出した弾丸に対してうっかり聞いちゃったことなんじゃないの?

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妹紅「そんなこと知らない。貴重な証拠品なら、私はなんで自分から弾丸を見せたんだ?」
てゐ「自分自身が〈ダウジング〉に引っかかっちゃう事を懸念したからだよ。吐き出した弾丸と、〈物〉となった自分自身。合わせて二つ。この二つが証拠品として判定されてしまえば、妹紅からは二つの〈ダウジング〉の反応が出ることになる。恐らく妹紅が『物』として判定されるようになっても、妹紅の『体そのもの』がナズーリンの〈ダウジング〉に引っかかることはなかったと思うけどね。現に文の死体はダウジングに引っ掛からなかったし。文の死体発見位置には確かに反応があったみたいだけど、それは持っていた手帳が引っ掛かっただけのことだし」
妹紅「……」
てゐ「どう、私の話に何かおかしいところはある?」
妹紅「さあな」
てゐ「――オッケー。じゃあ、改めて一連の出来事を説明しようか。まず、あんたはDDSルームで極上の凶器の〈ナイフ〉を取得し、続いて〈暗視ゴーグル〉を取得した
早苗「〈暗視ゴーグル〉? トラッシュルームの手前に落ちてましたね」
てゐ「うん。最初の予定では、暗い場所での犯行を目論んでいたから取得したんだろうね」
早苗「まあ、犯行自体夜ですもんね」
てゐ「この二つだけでも十分なのに、更にあんたは欲をかいて、三つ目の極上の凶器を取得しようとしたんだ。〈マスターキー〉をね。だがあんたはDDSルームのボーナスルールを使い切ったことで、3/6の確率を引いて死んじゃったんだよ。ロシアンルーレットで――賭けに失敗した

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ナズーリン「ふむ。しかしチャレンジに失敗して頭部を撃ち抜かれれば、相当量の血液がDDSルーム内に散ってしまうはずだが?」
てゐ「そう。だから保険として、テーブルクロスで頭部を覆った状態でロシアンルーレットにチャレンジしたのさ。そしてテーブルクロスは、DDSルームとも凄く近い校舎エリアの男子トイレに捨てた
妹紅「……」
てゐ「その後、あんたは23:45頃に倉庫にいたチルノに会いに行った。ゴミ袋をいくつか携えてね。チルノが一人で作業をしていたことは、あんたも知っていた。あんたはチルノに、こんな風に相談したんだと思う。『諸事情でメダルを使い切ったから、ゴミ捨てを手伝って欲しい』って」
妹紅「……」
てゐ「チルノはあんたを信用していた。そしてチルノ自身も飾り付けにずいぶんメダルを使ってしまっていた。だからチルノは『私が残りのメダル全てを使ってトラッシュルームを使うことになっても構わない』。そう考えたんだ。そうしてあんたは、チルノと同時にトラッシュルームのシャッターを潜った。死者のあんたならチルノと一緒にシャッターを通過出来るからね」
妹紅「チルノだって私が死体だとわかれば驚くだろう。その時私はどんな言いわけをしたんだ?」
てゐ「どうだろ? 適当に説明したんじゃないの? チルノは妹紅を信頼してたみたいだし」
妹紅「……」
てゐ「そして予定通りあんたはトラッシュルームの最奥で――チルノを〈ナイフ〉で刺殺した
妹紅「……いや……私は」
てゐ「なに?」
妹紅「なんでもない。続けてくれ」
てゐ「――チルノを正面から刺殺したあんたは、当然返り血を浴びることになる。だからまず服を脱ぎ捨て、入念に身体の血を拭き取った。そして新しい服に着替えたんだ。妹紅が持参したゴミ袋の中には、偽装のためのゴミだけでなく、新品の服も入ってたんだ」
妹紅「……服?」
てゐ「そうさ。それに着替えて部屋に移動することになるんだけど、その前にあんたはいくつかの物を焼却処分した。①DDSルームでのチャレンジ失敗時に血に塗れた服、②チルノ殺害時に血に塗れた服、③その他諸々で発生したゴミ。こんな所だね。これらを一度に、トラッシュルームの焼却炉で処分した」
咲夜「お待ちください、てゐさん。殺害に使われた〈ナイフ〉は処分しなかったのですか?
てゐ「ああ。もう少しだけ使い道があったからね。血を少し落としてから、懐にでも隠しておいたのさ」
咲夜「妹紅さんはその後どうなさったのですか?」
てゐ「後は簡単だよ。部屋に戻って、身体を洗い流したのさ。浴槽に最初から貯めておいたお湯でね。身体さえ綺麗にすれば、後はどうとでも裁判を乗り切れる。妹紅はそう考えたのさ」
魔理沙「お湯を貯める? そんなことしなくても、普通にシャワーを使えば良くないか?」
てゐ「妹紅は死人だから会場のあらゆる設備が、自分一人では使えなくなっちゃうんだよ? だったら部屋のシャワーだって出なくなる。さっき妹紅の部屋についていった時にも頼まれたんだ。『シャワーを捻ってくれ』って」
レミリア「待って。妹紅はトラッシュルーム内で銃殺されたのよね?
てゐ「違うよ。妹紅がトラッシュルームで一人になったその時――銃は一切使われてなかったんだよ。だから倒れた妹紅の側にあった血は――一人になってから〈ナイフ〉で自分を傷付けることで作り出した血溜まりだったんだ
レミリア「〈ナイフ〉で、血溜まりを?」
てゐ「そう。だから口から吐き出したあの銃弾は、DDSルームのチャレンジに失敗した時に発生した物だよ」
早苗「誰も発砲音を聞いてませんもんね。妹紅さんは血溜まりを作ってから、皆さんに撃たれたと嘘をつくために銃弾をみんなに見せたってことっすか。あれ? そうなると、他の証拠品の意味は? 手鏡や〈暗視ゴーグル〉、キッチンナイフや使ったばかりの〈ナイフ〉なんかはどうしたんすか?」
てゐ「手鏡や〈暗視ゴーグル〉は使わなかったから、倒れた場所の近くにそのまま捨てたんだろうねえ。でも二本のナイフについては、うまいこと同じ位置に転がるように、シャッターの手前からぶん投げたんだよ。そのほうが『チルノは密室で殺された』って印象付けやすいだろうし」
早苗「なるほど……」
ナズーリン「うーん……何か引っ掛かるな」
てゐ「で、極めつけはこの証拠品だ!」

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妹紅「これは……」
咲夜「焼却炉で見つかった、服の一部ですね。確かに妹紅さんの服の形状とも一致しますね
てゐ「――そしてもう一度言うけど、この『血塗れのテーブルクロス』。これってDDSルームで起きた自らの事故を隠蔽した時に使った物でしょ?」

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妹紅「……」
てゐ「どう? 反論ある?」
妹紅「――反論があるかって? 反論しかないんだがな。そのテーブルクロスにしたってそうだ。私がそこに捨てたっていう証拠でもあるのか」
てゐ「はぁ?」
妹紅「焼却炉に捨ててあった服だってそうだ。長袖なんて着ているやつはいくらでもいるし、店にも売ってる。紫に直接頼めばそんな物いつでも手に入る」
てゐ「! それはそうだけど――」
妹紅「銃弾についての説明もおかしい。私が偽の状況を作り上げただけで、実際の所はDDSルームで事故死しただけなら、私が口から吐き出した弾丸は死因として証拠品の判定に引っ掛かるはずだ」
てゐ「で、でも――」
妹紅「そもそも、私はDDSルームのチャレンジなんてしていないから今回の事件とは無関係だ。仮に私がDDSルームで死んだとして、そこをルーミアが捜索する危険性だってあるんだぞ? 部屋に入った瞬間に臭いで気付かれるに決まってる。銃殺が発生した現場を、テーブルクロス程度で処理出来ると思うか? てゐ、お前自身の推理によって、逆に私の疑いは晴れてしまうんだ」
てゐ「う……」
妹紅「それに、モノクマファイルに書かれていた死因は後頭部への銃撃だぞ。DDSルームのチャレンジ中に死んだとしたら、銃を口に咥えて正面から死んだことが死因として記述されていないとおかしいだろ

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てゐ「でも、DDSルームの銃でも、何か装置を用いれば、後頭部への射撃だって――」
妹紅「どんな装置を作ればいいんだ? 薄弱な根拠だな。それに、てゐの話だと私は別の場所で既に死んでいたということだが、私がトラッシュルームの事件より前に死んだのなら、どこに目撃情報があるんだ?」
てゐ「そんなのあるわけないじゃん! あったら推理なんていらないでしょ!」
妹紅「私が〈ナイフ〉と〈暗視ゴーグル〉を取得した瞬間を、誰か見ていたのか? キッチンナイフと手鏡を放棄した瞬間は? 体を切って血溜まりを作り出した瞬間は? DAY06の私の行動経路を詳細に語れるやつなんているのか?」
てゐ「……」
妹紅「ほらな、誰もいない。第一、お前の推理はあまりにも説明不足だ。私は既に死者だから例え裁判に勝ったとしても何も得られないんだぞ? それに焼却炉は死者の状態では使えない。いや――まずその線で私を論破するなら、実際に私が焼却炉を使ってみないと証明出来ないんじゃないか? 既に裁判は始まっているし、お前のために確かめてやる義理もないが」
てゐ「あんた、なんでそこまで……?」
妹紅「まあ、私が疑われているならそれでも構わないさ。さっさと議論を終わらせて投票で私を〈追放〉すればいいさ」
咲夜「罪を認めた――というわけではなさそうですね」
レミリア「逆ね。確定的な証拠がない限り、私達の言い分を何一つ認める気はないみたいね。何度でも復活可能な、蓬莱人の戦い方そのものね
咲夜「それが彼女の、法廷戦術……」
魔理沙「死ななければ安い。だが、死にもしない、か」
てゐ「はぁ……どうしたもんかねえ。やっぱり論戦なんて慣れないことはするもんじゃないか」
さとり「いいえ。てゐさんの推理の方向性は間違っていません。ですが、今回の一連の犯行を妹紅さん一人が行った事だと説明するのは難しいと思いませんか?」
紫「貴方。それ、〈読心〉のルール違反ギリギリの発言よ?」
てゐ「確かにさとりの言う通りかも知れないけど……」
魔理沙「なあ。今回の事件、文の時とは前提条件がまるで違うと思うんだ」
てゐ「前提?」
魔理沙前回の事件は青娥の暗躍によって現場すら一箇所に決められてたよな? 青娥の部屋を訪れたプレイヤーは全員、その時の手持ちだけで状況をどうにかしなければいけなかったわけだ
マミゾウ「その通りじゃな。例えば今回の事件では『誰なら鍵を開けることが出来たか』が議論されることはないように思える」
てゐ「は? 何が言いたいのさ」
魔理沙聞くけどさ、てゐが今回の事件とは一切関係なしに、会場の状況を踏まえて限りなくリスクを抑えた上で殺人に動くとしたら、何を手に入れて、どこで殺す?
てゐ「……」
魔理沙「ん? 気分を害したのならあやま――」
てゐ「私だったら――余計なことはしないと思うねえ。せっかくDDSルームに〈マスターキー〉と〈ナイフ〉があるのなら、みんなが寝静まった頃にでも部屋に忍び込んで、グサッとやるだろうね。凶器その他諸々はトラッシュルームで処分した所で、メダルを被害者から盗んだり、朝にメダルが補充されるのを待てばいいだけだし
魔理沙「だろ? DDSルームに〈マスターキー〉があるなら、いくらでもプレイヤーを暗殺出来るんだよ。それにしては、今回の事件の現場には、余計な物が多過ぎるんだ。極端な話、トラッシュルームに密室を作る意味すらない。単純に誰かがチルノを殺して勝ち上がるつもりだったのなら、こんなグチャッとした状況になるのはおかしいんだよ
てゐ「――やっぱり共犯者がいる、ってこと?
魔理沙「ああ。そしてこの奇妙な事件現場の状況には、プレイヤーを殺害すること以外にも意図があったのかも知れない
さとり「――詳しくは話せませんが、この事件の全容を把握するのは非常に困難です。ですが、残された証拠品や実際に遭遇した場面の中には、特定のプレイヤー以外には再現不可能な状況という物があります。こいしがお茶に仕組んだ毒のように」
ナズーリン「よし、わかった。そういうことで良いなら、私が引き継ごう」
てゐ「え?」
ナズーリン「二人の話を聞いているうちに、一つの可能性が見えてきた。なあ、てゐ」
てゐ「何さ?」
ナズーリン「妹紅に何かを自白させるのは難しいと思う。だったら、妹紅を相手にするのは一旦やめて、我々が一度論戦で優位に立ったことがあるプレイヤーから何とかして言葉を引き出す、というのはどうだろうか」
てゐ「ん? どういうこと?」
ナズーリン「推理には苦しい所があったが、てゐが妹紅について不審だと感じた点に関しては、恐らく何も間違っていない。妹紅は間違いなくみんなに対して隠していることがある。そこまでの推理はいいと思うんだ。だがDDSルームの事故死が死因だと仮定してしまうと、ドンドン矛盾が出てきてしまうようだな。だったらやはり妹紅はトラッシュルームで銃殺されたということだ。つまり銃弾の〈ダウジング〉結果も正しかった。妹紅はあの時既に死んでいた。さとり、そういうことだろう?」
さとり「ふふ。素晴らしい推理力だと思います」
てゐ「え、いやいやいや! トラッシュルームの前にはレミリアがずっと待機してたんだよ! だったらトラッシュルームの中に侵入して、しかも無音で銃殺出来るわけないじゃん!」

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こいし「そうだよ! 私もお姉ちゃんの後ろ辺りに居たんだけど、レミリアはきちんと見張ってたよ!
レミリア「――え?」
こいし「あれ? 違った? レミリアが自分でそう言ってたんだよね?」
さとり「――こいし。実際にトラッシュルームに入ったのは、皆さんと一緒にですね?
こいし「え、ええと? 私、なんか変なこと言った?」
てゐ「……?」
魔理沙こいしが関与していないことを信じるなら――トラッシュルームで妹紅を銃殺出来るプレイヤーは限られてくるな。こいしには〈リボルバー〉の反動をコントロールすることが出来ない。加えて狙撃の際には、身長差の問題もある。だよな?
ナズーリンああ。そういうことだ。妹紅を能力によって殺害することが可能であり、能力未発動の証明が出来ていないのは君だけだ。そうだろう、マミゾウ
 

08

マミゾウ「……」
ナズーリン「てゐ。私と交代して貰ってもいいかい?」
てゐ「どうぞご自由に」
ナズーリン――さて、何故妹紅が吐き出した弾丸は私の検索に引っ掛からなかったのか? それはな、妹紅は別の場所で既に死んでいたからだ
てゐ「……バトンタッチしてすぐだけど、ちょっと突っ込ませてね。それ、私も言ったよね? DDSルームで事故死したから死んだって」
ナズーリン「ああ、確かにそう言っていたな。しかし妹紅はDDSルームで事故死したわけじゃない。トイレでマミゾウに後頭部を銃撃されて殺されたんだ」
てゐ「え!? トイレで銃撃? それならテーブルクロスは――」
ナズーリントイレにあったテーブルクロスは、DDSルーム内で使われた物ではない。妹紅達が血を片付けるために使った物だ。予想以上に血液量が多過ぎて、校舎エリアからトラッシュルームまでテーブルクロスを運び出すことが出来なかったのだろう
てゐ「ん? いや、あんたなに言ってんのさ? さっきあんたが話し始めようとしたことって、『入り口に見張りがいる状況下で、誰がトラッシュルームに忍び込めるか』ってことでしょ? トイレでの銃殺だったら能力なんて何も関係ないじゃん」
咲夜「――ナズーリンさんはもしかして、『妹紅さんは二度銃撃されている』ということを言いたいのでは?」
マミゾウ「……」
てゐ「二度?」
ナズーリン「そのとおりだ。ある意味では、不死人としての特性を有効活用したトリックだと言える」
早苗「――ええと。妹紅さんが殺された現場と、テーブルクロスがあった場所が一緒ということなら、仮にルーミアさんがトイレを捜査することになっても問題ないっすよね。『血の臭いが妙なところから発生している』ことになれば問題になりますけど。とりあえずそこは解決しますね
魔理沙「だな。つまり、妹紅とマミゾウは共犯だった?
マミゾウ「……」
妹紅「……そんなの、言い掛かりだ」
てゐ「DDSルームで銃の銃口を口に咥えたんじゃなくて、マミゾウが背後から銃撃したってこと? そしてモノクマファイルには書かれていないだけで、マミゾウはトラッシュルームでも妹紅を銃殺した? 妹紅が倒れていた付近にあった血溜まりは〈ナイフ〉により作られたものではなかったって言いたいの? 確かにそれならモノクマファイルの記述とも矛盾しないけど……」
ナズーリン「その通りだ。モノクマファイルの記述は正しい。トラッシュルームの前でレミリアが見張っていたあの状況で、室内の妹紅を射殺出来たのはマミゾウしかいない。同じように隠密行動に適した能力者は確かにいる。しかし、〈無意識〉を使えるこいしでは体格面から〈リボルバー〉を扱うことは困難だし、〈時間停止〉が使える咲夜は能力未発動を既に証明済みだ
マミゾウ「では聞くが、わしはどうやってトラッシュルームで妹紅を射殺したんじゃ?」
ナズーリン〈幻惑〉を発動し、無音の状態で〈リボルバー〉を使って射殺したんだ。君は能力の使用に際して、このように定義した。『自分自身が自分以外にずっとその場にいるように見え、且つ自分の発する音が他者に対して全て聞こえないように』、と。だから妹紅は証言通り、なんの音も聞いていない。共犯者であるにも関わらずな」

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マミゾウ「確かに咲夜の証言では、凶器は〈リボルバー〉だということになっておるが――そんなの会場のどこにも無かったんじゃろ? お主だって〈ダウジング〉で見つけられんかった」
ナズーリン「そうだな。私は『妹紅が銃殺されたのは明白だし、わざわざその凶器を見つける意味はない』と考えたから、〈ダウジング〉を使って〈リボルバー〉を個別に探そうとはしなかった。だが――どうだろう? 今からでも許可が貰えれば〈リボルバー〉の位置について是非調べてみたいのだが、みんなはどう思うかな?
魔理沙「後、二回しか〈ダウジング〉出来ないんだもんなあ。うーん……」
早苗「ですよねえ。死因が判明している〈リボルバー〉について検索するなんて、意味があるんですかねえ」
さとり「……私は検索してみてもいいと思います」
こいし「じゃあ私もお姉ちゃんに賛成!」
てゐ「ま、好きにすればいいと思うよ」
妹紅「……無駄だと思うがな。好きにしてくれ」
咲夜「お嬢様はどう思われます?」
レミリア「決まってるじゃない。霊夢が決めるべきよ」
霊夢「え?」
レミリア霊夢ナズーリンの一度目の〈ダウジング〉は『今回の事件に関係ある証拠品』だったけど、二度目の〈ダウジング〉を『〈リボルバー〉の位置』で検索することに使っていいと思う? みんなも霊夢が選んだ結果なら賛成でしょ?」
魔理沙「……ああ」
早苗「まあ、霊夢さんが決めることなら」
さとり「良いと思います」
こいし「えー? みんな賛成に鞍替え? だったらここで逆張りしたら面白そうだなあ。じゃあ、はん――」
さとり「……」
こいし「うそですごめんなさいどうぞ」
ナズーリン霊夢。どうする?」
霊夢「……ナズーリン。探し出して」
ナズーリン「わかった。では検索してみよう……………………よし」
魔理沙「――もう終わったのか?」
早苗「〈リボルバー〉、どこに反応があったんすか?」
ナズーリントラッシュルームの中央付近だな」

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咲夜「それって、〈ナイフ〉と、キッチンナイフがあった場所ですか?
レミリア「私達が捜査時間中にトラッシュルームを調べた限りでは、〈リボルバー〉なんてどこにも落ちてなかったわね。中央付近にあれば複数人で調べれば流石に誰かが気付くはずよ?」
マミゾウ「ほう。なら〈リボルバー〉はどこに行ってしまったのかのう」
ナズーリン「マミゾウ、とぼけられても困る。トラッシュルームの地下、バックヤードに隠していたのだろう?
こいし「え! 地下に隠してあったの!?」
早苗「バックヤード、ですか? でも〈ダウジング〉をした時には、〈リボルバー〉は検索に引っ掛からなかったんですよね?
ナズーリン「いいや。ちゃんと検索には引っかかっていたのだよ。私達が気付かなかっただけで
早苗「どういうことっすか?」
ナズーリン「こいしが貯水槽付近に捨てた〈香水〉と〈消臭剤〉。あれが見つかった時のことを思い出して貰えるかな?」
咲夜「まず橙さんが梯子を登ってきて、その後にバックヤードの事務所を発見したんですよね。貯水槽は更に奥にありました」
ナズーリン「その前は?」
魔理沙ルーミアがトラッシュルームの最奥を探しても、二つの凶器は見つからなかったんだよな。だから消去法で、『〈香水〉と〈消臭剤〉はトラッシュルームではなく、地下のどこかにある』と推測出来たわけだ」
てゐ「ねえ、まさか――」
ナズーリン「そうだ。〈リボルバー〉は地下に隠されていたのだ。キッチンナイフという『ダミーの証拠品』によって〈ダウジング〉を回避することでな」
マミゾウ「ほう?」
ナズーリン「少しばかりダウジング〉能力の弱点について説明させて貰えるかな?」
咲夜「弱点、ですか?」
ナズーリン「例えば、ジュラルミンケースの中に一枚のカードを入れて会場のどこかに隠したとしよう。検索条件は――そうだなあ、『カードの場所』とでもしておこうか。この場合、ジュラルミンケースのおおまかな場所を見つけ出すことは容易に可能だ。しかし――①〈ダウジング〉で発見したジュラルミンケースに、ジュラルミンケースが二つ隣り合って置いてある場合、どちらにカードが入っているのかわからない(密集への弱点)。そして、②ジュラルミンケース同士が床に対して垂直方向に離れた場所にあった場合でも、どちらのジュラルミンケースにカードが入っているかわからない(垂直座標への弱点)
咲夜「では、この場合、②番の条件に引っかかったため、私達は〈リボルバー〉を見つけることが出来なかったと?」
ナズーリン「その通りだ。〈リボルバー〉が見つからなかった理由、理解して貰えたかな? この中の何人かは捜査時間中に地下も探したはずだが、あんなに机が密集している場所の一箇所から、ほぼノーヒントで〈リボルバー〉を見つけられるわけがないんだ

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マミゾウ「つまりわしは、懐にでも隠しておいた銃で妹紅を殺害し、急いで地下中央付近にあった机のどこかに隠した。そう言いたいのか?
ナズーリン「ああ」
マミゾウ「ふむ。『〈ナイフ〉の真下』を目算し、そこに銃を隠したと。そんなにうまくいくかのう
ナズーリン目算ではない。DAY05の夜にバックヤードを計測しておいたんだろ?
マミゾウ「……」
こいし「あれ? ねえねえ。そんなことしたらさ、ナズーリンが検索した時にトラッシュルーム中央に三つの反応が出ちゃうんじゃないの? 〈ナイフ〉とキッチンナイフ、それと地下の〈リボルバー〉で合計三つ
ナズーリン「そうだ。そこがポイントなんだ。今回の事件で、キッチンナイフは一切使われていないんだ。殺人そのものには当然使われていないし、なんらかの装置を作るためにも使われていない。つまりキッチンナイフは、『今回の事件に関係ある証拠品』ではないんだ

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魔理沙「え? でもキッチンナイフは間違いなくマミゾウが置いた物なんだろ? 一回目の事件でルーミアが『使わなかった』〈ナイフ〉も確か検索に引っ掛かってたんじゃないのか?」
ナズーリン「その通りだ。だがな、犯人が意図的に設置した物全てが〈ダウジング〉に引っかかるわけではないんだ。それに――『使う予定があった物』と『使う予定すらなかった物』は、意味がまるで違う
こいし「『使う予定があった物』と『使う予定すらなかった物』?」
ナズーリン「例えばこいし。君がスーパーマーケットで〈ナイフ〉を用いて誰かを殺害したとする。その時スーパーマーケットでたまたま見つけたシャープペンシルを、咄嗟に思いついたなんらかのトリックに使用したとしよう。殺害後に、周囲にある食料品や生活用品、娯楽用品、それらの乗った棚を片っ端から破壊してから、シャープペンシル一つを紛れ込ませて逃げたとしよう。私が『今回の事件に関係ある証拠品』で検索したら、結果はどうなると思う?」
こいし「ええと、〈ナイフ〉もシャーペンも、棚に置いてあったいろんな物全部も証拠品に引っ掛かっちゃって全部誤魔化せる!」
ナズーリン「いいや。〈ナイフ〉とシャープペンシルは引っ掛かるが、棚を破壊して作り出した偽物の証拠品は、〈ダウジング〉には一切引っ掛からないんだ
こいし「――あ! そうか! マミゾウは〈リボルバー〉を隠すためだけに、検索には絶対に引っかからない未使用のキッチンナイフを設置したんだ!
ナズーリン「そういうことだな。〈ナイフ〉が置かれていた位置と、丁度真下に位置する〈リボルバー〉を隠した位置。これらはDAY05の夜に、トラッシュルームとバックヤードを行き来しながら事前に計測をしておいたのだろう。トラッシュルームを計測するだけなら、メダルを投入してキャンセルボタンを押せば、シャッターの内側に入ることも可能だ
魔理沙「おい、今度は私から質問するがいいか? そうまでして〈リボルバー〉を隠す意味って本当にあるのか? お前が〈リボルバー〉そのものに対して〈ダウジング〉しなかったのは、妹紅の死因が明白だったからなんだろ?」
ナズーリン「その通りだ。だが本当は捜査時間内に、〈リボルバー〉を探し当てるべきだったんだ。その〈リボルバー〉を調べれば、妹紅が事件に関わったという明確な証拠が見つかったはずだからな」
早苗「明確な証拠? 隠された〈リボルバー〉を見れば、何があったか一目瞭然ということっすか?」
ナズーリン「ああ」
咲夜「……なるほど。そういうことですか」
早苗「え? 咲夜さんはわかったんすか?」
咲夜「モノクマファイルには『死亡回数』についての記述はありませんでした。だから妹紅さんは『〈不死〉による工作なんてしていない』と反論し続けることが出来ました。しかし、直接〈リボルバー〉を手に取って調べることが出来れば、それさえもわかってしまうんですよ
魔理沙――そうか! 今隠されている〈リボルバー〉の中には弾が四つしか装填されていないんだ。妹紅が一度だけ撃たれて死んだのなら、弾が五つ装填されていないとおかしいのに
ナズーリン「そう。だからマミゾウ達は〈リボルバー〉をわざわざ隠したのだ。てゐの推理から色々わかることもあった。名推理を横取りしてすまないな、てゐ」
てゐ「どうでもいいよ。真実さえわかるなら。だったらさ、〈暗視ゴーグル〉はなんだったの?

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ナズーリン「ん?」
てゐ「それと手鏡もだよ。二つがなんでトラッシュルームのあの場所にあったのかは、そこまで重要じゃないんだよ。バックヤードの扉があって、その死角に置いてあったわけだからさ。私達は妹紅が死んだ時にほぼ一緒にトラッシュルームに入ったわけだから、言い換えればほぼ全員がその二つを捨てた容疑者ってことにはなっちゃうけど。もちろんすぐに証拠品を見つけられなかった責任は私達にある。それでも仮に手鏡を妹紅が所持していたとしたら、割れていたのは恐らく、銃殺されて倒れた時だろうね。そしてすぐに目を覚まして、懐から破片を掻き集めて〈暗視ゴーグル〉ごと扉付近に捨てた
ナズーリン「ふむ……」
てゐ「〈暗視ゴーグル〉にしろ手鏡にしろ、『使う予定のあったもの』は〈ダウジング〉に引っかかるんだよね? 実際に使わなかった場合であっても。だったらさ。その二つは何に使われたの? あるいは使うつもりだったの?
ナズーリン「……すまない」
てゐ「え?」
ナズーリン「偉そうに講釈を垂れておいて申しわけない。手鏡の使い方は色々あると思うのだが、〈暗視ゴーグル〉に関しては本当に見当もつかないんだ」
魔理沙「私もよくわからないな。手鏡は標的を尾行したりにも使えるが、この狭い会場でそこまでする必要があるのかと問われると……
早苗「うーん。でも、結果としては〈暗視ゴーグル〉が盗まれていて良かったと思いません?」
魔理沙「どうしてだ?」
早苗「今向こうで青娥さんに慰めて貰ってるルーミアさん、本当はチルノさんから盗んだ〈水晶玉〉で藍さんを殺そうとしてたんすよね? だけど〈暗視ゴーグル〉が無ければ能力は使えないわけだから、DDSルームに〈暗視ゴーグル〉が無ければどっちみち殺害計画を諦めていたと思うんすよねー」
ナズーリン「まあ、確かにな」
魔理沙「――ん?」
咲夜「――あ!」
レミリアルーミアの殺人を未然に防ぎたかった』。妹紅が盗んだ理由って、もしかして本当にそれなんじゃないの? だとすれば、ますます不思議ね。そんな優しい妹紅が、どうして私達とはこうして議論で敵対しているのか」
妹紅「……」
早苗「でも、そのために〈暗視ゴーグル〉をDDSルームから取り出したのだとしても、それじゃやっぱり〈ダウジング〉には引っ掛からないですよね? 『DDSルームから移動したかっただけであって、決して使うつもりはなかった』ということでしたら
レミリア「そうね。それに手鏡の使用用途もよくわからないわね」
咲夜「――私、妹紅さんの手鏡の使い方、なんとなくわかった気がします。〈暗視ゴーグル〉は手鏡を探すために使われた物なのでは?
レミリア「え?」
咲夜「皆さんも妹紅さんの部屋、確認しましたよね?」
レミリア「ええ。見たわよ。ベッドすら無かったわね。ミニマリストってやつかしら?」
咲夜「一度目の銃殺の後、妹紅さんが付着した血を完璧に洗い流すためにはある物が必要なんですよ
レミリア「ある物?」
咲夜「はい。髪を確認するための手鏡です
こいし「え? どうして? 鏡ならお風呂場にもあるでしょ?」
てゐ「確かにあるよ。それで正面の血だけなら確認できる。でもね――」
咲夜「はい。それでは髪の後ろ側が確認出来ないのです。手鏡をこう持って――合わせ鏡にして血の付着を確認する必要があります。後頭部を狙撃されたのなら尚更必要でしょう」

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こいし「なるほどー。手鏡なら誰の部屋にもあるもんね」
咲夜「いいえ。妹紅さんの部屋には、恐らく手鏡が無かったんですよ。妹紅さんは部屋の備品を運営に返却した際、手鏡も返してしまっていた。それくらいでしたら運営への交渉次第ですぐに便宜を図って貰えたのでしょう。ただし生存しており、プレイヤーとしての権利を有したままだったらの話です。妹紅さんは銃殺され――既に死人だった
ナズーリンだからと言って、おいそれと共犯者であるマミゾウの部屋を訪ねるわけにはいかなかった。リスクを覚悟でマミゾウの部屋に行く事も出来たが、妹紅は別の方法で手鏡を手に入れようとした。そういうことだろう?」
咲夜「はい。霊夢と妹紅さんがDAY07の0時に鉢合わせた時、妹紅さんはスーパーマーケットに手鏡を調達しに来ていたのです
早苗「でも妹紅さんは既に死人だから――スーパーマーケットの蛍光灯を点けることが出来なかった?
咲夜「はい。あるいはそもそも蛍光灯のスイッチの場所が暗闇でわからなかったのかも知れません。だから妹紅さんは止む無く本来使う予定のなかった、ルーミアさんの殺人を防ぐ目的で回収した〈暗視ゴーグル〉を使って、暗闇の中から手鏡を見つけ出したんです
ナズーリンだから綿密に計算され配置された他の証拠品とは違って、その〈暗視ゴーグル〉と手鏡だけが奇妙な位置で見つかった、ということか」
咲夜「妹紅さんは部屋に戻り合わせ鏡をして、長い後ろ髪を隅々まで確認することが出来ました。しかし今度は手鏡と〈暗視ゴーグル〉を会場のどこかに捨てに行かなくてはならなくなった。自分で話していてなんですが、予定外のこととはいえずいぶん雑な動きですね……」
レミリアさて、妹紅は新しく発生した厄介な証拠品をどこに捨てればいいのかしら? それも二つもね。時間的に宿舎エリアのどこかに捨てに行くしかないし、うろうろしてるとこいしにだって姿を見られる危険性がある。自分の部屋に置いておくのは厳禁。共犯者のマミゾウにも相談に行けない。倉庫にはまだチルノがいるかもしれないし、厨房には当然私達がいる。既に凶器が二つも保管されている青娥の部屋に捨てるのも有り得ない。宿舎エリアのトイレが一番理想的かも知れないけど、トイレには鏡が設置されているから『合わせ鏡』を連想させてしまうし、既に校舎エリア側のトイレにも証拠品を設置してしまっているから、それもまた一連の繋がりを連想させてしまう。妹紅は廊下で途方に暮れていたはずよ。何より厄介なのが、すぐに見つかりやすい場所に〈暗視ゴーグル〉を隠した場合、ルーミアに見つけられて殺人を実行されてしまう危険性があるのよ。それじゃ本末転倒よね。妹紅は後悔したんじゃないの? これならDDSルームから〈暗視ゴーグル〉を取り出すべきではなかった、って」
咲夜「そこに霊夢とお嬢様が現れ、妹紅様の死体の発見人数は三人になってしまった。当然、死体発見アナウンスは流れました
魔理沙「いや、なんというか、その……」
早苗「咲夜さんの言った通り、杜撰というか行き当たりばったりというか」
妹紅「いや待て。勝手に推理されて、勝手に私に幻滅されても困るんだが……」
マミゾウ「そうじゃ。もっと言ってやれ。妹紅が疑わしい行動を取っていた、ということは認めてやってもいいが。しかしわしはどうじゃ? 能力的に妹紅を射殺出来た、という可能性の話しかしてないだろう。私が関与したという証拠はあるのか?」
ナズーリン「! それなら、一つあるぞ」
マミゾウ「何?」
ナズーリン私は早苗に頼まれて校舎エリアの捜索に向かったんだ。早苗。そうだったな?」

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早苗「はい、確かにお願いしました。ナズーリンさんと、ええと――」
マミゾウ「わし、じゃったな

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ナズーリン「私は校舎エリアの捜索を、出来る限りの集中力で行ったつもりだ。しかし――後に出てきたある物を私は見つけられなかった」
早苗「ある物?」
ナズーリン「ああ。血塗れのテーブルクロスだ」
魔理沙「! そういえばどうしてテーブルクロスはチルノ捜索時に見つからなかったんだ? だって不自然だろ。霊夢達が後から男子トイレを捜索した際、血は個室の外にも流れ出していたんだろ?

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こいし「うーん。でも校舎エリアってさ、ナズーリンも一緒に捜索してたんでしょ? だったらナズーリンも怪しくなっちゃわない?」
魔理沙「あのなぁ、ナズーリンが犯人だったら、そもそもいくらでも証拠品の隠蔽が可能なんだぞ? 私達がこうして話し合うための情報を与えてくれてるのは、他ならぬダウザーのナズーリンだぜ?
こいし「あ、そうだった!」
マミゾウ「わはは! こいしの言うとおりじゃ! ナズーリンの関与も十分に考えられるじゃろうな!」
てゐ「……え?」
ナズーリン「……なんだと?」
マミゾウ「ナズーリンはわしがテーブルクロスの存在を黙っていたと言いたいようじゃが、誰がどこの捜索をしたかを証明するなんぞ、監視カメラの確認でもしない限り不可能じゃのう。そもそもじゃ。テーブルクロスは捜査中にトイレに隠されたと考えるほうが自然じゃろうな
ナズーリン「君、私を侮辱しているのか? あんな大きな、しかも血のついた証拠品を捜査時間中に移動する犯人がどこにいる? それこそ能力未使用を証明していない君でもないと無理だろう
マミゾウ「――先に言っておくが、わしならそんな証拠品なんぞ簡単に見つけられる。お前達はナズーリンを信頼しているようじゃが、こうは考えられぬか? 全ての証拠品の判定に対して嘘を吐く必要はないんじゃよ。ほんの一部だけでいいんじゃ。例えば、テーブルクロスに対して、とかのう」
ナズーリン「君。それは半分自白ととっていいんだな? 私がテーブルクロスを隠しただと? なんと愚かな。マミゾウ、君は自分が何を言っているのかわからないのか?」
早苗「あ、あの――」
マミゾウ「そもそもおかしいではないか。仮に〈リボルバー〉をわしが持っていたのなら、何故チルノを〈ナイフ〉で刺殺する必要がある? わしは銃声を消し放題なんじゃぞ? そんなの、倉庫内でチルノを撃ち殺せばよい話ではないか
ナズーリン「だから、現場の偽装のためにそうしたのだろう? 一人が殺せる人数は二人までなのだから、君が妹紅とチルノの両方を殺したのでは?」
マミゾウ「だから、その根拠はなんじゃ。ええ? お前さんだって〈リボルバー〉の場所を把握出来るし、隠蔽だって出来るんじゃぞ?」
ナズーリン「〈リボルバー〉なんて反動が強い武器、小柄で筋力も少ない私が扱えるはずがないだろう! あの状況で妹紅を射殺出来るのは君だけだ!」
魔理沙「おいおい……二人とも感情を抑えろ!」
マミゾウ「ナズーリン。だから、お前さんの考えておることが間違えておるのじゃ! 捜査の過程で起きたミスは、証拠品全般に限れば全てお主の責任じゃろ!」
ナズーリン「……二ッ岩マミゾウ。貴様、ここから解放されたらすぐに寺から出ていけ! そのような性質、聖の教義に反する!」
マミゾウ「ふん。あんな胡散臭い寺になんぞ二度と戻るか。ついでに幻想郷から出ていってやるわ。あの理想主義者の住職にも伝えてくれ。人間が妖怪と共に生きるなぞ到底――」
こいし「はーい! はい! はい!」
さとり「こいし?」
ナズーリン「ん?」
マミゾウ「……なんじゃ?」
こいし「みんな、ごめんなさーい! チルノを〈ナイフ〉で殺したのも、妹紅の頭を撃ち抜いたのも、ぜーんぶあたしでーす!」
ナズーリン「……」
マミゾウ「こいし、急にどうしたんじゃ……」
魔理沙「こいし……」
こいし「一生懸命人形を揃えたり、メッセージを残したり、凶器を使ってみたりしても、結局みんな殺せなかったから、ムカついてやっちゃった! てへ☆」
早苗「あの、でもこいしさんは――」
こいし「みんな真面目に議論しちゃってバカみたいだったなあ。ほんとうっけるー! 夜も遅いし眠いんじゃないの? 早く私に投票しなよ!」
咲夜「……」
レミリア「ねえ。こいし、貴方は――」
こいし「こういうのも楽しいかなって思ってたけど飽きちゃった! 飽き性でごめんね! だからほら、ナズーリンもマミゾウおばあちゃんもそれ以上ケンカしないで! お互いに謝って! ね!」
さとり「こいし……」
こいし「お姉ちゃん。ごめんなさい。全部私がやりました。でも、こんな妹でも、お願いだから縁を切らないでくださいませんか?」
さとり「あ……貴方……そんなことを言わなくても……私は…………」
こいし「さっき〈追放〉なんて怖くないみたいなこと言ってたけど。ほ、本当は、ちょっと怖いんだ。だから、お、おねがいします。おねえちゃん自身の手で、あたしを。あたしを、あたしをころ」
妹紅「――もういい!!! 頼む、もうやめてくれ。こんなの、死ぬことよりずっと辛いよ!」
こいし「う、ぐす……うぅ……ひぐ……ひっく……だってマミゾウおばあちゃんが、幻想郷を出ていくって言うから……」
マミゾウ「こいし……」
妹紅「悪いがマミゾウ。私はこの関係を抜ける。せっかく私を信頼して、仲間に誘ってくれたのにごめんな」
早苗「あの、それでは――」
妹紅「てゐやナズーリンが推理した通りだよ。私も今回の事件に一枚噛んでる。だけどチルノを殺したのは、私でもマミゾウでもない。――別の誰かだ
 

09

マミゾウ「妹紅、お主――」
妹紅「マミゾウ。本当にすまな――」
マミゾウ「遅すぎるわ! このど阿呆!」
妹紅「はあ!?」
マミゾウ「あー、清々したわい。いったいいつまでこんな茶番を続ければいいのかと、正直イライラしとった。ようやく解放されるわけか」
咲夜「それでは――」
マミゾウ「ああ。トイレで妹紅を背後から銃殺し、トラッシュルームでも〈幻惑〉を使って撃ち殺したのはわしじゃ。ずっと黙っていてすまんかった」
魔理沙「おい、ということは――」
妹紅「私とマミゾウは共犯だ罪を認めればマミゾウが死ぬことになる。だから一連の出来事について黙っていたが、もうやめようと思う
マミゾウ「そうじゃそうじゃ。それでいいんじゃ」
妹紅「ごめん……」
マミゾウ「いや、謝る意味が本当にわからん。お前さんは二回も命を私に預けてくれたんじゃぞ? それで十分じゃろう?」
レミリア「なるほど。そういう事情があったから、妹紅は頑なになってたのね」
マミゾウ「そもそもの話をするか? トラッシュルームで撃たれた妹紅は、気絶したふりを続けたまま、ずっと横たわっている計画だったのじゃ。てゐの言った通りそうすれば妹紅は完全に容疑者から外れることが出来た。だが妹紅はチルノを殺した真犯人を、自らの手で暴くことを選んだのじゃ。しかしいざ裁判が始まってみれば――」
早苗「妹紅さんはマミゾウさんを全力で擁護し、事件について口を閉ざし続けたんすよね」
マミゾウ「その通りじゃ! 妹紅よ、ほんっとうに中途半端じゃなあお主は! こちらの計画に乗ってみたかと思えば勝手に手鏡を探しに行って余計な証拠を増やすし、起き上がって霊夢に協力するのかと思えば学級裁判ではわしを守ろうとするし、そのまま口を閉ざし続けるのかと思えば我慢できずに自白するし――はぁ! 全く! 蓬莱山輝夜と宴会で初めて話した時、『こんな嫌なやつが世の中にいるのか』と思ったが、お前さんも同類じゃ! 輝夜がお主の頭を吹き飛ばしたくなる気持ちもわかるわ! 似た者夫婦じゃお主らは!」
妹紅「はぁ!? 流石にあいつと一緒にされるのは心外だ! ってか夫婦ってなんだよ!?」
てゐ「あー、慧音も同じこと言ってたっけ」
妹紅「は!? 慧音も言ってたのか!?」
咲夜「――なるほど。そういう理由があって、妹紅さんは固く口を閉ざしていたのですね。ですがそれなら何故てゐさんの言っていたように、チルノさんが殺された時点で名乗り出なかったのですか?
レミリア出来なかったのよね? 〈絶望〉や〈17人目〉の存在があったから。例えばチルノを殺害したのが〈絶望〉で、それが咲夜だったりしたら? 全てを自ら明かそうとして妹紅が動く前に、四肢の自由を奪った上でエリアのどこかに監禁される危険性だってある。たった一時間しかない捜査時間中に、無制限に使える能力を使ってそれをやられたらたまらないでしょう? もし〈絶望〉が事件に関与していたら、妹紅はこうして学級裁判で証言することも不可能だったかもしれないわね
咲夜「確かにその通りですね。能力に制限が無いプレイヤーが動けば、同じことをされた危険性がありますね。つまり、妹紅さんもマミゾウさんも――」
妹紅「ああ。私達はチルノを殺していない。私がトラッシュルームであんな風に立ち上がったのは、『死後も学級裁判を待たずに動ける』というのをみんなに見せたかったからだ。そうしないと私とマミゾウが犯人特定のためにここで何を明かしても、それら全てが証明出来ないだろ? 私達のことを打ち明けるためには、『昨晩何があったか』、『私が殺害直後に動けるという証拠はあるか』、この二つが重要だからな」
ナズーリン「ふむ。では改めて、『本来の計画』と『実際の出来事』について、まとめて話してくれないか?
妹紅「まとめる、って言ってもなあ。みんなが話していたことで大体正解だし」
マミゾウ「少し時間が掛かるかも知れないが、紙にでもまとめたほうがいいかのう?」
霊夢「それなら出来上がってるわよ。はい」

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魔理沙「……すげえな、これ。みんなも見てみろよ」

早苗「え? うっわ! 超わかりやす!」
さとり「ふふ。流石霊夢さんですね」
霊夢「そんなに驚かれても……みんなの話してたことをまとめただけでしょ?」
ナズーリン「いやはや、先程から何かメモを取っていると思っていたが、まさか全体をここまで要約していたとはな」
こいし「え? 一回目の裁判の時、メモなんて取ってたっけ?」
霊夢「? ああ。こいしもあの場に居たんだ。――文なら多分裁判中もメモを取りながら話を聞いていただろうな、って思ってね」
レミリア「……」
咲夜「お嬢様。こうして比較してみると、本来の計画と実際の出来事にずいぶん開きがあったようですね」
レミリア「――ええ。そうみたいね」
ルーミア「へえ、途中抜けてたけど、こういう流れだったんだ」
霊夢「あら? ルーミア、もう平気なの?」
ルーミア「うん。大丈夫! ここから参加するね!」
青娥「少しでも議論に参加して、みんなの役に立ちたいそうです」
霊夢ルーミア。ありがとうね」
ルーミア「わたし、今度こそ頑張るからね!」
妹紅「ちょっとそのメモ、私にも見せてくれ。――おいおい、嘘だろ?」
マミゾウ「霊夢、お主、わしが運営に〈17人目〉の情報を開示するように交渉することまで看破していたのか?」
霊夢「まあ、貴方が妹紅と組んだ理由について考えていたら、なんとなくわかったことなんだけど」
マミゾウ「わっはっは! 痛快じゃ! 本来博麗の巫女と事を構えるというのは、こういう話なんじゃのう! 幻想郷で悪いことは出来んなあ!」
霊夢「は? 当たり前じゃない。そんなことしたらしばくわよ」
紫「うふふ……」
霊夢「何よ」
紫「霊夢らしいな、って思って」
てゐ「霊夢、訊きたいんだけどさ。〈17人目〉についての交渉って何? 他にもさっきの議論で出なかったことが、このメモには書かれているよね。そこを補足して貰いたいんだけど」
マミゾウ「よし、では霊夢の代わりに、主犯であるわしが、表を確認しつつ細部を語っていこうじゃないか」
妹紅「なあ、ここには紫もいるんだぞ? 〈17人目〉を暴き出す計画について話すのは、まずいんじゃないのか?」
マミゾウ「そんなことも言ってられんじゃろう。DAY05の深夜、話し合いの中で出た〈17人目〉についての考察は皆とも共有しておくべきじゃろう。〈17人目〉の存在そのものについて、いくつかの不審な点があることもな
 

10

ルーミア「不審な点って? そもそも八雲藍が〈17人目〉じゃないかも知れない、って根拠はなに?」
妹紅「よし、そこから説明するか。まず、八雲藍は監視業務も任されている。初日からそうだったろ?

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マミゾウ「死体発見アナウンスはプレイヤーによる発見人数によってタイミングが左右されるのじゃぞ? 八雲藍がプレイヤーであったのなら、現場に遭遇したプレイヤーがたった二人死体を見つけた段階で、死体発見アナウンスは流れてしまうわけじゃ。藍だってモニターを通して死体を『見て』いる事になるのじゃからな
ナズーリン「なるほど。つまり、今回の事件に関していうなら、マミゾウの次に霊夢が妹紅の姿を視認した段階で、死体発見アナウンスは鳴ってしまうわけだ。これでは探偵側にも犯人側にもリスクが増えるし、ゲームを進行する運営側の業務にも支障が出るな。それに八雲藍が就寝中か否かでカウントが変わってしまえば、他のプレイヤーから八雲藍が〈17人目〉だと容易に推測出来てしまう
早苗「あの、すみません。〈17人目〉の考察に行く前に、先に今回の計画について補足を頂けますか?」
マミゾウ「そうじゃな。ざっと説明しておくか。そう言っても、DAY05についてはそれほど話すことはないがな」
妹紅「私の部屋にマミゾウが訊ねてきたんだ。そして計画に使う予定の〈リボルバー〉を見せられつつ、マミゾウに共犯を持ちかけられた
マミゾウ「ああ。早苗達が所有していた物をな。じゃがな、妹紅の部屋を訪れた時点では、わしの頭の中には何の犯行計画もなかった
てゐ「つまり、妹紅は自分を殺すための計画を、マミゾウと二人で熱心に考えていたってわけか。お人好しの極みだねえ」
妹紅「そんなにお人好しかなあ。まあ、私の口からちょっとした話が出た事で、マミゾウは犯行計画の方向性を決められたのは確かだけど
咲夜「方向性、ですか?」
妹紅「ああ。レミリア達には本当に申しわけなかったけど、実はマミゾウには私が〈トラバサミ〉で大怪我をしたことと、レミリア達と一緒にそれを隠蔽していたことを全部バラしちゃったんだよな。計画の参考になると思って」
魔理沙「ん? マミゾウも妹紅も、レミリアの口から初めてその事を訊いた風だったけど――」
マミゾウ「かっかっか! 皆をうまいこと騙し切ってしもうた!」
妹紅「こいしがそのことを言い出した時にはヒヤヒヤしたよ……」
レミリア――マミゾウはあの時の血溜まりの一件から計画の着想を得たということ?
マミゾウ「そういうことじゃ。あの時は誰も『血溜まりがどのような経緯で発生したか』について正しい答えを得ることが出来なかったじゃろ? これを応用すれば、皆を裁判で出し抜くことも可能だと考えたんじゃ。運営を含めてな
早苗「お二人が共犯となった経緯や、計画が生まれた経緯はわかりました。ではDAY06についても少し聞いておきたいのですが、DDSルームを使う時、妹紅さんがマミゾウさんにメダルを渡したのではなくて、マミゾウさんが妹紅さんにメダルを渡したんすか?
マミゾウ「その通りじゃ。まず、トイレの中で妹紅を射殺する前に妹紅に一枚を残してメダルを全て渡しておく。その状態でわしがトラッシュルームの端末を起動すれば、要求される枚数は当然一枚じゃ。トラッシュルームを利用した後は、妹紅からメダルを返して貰えば何も問題はない。と思ってたんじゃが――妹紅と別れて部屋に戻ってから少し不安になったんじゃ
てゐ「不安?」
マミゾウ「捜査が開始されたら、ナズーリン当然証拠品の検索を行うと思った。『妹紅から返して貰ったメダルは証拠品として判定されてしまうのではないか』とも考えた。その点について紫を呼び出して確認したら、彼女はこの土壇場で大変重要な情報を口にしよったんじゃ
紫「え? そんなに大切な情報だったかしら? 別にそんなつもりは無かったんだけど」
マミゾウ「そんなわけあるか! 重要も重要じゃ! 全く、ルールに書いておけばいい物を。よいか? 今からする話を、しっかり聞いてくれ
ナズーリン「な、なんだね?」
マミゾウ「このゲームは、何度か話し合いで出た通り、犯人側に有利な仕掛けが多い。つまり、犯人側の小さなミスや勘違いは、余程のことがない限り運営にフォローされてしまうんじゃ
ルーミア「ん? どういうこと? 紫が犯行をサポートしてくれるの?」
マミゾウ「そうではない。致命的な証拠品やトリックの準備については、まず助けなど得られんよトラッシュルームに残ってた、妹紅の血の付いた長袖の先端部分のような物はな。さて、その表をもう一度見てくれ。妹紅は死亡後にシャワーが使えない危険性を考えて、あらかじめ浴槽に湯を貯めておいたな?
妹紅「あれさ。お湯を張るのを忘れていたとしても、普通にシャワーは使えたらしいんだよ
てゐ「え? 実際に妹紅が蛇口を捻っても、お湯は出てこなかったじゃん」
紫「実はね。この会場の施設や起きた出来事の殆どは、細かく管理されてるのよ。だから妹紅さんが計画実行時にお湯を張るのを忘れていたとしても、ちゃんとお湯は出たのよね。シャワーの使用権について気付いていたから、面白いと思って妹紅さんが捻ってもシャワーは出ないようにしておいたけど」
妹紅「最初に聞いておけば良かったなあ。決まったお湯の量で体を洗うのって結構大変なんだぞ?」
紫「他の部分では、そうねえ。例えばこいしさんが〈香水〉を貯水槽に投入した時も同じよ。トリックとして成立するから、毒をそのまま上水道に流したのよ
ナズーリン「勘弁してくれ……」
霊夢「――毒を遮断することも、紫の裁量次第で可能だったの?」
紫「そうよ。後から藍には怒られちゃったけど……。それにトイレで妹紅さんが殺害された時には、妹紅さんの物と一目でわかるような毛髪がトイレの個室外まで飛んじゃったりしていたのよ。射殺の際に使われた個室の隣の個室にまでね。頭部が吹き飛んだ時に出た脳漿とかもついたままで。でもこれじゃ銃殺の現場が丸わかりだから、私の能力で綺麗サッパリ片付けちゃったわ
魔理沙運営にとっては、あくまでゲームを滞りなく進行することが最優先、ってことか
早苗「そしてそれらはプレイヤーへの干渉とは認められないし、レミリアさん達が言っていた通り、そもそも紫さんのカードに書かれていることは、運営に対しての拘束力がないってことっすね
紫「そういうことね。だからみんなも安心して、犯罪計画を立てまくって頂戴ね」
こいし「はーい!」
ルーミア「わかったよー!」
咲夜「あれ? お嬢様は『がんばるぞー!』とか言わないのですか?」
レミリア「言わないわよ! 一緒になって言うわけないでしょ! ねえ、私のこと本当に尊敬してる!?」
てゐ「――マミゾウ。計画が無事遂行出来たら、紫に対して〈17人目〉を連れてくるように頼むつもりだったんだよね? 具体的にはどんな風に議論を展開するつもりだったの?
マミゾウ「『何故DDSルームの奥にも大量の血が存在するのか? 出血量からして、もう一人誰かが死んだのではないのか』。とりあえず計画がうまくいったら、紫に対してこのような指摘をするつもりだった。本当は自作自演なんじゃがな」
妹紅「DAY02の時は血溜まりこそあれ死体なんて出なかったし、事実私が大怪我をしただけで、誰も死ななかった。だけど今回の計画では別だ。間違いなく私の銃殺死体が出るから、紫も〈17人目〉を連れて来らざるを得なくなる。特にトラッシュルーム奥の血溜まりは、能力を使うか、あるいは本当に誰かが死んだのでもないと状況を作り出すことは不可能だ
てゐ「はい、異議ありー。誰が死んだのかなんて、紫が作ってるモノクマファイルで一発でバレるでしょ?」
妹紅「確かにな。だけどそれは『実際に誰かが死体を見つけて、捜査時間が始まった場合』だけだろ? 死ぬのは私一人なんだし、謂わば『架空の事件のモノクマファイル』なんて紫にも作れるはずがないんだ
マミゾウ「そもそも殺人に関与したプレイヤーが隠しておきたい情報は、紫から他のプレイヤーに話すことが出来ないんじゃぞ? 今回のモノクマファイルの記述が極端に少ないことからもわかるようにな。付け加えるなら、運営はナズーリンの〈ダウジング〉能力を反論の種にすることも無理じゃな。この能力は運営がナズーリンに対して貸し出している能力なのじゃから
てゐ「それはそうだけど――そもそもだよ? 紫にごねられたらどうするのさ? 『つべこべ言わずに推理しろーい!』って。実際に妹紅は能力で死亡後に動くことも、大量に血を流してから何の治療もなく再生することも可能なんだよ?」
霊夢もう運営にはそれも出来ないのよ。〈17人目〉のプレイヤーによって、DDSルームの端末が破壊されたその日から
てゐ「DDSルームの端末?」
霊夢「てゐ。〈17人目〉の能力は?」
てゐ「そんなのまだ全然わかってないじゃん――あ」
ナズーリンそうか! 明確にプレイヤーに対しての妨害行為を行った、〈17人目〉の狂言自殺の線が消えないのか!
ルーミア「自殺? 〈17人目〉が自殺して、何になるの?」
青娥「例えば〈17人目〉の誰かさんが、こいしさんと似たような能力の持ち主だとしましょうか。その誰かさんが、今回の妹紅さんの用にトラッシュルームで自傷してから、別の場所でそのまま死亡してしまったとしましょう」
ルーミア「え? そんなことするプレイヤーなんているのかなあ……」
青娥「〈17人目〉という曖昧な位置にいるプレイヤーに限っては、それも十分に考えられるんですよ。そうして自殺した〈17人目〉の死体が、死んだ後も透明化が解除されないタイプの物だったら? 困るのはどなたでしょうね?」
ルーミア「ええと、紫にはプレイヤーの能力が効かないから――そんなの、実際に捜査時間中に色々調べたりする私達が一番困るじゃん
妹紅「その通りだ。だが逆にそれを運営に対して『この状況はフェアじゃないから、推理なんて始められない。だからもう一人のプレイヤーをここに呼び出せ。生きている姿を見せろ』と直接交渉すれば、不利になるのは今度は運営側だ」
マミゾウ「敵対している〈17人目〉が行えるかもしれないことは、狂言自殺だけではない。『血液のみ一定時間具現化』したり、『死体発見アナウンスをゲーム中に一度だけ無効化出来る能力』だったり、そういう能力者である場合も考えられる
ルーミア「……そんなの、もうなんでもありじゃん」
マミゾウ「じゃろう。まあこちらにしてみれば状況が揃えばいくらでも紫に対してイチャモンを――」
ルーミア「そうじゃなくてさ。実際に〈17人目〉って、どこかにいるんでしょ? そんな能力者、ここにいるみんなの力を合わせたって勝てなくない?」
咲夜「!」
レミリア「……貴方の言う通りよ。しかも私達は、この裁判が終わった後でここから更に人数が減る」
霊夢「だとしても、私達は負けるわけにはいかない。私が文と一緒に紫から聞いた話では、『17番目の凶器はない』、『運営ではなく、内偵者』、『誰かを殺すことはない』。そういう話だったわ」
咲夜「ですがそれはルールに記載されておらず、〈17人目〉についての能力者カードのような物も、プレイヤーには配布されていない」
マミゾウ「まあ、今更紫の口約束なんぞ、信用出来ないわな」
紫「もう、そんなこと言わないでよ」
マミゾウ「だってそうじゃろう? 〈17人目〉の能力が不明というのは、明らかに探偵側の推理に支障をきたす。それにも関わらず〈17人目〉もプレイヤーなので投票対象じゃ。しかも〈17人目〉が同時に〈絶望〉であったら? この状況をアンフェアと言わずしてなんと言う?」
妹紅「まあ、計画が失敗したし紫に対してあれこれ聞くことも出来なくなっちゃったんだけど。それでも今の材料で〈17人目〉について考察することは可能だ」
さとり「――それでは、マミゾウさん、妹紅さん。機は熟したと思います。二人が話し合うことで得られた〈17人目〉についての考察を皆さんと共有して頂けないでしょうか」
マミゾウ「……よしわかった。まず第一の不審な点から話すか。まずこれを見てくれないか」

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咲夜「これは――青娥さんがゲーム初日に手に入れたという、〈絶望〉が所持していたルールブックにのみ書かれていたという情報ですか?
青娥「あら、一言一句覚えていてくださったのね」
マミゾウ「良いか? 青娥はDAY04の裁判の終わりに、ルールブックを入れ替えたことを皆に公表したのじゃ。では、その時点で〈17人目〉は何故自分が〈17人目〉である事を明かさない?
ルーミア「――命を狙われるから?」
マミゾウ「そんなわけあるかい。勇儀が犯行に及んだ根本的理由はなんじゃった?」
咲夜「勇儀さんは、自分が〈絶望〉だと知ったことで覚悟を決め、裁判に勝っても負けてもゲームを終わらせることが出来ると考えたのですよね。ですがルールブックは青娥の工作で掴まされた別のプレイヤーの物でした
マミゾウ「その通り。つまり『自分が〈17人目〉に選ばれた』ことがルールブックに書かれていた場合――そのプレイヤーはどんな行動を取る?
咲夜「私ならルールブックが交換されていたということを知った段階で、自分が〈17人目〉であることを公表しますね
てゐ「咲夜はそうかも知れないけど、こうも考えられない? 『DAY02でDDSルームの端末を破壊したことで、他のプレイヤーからのヘイトを買ったから、裁判終了後も名乗り出ることが出来なくなった』
マミゾウ「だとしたら、ルールブックの交換が判明した段階で、〈17人目〉は運営に従う意味がなくなるだけど霊夢が紫にビデオカメラを渡した際、それは更に〈17人目〉に預けられることでバッテリーが取り替えられているそれはつまり〈17人目〉はこの二回目の裁判の時点でも、運営の味方に回っているということじゃ

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妹紅「こうも考えられないか? 『〈17人目〉はルールブックによってではなく、運営から直接〈17人目〉としての役割を任された』
レミリア「そうだとすると厄介ね。そこまで運営と深く繋がっているプレイヤーなんて、実質運営そのものじゃないの」
てゐ「本当だね。懐柔なんて無理なのかも知れないねえ」
ルーミア「ん? ねえ。ちょっと待って。〈17人目〉って私達がまだ見ていない、多分幻想郷でそこそこ強かったり頭の良い誰かのことでしょ? なんだか私達の中に〈17人目〉がいる、って話になってない?
早苗「え……?」
ナズーリンルーミア恐らくマミゾウ達は――『運営と繋がっているプレイヤーは存在するかも知れないが、それは私達が未だ見ていない誰かなどではない』という前提で話をしている
ルーミア「ええ!? だって〈17人目〉の部屋だってあるじゃん! どういうこと!?」
マミゾウ「そう。確かに部屋だけならある。誰も使っていない部屋がな。だが〈17人目〉はナズーリンの検索にも引っ掛からなかった。これはどういうことかのう? 第一の事件の際、ナズーリンは『この事件に関係している人物』の名前で検索を掛けたじゃろ? その時の検索結果はどうじゃった?」
咲夜「ええと……」
レミリアゲーム管理者を含めて、19人が検索に引っ掛かったのよね。そこに〈17人目〉は含まれていなかった

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ナズーリン「その通りだ。こいし、ちょっと訊きたいのだが、文が殺される前、部屋にメッセージを書く以外で何か大きな動きをしたか?
こいし「ううん! 全然! 〈香水〉と〈消臭剤〉はDDSルームから貰っていったけどね
ナズーリン――つまり、〈無意識〉という隠密行動特化の能力を運営から与えられ、なおかつ青娥の部屋で行動を起こしていないこいしですら、私の〈ダウジング〉には引っ掛かったわけだ。なのに何故〈17人目〉は〈ダウジング〉に引っ掛からなかったのか。そこがおかしい。マミゾウ、これが第二の不審な点だろ?」
マミゾウ「そうじゃ。それにな。あの時に検索に引っ掛からなかったとしたら〈17人目〉はナズーリンの〈ダウジング〉すら回避出来る能力が与えられているということになるが、これもおかしいんじゃ。〈17人目〉というたった一人のプレイヤーに対して、能力、あるいは権限が与えられ過ぎていると思わんか?
早苗「そんなにおかしいっすかね? すっごく内偵向きの能力に思えますが。でもその能力一つならそこまで依怙贔屓されているようには――」
妹紅「それだけじゃない。DDSルームの端末が破壊されていたからな。つまり〈17人目〉もチルノと同じように、『無から凶器を作り出せる能力者』だってパターンも考えられる
てゐ「待ってって! それはいくらなんでも有り得ないっしょ! DDSルームの端末は明らかにピストルで破壊されてたんだよ!?

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マミゾウ「そうじゃな。だったら〈17人目〉は『手から弾丸を射出出来る能力者』なのかも知れんのう」
てゐ「――マミゾウ。誰のことを指しているのか知らないけど、今その名前を出したらぶっ飛ばすよ?」
マミゾウ「違う違う! そういう意味で言ったわけではない! わしが言いたいのはな。仮に魔理沙達が処分したばかりの〈リボルバー〉や〈セミオート〉を使ったのだとしたら、〈17人目〉はどうやってそれを手に入れたのか、という事なんじゃ
てゐ「いや、DDSルームには大量の凶器が魔理沙達によって送られているんだから、部屋自体は開放されてるでしょ? だったら深夜の内に、端末に凶器の番号を入れてからチャレンジすれば――あれ?

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妹紅「な? 普通出来るわけがないんだよ。いくらDDSルームに沢山の凶器があっても、凶器の番号が無ければ、狙った凶器を取り出せないんだ
てゐ「うーん……。適当に番号を打ち込めば、確率的には当たるんじゃないの?」
妹紅「そんな風に〈リボルバー〉を手に入れられるわけないだろ。てゐが〈幸運〉を持っているからそういう発想が出てくるんだろうけど。いいか? 追加ルールはDAY02の昼に配信されたんだぞ? つまりDAY01の深夜の内に端末を破壊したいのなら、当然〈17人目〉はDDSルームの中で1/6で死んでしまう賭け事に挑戦しなければいけなかったというわけだ。青娥が凶器のリストを拡散する前にも関わらずな
てゐ「まあ、チャレンジしたんじゃないの?」
マミゾウ「端末を破壊するという、そんなつまらん用事のために命を賭けたのか? 道具を使って時間を掛ければ壊せるかも知れないのに? そんな気軽に銃を取得しようとは思わんじゃろ。てゐ、話を戻すぞ。〈17人目〉は凶器の番号をどうやって手に入れたと思う?
てゐ「……」
マミゾウ「どうじゃ?」
てゐ「……はいはい。ギブアップでーす。つまり第三の不審な点はこういうでしょ? 『〈17人目〉に与えられた物が多過ぎる』
ナズーリン「こいし以上の隠密能力、DDSルームをボーナス無しで使えるなんらかの能力。そして凶器のナンバーを知ることが出来る権限」
咲夜「権限?」
ナズーリン深夜には早苗と魔理沙が私達の部屋の前で見張りをしていたし、凶器はさっさとトラッシュルームで処分していたのだろう? だったらジュラルミンケースの中から直接凶器を取得することなんて普通は不可能だし、魔理沙達が見つけられなかった凶器は〈トラバサミ〉だけだった。青娥は文に凶器のリストを渡していたそうだが、それだって賢い文なら他のプレイヤーにバレやすい所にはリストを隠さなかったはずだ。ジュラルミンケースの中に凶器と一緒に保管し、鍵を掛けて管理していたことだろう。現に文は魔理沙から一度メダル等を盗まれているんだ。『悪意を持ったプレイヤーに貴重品を盗まれる危険性もある』ということにも気付いていたはずだ」
魔理沙「ま、まあ私はそこまで悪気があってメダルとか盗んでたわけじゃないんだけど。ほら、茶目っ気みたいなもんで」
さとり「魔理沙さん。それではまるで取調べを受けている犯罪者の言いわけですよ……」
咲夜「では、〈17人目〉はどこで銃の番号を手に入れたのでしょうか?
ナズーリン「運営から凶器の番号を直接教えられていた。というのは――うーん、なんだかしっくりこないなあ」
てゐ「そんなの運営がやったら、プレイヤーへの干渉になりまくるじゃん。あんたアホなの?」
ナズーリン「あ、アホとは心外だな! だが他に手段は無いだろう!?」
咲夜「あの――番号だけなら一応ジュラルミンケースのラベルにも書かれているから、部屋の侵入さえ出来れば可能ですよね?

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レミリア「そうね。でも番号だけわかっても、中に入っている凶器が何かまではわからない。もちろん鍵さえ見つかれば番号なんて関係なしに盗み放題だけど」
魔理沙「いいや。部屋からは盗まれていない。私と早苗は、プレイヤーの部屋から凶器を盗み出してから、トラッシュルームで捨てて、DDSルームの端末で総数を確認した後で見張りを始めたんだぜ? 当然その時に端末が壊れてないことなんて確認済みだ。端末破壊より前に凶器が盗まれていたなんて有り得ないさ。先に端末が破壊されていたら、そもそも私達はトラッシュルームもDDSルームも利用するわけがない。間違いなく銃はDDSルームの方から盗難された
早苗「ええ。私も一緒に端末を確認しています」
魔理沙「ちなみに私達が部屋から凶器を盗んだ際、早苗は凶器の種類はともかく、番号については一切把握してないぜ? 実際に部屋に侵入したのは私だし、その時に凶器の種類はともかく〈トラバサミ〉のナンバーだけなら消去法で把握していたけど、その情報を二人で共有することはなかった
早苗「私が魔理沙さんに頼んだんですよ。この時はまだ凶器を再取得する予定もありませんでしたし、こういう議論になった時に疑われるのも嫌ですので……
ルーミア〈奇跡〉を持つ早苗だって凶器に対応する番号がわからなければ、銃を狙って取り出せないもんね
 

11

妹紅「なあ。今凶器の番号についての話が出たが、この番号の存在そのものについても疑問が出てこないか?
こいし「どういうこと?」
妹紅「そうか。こいしはさとりに全部預けてたんだっけ。ほら、プレイヤー全員にこういうのが配られたんだが――見たことあるか?」

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こいし「これって、食堂で議論する時とかにみんなが持っているやつ?」
妹紅「そうだ。そして凶器のリストに書かれていた情報は、端末が破壊された後に、青娥によって何人かのプレイヤーによって共有された。最終的に全員が凶器全体の情報を受け入れ、運営からこんな風に簡略化されたカードも配られた」

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こいし「何これ!? このカード超かっこいいじゃん!」
妹紅「気に入ったか? なら全部やるよ。私は裁判が終わったら〈追放〉されるからな」
こいし「わーい! やったー!」
妹紅「さて、この二枚を見て、何か違いに気付かないか?
こいし「霊夢のカード、情報が殆ど書かれていないけど、それが関係あるの?」
妹紅「いや、そうじゃないんだけど……。これはチョイスが悪かったかなあ。それなら、このカードを見てみろ」

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こいし「うーん……あ! わかった!」
妹紅「お、気付いたか」
こいし「霊夢! 霊夢に配られた武器って〈グングニル〉だったんでしょ!? 当たった!?」
霊夢「そんなわけないでしょう……」
こいし「えー、だってグングニルの番号は1番じゃん。霊夢ってプレイヤーのNo.1なんでしょ!?
早苗「いやあ。最近はそうでもないんすよねー。直近の結果だって確か一位を取ったのは、こん――」
霊夢「ねえ、魔理沙
魔理沙「ん?」
霊夢「一緒に『奴』を殺りましょう?」
魔理沙「いいぜ。ゲームが終わったら協力しよう」
早苗「いや、ガチで『彼女』のファン多いですからね!? この御時世にネット炎上はまずいですって!」
妹紅「頼む、わけのわからないことを横でゴチャゴチャ言わないでくれ……。こいし、なんで霊夢が1番目のプレイヤーだと思った?
こいし「だってこのカードに――って、あれ? 凶器の方はともかく、プレイヤーのカードには何の番号もないね
妹紅「そうだ。こいしは『プレイヤー全員に番号が付けられているとしたら、霊夢が当然一番目に来るはずだ。だったら同じ番号の凶器が霊夢に配られたのかも知れない』って考えたんだよな。ところが凶器の方には全てきちんと番号が振られているのに、プレイヤーのカードには一切の番号が振られていないんだ。それって、少しおかしくないか? 紫があらかじめ〈17人目〉を会場に忍ばせるつもりなら、存在を仄めかすために私達にも番号が振られていてもいいはずなのに
こいし「へーえ。確かに番号が付いていてもいい気がするのにね」
妹紅「ちなみにNo.01の〈グングニル〉。その最初の持ち主は、恐らく勇儀だ。勇儀はゲーム初日にジュラルミンケースを持ち歩いていたけど、能力を制限された状態でも高い身体能力を持つ勇儀が一度でも『重たい』と形容していた凶器だからな

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咲夜「なるほど。そういう理由もあって、妹紅さん達は『私達以外にもプレイヤーはいるかも知れない』と考えたわけですか」
マミゾウ「ああ。つまり第四の不審な点は、『プレイヤーカードに番号が振られていない』ことじゃ」
てゐ「ねえ。それってさ、DDSルームで番号を指定して凶器を取得する必要があるからじゃないの? つまり、DDSルームのシステム的な問題っていうかさ」
マミゾウ「ならば、凶器の取得方法を別の形式にして、プレイヤーにも凶器にも番号を振らなければいい話じゃ。運営が〈17人目〉の存在をギリギリまで隠しておきたかったと考えると、どちらにせよ矛盾する
レミリア「マミゾウ、第五の不審な点は?」
マミゾウ「この前の休日、我々はどうやら昏睡状態だったことがわかったな? その時、14人が昏睡状態だったことが判明し、2人の存在が消えていた

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咲夜「――なんとなく言いたいことはわかりました」
レミリア「ええ。マミゾウは『〈17人目〉の誰かが、私達のように昏睡状態になってないとおかしい』ってことが言いたいんでしょ?」
早苗「おかしいですかね? 紫さんを始めとした運営の方達だって、別に昏睡状態にはなっていませんでしたよね。運営寄りのプレイヤーである〈17人目〉も起きたままゲームに参加していても良くないですか?」
マミゾウ「いいや。紫達がゲーム中にどのような状態だったのかを証言した人物は、少なくともわしは見ておらん。同じように昏睡状態だった可能性すらある。だとすると――〈17人目〉はどうやってゲームに参加していたのかのう?
早苗「はい?」
レミリアこの会場には一時的に昏睡状態にならないと入れない可能性が高いとしたら、紫と一緒にマヨイガのどこかに隠れて幻想郷の住民による捜索を回避していたのか、あるいは元々余程わかりづらい所に住んでいる人物なのか」
咲夜「だとしても、ここにいるプレイヤーのように幻想郷でそれなりに実力がある人物なら、音信不通になれば捜索依頼が出されてもおかしくはないですよね? 命蓮寺に住む皆さんや、あるいは私達紅魔館や地霊殿の住人ならともかく――人と距離を置くために竹林に住んでいる妹紅さんもすぐに昏睡状態であることが判明しているのですよ? 初日から合算してたった四日のうちに、永遠亭の皆さんは会場のプレイヤー全員の状況を把握しています。だとすると幻想郷社会と関わりの少ない人物でも、昏睡状態になればすぐに状況が判明してしまうのでは?
てゐ「まあ、妹紅に関しては、なんだかんだで永遠亭に遊びに来るし、三、四日もあれば、姫様が兎にでも様子を見に行かせることもあるだろうね」
妹紅「いや、いつも別に永遠亭に遊びに行ってるわけじゃないからな!? 『あいつ』と決闘しに行ったり、里で出た患者を連れて行ったり、慧音の用事に付き合ったり、鈴仙やてゐがどうしてるかなんとなーく気になるから顔を出しているだけであって!」
てゐ「……」
妹紅「な、なんだよ? 何か言いたい事があるのか?」
てゐ「この前、あんたと姫様って縁側で一緒にお茶飲んでたじゃん。もう例のあばら屋じゃなくてうちに住めば?」
妹紅「あばら屋ってなんだよ!? 私が手間暇かけて作った家を馬鹿にすんな!」
ルーミア「――なんかさ。この前の休日、おかしくなかった?
こいし「え? 何が?」
ルーミア霊夢魔理沙が昏睡状態になったにしては、そこまで騒ぎになってなかったなあ、っていうかさ。もっと博麗神社に大勢の人が押しかけるような大騒ぎになってても良くない? ほら、事実一週間も経っていなかったわけだし」
こいし「言われてみれば――確かにそうだね」
魔理沙「まあ、確かにそうだが、ここは幻想郷だぞ? そういうことも起きる、って感じで納得したんじゃないのか? それについてはとりあえず別のタイミングで――つまり明日以降議論したほうがいいな。マミゾウ達は、まだ何か〈17人目〉について共有したいことがあるんだろ?」
咲夜「五番目の不審な点は、『私達以外に幻想郷で昏睡状態になった人物が見当たらない』という事でよろしいですか?
妹紅「ああ」
こいし「マミゾウおばあちゃん。第六の不審な点は?」
マミゾウ「ふむ。これは恐らく皆も気付いているだろうが、〈17人目〉が生活しているという痕跡が、会場には一切見つかっておらん。ナズーリンの〈ダウジング〉にも一切引っ掛かっていない
ナズーリン「まあ、みんな気付いているだろうが、私は事件が起きていない時でもなるべく〈ダウジング〉の回数を毎日使い切るようにしている。〈17人目〉が生活している痕跡についても――検索は行った」
マミゾウ「結果は?」
ナズーリン「〈17人目〉についての情報は一切引っ掛からなかった。私は『〈17人目〉の現在の居場所』はもちろんのこと、『〈17人目〉の使用した化粧品の場所』『〈17人目〉が着用した衣服の場所』『〈17人目〉が使った歯ブラシの場所』等で検索しても、それら全ての検索結果は0件だった」
てゐ「うわあ……」
こいし「きも……」
ナズーリン「な、なんだねその目は?」
ルーミアナズーリンは〈17人目〉のストーカーか何かなのかー?」
ナズーリン「し、失敬な! 誰がストーカーだ! それくらいの細かい条件で検索しても手掛かりを得られなかったという事なんだぞ!? もちろん会場の隅々まで直接見て回っても、〈17人目〉は見つからなかった。毛髪も何本か採取してみたが、色や長さから考えても我々以外の物を一切見つけることが出来なかった。食事や排泄、とにかく生活全般の形跡が見当たらなかった」
てゐ「うわあ……」
こいし「きも……」
ナズーリン「な、なんだねその目は?」
ルーミアナズーリンは〈17人目〉のストーカーか何かなのかー?」
ナズーリン「何故同じやり取りを二回しなければいけないんだ!?」
マミゾウ「これでわかったじゃろ? 運営は明らかにナズーリンの〈ダウジング〉能力にフィルターを掛けているんじゃ」
さとり「――では、それを踏まえて、カードをもう一度見てみましょうか。この探偵側にとって不利な検索結果は、厳密にはゲームマスター権限の6番には抵触していませんし、そもそもレミリアさんが先程話していた通り、カードには何も運営を拘束する力がありません」
咲夜「はい? ダウジング〉で〈17人目〉についての検索がうまく働かないのは、プレイヤーへの干渉ではないということですか?」
レミリア「そうよ。七つある文章は紫自身の能力についてはともかく、プレイヤーの能力については一切触れていない。そしてそもそも、ここにいるプレイヤーは本来の能力を取り上げられ、与えられているのは運営から与えられている力であり、能力が『最初からそういう仕様』なら、ナズーリンの〈ダウジング〉に制限が掛かっているとも言えない
魔理沙「――紫。お前さ、私達と対等に勝負したいんじゃないのか?」
紫「あら? 私はみんなと勝負しているつもりはないわよ? 勝手にコロシアイをしているのは貴方達であり、あくまで私は運営よ? 別に30日間でも60日間でも、なんなら100年でも1000年でも、貴方達がコロシアイを一切しなかったとしても、私にはそれを止める権利はぜーんぜんないのよ? そうなってくると、お金の工面は大変だけどねえ……」
霊夢「……」
早苗「……」
咲夜「……」
魔理沙「……お前、何ふざけたこと言ってんだよ? お前がゲームに駆り出したせいで、既に四人も死んでるんだぞ! こっちにだって多少は人数も武器も能力もあるんだぜ? その減らず口もいい加減にしないと――」
マミゾウ「魔理沙!」
魔理沙「!」
マミゾウ「話を最後まで聞け! もうそろそろわしらの話も終わりじゃ。良いか? 〈17人目〉があくまでプレイヤーの一人なら、運営が管理する禁止エリアに住処を作るわけにはいかないんじゃよ。〈マスターキー〉等が必要な、鍵が掛かった部屋にもな。仮にわしらが紫に『現時点でプレイヤーが移動可能な全ての部屋へ案内しろ』と言ってしまえば、『〈17人目〉のために作った隔離エリア』みたいな場所があれば、簡単に入れてしまうのじゃ
魔理沙「――つまり、〈17人目〉はやっぱり私達と同じように生活している。ってことか」
マミゾウ「ああ。それが六つ目の不審な点じゃ」
妹紅「――マミゾウ。そろそろ……」
マミゾウ「ああ、最後の不審な点じゃな。妹紅、お前の口から話せ」
妹紅「わかった。またみんなに質問してみるか。なあ、プレイヤーは全員で何人だと思う?
ルーミア「え?」
てゐ「あのさ……。今までそれを散々話し合ってたんじゃないの? 私達はなんとなくプレイヤーは17人いると思ってたけど、実は部屋が17個あるだけで、実際は16人の内の誰かが内通者の危険性がある。そう言いたいんでしょ?」
妹紅「じゃあ、プレイヤーが17人いるって、誰から聞いた?
こいし「えぇ!? 端末が壊された時に紫が言ってたじゃん! だから私も部屋にメッセージを残すのをやめちゃったんだけど!」
早苗「ううん、と――」
妹紅「……」
魔理沙「ん? そういえば――」
妹紅「運営の誰かが、私達にきちんとそういうことを言ったか? こういう時間だから頭を働かせるのは大変かも知れないけど、紫の発言をちょっと思い出してみてくれ」

 

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ルーミア「――あれ?」
青娥「ふふふ……」
咲夜「そういえば私達は、紫の口からは一度も――」
レミリア「ええ。私達は誰一人として、プレイヤーの人数に関するはっきりした言葉を聞いてないわね
ナズーリン「ん? 待ってくれ。DAY02の時はどうだ? 魔理沙が運営を糾弾している時には確か、そんなことを――」
霊夢「言ってないのよ」
早苗「……え?」
霊夢『プレイヤーが全部で16人だなんて言ってない』。紫はそんなことを言っていたけど、『プレイヤーは全部で16人だ』とも、『プレイヤーは〈17人目〉を含めて17人だ』とも、一言も言ってないわ

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ナズーリン「そ、そんな馬鹿な……」
てゐ「何もかも紫の手のひらの上だったってこと!?」
レミリア「紫。ちょっといい? どうせ訊いてもまともに答えないだろうけど」
紫「何かしら?」
レミリアこの会場にプレイヤーは何人いるのか、今ここで、正直に答えて
紫「……」
魔理沙「どうなんだ、紫?」
紫「貴方達は――」
霊夢「……?」
紫「策を巡らせて私から〈17人目〉の情報を引き出そうとしていました。妹紅さんとマミゾウさんは命を賭してまで」
レミリア「それで?」
紫「ですがその二人は本来の計画を遂行出来なかったそうですね? だったら交渉には応じてあげられないわね」
妹紅「……駄目か」
魔理沙「……クソ!」
マミゾウ「まあ、予想はしていたがのう」

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紫「でも、妹紅さん達の頑張りに免じて、ヒントはあげようかしら? 貴方達が『〈17人目〉が誰なのか』を知る方法は、確実に存在するわよ
早苗「え!?」
マミゾウ「な、なんじゃと!?」
てゐ「いったい、どうすればいいのさ!?」
紫「うーん。残念ながら具体的な方法については、教えられないわねえ。ゲームを円滑に進める手助けをしてくれている〈17人目〉に対して失礼だし。――だけどね、みんなの初日の動き次第では、本当にあっさりバレちゃう危険性もあった。そういう手段なのよ。逆に言えば〈17人目〉とうまくやっていくつもりがあったのなら――つまり、内通者を懐柔して殺人を回避するつもりだったのなら、ゲームの最初期に特定するしかなかったわね。早期に自分の正体がバレてしまえば、〈17人目〉も諸手を挙げて降参しただろうし」
霊夢「紫。どうしてその情報を私達に?」
紫「青娥さんがみんなに協力する理由と同じよ。私はプレイヤー全員の味方であって、いくら運営の手足となって動いてくれると言っても、〈17人目〉にだけ極端に加勢するわけにはいかないわ」
てゐ「いやいや、今もがっつり加勢してるっしょ……」
咲夜「それは――今の私達にも試せる行動ですか? あるいは私達が現在所持している証拠品からでも十分に辿り着けるなんらかの結論ですか?」
紫「そこも含めて秘密にしておこうかしら。うふふ」
青娥「あらあら? うふふ」
てゐ「青娥。一緒にうふうふしてないで、教えてよ、紫の言いたいこと。今のヒントでわかったんでしょ?」
青娥「私からも内緒にしておきましょうかね。そのほうが面白そうですし。ただ、これは私の見解なんですけど――霊夢さん。貴方は必ず〈17人目〉の正体を見破ることが出来ます。ですが――それが直接ゲームの勝利に繋がるとは限りません
マミゾウ「それは、わしらの行ったことを全否定してるようにも聞こえるのう」
青娥「全否定なんかしませんよ。むしろ、レミリアさんの行動も、こいしさんの行動も、ルーミアさんの行動も、妹紅さんとマミゾウさんの行動も、ゲーム全体を『然るべき方向』に動かす上で非常に重要な行動だったと思っています」
妹紅「……なあ、青娥」
青娥「はい?」
妹紅「――ひょっとして、この状況は最初の事件と同じなのか? プレイヤーを目一杯挑発して咲夜に拘束されたことも、この状況を誘発するために行ったことなのか?
魔理沙「……私にもそう思えるな」
ルーミア「青娥……」
青娥「そう思うのでしたら、ご自由に。ですが、皆さん? 仮に紫さんがヒントを出したやりかたで〈17人目〉を特定しても、会場の人数が大きく減ってしまう明日以降にそれを行えば、その行動は私達の大きな不和の種になってしまうでしょう。そういう意味で紫さんは、私達にあっさりヒントを教えてくれたのでした。おしまい。ちゃんちゃん♪」
紫「まあ、そういうことね。貴方達に判断は任せるけど、私としては〈絶望〉の特定を優先する事をおすすめするわ。あるいは〈絶望〉が殺人者として動くまで会場のバランスを保ち、その時の裁判できちんと勝利をもぎ取るのもいいわね」
さとり「……」
こいし「まあ、〈絶望〉を殺さないとゲームクリアにならないもんね」
霊夢「……青娥。まーたあんたは適当なことを言って。もういいわよ。みんな、マミゾウと妹紅の長い話が終わったことだし、少し休憩しましょ」
早苗「きゅ、休憩!?」
魔理沙「な、なに言ってんだよ!? まだ裁判中だぞ?」
霊夢「咲夜。今は何時?」
咲夜「え!? ――ええと、DAY07の2:05よ?」
霊夢「私達もここに紛れ込んでいる真犯人も、こんな時間じゃ頭が回らなくて、まともな議論なんて出来ないでしょ」
ルーミア霊夢、本気で言ってるの? チルノちゃんを殺した犯人を絶対に見つけないといけないんだよ?」
霊夢「あんた、物凄く眠そうだし、もしかして小腹でも空いてるんじゃないの?」
ルーミア「う……」
紫「ええと――ここに居る全員分の飲み物を用意すればいいのかしら?」
霊夢「あんたねえ。そんなケチ臭いこと言わないでよ。ここでスキマを出して、直接BARまで移動すればいい話でしょ。酒も食べ物も奢りなさい」
紫「もう。無茶なこと言うわねえ。別にいいけど。一応言っておくけど、ついでにBARを調査したり部屋から出たり出来ないように、少し空間を弄っとくからね?」
早苗「ほ、本当にそれでいいんすか? ここで休憩したら、逆に頭が働かなくなる気がするんですが……」
レミリア「いいじゃない。私は賛成よ? ここにいるみんなで飲む最後の一杯なら――少しの間だけ議論を忘れて楽しむのもアリじゃないかしら。私達は幻想郷で、いつでも宴会してるようなもんじゃない。みんなこれぐらいでへばったりはしないわよ」
 

12

【娯楽エリア・BAR】DAY07 2:25
 

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早苗「ふわぁ……ねむ」
レミリア「情けないわねえ。まだ裁判は終わってないのよ?」
早苗「そうは言われても、私は夜型じゃありませんので……って、皆さんお酒飲んでません!? ナズーリンさんまで!?」
ナズーリン「どうしても気付けが必要だからなあ。程々にしておくが」
さとり「私は早苗さんと同じく、紅茶を淹れて頂きました」
レミリア「早苗。ほら、さっさとカップを空にしなさいよ。少しワインを分けてあげるから」
早苗「今飲むなんて、やっぱり無理ですって! 私はそんなにお酒強くないですし、飲んだら議論に参加出来なくなっちゃいますよ!」
ルーミア「んー、チョコケーキ美味しい!」
こいし「さーくやー! モンブランおかわりー!」
咲夜「かしこまりました」
さとり「いいえ、おかわりはいりません。こいし、ちゃんと歯を磨いてから寝てくださいね」
こいし「えー? ハーフサイズでいいからケーキもう一つ食べたーい。咲夜お姉ちゃん。おねがーい♡」
咲夜「あらあら、私にもかわいい妹が出来てしまいましたね」
さとり「絶対に駄目です。次に何か食べたいのなら、朝ごはんを待ちなさい。それよりもこいし。購買部や食堂で盗み食いし放題だからって、ここに来てお菓子ばかり食べていませんよね?」
こいし「そ、そんなことないって。あはは……」
マミゾウ「この光景を見てると、本当に力が抜けるのう。わしらは意地を張って何をしてたんじゃろうなあ」
妹紅「そう言うなって。私達は一生懸命やったんだから」
マミゾウ「まあな」
青娥「はー、久々に飲むお酒おいしい♡」
ナズーリン「そんなにか? DAY04の裁判後に拘束されていたとはいえ、せいぜい三日ぶりくらいだろう?」
青娥「三日ですよ!? 女性に対してこんな仕打ちありませんよぉ!」
マミゾウ「どの口で言うんじゃ全く……」
レミリア「咲夜。その辺にして、貴方も休憩しなさい」
咲夜「それでは少しだけ――失礼します」
マミゾウ「まあ、裁判が終われば休日が挟まる。明日は――いや、今日はゆっくり起きるといい」
咲夜「そういうわけにはいきません。館に戻ったらなるべく早めに起きて、溜まった家事を片付けないといけませんので」
早苗「うわぁ、大変っすねえ」
咲夜「好きでやってる仕事ですので」
てゐ「……」
マミゾウ「そんな辛気臭い顔をしてどうしたのじゃ? これから再開される裁判が不安か?」
てゐ「そうじゃなくてさ、ほら」
マミゾウ「ああ。霊夢達はカウンターにいるな」
てゐ「宴会の時にあの二人だけで飲んでるのって、なんだか珍しいなあと思って」
早苗「……」
てゐ「早苗?」
早苗「……なんでもありません」
 
魔理沙「かーっ、うめえなあ! 紫、おかわり!」
紫「はーい」
霊夢「私ももう一杯貰おうかな。ほら、紫。あんたも飲みなさい」
紫「別にいいけど――私達はこれからもう一仕事あるのを忘れないでね?」
霊夢「大丈夫よ。いつだって私は仕事をこなしてるでしょ」
魔理沙「本当にな。いつもは出不精の癖に、異変の時には好き勝手遠出してるもんな」
霊夢「仕方ないじゃない。妖精や妖怪はどこにでも湧くんだから。本当はのんびりしたいのに」
魔理沙「私も森で静かに研究したいのになあ」
紫「そうかしら。二人ともノリノリで異変解決に乗り出しているように見えるけどねえ」
霊夢「それはない」
魔理沙「同じく――と言いたい所だが、正直毎回楽しい」
霊夢「そうなんだ。それじゃこれからの異変、全部頼める?」
魔理沙「別にいいぜ? 神社の敷地内に研究所でも作ってくれるのならな。霊夢持ちで」
霊夢「嫌よ。母屋が薬品臭くなるし」
魔理沙「次の異変――どこに行くことになるんだろうなあ」
霊夢「さあてねえ。あんたはどこに行きたいのよ」
魔理沙「うーん。妖怪の山の奥にでも入ってみたい気はするな」
霊夢「……本当に一人で行って貰おうかしら」
紫「異変解決をお願いしてる立場で言うのもあれだけど、あまり無茶をしないでね」
魔理沙「じゃあこんなゲーム、さっさと解散しろって」
紫「もちろん、誰かが勝てば解散出来るわよ」
霊夢「――さて。しっかり羽も休めたし、そろそろ戻りましょうか」
魔理沙「羽? だからお前飛べるようになったのか。少し前までは亀の背中に乗ってたのに」
霊夢「あんたは逆ね。私みたいに飛べるのに、いつまでも箒に跨ってる」
魔理沙「あれは魔法使いの嗜みだよ。――なあ霊夢
霊夢「なに?」
魔理沙「……さっきはごめんな」
霊夢「……こっちこそ、ごめん」
 
※二章考察(後編)に続く