考察+α

『超幻想郷級のダンガンロンパ』の考察を書きました。

超幻想郷級のダンガンロンパ・二章考察(後編)

 

※注意。先にこちらをお読みください。

前編

https://genronkousatu.hatenadiary.com/entry/2021/11/13/161858

 

13

【裁判所】DAY07 2:30
 
マミゾウ「さて、議論再開じゃな」
妹紅「ああ。楽しい時間はもう終わりだ」
早苗「……」
マミゾウ「ほら、シャキッとせい! もうひと頑張りするぞ!」
魔理沙「そうだ。もう少しだぜ、早苗!」
早苗「は、はい!」
ルーミア「青娥、何か考えはある?」
青娥「そうですねえ。この際、DAY04までに起きた出来事は無視して考えるといいと思います」
レミリア「私達は謎がまだ未解決の証拠品を残しているものね」
咲夜「まずはこれですね。青娥の部屋のジュラルミンケースに保管しておいた、〈香水〉と〈消臭剤〉

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魔理沙「これは一体なぜ反応があったんだろうな? こいしはチルノ殺害に関わって居ないはずなのに
レミリア「気になるわね。でもとりあえず、残りの議論が終わってない証拠品を全て確認しましょう。次はこれ――〈水晶玉〉

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ルーミア「これはチルノちゃんが自分からDDSルームで取得した物だね。間違いないよ」
霊夢「そして最後はこれね。〈水晶玉〉を含めた、チルノの死体周辺の状況

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早苗「不可解と言えば――本当の所、死因はなんなんすかねえ?
魔理沙「死因? 〈ナイフ〉による刺殺だろ?」
咲夜「私の見立てでも〈ナイフ〉だと思いますが――おや、ルーミアさん。どうしましたか?」
ルーミア「うーん……。なんだろう? チルノちゃんの持ってた物なんだけどさ。なにかがしっくりこないんだけど
魔理沙「それって、黒い造花のことか?」

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ルーミア「うん……」
早苗「あの、遮ってすみません。ちょっとモノクマファイル③を見て貰えますか?」

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ルーミア「ええと、やっぱり『大型の刃物』って書いてあるね」
早苗「いえ。他の凶器である可能性も捨てきれないんですよ。チルノさんの周囲には、何が転がっていました?」
ルーミア「ええと、〈水晶玉〉と、氷?」
早苗「はい、その通りです」
レミリア「早苗が言いたいのはこういうこと? 『チルノを殺すのに水晶玉の破片、あるいは彫像の一部が使われた可能性がある』」
咲夜「お言葉ですが、お嬢様。私が創傷を見た限りでは、あれは間違いなく〈ナイフ〉による至近距離からの刺殺――それも正面からの物です
マミゾウ「だとすると――やはりなんらかの能力が使われた可能性が高いのう
早苗「能力、そうっすね。現場は密室だったんですもんね
レミリア「改めて証言するけど、私と咲夜は霊夢達の前で、能力の未使用を証明済みよ?
マミゾウ「それは今ならわしにも言える。妹紅を銃殺することに能力を使ったのだから、死亡推定時刻の能力未使用を証明出来る。これは皆に信じて貰うほかないが」
こいし「ねえねえ、咲夜」
咲夜「なんでしょうか?」
こいし「〈ナイフ〉の投擲で、シャッターの間から刺殺することも出来ない? ほら、チルノが死んだ後ならトラッシュルームで〈ナイフ〉を回収できるし、そのまま中央に〈ナイフ〉を置き直すことも可能じゃん
咲夜「それは――正直難しいですね」
こいし「そうなの?」
咲夜「ええ。チルノさんがトラッシュルームの使用中に殺されていたということは、施設の構造上、出入り口付近から〈ナイフ〉を投擲する必要があります。二つあるうちの奥側のシャッターは、中央に別のプレイヤーが居る場合は開きませんので
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こいし「うんうん」
咲夜「まず、刃物の投擲自体が相応の訓練を積まなければ難しいことです。外界では一種の娯楽として投擲を訓練し、安定して的の中央に当てられるくらいにまで技術を磨く人間も居ますが、人を殺せる技術にまで昇華させられるのかと言われると話は別です。トラッシュルームという視界が悪い場所で、動く標的に対して投擲による殺害を行うことは難しいですね。手前側のシャッターから狙いを定めてチルノさんを殺害することは、距離の関係で私にも不可能です
魔理沙身体能力も大幅に制限されているしな
こいし「プレイヤーの誰にも出来ない?」
咲夜「それが出来た可能性があったのは、鴉天狗や鬼の実力者である、文さんと勇儀さんだけでした。彼女達の筋力や瞬発力、あるいは視力といった物は、ここに居る私達とは比べ物になりませんので。勇儀さんならまず間違いなく出来たでしょうね。彼女は凶器の使用そのものを無粋だと考えていた節がありますが」
マミゾウ「勇儀なら――確かにな」
咲夜「ちなみに私がチルノさんを投擲で殺害する場合――背後を向いた瞬間に、心臓を一度だけ狙います。正面からなんて有り得ません
こいし「そっか。しつこく聞いてごめんね」
咲夜「こちらこそお力になれず、申しわけございません」
青娥「でも、モノクマファイルによるとチルノさんは複数回刺されてるんですよねえ。それも至近距離から。即死させることが出来たとしたら、なぜ投擲による犯行の後にあたかも『死亡確認』するかのように何度も刺す必要があるのでしょうか。トラッシュルームが使用可能になった時点で、チルノさんの死亡は確定しますのに
ナズーリン複数回刺された後に数分間生きていた事実とも矛盾するな。返り血も浴び放題だし、とても殺人に馴れた者の仕業とは思えない
妹紅「殺人の技術や経験が少ない――あるいはそもそも誰も殺したことがない人物が犯人、ということか?」
マミゾウ「そこはまだなんとも言えんな」
ルーミア「ねえ、こいし」
こいし「なあに?」
ルーミア「こいしはこの事件に全く関係ないんだよね?」
こいし「うん! 私は凶器を捨ててから、特に何もしてないよ」
ルーミア「じゃあさ、なんで〈香水〉と〈消臭剤〉がナズーリンの検索に引っかかったの?」
こいし「……私のこと疑ってる?」
ルーミア「うん」
こいし「はっきり言われたー!」ガビーン
てゐ「――そのことなんだけど、毒の使われ方について、一つの仮説がある。だけどこいしなら凶器を恐らくそんな使い方はしない。もちろんマミゾウと妹紅がやったとも思ってないよ? チルノを殺した真犯人が、という意味でさ。私の言いたいこと、暗器使いの青娥や刃物のエキスパートである咲夜なら察しが付くんじゃないの?」
青娥「ええ、わかりますよ」
咲夜「! 〈ナイフ〉には毒が塗られていた、と?」
てゐ「そういうこと。自然界には毒が無数にあって、様々な生物が人間を死に追いやる強さの毒を有しているんだ。有名所だと、フグ毒として有名な『テトロドトキシン』、タマゴテングタケに含まれる『アマニチン』、時の権力者が永遠の命や若さを得られると信じて服用したとされる『水銀』」
妹紅「……」
てゐ「だけど毒は生物に対して危険な存在であるのと同時に、人類が使用することによるメリットも存在するんだ。もちろん麻薬の話とかじゃないよ? 例えば医療にも使われる『モルヒネ』なんかがそうだね。ちなみに医療の世界では、これを厳密には『毒薬』に分類していて、『毒物』とは別の物としている。医療以外に毒が使われる機会と言えば、例えば現代でも『狩り』なんかには使われている。神話の時代からずっとね。代表的なのは、英雄ヘラクレスが矢に塗って用いたとされる、怪物ヒュドラの毒かな?」
魔理沙「魔法薬の研究なんて、いや、そもそも私の弾幕の研究だって、そういう物とは切って離せないからなあ」
ルーミア「え? 魔理沙の使う弾幕って毒なの? 今まで散々食らったことあるけど……」
早苗「弾幕ごっこ怖っ!」
魔理沙「そんなわけあるか! キラキラさせたり星の形を作ったり、とにかく魅せる弾幕を造る為に色々な素材を調合して反応を見ているだけだって!」
咲夜「凶器に塗って使われたとすれば、〈消臭剤〉のほうでしょうか? どちらにせよ〈ダウジング〉に引っ掛かってしまう気もしますが……
早苗「チルノさんと妹紅さんのモノクマファイルには、毒について何も書かれていませんもんね
てゐ「ま、そういう可能性もあるってだけの話さ」
妹紅「なあ、チルノの側で砕けていた水晶玉なんだが、妙だと思わないか?」
咲夜「妙?」
こいし「全然おかしくないんじゃない? だってルーミアが言っていた通り、護身の為にDDSルームで取得したんでしょ?」
レミリアだとすると――なぜそんな凶器で身を守ろうとしていたのかしらね。彼女は恐らく犯人に襲われた際、〈氷細工〉を瞬時に作り、自らを守ることも出来た
魔理沙武器としての安定性の問題かもな。〈氷細工〉の武器は初撃を外せば砕けちまうから。そもそもルーミアがチルノを説得した時の理屈だって、〈氷細工〉の武器にデメリットがあったからだろ?」
妹紅「私が最後に見た時に氷像を削っていた時刻は、死亡推定時刻よりもだいぶ前だった。それなら事件発生時、自らを守る為の武器――例えば氷の剣や盾なんかを作ることも十分に出来たはずだ
咲夜「やはり氷像は早い段階で一度処分されていて、チルノさんは死亡推定時刻付近にもう一度〈氷細工〉を作り出していた。だから身を守ることが出来なかったのでは?
ルーミア「うーん……。私に取られないようにする為に処分していたとしても、なんで彫像をもう一回作り直したんだろ。水滴をどこにも残さずにトラッシュルームに捨てに行けたってのも不思議だと思うし
妹紅「厨房の冷凍庫には――流石に入らないよな?」
咲夜「他の食品を全部外に出しても入りませんね。チルノさんに頼まれても私がお断りすると思いますが」
魔理沙「なら、スーパーマーケットのウォークインならどうだ? あそこならギリギリ禁止エリアじゃないと思うぞ」
てゐ「それなら大きさ的には十分だね。ただ、『ルーミアに回収されないようにする』ってことまで考えると、ちょっとリスクが高い気もするねえ。氷像を運ぶにしたって宿舎エリアは一階だけど、娯楽エリアは二階だから一苦労さね
早苗「だとすると、水滴とかの問題は結局どうしたのでしょう? 台車でも使って捨てに行ったんすかねえ? 倉庫とか、少し離れた所ですが体育館なんかには間違いなく台車くらいあるでしょうし」
ルーミアねえ、トラッシュルームで氷像を処分したにしても――その時メダルは誰に預けたの? 誰もその姿を見てないし、当たり前だけど私はチルノちゃんにそういうこと頼まれなかったよ?
妹紅「そうだな。氷像の処分に付き合ってくれ、なんて私も頼まれていない。それに記憶が曖昧なんだけど――私が見た時の氷像の出来って、そんなに悪くなかった気がするんだよなあ。私だったら捨てるのがもったいないと感じるくらいには
ナズーリン「付け加えると、龍の氷像そのものを護身に用いたとも思えないな。実際の氷像は、彼女の体格と比べてもかなりの大きさだったのだろう? 護身の為に一度砕いてから――例えば牙や鱗の部分を握りしめて牽制したのだとしたら、緊急回避には間に合わない。それなら彫像そのものを相手に投げつけたほうが、まだ犯人を撃退出来る可能性があるが、彼女にそれほどの力があったとも思えない
早苗「なるほどなるほど…………って、ありゃ?」
レミリア「どうしたの?」
早苗「そろそろ残りの証拠品について考察が終わっちゃいそうですよ? これ、本当に真犯人に辿り着けるんすかね?」
さとり「ええ。辿り着けると思いますよ――密室の謎が解ければ
てゐ「密室? そこってそんなに問題?」
妹紅「私の〈不死〉にだってトラッシュルームのセンサーは反応しなかったんだぞ? それにシャッターの間はスカスカだし、凶器の線から犯人を辿ったほうがいいんじゃないか?」
霊夢「いいえ。そこに拘ると、推理は泥沼化するわ」
魔理沙「ん? どういうことだ?」
霊夢「――みんな。こんな時間まで、チルノの為に一生懸命に議論を戦わせてくれてありがとうね」
咲夜「霊夢……」
ナズーリン「何を今更……」
てゐ「そんなの当たり前じゃん」
青娥「そういうことをきちんと言える女性って、とても素敵だと思いますよ?」
霊夢「だけど――ごめんね。今から貴方達全員、チルノを殺した容疑者になって貰うわ

14

てゐ「な!?」
ナズーリン「何を言い出すんだ霊夢!」
魔理沙「……」
レミリア「あら。博麗の巫女がご乱心ね」
早苗「ちょ、ちょっと説明してくださいよ。霊夢さん!」
霊夢「紫。『チルノと妹紅の死体が同時にトラッシュルームにあった時の状況』、すぐに再現して
紫「『再現出来るか』じゃなくて、『再現して』と来ましたか。ほんと、貴方がこの会場で一番人使いが荒いわねえ」
霊夢「みんな疲労も限界なのよ。貴方だってそうでしょ。それはわかってる。でもお願い」
紫「――こんな時にも、貴方は私を気遣ってくれるのね。いいわよ。ちょっと待ってて。霊夢、貴方もついてきて」
 
紫「はい、準備が出来たわ。みんな、スキマを通ってこちらに来て」
妹紅「ん? 五分も経ってないぞ? なにをしてきた?」
霊夢「みんな、一緒についてきて」
 
【特殊エリア・トラッシュルームを再現した空間】DAY07 2:35
 
咲夜「ここは!?」
こいし「あれ、さっきみたいにエリア同士を繋いだの?」
紫「少し違うわ。宿舎エリアのトラッシュルームとは完全に別の、事件当時と同じ状況を再現した空間よ
てゐ「……まあ、境界を操れる紫なら出来るんだろうけどさ」
マミゾウ「中央には〈ナイフ〉があって――地下入り口付近には〈暗視ゴーグル〉や手鏡まで置かれとるな」
ルーミア「全部再現したんだ。紫、凄いなあ――あれ? 手が物をすり抜けちゃうよ?」
紫「ええ。ホログラムに近い物だと考えて貰えればいいわ。だけどシャッターだけは質量がきちんとあって、なんらかの工作をしない限り通り抜けられないようになってるから
レミリア「ねえ、紫。貴方って本当は、この会場にお金なんてほとんど掛けてないんじゃないの? 藍から魔理沙が盗んだ経費の書類、あれはダミーだったの?

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紫「そんなことないわよ? ほら、宿舎エリアのおっきなお風呂があるじゃない? マヨイガにはあんな贅沢な物なんてないし」
青娥「入り口の扉は開かないですし、地下のバックヤードにも入れなくなってますね。妹紅さんやチルノさんの死体も再現されていません」
妹紅「そのほうがいいさ。私もチルノの死体をもう一度見るのは――正直辛い」
紫「さて、中央に置いてある〈ナイフ〉。見えるわよね」
咲夜「はい。ありますね」
霊夢シャッターだけじゃなく、あの〈ナイフ〉にもきちんと質量があるから、『犯人役』はそれを持って『被害者役』の私のところまで来てくれる?
こいし「犯人役!? はーい! はーい! 私やりた――むぐ」
さとり「別の方でお願いします」
霊夢レミリア、お願いできる?」
レミリア「――なんで私なの?」
霊夢「それなりに信用してるから」
レミリア「そう。だったらそれなりに引き受けるわ」
霊夢まずは『被害者役』の私がチルノの死体があった位置まで進む。その後で『犯人役』のレミリアは、私の所まで来て

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紫「はい、特別なメダルも一枚渡しておくわ。貴方の所持数とは無関係に、これ一枚で端末を利用できるわよ」

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レミリア「あら、虹色のメダルなんてあったのね。それはいいけど――霊夢。今から貴方が何をしたいのかは、なんとなくわかる。だったら具体的な方法を教えてくれない? そうしないと、再現しようがないわ」
霊夢「それは後から教える。他のみんなは一度裁判所に戻って?」
 
【校舎エリア地下・裁判所】DAY07 2:45
 
ナズーリン「裁判所に戻ってきたのはいいが――彼女はいったい何をするつもりなんだ?」
てゐ「流石に『霊夢が何をしようとしてるか』はわかるっしょ?」
ナズーリン『密室でチルノを刺殺する方法の再現』、だろう?」
てゐ「なんだ、わかってんじゃん」
こいし「あー、『犯人役』やりたかったなー」
ルーミア「ねえ、こっちに戻って10分くらい経ったよ?」
早苗「そんなに複雑なトリックなんすかね?」
妹紅「さあな。わからん。魔理沙は?」
魔理沙「どんなトリックなんだろうなあ。シャッターを生身で通過出来るとすれば、かなり大掛かりなトリックなのかもな」
マミゾウ「そういえばレミリアは〈蝙蝠化〉はまだ使えんのじゃな?」
咲夜「はい。まだ再使用の為のインターバルである一日が経っていませんので」
青娥「ね? 咲夜さんも、レミリアさんも、一度能力を発動させておいて良かったでしょう?」
マミゾウ「――! おい、スキマが現れたぞ!?」
 
咲夜「お嬢様! いったい向こうで何が――って、あら、霊夢?」
霊夢「状況が整ったわ。もう一度こちらに来て」
てゐ「レミリアはまだトラッシュルームに?」
紫「そうよ。はい、二つスキマを用意するから、みんなはそっちのスキマから入ってね」
早苗「え? 今霊夢さんが出てきたほうじゃなくてですか?」
ナズーリン「どういうことだ?」
 
【特殊エリア・トラッシュルームを再現した空間】DAY07 2:46

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早苗「ここは――先程入った、入り口側っすね」
ルーミア霊夢はー?」
てゐ「ん? レミリアはどこさ?」
妹紅「おい、最奥のシャッターの向こうにいないか?
咲夜「お嬢様!?」
レミリア「え、咲夜!?」
咲夜「そこで何をなさっているのですか?」
レミリア「こっちが聞きたいわよ! 霊夢は!?」
マミゾウ「さっき裁判所のほうにスキマで現れたんじゃが――何も聞いてないのか?」
レミリア霊夢がシャッターの最奥にいたと思ったら、貴方達が消えた直後、急にスキマでどこかに行っちゃったのよ。だから、部屋の中央の〈ナイフ〉だけ拾ってここまで来たんだけど。ねえ、霊夢はどこに行ったのよ!」
早苗「あれ? 霊夢さんってトラッシュルームからすぐに移動したんですか? でも、霊夢さんは10分くらいしてからこっちに来ましたよ
レミリア「10分? 私もそれくらいしてから痺れを切らして、普通に端末を操作して中に入ったんだけど」
咲夜「端末を操作? いったいどうやってですか?」
レミリア「どうやってって――だから普通によ? 霊夢がスキマで消えたと思ったら端末がニュートラルの状態に戻ったから、メダルを入れてから〈ナイフ〉を拾ってここまで――

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霊夢「はぁ。出来ればもう30分くらいのんびりしたかったわね」
紫「もう。それじゃ朝になっちゃうわよ」
レミリア霊夢!? 紫!?」
霊夢「あらレミリア、そんな物騒な物振り回してどうしたのよ。また異変でも起こすつもり?」
ルーミア「え!? 今トリックの再現中なんでしょ? そこに霊夢が現れたら駄目じゃん!」
こいし「そうだよ! まさかスキマを利用してそこに行くのがトリックだなんて言わないよね!? そんなの、能力なんて一つも持ってなくても再現出来ちゃうじゃん!」
てゐ「……そう。その通りさ。スキマを使えば誰でも出来る、ってことになっちゃったねえ。あーあ、これで私も立派な容疑者だ。普段から品行方正な兎であることを心掛けてたのに」
さとり「正確に言うなら『スキマが使われれば』、でしょうか」
咲夜「つまり、能力の未使用が証明されたプレイヤーも、能力によるシャッターの突破が不可能なプレイヤーも、全員が再びチルノさん殺害の容疑者となったということですね
こいし「え、どういうこと!?」
さとり「こいし。まだわかりませんか? これが実際にチルノさんの殺害時に使われたトリックです
妹紅「スキマでの移動は紫に頼めば、ゲームエリアのどの位置からでも可能だもんな」
マミゾウ「……盲点じゃった。こんな単純なやり方で良いのか」
ナズーリン「あ、ああ。確かにこれなら、な」
ルーミア「え? でもスキマを殺人に使うのはルール違反だよね?
さとり「ルーミアさん。思い出してください。レミリアさんは『犯人役』ですよ。そして霊夢さんが、『被害者役』、つまり霊夢さんの方がチルノさんの当時の動きを再現しているのです
ルーミアえ、スキマを使ったのは――チルノちゃんのほうなの!?
早苗「つまり、『犯人役』であるレミリアさんは『被害者役』の霊夢さんと二人になってから――」

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青娥「霊夢さんが『自分から』消えたのを確認した後に――

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てゐ「端末を操作して外側のシャッターを潜り抜け、中央の〈ナイフ〉を拾って――

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妹紅「そのまま内側のシャッターを潜ってチルノの死亡位置まで進んだのか。こんなのよく考えたな

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レミリアそしてチルノがスキマで戻って来るのを見計らってから、不意打ちで殺害した、ってこと?

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霊夢「そういうことよ。理解が早くて助かるわ」
妹紅「いや、ちょっと待て! チルノと犯人は私達が偽装現場を作り終えた後でトラッシュルームに来たんだろ? なんでそんな行動を取ることになったんだ? チルノがスキマを使った理由は?
マミゾウ「妹紅の言う通りじゃ。チルノはスキマの向こうへと『誘導』されたのか? それとも『脅迫』か? あるいは『偶然の産物』ということか?」
霊夢「とりあえず、裁判所に戻りましょ。もうここでやることは終わったわ。紫、もう一回スキマを出して」
紫「もう面倒だから全員いっぺんに飛ばすわよ? それでもいい?」
霊夢「いいわよ」
 

15

【校舎エリア地下・裁判所】DAY07 2:50
 
マミゾウ「ここは――証言台か」
ルーミア「一瞬で戻ってきちゃったね」
妹紅「! 霊夢、もう一度聞くぞ。チルノはどうしてスキマに入ったんだ? トラッシュルームは私とマミゾウが血を残したり〈ナイフ〉を設置した直後だったんだぞ?
てゐ「そこも気になるけど、チルノはトラッシュルームからスキマでどこに移動したのさ?
霊夢「――霊安室

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妹紅「霊安室?」
青娥「亡くなった二人の遺体が安置されている場所ですね」
ナズーリン私は霊夢と一緒に調査したが、その時は文の手帳以外何も無かったはずだが?
早苗「なんでそんなところへ? まさか手を合わせに行ったわけではないっすよね?」
霊夢チルノの遺体周辺の証拠品、そして霊安室の存在。何か気付くことはない?
てゐ「水晶玉、砕けた氷像、黒い花びら……ん? 氷像?」
魔理沙霊安室なら――氷像を保管出来る?
マミゾウ「霊安室は死体が腐敗するのを防ぐ為、室温はかなり低く保たれておる。氷像の保管は十分に可能じゃな
ルーミアつまりチルノちゃんは、トラッシュルームから霊安室へと氷像を運び出す直前に殺害された?
霊夢逆よ。チルノはスキマで氷像を霊安室からトラッシュルームに運び出した所を襲われたのよ。恐らく両手が塞がれていて、尚且至近距離だったから咄嗟の判断も間に合わなかった。チルノはね、氷像を早い段階で完成させていたの。少なくとも死亡推定時刻付近に〈氷細工〉を作り出す事自体は可能だった。残念ながら証拠品を見る限り、反撃は間に合わなかったし、〈氷細工〉をもう一度発動する余裕も無かったみたいだけど」
ルーミア「でもさ、チルノちゃんと霊夢が最後にあった時、チルノちゃんは氷像の飾り付けを続けるつもりだったんでしょ? チルノちゃんは二つ目の〈氷細工〉を作ろうとしてたんじゃないの?」

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霊夢「チルノは恐らく、既に霊安室に預けてある氷像の細部を調整したかったんでしょうね。あるいは一度細部を突き詰めた彫像を丸ごとコピーして、再び霊安室に戻した上で氷像を明日の朝まで保たせるつもりだったか
咲夜「氷像は早くに作り終わっていた。そして倉庫からトラッシュルームまでのラインには氷像から水が滴り落ちたような跡はなかった。倉庫内にも氷像を砕いてから運び出したような形跡は無かった。ということは――」
こいし「あー! 段々わかってきた! 倉庫内から直接霊安室に氷像を運んだんだ!
霊夢「そうね。氷像はスキマで直接倉庫から霊安室に運び込まれたんだと思う。そして事件当時、霊安室に保管されていた氷像は、チルノ自身の手で霊安室からトラッシュルームに運び込まれていた
さとり「チルノさんが偶然見つけ出してしまったこの方法――他のプレイヤーにも悪用される危険性がありますね。スキマで移動できる場所は非常に限られていますが、使用回数や使用可能エリア等で制限を設けたほうがいいかも知れません。追加ルール等も視野に入れて。犯人側の使用に対してのみで大丈夫だと思いますが、この方法を使えば極端な話、冷蔵庫や箪笥、あるいは洗面台のような大きな物ですら、労力を殆ど使わずにエリア間を秘密裡に運び出すことが出来てしまいます
魔理沙「どうするんだ、紫。現に今回の事件、スキマが使われちまってるぜ?」
紫「言われてみるとそうねえ。うーん……。ちょっと運営同士で相談してみようかしら」
ルーミア「ねえ、氷像を作り終えた後に、どうしてそれを霊安室に運ぶ必要があるの?」
てゐ「はぁ? そんなの、氷像が溶けるからに決まってんじゃん」
ルーミア「それはそうだけど、私に盗まれるのが嫌だったのなら氷像を砕いて捨てれば良かったんじゃないの? 水晶玉も一緒に処分出来ただろうし。今霊夢が言った、二つ目を作ろうとしていたかもしれない、ってのもよくわからないし
霊夢「それは――」
青娥「霊夢さん。ルーミアさんには私が説明します。ルーミアさん、しっかり聞いてくださいね」
ルーミア「うん……?」
青娥「チルノさんはまず、ルーミアさんの完成させた祭壇に飾り付けを始めました。この時点で既にルーミアさんの意図には気付いていたのでしょう。それでも貴方が折角作ってくれた祭壇だから、飾り付けを始めてみることにした」
妹紅「……」
青娥「そして貴方が盗み出した美術図鑑を見せられて、ルーミアさんが唐突に祭壇を作った意味について、きちんとした確信を得た。そのうえで、やはり彼女は氷像を完成させた。なぜかわかりますか?」
ルーミア「え? その時はまだ私に氷像や水晶玉を渡すつもりがあったからとか? 私に藍を殺害して欲しくて」
青娥「違います。そうではないんですよ。チルノさんは氷像の美しさで、貴方の心を変えたかったんです
ルーミア「氷像で、心を?」
青娥「しかしチルノさんはそれを断念しました。何度も倉庫を訪れてきた貴方の視線が、龍の氷像そのものではなく、常に『龍玉』の部分にのみ注がれていることを知ったからです。ルーミアさんは氷の造形に一切興味はなく、『龍玉部分に〈水晶玉〉が嵌め込まれているか』だけが気掛かりだったのですから、当然ですが」
ルーミア――でも、私が確認し続けていた限りだと、氷像は倉庫にしばらく置かれていたよ?
青娥「そうですね。自分自身で細部を磨くことで『魂』を入れてしまった〈氷細工〉の龍に対して罪悪感があったのでしょう。氷像を美麗に作ることが出来たことにより、破壊が躊躇われた部分もあるとは思いますが。だからルーミアさんが倉庫付近から離れた一瞬を狙って、チルノさんは氷像を霊安室に移しました。それと同時に〈水晶玉〉も一時的にそこに保管することに決めました。ルーミアさんがDAY06の夜からDAY07の朝の間には『氷像と〈水晶玉〉が霊安室の死体安置用のケースに保管されている』ことに気付かないと考えて」
ルーミア「でも、そんなに私を警戒していたのなら、自分の部屋とかにだって保管くらいは――」
青娥「部屋? 貴方は彼女の部屋に何度も遊びに行っているのでしょう? 貴方が怪しい行動を始めたとして、チルノさんには『遊びに来た』貴方を急に拒み始めることが出来ると思いますか? だから霊安室に凶器を隠したことは、一つの妥協点だったんですよ。遊びに来た貴方にこっそり家探しされたり、痺れを切らした貴方に〈暗闇〉で奇襲される危険性があったとしても、昨日までの友人をいきなり拒絶することなんて普通は出来ないと思いませんか?」
魔理沙「おい、青娥!」
ルーミア「そ、そんな言い方しなくていいじゃん! 私、そんなつもりなんて……」
マミゾウ「青娥。今一瞬、珍しく感情的になったな? 議論中とはいえ、子供に対してそのような言い方はいかんのう。適切な説き方ではない」
青娥「……そうですね。ルーミアさん、ごめんなさい」
早苗「霊安室に凶器を保管、ですか。そのへんの感覚って、チルノさんとルーミアさんで結構似てる感じがしません? 私だったらなんだか罰が当たりそうで、ちょっと気が引けますし」
青娥「かも知れませんね。お二人は似ている所が多いと思います。話を続けましょうか――チルノさんは最終的に、ルーミアさんときちんと戦うことに決めました。『最後に陰から様子を見てみよう。祭壇の飾り付けにも無反応で、倉庫内を物色し始めたら、直接相手を拒否するしかない』。チルノさんはそう考えました」
ルーミア「それで――ケンカになっちゃったんだ。やっぱりチルノちゃんが死んだのって私が原因なんだね」
青娥「……否定出来ません」
マミゾウ「――いいや。はっきり否定させて貰うぞ! それを言ったら、わしが〈ナイフ〉を現場に残したことにこそ、真の責任がある!」
妹紅「ああ。チルノが死んだ原因を作ったのは、私達だ。マミゾウ、『私だけが原因だ』とか善人ぶったことは言わないぞ? ボーナスルールでDDSルームから凶器を取り出したのは私だし、マミゾウに計画を持ち掛けられなければ、私は今日まで余計なことを何もしなかった」
てゐ「ねえ、そこなんだけどさ。妹紅達の計画ってマミゾウ側が持ち掛けたんだよね? だけど、うーん……」
妹紅「どうした?」
てゐ「ごめん。ちょっと考えがまとまらないから後にするよ」
咲夜「マミゾウさん。今貴方は『ナイフ〉がその場にあったことが直接的原因』と言いましたけど――それもどうでしょうか?
マミゾウ「なんじゃと? 何かおかしいことを言ったか?」
咲夜「――では、先程霊夢『トラッシュルームの突破に適していない能力者でも刺殺は可能』と証明しましたので、その視点から理論を展開してみましょうか? 本来〈ナイフ〉という凶器は――いえ、〈スタンガン〉等の近接武器全般に言えることですが、近接武器はチルノさんを殺害する際に安全な凶器とは思えないのです
早苗「ん? そうですか?」
咲夜「ピンと来ませんか? 私達はゲーム内では身体能力の制限がされているんですよ? ここがゲーム内で無ければ、トラッシュルームやDDSルームの仕掛けは、意味を成さないでしょう」
妹紅「ごめん。私にも言いたいことがわからない。〈ナイフ〉を持ったチルノが、私や霊夢に勝てるとも思えないんだが」
てゐ「それなら、妹紅にもわかりやすい例えを出そうか。妹紅が慧音に呼ばれて寺子屋に行ったとするじゃん。さて、たまたま庭を見ると12歳と16歳の、人間の男の子が喧嘩をしていました。両方とも体育の成績はそこそこだと思ってね。妹紅だったらその喧嘩を止める?
妹紅「うーん。女の子同士だったら口喧嘩で終わることもあるけど、男の子かあ。まあ、それぐらいの年齢だったら、そういう経験も少しは必要だとも思うからなあ。様子見、って所か」
てゐ「じゃあさ、小さい方の男の子がハサミや棍棒を持っていたら?
妹紅「――は?」
てゐ「続けて聞くよ。ハサミや棍棒の代わりに、短刀や手斧、あるいは包丁を持っていたら?
妹紅「なに言ってんだ!? 止めるに決まってる! そんなの、下手したら両方とも怪我じゃ済まないだろ!」
てゐ「わかった? 今の私達の力量なんて、その程度の差なんだよ。ここに更にスペルカードルールを度外視した身体能力差が加わるんだよ? ここでの私達の強さに『本当の』優劣を付けるとしたら、凶器の有無や能力だけじゃなく、人間基準の体格差や筋力差って奴を計算に入れないといけないんだよ」
妹紅「怪我も厭わなければ、誰だってチルノを殺せる気もするが……
てゐ「だけどここにいるみんなは、自傷した咲夜はともかく、目立った怪我なんて誰も負ってない。私だってそうさ。なんなら服を脱いで見せようか?」
妹紅「いいよ、そんなことしなくて。だけどそんなことを言い出したら、チルノを接近戦で殺害しようなんて誰も思わないだろ
咲夜「あの状況でチルノさんを正面から殺害することが出来た人物って、トラッシュルームの突破を抜きにしても、実はかなり限られていたと思うんですよ。それにチルノさん自身、そう大人しく殺されるタイプでもないと思いますので
ルーミア……チルノちゃんってさ、妖精の中でもかなり強い部類なんだよね。弾幕だって避けるのがめちゃくちゃうまいし、私やみすちーやリグルは妖怪なのに、妖精のチルノちゃんも全然引けを取らないぐらい運動神経がよくて」
早苗「ですが、青娥さんが文さんに渡したメモでは、バスケットボールをした時にかなり点数の開きがあったようですけど?

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ルーミア「それは単純にバスケットボールっていうゲームとの相性だと思うよ? 氷の棒かなんかでチャンバラなんてしたら、正直どっちが勝つかわからないと思う」
霊夢「映姫も以前同じようなことを話していたわ。チルノは妖精の域を大きく逸脱しているって」
早苗「うーん、言われてみれば、チルノさんってかなり複雑な弾幕を連続で展開出来ますもんねえ。もしも幻想郷の妖精が全員あのレベルだったら――と考えると正直ゾッとしますよ。人里から出ようと考える人間は、まずいなくなるんじゃないですかね?」
咲夜「では、これらのことを紙にまとめてみますので少々お待ち下さい。亡くなった方や運営である紫を含めて」
 

16

咲夜「――お待たせしました。こちらになります」

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早苗「どれどれ、ちょっと見せてください」

こいし「あ、この表おもしろーい!」
咲夜「かなり主観が入っていますが、まあ参考程度に。体格差が『○』以下であったり、種族差が『○』以下のプレイヤーは、何かしらの能力を用いなければチルノさんからの反撃を躱すことは難しいでしょう
ナズーリン「いや、冗談じゃなくかなり主観が入っている気もするが……」
早苗「身体能力が一般人レベルまで落ちてるのは相当大きいですもんねえ。文さんや勇儀さんはともかく。ですが、この表の通りだとすると――能力を使えばほぼ全員が近距離からチルノさんを刺殺可能ってことになっちゃいませんか?
咲夜「あ、あれ。そうなりますね?」
魔理沙「さっきまでの議論の意味はなんだったんだ……」
妹紅「この『経験』の部分――ざっくり年齢とかで決めてないか?」
てゐ「ちょっとちょっと! 私の『〈幸運〉の貸し出し状況は不明』ってところ、完璧に難癖でしょ!?」
マミゾウ「こうして表にしてみると、勇儀の身体能力が如何に優れていたかがわかるのう」
レミリア「……さーくやちゃん? この評価は何かしら?」
咲夜「はい? どの部分のことでしょうか?」
レミリア「なんで私がチルノにスペルカードで劣ってるのよ!? 流石におかしいでしょ!」
魔理沙「いや、その項目については私も異論はないぜ?」
レミリア「はぁ!?」
魔理沙「なんというか最近あいつ急成長してるというか。なあ霊夢?」
霊夢「『四季異変』の時ね。全く……なんで紫の旧友ってクソ迷惑なやつしかいないのよ?」
紫「それについては同意しておくわ」
ルーミア「この表……チルノちゃんの評価は高いのに、私の評価だけ妙に低くない?」
青娥「そんなことありませんって。少なくとも私はルーミアさんのことも高く評価していますよ?」
ルーミア「本当?」
青娥「ふふ。本当にそう思ってますよ? 数奇な運命とでも言いましょうか。たまたま知り合いとなった貴方とその遊び仲間の方達は、幻想郷が持つ側面の一方である『妖』を担っていくのに十分な実力を手に入れることになると考えています。精神面でも肉体面でもです。その時の幻想郷の勢力図が――今からとても楽しみです」
こいし「お姉ちゃん。この字ってなんて読むの?」
さとり「『さとりようかい』に決まってるでしょう。自分の種族を忘れないでください……」
ナズーリン「……なあ、君達。私個人としても非常に興味深い表なんだが、本題を忘れてしまってないか?」
マミゾウ「む……。確かに脱線しとったわい。真犯人を導き出さねばならんというに」
ルーミア「うーん……。もう少しで真犯人に辿り着けそうなんだけどなあ。後、何が必要なんだろ?」
てゐ「……やっぱりダイイングメッセージの解読じゃないの?」
ナズーリン「チルノが懐に隠し持っていた、謎の黒い造花か」
早苗「霊夢さん。あれがどういう意味なのかわかりますか?」
霊夢「なんとなくは、ね」
ナズーリン「本当か!?」
こいし「え! 既に解けてるの? 霊夢やるぅ!」
ルーミア「本当!? 誰が犯人!?」
霊夢ただし、造花そのものについての正体がなんとなくわかっただけなんだけど……
てゐ「ん? なんだか歯切れが悪くない?」
妹紅「どういう意味だ?」
霊夢「妹紅。出来ればこれは貴方に解いて欲しい謎なのよ。チルノが残したダイイングメッセージは、貴方に宛てた物なのよ
 

17

マミゾウ「妹紅への?」
霊夢妹紅。貴方は私と同じように生前のチルノと倉庫内で会っていた。だけど私と貴方には大きな違いがある。何だかわかる?
咲夜「妹紅さんのほうがチルノさんと親密だった、ということですか?」
霊夢「二人は仲が良かった。だからこそ、チルノはダイイングメッセージを妹紅に向けて残した。でも、咲夜の答えはちょっと違うわ。チルノから事前に美術図鑑の情報について知らされていたのが、妹紅だけだったからよ
ナズーリン「確かにほとんどのプレイヤーは、チルノが倉庫で飾り付けを行っていたことさえ知らなかったな」
ルーミア「え? 私だって美術図鑑については知ってたよ? そもそも私がチルノちゃんに渡した物だし」
青娥「ルーミアさん。大変申し上げにくいのですが、貴方は恐らくチルノさんから、トラッシュルームで何らかの犯行を起こした容疑者だと思われていました
ルーミア「え? 私が?」
青娥「はい。マミゾウさん達が工作した後のトラッシュルームにチルノさんが23:45に出向いたのは間違いないでしょう。その時の現場の状況から推測される『架空の事件』について、ルーミアさんが何らかの形で関わっているとチルノさんには思われていたんです。だからこそチルノさんは〈氷細工〉の龍や水晶玉の行方が気になり、霊安室へ移動したのでしょうね
ルーミア「……そうだったんだ。霊夢、話を続けて?」
霊夢「咲夜。確か貴方、花を回収していたわよね。今ここで出して貰える?」
咲夜「え、ええ。わかったわ」

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霊夢「ありがとう。きちんと預かっててくれたのね」
咲夜「蓋付きのバスケットに入れてそのまま持ってきたのよ。タオルに包もうか迷ったけど、かなり脆そうな作りだったから、花が血でタオルのほうに張り付きそうで――」
レミリア「……ん? ちょっと花びらを一枚貰うわよ。……あむ。やっぱり妖精の血の味って人間とは全く違うわね」
咲夜「お、お嬢様?」
てゐ「ちょっ! 何やってんのさ!」
こいし「うへぇ、悪食だなあ」
レミリア「んー。これくらいの血液の浸透率だったら――もしかしたら? 咲夜、花を丸ごと貸しなさい」
咲夜「はい? どうぞ」
レミリア「ありがと」
ベリッ! バリッ!
咲夜「――お嬢様! お止めください!」
妹紅「待て! それはチルノの遺品だぞ!」
早苗「それに大事な証拠品ですよ!? そんなことしたら――」
レミリア「はい、ビンゴ。みんな、これを見なさい」

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ルーミア「あれ? この花の根元のほう、少し青くない?
魔理沙「本当だ。なんで?」
マミゾウ「! おい、この黒い花はまさか――」
霊夢「そうよ。血が凝固して黒ずんでしまっているけど、本来は青い花だったのよ。この黒い花は、元々水晶玉の中に埋め込まれていた、青色のドライフラワーだったのよ
咲夜「……よく気付きましたね。霊夢も、お嬢様も」
ルーミア「――そうだったんだ。やっぱり黒い花なんて、どこにもなかったんだね」
青娥「あら。どうしてそう思われていたのでしょう?」
ルーミア私もチルノちゃんもさ、みんなと違って、黒い色に誰かを弔う意味合いなんて感じないんだ。だからチルノちゃんがしてた飾り付けにも、黒い色なんて一つもなかったでしょ?

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レミリア「――確かに、無かった気がするわね」
早苗「いや、でもルーミアさん。一般的にお葬式で使われる色というのは、黒って相場が決まってるんすよ。幻想郷でも同じように――」
ナズーリン「いや、案外彼女達の感性のほうが自然なのかも知れない」
早苗「はい?」
ナズーリン「日本で葬儀で着る喪服と言えば、元来白色だった。その後時代が進み上流階級の人間が黒い喪服を着るようになっても、基本的には白い喪服が用いられていた。日本で黒い喪服が一般化したのはつい最近で、欧州文化の影響だ」
早苗「はぇ~、マジっすか」
ナズーリン「いやいや、君はなぜ神職なのにそういう事情に疎いんだ!?」
青娥「私の故郷である中国でも、喪服は白い物ですねえ」
早苗「あの、すみません。ダイイングメッセージが黒い花ではなかったとして、それってつまり――どういう意味なんすか?」
レミリア「本来の色が『黒』じゃなくて『青』だったとして、そこから連想される物が多過ぎるわね」
霊夢「そうね。私にも解釈が難しかった。ごめん」
てゐ「えぇ!? 霊夢でも駄目だったの!? 博麗の巫女でもどうにも出来ない問題なんて――私達にどうしろって言うのさ!?」
霊夢「てゐ……」
妹紅「大丈夫だ、みんな」
てゐ「――妹紅?」
妹紅「チルノの言葉は、必ず私が見つけ出す。だからみんなは別の議論を進めてくれ」
 

18

ルーミア「ねえ、妹紅。大丈夫?」
妹紅「…………龍の彫像は…………意味はつまり…………チルノはどうして…………」
霊夢「集中しているみたいね。そっとしといてあげましょう」
ナズーリン「私達も議論を進めよう。なあ。もう一度これを見てくれないか」

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青娥「事件発生現場の全体図ですね」
ナズーリン「ああ。証拠品全てを網羅しようとすると、更にテーブルクロスやジュラルミンケース等も含まれる」
てゐ「トラッシュルームだけでもかなりの証拠品があるのにねえ」
ナズーリン「会場に残ってる証拠品は、マミゾウや妹紅の証言でほぼ全体が把握出来たが、真犯人が残した痕跡はほとんどない。そう思わないか?」
マミゾウ「強いて言えば、わしが設置した〈ナイフ〉くらいじゃろうな」
青娥「そうですね。〈ナイフ〉が凶器というのは確定でしょうね」
早苗「あの……それなら、ちょっとおかしいところがありませんか?」
咲夜「早苗は〈ナイフ〉ではないと思うの?」
早苗「いいえ、そうじゃないんです! ただ、真犯人はどうして〈ナイフ〉を処分しなかったのかなあ、って思って
てゐ「出来るわけないじゃん。そうでしょ? メダルを全部使わないといけないんだから
早苗「でも、〈ナイフ〉さえ無ければ推理はもっと難しかったような気もするんですよね」
ルーミア「それは無理でしょ? だってマミゾウと妹紅が自分から〈ナイフ〉のことを話してくれたんだし」
早苗「だけどそれは私達が議論を続けた上で、妹紅さんやマミゾウさんが味方になってくれたからですよね? 真犯人側としても有利でしょうけど、マミゾウさん達にとってもかなり有利な状況になったと思うんすよ」
マミゾウ「何を言っとる。〈ナイフ〉が無ければ〈リボルバー〉が隠せなかったはずじゃが――いや、そうでもないのかのう?」
早苗「でしょ? 仮にキッチンナイフだけ中央に設置してから〈リボルバー〉をバックヤードに隠したとしても――『中央から検出される証拠品が一件だけになる』ってことは、キッチンナイフが重要な証拠品だと錯覚されるだけ、ってことなんすよどちらにせよ、マミゾウさんには得しかなかったんです」
魔理沙真犯人が単独犯だってことは、確定かもな
早苗「ですよね? チルノさんを殺した犯人が、マミゾウさん達と同じ様に共犯だったのなら、〈ナイフ〉は処分していたと思います
てゐ「――マミゾウ」
マミゾウ「なんじゃ?」
てゐ「あんたもしかして、とんでもない大ポカをやらかしたんじゃないの? 二人にとって〈リボルバー〉はバックヤードに隠さざるを得ない凶器だったんだろうけど、〈ナイフ〉は現場の偽装段階で処分可能だし、トラッシュルーム内にあってもなくても同じような結果を生み出せたんでしょ?
ナズーリン〈ナイフ〉は服と一緒に処分。そしてトラッシュルームの中央には未使用であるなら何を置いても構わなかったし、バックヤードに〈リボルバー〉を隠した所でトリックは成立した、ということかね?
マミゾウ「これは――そういうことになってしまうな。現場を偽装することに頭を取られて、『〈ナイフ〉をトラッシュルームに残す必要性』について考えが至っておらんかった
青娥「――私の考えを言わせて貰うと、今回のマミゾウさん達の計画には、やはり〈ナイフ〉を現場に残すことは必要だったと思います。血塗れのテーブルクロスと、ゴミ箱の前の血液だけでは、事件現場としての『質感』が薄くなってしまうのですよ
ナズーリン「質感?」
青娥「まず、〈リボルバー〉という最初から隠し通すつもりだった凶器には効果が期待出来ません。誰にも発見されない凶器は、当然現場に質感を生みませんから。そもそも〈リボルバー〉は妹紅さんの死因とワンセットの物でしたし。〈暗視ゴーグル〉も一応は『極上の凶器』に含まれますが、それ自体に殺傷力の無い物が見つかった所で、架空の事件を想起させる為には全然足りないんですよ。そして〈氷細工〉で作られた彫像や〈水晶玉〉についても同じことが言えます。どちらも『氷』や『水』といった青く透明度の高いもので、チルノさん自身が用意したと連想しやすい凶器ですし。そもそも本来の計画では氷像も〈水晶玉〉も現場に発生することは無かったわけでして。『会場のどこかで人が死んだ』という質感を持たせる為には、実際に妹紅さんが自らを傷つけた〈ナイフ〉を設置することは必須でした
てゐ「もしかして――遠回しにマミゾウのこと慰めてるの?」
青娥「え? 逆ですよ? 貴方達は結局、二人殺してるんですよ。殺してしまったんですよ。もちろんチルノさんを殺したという意味ではありませんよ? 架空の存在を、です。架空の存在を意図せず殺してしまったことがきっかけで、会場に『厄』を呼び寄せたと――私はそう考えています
てゐ「あのさ、青娥。正直言って不愉快なんだけど? そんな非科学的なことをここでぶち撒けたって何も――」
青娥「非科学的? ここは幻想郷ですよ? そんなことを言いだしたら私達の存在って――一体何なんでしょうね? 知っていましたか? 外界の人達からすれば生身で空を飛べるヒトガタの生き物って、『化物』とか『悪魔』らしいですよ?」
紫「……」
マミゾウ「……」
ナズーリン「……マミゾウ。青娥の言うことなんて、真に受けるな。少なくとも君達はゲームを完全に終わらせる為に動いていたんだろ? 殺人についても妹紅の同意を得た上でな。そもそも『たった15分の間に真犯人に便乗されて起きた出来事』に、そこまで責任を持つのはいかがな物か」
こいし「ん? 15分? どうして?」
さとり「チルノさんは23:45まで生きていました。レミリアさんも大体日付がDAY07に切り替わるくらいにはトラッシュルームを訪れていたことでしょう。トラッシュルームの状況さえプレイヤーに知れ渡れば、その瞬間にマミゾウさん達の計画は成功したと言えたでしょう」
こいし「あー。15分間誰もトラッシュルームに入らなければ事件は起きなかったんだ
マミゾウ「……そうじゃな。DDSルームの見張りの都合もあったが、〈ナイフ〉や〈リボルバー〉を現場に持ち出す以上、状況発見までの時間はなるべく短くしようと考えておった」
さとり「たった15分だけ運がマミゾウさん達に味方すれば、こんな悲しい結末にはならなかった。しかし――」
早苗「真犯人はトラッシュルームの状況から即席の計画を作って、犯行を?」
さとり「はい。ですが杜撰な部分も相当ある計画です。真犯人がきちんと計画を立て、何らかの犯行計画を実行していたのなら、このような発見状況にはまずならなかったでしょうね
マミゾウ「踏んだり蹴ったりじゃのう。だが、わしらはここで終わるわけにはいかん! なんとしても真犯人を見つけねばな」
ルーミア「……ねえ、みんな。怒らないで訊いてね。マミゾウ達ってみんなのことを考えて行動したのが議論でわかったよね? 私なんかの独り善がりとは全然違った。例え真犯人を見つけられても、妹紅とマミゾウは処刑されるんだよ? だったら――」
マミゾウ「ルーミア。気持ちは嬉しいが、それでは駄目だ。これはお前達が勝たなければいけないゲームじゃ。特に霊夢魔理沙。お前さん達がわしらに負けることだけは許されん」
魔理沙「マミゾウ……」
霊夢「……」
マミゾウ「幻想郷では人間が食われてしまうことだってある。食物連鎖、あるいは存在意義の維持の為にな。だが『食欲以外の願望を満たす為に他人を殺めた』なんてことは、幻想郷でもそうは起きないはずじゃ。それをお前達が裁かないで、誰が裁く?」
魔理沙「いや、私達は異変のたびに首謀者を裁いているつもりはないんだ。そんな権限、幻想郷の管理者である紫からも与えられていない」
霊夢「妖怪にとっては遊びの延長に過ぎないことでも、放置していれば力の無い人間にとって一大事になることだって結構あるのよね。人里の住人とかには特にね。例えば人里に住む『小鈴』って子はある種の能力を持っているけど空も飛べないし、唯一無二の性質を持つ『阿求』も体が強いほうではない。だから私は誰かの力を借りて異変を解決することがある。積極的に命を取ろうとは考えていないけど。本当に危険な存在だと直感的にわかったら、遠慮なく退治するけどね」
魔理沙「ま、そういうことだ。それで、霊夢はどうする? お前がギブアップするなら、私がくじ引きでもして投票対象を適当に決めてやってもいいぜ?」
霊夢「馬鹿なことを言わないでよ。真犯人は、必ず暴き出す」
マミゾウ「頼もしいのう。それを訊いて、少し安心したわい」
ルーミア「――そっか。マミゾウ達はそう考えていたんだね」
マミゾウ「ああ」
ルーミア「それなら、頑張って推理してみようかな。霊夢のメモを確認しつつ――能力や凶器のカードを広げて、っと」
マミゾウ「おう、そうしろそうしろ」
ルーミア「……あ、やっぱり推理は無理かも」
マミゾウ「早っ!?」
ルーミア「だって無理だもん! 私はどちらかと言うと『犯人側』で動くタイプだし。そもそも真犯人もそうだけど、マミゾウ達の計画も細かい部分が多くて理解するのが難しいし……」
てゐ「度胸もあるしね。この計画、地味に廊下の移動距離も長いから隠密行動も大変だよねえ」
ルーミア「マミゾウと妹紅の立てた計画、本当に凄いなあ。私じゃ、こんなの無理だよ」
青娥「その通りですが、ルーミアさんの立てた計画も素晴らしい物でしたよ? ほら、霊夢さんだって最初は祭壇の意図に全然気付けなかったじゃないですか。チルノさんと一緒に飾り付けしていたのにも関わらず」
霊夢「なーによ、あんた。喧嘩売ってんの?」
ルーミア「でも。やっぱり凄いと思うんだけどなあ」
早苗「まあ、確かに……」
マミゾウ「何を言うとる。犯罪の計画に凄いもクソもあるかい」
こいし「ねえねえ、私の毒殺計画は!? 見立ては!? どう!? 凄かった!?」
ルーミア「…………え? う、うん。凄い?」
こいし「疑問形!?」
ナズーリン「確かにトリックもそうだが――道具を一通り揃えるのも難しい計画だ
ルーミア「でしょ? マミゾウってさ。計画の為の道具を沢山用意してたじゃん。道具を吟味するのだって大変じゃない?」
てゐ「ルーミア。あんただって図書室から美術図鑑を盗んだり、祭壇を作る為の素材を揃えたりしたじゃん」
ルーミア「見つかるリスクが低い所からは、ね。夜の図書室とかなら安心して侵入出来るし。でも厨房のキッチンナイフなんて、私だったら盗むのがちょっと怖いかなあ」
マミゾウ「そんなもん、九割度胸じゃ。後はプレイヤーの行動パターンを観察していれば、限りなくリスクは抑えられる」
レミリア「あ、そうだ! 咲夜! いくらなんでも厨房のキッチンナイフくらい毎日確認しておきなさいよ! こんなもん、紅魔館でやったら減給よ! 減給!」
咲夜「はい? うちの帳簿は私が管理しているのですが――どうしろと?」
レミリア「え!? そうだっけ? じゃあ、ええと――」
咲夜「むしろ私は、紅魔館に住み込みで働いている最中に危険なゲームに巻き込まれた被害者なのですが、労災は下りるのですか?」
レミリア「あれ、何も聞こえないわね? 〈幻惑〉が発動しているのかしら」
マミゾウ「人のせいにするでない」
てゐ「その理屈だとナズーリンも『上司』から仕事を与えられている最中だったね。労災下りるんじゃないの?」
ナズーリン「そんなもん毘沙門様に頼めるか!」
てゐ(案外がっつり財宝くれそうだけどね)
ルーミア「――キッチンナイフ、替えの服、テーブルクロス。ここまで用意しないといけないのかあ」
マミゾウ「それだけではないぞ? 未使用だからこそ検索に引っ掛からなかっただけで、道具は他にも用意しておいた。妹紅だけでなく、わしの替えの服も用意したし、犯行前には懐中時計も正確な時間に直した。妹紅を狙撃する際にはどんな風に血が飛び散っても良いように、入念な準備を行った。先程話に出た通り、結局の所は銃撃の際に人体の一部が別の個室まで飛んでしまっていたようじゃが……」
ルーミア「凶器だって二つも用意してたもんね」
マミゾウ「そこはほとんど妹紅任せじゃったがのう。妹紅が希望した〈暗視ゴーグル〉の取得については、要求を呑んだというよりも、妹紅がルーミアに殺人をして欲しくないという気持ちを尊重したんじゃが」
ルーミア「妹紅……」
ナズーリン「――ん?」
さとり「……!」
魔理沙「どうした?」
ナズーリンルーミアの言った通り、マミゾウの用意した凶器は、二つだったな?
マミゾウ「ああ。それがどうした?」
霊夢「……」
早苗「え? どうしました? 何の話っすか?」
ナズーリントラッシュルームの床に落ちていた、〈ナイフ〉。そして、地下のバックヤード内に隠されていた、〈リボルバー
青娥「……ふふ」
こいし「なになにー?」
ルーミア「……?」
ナズーリン「マミゾウ。訊いてもいいか? 君、〈リボルバー〉をどうやって入手した?
 

19

マミゾウ「……質問の意図がわからん」
ナズーリン「そうか。なら別の質問をしようか。君、DAY05できちんと謝罪していたが、どうして急に『人が死ぬような計画』を実行しようと考えた?
マミゾウ「あのな、ナズーリン。今更そんなつまらんことを聞くのか? はぁ……ナズーリンよ。わしはなんの妖怪じゃ?」
こいし「アライグマ!」
マミゾウ「狸じゃアホ! 化け狸に決まっておるだろ!」
こいし「いや、でも尻尾が――」
マミゾウ「これはそういう模様なだけじゃ! いいか!? わしは人語を操る化け狸じゃぞ!? あんな形ばかりの土下座に意味があるわけないじゃろう。わしに他人を騙すことへの躊躇なんぞあるか!
ナズーリン「……ふむ?」
てゐ「――そうだ! それそれ! 私、そこがどうしても納得出来ないんだけど」
マミゾウ「どうしてじゃ?」
てゐ「あんたがDAY05の朝に土下座した時、嘘偽り無い真摯な気持ちで謝っているように思えたんだよ。だからこそ私は、殺人未遂犯であるあんたとDDSルームの見張りを一緒にすることに決めたんだよね。妹紅だって、マミゾウがきちんと謝ることが出来る人物だからこそ協力したんじゃないの?

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マミゾウ「――仮にあの時本当に心を入れ替えていたとして、それが何だと言うんじゃ?」
てゐ「妹紅に計画を持ちかけたのって、その日の夜でしょ? そのタイミング以外有り得ないよ。たったそれだけの間に、どんな心境の変化があったのか気になって」
マミゾウ「だから、全部お前達を欺く為にやったことだと――」
ナズーリン「なら、もう一度訊く。君は〈リボルバー〉をどうやって手に入れたんだ?」
早苗「そういえば気になりますね。保管していた凶器を盗まれたことは完全に私達の不手際だとしても、そもそもどうやって〈リボルバー〉を見つけたんですか?」
ナズーリンDAY05から06の間に〈リボルバー〉を手に入れるには保管されていた場所から盗み出すしかないはずだが?
マミゾウ「妹紅には話したぞ? 『エリア全体を調べ直している時に、たまたま見つけた』と」
レミリア「――ん?」
ナズーリン「マミゾウ。それは、ちょっとおかしい。一応みんなにも確認しておくか。この中で魔理沙と早苗が大量に取得していたという凶器の在処を知っていた者は?
ルーミア「知らなかったよ? 知ってたら〈水晶玉〉じゃなくてそっちを狙ってた。チルノちゃんも知らなかったと思うよ?」
咲夜「私達も知りませんでした。ですよね? お嬢様」
レミリア「ええ。全然」
てゐ「私だって知るわけないじゃん」
青娥「私の場合、端末破壊事件の後に早苗さん達が取る行動の予測はしていたのですが、如何せん途中から身動きが取れなかったので探しには行けませんでしたね。そもそも盗む気もありませんでしたが」
さとり「私は〈読心〉能力のせいで皆さんの思考が読めてしまいますが――その情報を誰かに話してはいません。明確なルール違反になりますので」
こいし「はーい! 私は知ってましたー!」
早苗「えぇ!? どうしてですか?」
こいし「でも〈香水〉も〈消臭剤〉も手に入れたばっかりだったし、スルーしちゃった。また事件を起こしたくなったら取りに行くね」
さとり「止めておきなさい、って言ってもやるのでしょうね……」
霊夢「私も凶器の件はさっき初めて知った。凶器がそんな風に大量に取得されていたことも知らなかった」
ナズーリン「そうか。みんなありがとう。マミゾウ。君の主張はやはりどこかおかしい。魔理沙の〈盗み〉はともかく、早苗の〈奇跡〉をかけられたジュラルミンケースを盗み出すことは至難の業だぞ? どうやって凶器を見つけ出せたんだ?
マミゾウ「そんなこと言われても、見つけ出してしまったものは仕方なかろう?」
ナズーリンでは、鍵はどうした? 〈リボルバー〉が保管されている部屋やジュラルミンケースを開けるための〈マスターキー〉はDDSルームの中だった。〈リボルバー〉と違って、〈マスターキー〉については場所が判明していた凶器と言える。だが、そもそもマミゾウは既に二回DDSルームを使用済みだったな? DDSルームを安全に使用することは出来ないのではないか?
マミゾウ「おかしいかのう? 〈リボルバー〉も〈マスターキー〉も別に会場から消えたわけではないのじゃぞ? だったらDDSルームを限界まで利用していたのでもなければ誰だって〈マスターキー〉の取得は出来るし、そこから更に〈リボルバー〉を手に入れるチャンスはあったじゃろう? わしだって同じじゃ。DAY05にてゐと別れた後でDDSルームにチャレンジすることは出来た。2分の1くらいのチャレンジがなんだというんじゃ?
てゐ「へえ。だから見張りを始めたの? こっそり凶器を再取得するチャンスを伺ってたんだねえ」
マミゾウ「それについては――お主に謝るが」
早苗「あの――ルーミアさんもそうですけど、なんでボーナスルールを使い切った後もみんな普通にギャンブルにチャレンジしようとするんすかね……。わたしやてゐさんみたいな確率操作系の能力者ならともかく」
マミゾウ「だからどうしたというのじゃ? 少なくともわしはそうやって〈マスターキー〉を再び拝借出来たぞ?」
ナズーリン「一見正しい主張に聞こえるが――それならマミゾウはどうやって二人が隠した凶器を見つけた? 私のような〈ダウジング〉能力でもない限り見つけられるわけがないだろう。実を言うとな、早苗達が隠した凶器の位置は端末破壊事件の後に〈ダウジング〉で把握済みなのだが――まあそうそう見つかる場所には隠していなかったな。勿論ここで場所を言うつもりはないが……
マミゾウ「いや、水掛け論のようになってしまうが、実際問題会場から凶器が消えたわけではないのだから、誰だって鍵さえあれば取得自体は可能じゃろう? わしが凶器を見つけたのはほんの偶然じゃが。それにな、DAY06の朝までに凶器を取得していれば、朝にメダルは補充されるのじゃ。それなら〈マスターキー〉を使い終わった後に、メダルが配られる朝までにトラッシュルームで処分すれば問題はない
ルーミア「ねえ、〈マスターキー〉なんて手に入れなくても、普通に魔理沙か早苗のジュラルミンケースの、鍵だけを入手すればよくない? 魔理沙みたいに〈盗み〉の能力を持ってなくても、少し頑張れば盗めるんじゃないの? 宿舎エリアのお風呂に入っている時とか」
ナズーリン「いや、それでは無理だ。仮にルーミアが〈ナイフ〉を部屋で管理していて、魔理沙が盗んだ鍵で凶器を入手したとしよう。ご丁寧に部屋の鍵まで掛け直してな。さて、君が部屋に戻ってきたらどうなる?
ルーミア「――部屋が開けられないから、鍵が盗まれたことに気付く?
ナズーリン「そういうことだ。トラッシュルームで運良く鍵を処分出来たとしても、鍵の再発行は本人にしか申請不可能だ。使った鍵をポケットにでも戻してみろ。そんなことをすれば、鍵だって立派な証拠品だから、私の〈ダウジング〉に引っかかる
てゐ「あのさ、それなら〈マスターキー〉も〈リボルバー〉も無事手に入ったのに、なんであんなに面倒くさい計画を立ち上げたの? その二つさえあれば完全犯罪なんて可能でしょ。文の時の事件は相当異常な状況だったけど、あんなことがなければ普通に誰かを呼び出して銃殺したほうがずっと手っ取り早いし安全なんじゃないの? そうやってマミゾウがゲームに勝ち抜いて〈追放〉されたプレイヤーを含めて全員を解放すればいい話じゃん」
マミゾウ「ただプレイヤーを殺したかったわけではないんじゃ。それも話したじゃろ? 〈17人目〉を暴き出すことがわしらの真の目的だったのでな
ナズーリンだが、〈17人目〉についての議論が出たのは、マミゾウが謝罪した日の後日――DAY06だ。それじゃタイミングが合わない
マミゾウ「本気で言っておるのか? 〈17人目〉の危険性なぞ、端末破壊の件でとっくに知れ渡っていたじゃろうが」
ナズーリン「なぜそこまで危ない橋を渡る必要がある? 隠されていた凶器の場所さえ知ることが出来たのなら、妹紅に〈マスターキー〉を取得して貰ってから回収に向かえば良かった話だろう。どの道妹紅を共犯者として引き込むつもりだったのなら尚更だ
マミゾウ「そこはどうでもいいじゃろう。たまたま順番が逆だっただけじゃ。凶器の使い道はプレイヤー次第じゃ」
レミリア「総合すると――マミゾウはエリアを独自に捜索中に、たまたま魔理沙と早苗が隠していた大量の凶器を発見した。DAY05の朝にはみんなの前で謝罪したけど、なんらかの心境の変化があった。DDSルームの見張りを終えててゐと別れたマミゾウは、三回目のチャレンジで〈マスターキー〉を取得した。そして凶器の隠し場所まで行って〈リボルバー〉を拝借した。マミゾウは妹紅に〈リボルバー〉を見せつつ、共犯の約束を取り付けた。〈マスターキー〉は自分ひとりで内密に処分した為メダルを全て失ったけど、朝にはメダルが補充されたので問題はなかった。こんな所かしら?」
マミゾウ「ああ。矛盾なぞ一つも無い。どうじゃ、筋が通っておるじゃろう?」
レミリア「咲夜、どうかしら? 私も霊夢と同じように全体を要約出来たわよ?」
咲夜「そんな羽をパタパタさせてドヤ顔で言われましても……。お嬢様、この線でマミゾウさんに対して何かを糾弾するのは無理筋なのでは? そもそもマミゾウさんはチルノさんを殺した犯人というわけでもないのですよね?」
レミリア「そうね。彼女はチルノを殺していない。断言出来るわ」
早苗「……」
マミゾウ「ん? なんじゃ、その眼は?」
早苗「――何でもありません。議論を続けてください」
こいし「ねえねえ、マミゾウ」
マミゾウ「なんじゃ?」
こいし「リボルバー〉の他にはどんな武器があったのー?
マミゾウ「他の武器?」
こいし「魔理沙達はみんなに使われないようにする為に、沢山武器を集めてたんでしょ? だったら七つくらいは武器が隠されていたんじゃないの?」
マミゾウ「七つ? その根拠はなんじゃ?」
こいし「んー? だってさ、魔理沙はボーナスルールで、凶器を二つは安全に取得出来たし、早苗は〈奇跡〉で五つ取得出来たよね? マミゾウが実際に〈リボルバー〉を盗んだのなら、他の凶器だって見てるはずだよね?
マミゾウ「お主までわしを疑うのか? かーっ! 全く。世も末じゃな! こんな大勢が聞いている中で教えるわけがなかろう。凶器が誰かに狙われたらどうするんじゃ」
こいし「大丈夫大丈夫! また別の場所に隠せばいいんだし。いっそナズーリンに手伝って貰えばいいと思うよ? そのほうがもっと安全な隠し方が出来ると思うし。ね?」
ナズーリン「ああ、私は構わないぞ?」
こいし「良かったー! 交渉せいりつー。で、マミゾウ。凶器はどんなのがあったの?」
マミゾウ「――端末破壊事件にまで遡りつつ説明するか? まずDDSルームの端末が破壊された時、〈トラバサミ〉は設置済みでその取得可能凶器の中には含まれてなかった。ボーナスルール解禁直後、まずはお主が〈香水〉と〈消臭剤〉を取得し、その後でわしが〈金塗りの模擬刀〉と〈マスターキー〉を取得した。後からやってきたルーミアとチルノは、〈ナイフ〉、〈暗視ゴーグル〉、〈水晶玉〉をそれぞれ取得した。つまり早苗と魔理沙は残りの凶器の中から凶器を取得したということになるな?
こいし「うん! それで?」
マミゾウ「こいし、実は魔理沙は凶器を取得しとらんのじゃろ? わしを引っ掛けようとしても無駄じゃ。二人が頻りに『私達』という言葉を出していたのは『ブラフ』、あるいは『チームで動いていたゆえの表現』じゃ

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こいし「お?」
マミゾウ「つまり――魔理沙達がDDSルームから回収した凶器は〈リモコン爆弾〉、〈無味無臭の毒薬〉、〈リボルバー〉、〈セミオート〉、〈霊体ボウガン〉、この五つで間違いないな?
咲夜「……!」
レミリア「あら?」
こいし「おおー」
マミゾウ「言っておくがお前達、くれぐれも魔理沙と早苗から凶器をせしめようとするでないぞ? 盗んだわしが言うことでもないかもしれんが。隠し通すのが不安だと考えるのなら、これからは当初のアイデア通りに見張りを立てつつDDSルーム内での管理も――」
こいし「……………………うぷぷ」
マミゾウ「……ん?」
こいし「……ぷ、くくくく。あははははは! ざーんねーん! はっずれー! マミゾウおばあちゃん、ダウトーーーーーーー!」
マミゾウ「な、なんじゃ?」
こいし「五つも凶器はありませんでしたー! 本当は四つだよ! 騙してごめんね!
マミゾウ「そんな、馬鹿な……」
こいし「確かに魔理沙は凶器を取得していないよ! でもね、二人がジュラルミンケースの前で話し合っていた時、凶器は四つしかなかったんだよねー
マミゾウ「そ、それは……」
レミリア「あらあら。貴方が舌戦で一本取られるなんて、相当ヤキが回っていたみたいね。ねえ、咲夜。――咲夜?」
咲夜「――すみません。呆気に取られてしまいました」
ナズーリン「……なるほど、そういう攻め方もあるのか。こいし、感服したよ」
青娥(ルーミアさん、よろしいですか? もし凶器をもう一度取得する際には、このような場合に矛盾点を突かれないように言いわけを準備しておいてください。そうしないと間違いなく誰かにそこを掘り返されます)
ルーミア(う、うん。わかった)
マミゾウ「なあ。早苗、魔理沙、お前さん達――」
早苗「こいしさんの言う通りです。私達の話し合いを、本当に間近で聞いていたんでしょうね。ちょっとした理由があって、私は四つしか凶器を取得しなかったんですよ
マミゾウ「早苗……」
てゐ「それで、なんで魔理沙は一個も凶器を取得しなかったの?
早苗「……はぁ」
てゐ「ん?」
ナズーリン「早苗?」
早苗「………………紫さん!!!」
こいし「うわ! あー、びっくりした」
早苗「裁判前に預けておいたジュラルミンケース! 今すぐここに持ってきてください!」
紫「いいわよ。すぐに取り出すわ。――はい、怪我しないように気を付けてね」
早苗「……どうも」
ガシャン!!
ルーミア「わぁ!?」
青娥「ふふふ。神様がご立腹ですわね」
ナズーリン「も、もう少し静かに置いてくれても――」
早苗「皆さんの目で確かめればいいでしょう!? 私達がどんな風に考えて凶器を再取得していたのか!

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マミゾウ「――これは? セミオート〉、〈リモコン爆弾〉。そして〈無味無臭の毒薬〉、か……
レミリア「〈霊体ボウガン〉なんてなかったわね。保管していたプレイヤーは二人とも『人間』なのだから、読みは間違っていなかったと思うけど」
こいし「そうそう。こんな感じだった。部屋で見た時は、これに加えて、〈リボルバー〉があったねー」
早苗「ほら、手に取ってよく見てくださいよ」
ルーミア「――あれ? この毒薬の瓶、空っぽだよ?
霊夢「……やっぱりね」
ナズーリン「待ってくれ。爆弾の信管が取り外されているぞ!? 拳銃に至っては――弾薬が一つも装填されていないじゃないか!
青娥「ですが――確かに妹紅さんは銃殺されていました。これはどういうことでしょうねえ?」
てゐ「あ、あれ? それじゃあ、もしかして――」
ナズーリン「――ああ。それしか考えられないな」
咲夜「他の可能性を模索することも出来るけど、早苗の様子からすると恐らく……」
ルーミアねえ、――どういうことなの、魔理沙
魔理沙「……」
マミゾウ「――弾薬や信管を保管していたのは、魔理沙だったのか?」
早苗「違います!」
てゐ「え? そしたら早苗が保管していたってことになっちゃうんだけど――」
早苗「それも違うんです……違うはずだったんですよ!!」
咲夜「早苗……?」
早苗「毒薬は、部屋の洗面台で簡単に中身を処分出来ました……。他の凶器も同じように無力化した、はずだったんです……
ルーミア「それって、つまり――」
早苗「そうですよ! 弾薬も! 信管も! トラッシュルームで魔理沙さんと一緒に処分したはずだったんです! 何度も言ったじゃないですか! 『他のプレイヤーが殺人に用いないようにする為に』凶器を回収したんですよ!? 当然私達だって使うつもりはありませんでした! だったら私達が『ガワ』の部分はともかく、起動の要になる部品まで保管する必要性が無いじゃないですか!
レミリア「本来、この会場で銃殺が起きることは有り得なかった――そういうことね」
てゐ「それでさ、なんで魔理沙は凶器を取得しなかったの? 早苗が〈奇跡〉を魔理沙か施設そのものを対象として使えば、残りの凶器を全て回収することだって可能だったんじゃないの?
早苗魔理沙さんはDAY02の計画が失敗した件で、本当に心を痛めていたんですよ……。だから私がたまたま知ったボーナスルール解禁のことを教えた後でも、頑なに凶器の回収を拒んだんです。魔理沙さんは――ゲームが始まってから、一度もDDSルームを使っていません。そんな魔理沙さんだから、信じていたのに……」
魔理沙「早苗……」
早苗「魔理沙さん! 貴方、一体どういうつもりだったんですか! 今すぐ全部白状してください! この凶器に手を付けた意味、わかってるんですか!? 私は殺人が起こらないようにする為に協力していたのに! ずっとそう願っていたのに! 私がどんな気持ちで貴方と一緒に――」
妹紅「――そうか。魔理沙は端末破壊事件で、そこまで心を痛めていたんだな。だからマミゾウに共犯による殺人を持ち掛けて拒まれてからも、チルノを殺害することを選んだわけだ。自分だけが手を汚していない罪悪感に苛まれた末にな
レミリア「――妹紅?」
 

20

妹紅「チルノの残したダイイングメッセージ。やっと意味が解ったよ。チルノを殺した真犯人は『超高校級の泥棒』。『霧雨魔理沙』――お前だな
 

21

魔理沙「…………」
てゐ「妹紅、今――あんた、なんて言ったの?」
咲夜「魔理沙が――真犯人?」
レミリア「……」
ナズーリン「い、いや。そんな馬鹿な。妹紅、そんなはずはない」
ナズーリン「だってそうだろう!? 彼女は博麗霊夢と同じ、『異変解決者』側の人間だ! 人妖が幻想郷を脅かす行動を起こした時、対処するのが彼女達の役割だ。スペルカードルール制定前は、命を賭して異変解決に取り組んでいた。そう聞いているぞ!?」
マミゾウ「……妹紅。お主はどうしてわしが魔理沙に共犯による殺人を持ち掛けられたと知っていた? 誰に聞いた?」
妹紅「ん? 私なりに推理ってやつをしただけだよ。まず、お前一人の結論では共犯という結論に辿り着くはずがないからな」
マミゾウ「……なぜそう思う?」
妹紅「一回目の事件の時、お前は一人で動いていただろ? その時お前は自分一人で証拠品を管理出来る範囲でしか行動を起こしていない。身も蓋もないことを言えばマミゾウは、私なんか居ないほうが人殺しだってスムーズに終えることが出来たんだよ
マミゾウ「そ、それは――」
妹紅「次に、DAY05の朝に謝罪したお前が夜には心変わりした理由。そんなの余程のことがないとおかしい。お前は『義理人情』というものを大切にしているからな。お前の気持ちを変える何かがあるとすれば――誰かからの共犯の誘いくらいだろうな
咲夜「マミゾウさん、とても優しい方ですもんね。私が自傷した後も、軟膏を渡してくれましたし……」
妹紅「お前に共犯を持ち掛ける可能性が高いとしたら――命蓮寺内で繋がりのあるナズーリン、あるいは神霊異変解決後に知り合いとなったこいし、その当たりだな。だがこいしとは連絡を取り合うこと自体至難の技だし、ナズーリンが関与していれば現場から出る証拠品は今と全く違ったはずだ。お前がこの会場で本当に心を許しているプレイヤーは、実はそう多くない。ゲーム外にまで心を許している人物の範囲を広げるなら、『聖白蓮』、『寅丸星』、『雲居一輪』、『雲山』、『村紗水蜜』、『封獣ぬえ』、『幽谷響子』、『多々良小傘』、『秦こころ』、『稗田阿求』、『本居小鈴』――こんな所か?」
ナズーリン「関係者にずいぶん詳しいが――どうしてだ?」
妹紅「以前慧音が色々と教えてくれたんだよ。『幻想郷に素敵な思想を持った寺が生まれた』ってな。それに永夜異変の後から、多少は里の人達とも関わりを持つようになったんだ。そういう話を訊くこともある」
ナズーリン「そうか。慧音がそんなことを……」
妹紅「だけどな――幻想郷の交友関係には『特別枠』とでも言うべき『広い交友関係を持ち、且つ知り合った人妖の大半から好かれている二人』というのが存在する。そんな二人のうち、片方から頼りにされれば、ここにいるみんな、断り辛いと思わないか?」
ルーミア「それって、つまり――」
さとり「霊夢さんと、魔理沙さんですね
妹紅「ああ。仮に私の方からマミゾウに共犯を持ち掛けても、恐らく門前払いされていただろうな」
マミゾウ「そ、そんなことはない! お主は安全なプレイヤーだから、話くらいは聞いた!」
レミリアつまりマミゾウが殺人に関する交渉に応じたとすれば、霊夢魔理沙の、どちらかだと?
妹紅「ああ。だが霊夢魔理沙は既に強固な信頼関係で結ばれている。だったらマミゾウより先に、霊夢魔理沙の片一方が、マミゾウより先にもう片方に交渉を持ち掛けていてもおかしくはない
レミリア霊夢。貴方はDAY05に魔理沙から共犯の誘いを受けていたのね

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霊夢「黙っていてごめん……。魔理沙にはDAY05の時に『〈青娥〉と〈妹紅〉を標的とした共犯による殺人』を持ち掛けられていたわ
青娥「あら? それでしたら、私を遠慮なく狙ってくださっても良かったのに」
ナズーリン「れ、霊夢がそんなことするはずないだろう!」
青娥「どうしてですか? 能力的に〈絶望〉かどうかを判断し辛いプレイヤーは、霊夢さん、魔理沙さん、妹紅さん、そして私だけでしょう?
こいし「え? 私って〈絶望〉かどうかを、どうやって自分で判断出来るの?」
さとり「貴方が〈絶望〉なら、〈無意識〉を簡単に解除出来るに決まっているでしょう……」
こいし「あ、じゃあ無理だね!」
ナズーリン「同じように、さとりが〈絶望〉だったら深層心理を読むことも出来るだろう。早苗は〈奇跡〉の解除が可能だろうし、てゐに至っては〈幸運〉の無制限貸し出しすら出来るかも知れない。咲夜、レミリア、マミゾウ、それに私の場合は、インターバルや回数、あるいは発動時間の制限が撤廃されるということになる」
てゐ「それで、霊夢に断られた魔理沙は、どうして代わりにマミゾウを選んだのさ? 他にもプレイヤーは沢山いるじゃん」
妹紅「どうしてだろうな。マミゾウの腕を買っていたから、あるいは〈幻惑〉能力が犯人側の能力として有用だから、か?」
青娥「ふふ。あるいはこう考えられませんか? 『マミゾウさんは魔理沙さんに無い物を持っていたから』
妹紅「それって一体、なんだ?」
青娥「さあ、なーんでしょうねえ。大人の色気かしら?」
ナズーリン「そんな煙に巻くようなことを言うな。もっと現実的な理由でだろう? 『文の事件の時に、殺人の為に動ける人物だと明確になったから』だな?」
ルーミア「私もその時に動いたけど、マミゾウは私みたいに頭が悪くもないもんね」
レミリア「――それで、妹紅。ダイイングメッセージの意味については、いつ話してくれるの?」
妹紅「ああ。今教える。まずはこれをもう一度見てくれ」

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咲夜「黒い造花は、本来青い造花だったんですよね」
妹紅「その通りだ。『青』から、『黒』だ。だけど花の色には、その間にもう一段階別の色が存在する。何かわかるか?
ナズーリン「ん? 血が付いたから変色したわけだろう? それ以前になんらかの薬品に浸されていた、ということか?」
ルーミア「もしかして――血、そのものの色?
妹紅「正解だ。チルノが抱いていたドライフラワーは最初『青』色だった。そこに『赤』い血の色が加わり、『黒』に変色したわけだ
早苗「確かに、青い花をダイイングメッセージとしたかったら、指を差すなりすればいい話ですもんね? 逆にしっかり抱きかかえてしまえば、今回のように血で色が変わってしまいますし
咲夜「それとは逆に、抱きしめることで血液を花に浸透させることが目的だったんですね
てゐ「血液ってさ、みんなが思うよりもずっと速く凝固するんだよね。チルノは自分の死体が15分以内には発見されると踏んでいたのかもね。時間的にレミリアがトラッシュルームを使う前だったし。だけどそれじゃ他のプレイヤーに『血で赤く染まった花』を見せる為には全然間に合わない。鼻血でも出した時、ティッシュが黒ずむまでの時間、今度測ってみな?」
妹紅「花の色については納得してくれたか? 次はこれを見てくれ。さっき霊夢から貸して貰った美術図鑑の本体だ」

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ルーミア「これ、私がチルノちゃんに渡したやつ? 持ってきてたんだ」
妹紅「ああ。ルーミアとチルノって確か、慧音の寺子屋に通ってたよな?」
ルーミア「え? うん。どちらかと言うと休み時間にみんなと遊びたくて通ってるけど」
妹紅「そうか。だったらこの記述――『龍の花生け』について書かれた部分は読めるか?
ルーミア「ん? ええと、『ちょう……しょうがくせいきゅうの、ずこうのじかん…………なんとかせいの、はないけで』、? えーと――」
てゐ「本当に寺子屋で勉強してるのー?」
ルーミア「や、やってるって! 大ちゃんみたいに真面目にはやってないけど!」
妹紅「よし、だったら、これが作られた経緯や、芸術の趣旨についての部分はわかるか?」
ルーミア「え、そんなの無理だよ! 『花は龍の口に生ける』ってところは一応読めたけど。『龍』って漢字が彫像のことを指しているのはなんとなくわかったけど、習ってない漢字だって沢山あるし。だって、図鑑をパラパラってめくってから、水晶玉を嵌められそうな見た目でそれを選んだんだよ? 文章なんてあんまり読んでないし、深夜のうちにパッと持ち出したんだから、書かれていることを気にしている余裕なんてなかったもん」
妹紅「――なあ、ルーミアこの龍は、何をしている所だと思う?
ルーミアえ? この持っている物を食べようとしているんじゃないの?
早苗「え!?」
咲夜「はい?」
てゐ「おいおい……」
妹紅「ルーミア、多分違うと思うぞ? 私も厳密には何をしようとしているところなのかはよくわからないけど。チルノも同じ認識だったのか?」
チルノ「うん。チルノちゃんに『これって何なの?』って聞かれたから、『口の所に花を生けられるらしいよ』ってことは話しておいたけど
ナズーリン「――龍は『昇龍』と『降龍』の二種類に分けることが出来る。一般的に昇龍をモチーフにした作品の龍は、龍玉を持っていないんだ。龍は天に昇ってから、龍玉を取って降りてくると考えられているからな。この龍が何をしているところなのか、ということをあえて定義するならば『龍が宝玉を手に入れて地上に降りてくる所』だろうな。龍をモチーフにした作品の作り手全員がそれを理解しているとは全く思わないし、その必要性もないと思うが」
ルーミア「そ、そんなことまで考えてこれを選ぶわけないじゃん!」
てゐ「だろうねえ」
レミリア――チルノもルーミア同様、龍の像の、作品としての趣旨を大きく勘違いしていた?
妹紅「ああ。私もそう考えている」
青娥「妹紅さんは、そこからどうダイイングメッセージに繋げたのですか?」
妹紅「最も重要な部分は当然ここだ。『花は龍の口に生ける』。つまりここから花の色を踏まえて連想していけばいい
こいし「口に、って――あ!」
妹紅「お前も気付いたか? 多分そういうことだよな? 『花は龍の口に生ける』ってことは、チルノが抱えていたあの花は、口に咥えさせればいい、ってことだ」
早苗「そういう意味だったんすか。チルノさんは、プレイヤーの誰かが『赤い花』を咥えていたのを目撃していたってことすか?」
てゐ「……何さその奇妙な状況。意味がわかんないし」
妹紅「私もそこで推理が詰まった。だからもう少し踏み込んで解釈することにしたんだ。そもそもダイイングメッセージに〈水晶玉〉の中のドライフラワーを選んだ理由はどうしてか?
てゐ「いや、そこにそれしかなかったからじゃないの?」
ナズーリンだったら花の絵を血で床や壁に描けばいい話だ血文字で出来た、赤い花の絵をな。五分近く生きていて、花を懐に抱える力が残っていれば出来る
妹紅「その通りだ。つまり私は――こう考えた。床に落ちていた割れた〈水晶玉〉も含めて、一つのメッセージなんだとな
早苗「凶器が、ですか?」
妹紅「そうだ。〈水晶玉〉は『花』の部分と、凶器である『水晶』の部分に分けられる。そしてチルノは、ドライフラワーは抱えていたのに、水晶部分のほうは一切抱えていなかった
レミリア「ええ。確かにそうね」
妹紅「だったら、こうは考えられないか? チルノが創造し、想像した龍は、『花と水晶部分を分けることが出来た存在』だと
ルーミア真犯人も――同じことが出来た?
妹紅「ああ。真犯人も凶器と無害な部分を分けることが出来たんだ
ナズーリン「待ってくれ。その凶器とはなんだ?」
妹紅「――『毒』だよ
てゐ「毒? それってもしかして――〈香水〉のこと?
早苗「でしたら、〈花〉を意味するのは、お茶のことですか?
こいし「でもさ、お茶ってどちらかと言えば花じゃなくて葉っぱのほうじゃない? それだと意味がちょっと――」
咲夜「――いいえ、合ってますよ。あの紅茶は、『花』でもあるんです
こいし「え?」
咲夜「お嬢様、DAY05に淹れたお茶が何か覚えてますよね?
レミリア「あの〈香水〉が混じってたやつ? 後から咲夜に厨房で訊いたから知ってるわよ。『ローズヒップティー』だったんでしょ?
魔理沙「……あ!」
妹紅「そうだ。魔理沙お前はDAY05には紅茶に違和感を覚え、DAY06の朝食の際にもそれを指摘していたな。赤いローズヒップティーと、チルノが抱えていた『赤い花』。この奇妙な符合はなんだろうな?

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魔理沙「……」
ナズーリン「――待ってくれ。紅茶自体はほぼ全員が飲んでいるんだぞ。いくら二回とも魔理沙がそれを指摘していたと言われてもなあ
ルーミアそれに咲夜だって〈香水〉を飲む前に気付いてたよね? レミリアが味についての指摘をした時に
妹紅「そうだな。だけど私達が毒を飲まされそうになったタイミングは――その二回だけじゃないんだよ
てゐ「他に〈香水〉が仕組まれたタイミングなんてあったっけ?
妹紅「ああ。その時は私だって飲んでないし、誰も飲んでいない。そんなもん一口でも飲んでいたら、ここにいる誰も助からなかっただろうな」
早苗「あ、あの、まさか……」
てゐ「え?」
早苗「私が〈奇跡〉を使って〈絶望〉に飲ませようとした、〈無味無臭の毒薬〉のことですか!?
レミリア――咲夜、一応確認するけど、その時淹れたお茶は?
咲夜「――ローズヒップティーです! DAY05に、皆さんにお出しした紅茶と、全く同じ物です! 赤い薔薇の花の、赤い実から作られた、紅茶です……

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妹紅「ああ。その時も毒殺を回避出来たのは――魔理沙の手柄だったな

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ナズーリン魔理沙は、三度も毒を指摘していたのか……」
妹紅「チルノのメッセージの意味、納得して貰えたか?」
咲夜「妹紅さん。聞かせてください。チルノさんはなぜ、紅茶や毒の件をダイイングメッセージに用いたのでしょう?
ルーミア多分、チルノちゃんが、妖精だからだよ
レミリア「妖精?」
ルーミア私が『血』に対する嗅覚が強いように、チルノちゃんや大ちゃんのような妖精は『植物』に関する嗅覚が敏感なんだ。だからチルノちゃんには、異物が混入したローズヒップティーの印象が強く残ったんだと思う
妹紅「魔理沙、何か言いたいことはあるか?」
魔理沙「……知らない」
妹紅「知らない、ってどういうことだ? じゃあ、トラッシュルームにあった花はなんだ!? どうしてチルノは懐でしっかりと抱えていた!?」
マミゾウ「――いい加減にしろ! 小童が!」
 

22

魔理沙「!」
紫「……」
妹紅「……マミゾウ」
マミゾウ「魔理沙が人殺し? ふざけるのも大概にせい! 此奴のような臆病者に殺人者が務まるわけがない! 断じて、有り得ん!
咲夜「……『臆病者』?
てゐ「どういうこと?」
マミゾウ「こいし! 早苗!」
こいし「は、はい!」
早苗「な、なんですか?」
マミゾウ「ゲームは明日以降も続くんじゃ! それなのに〈リボルバー〉の件をバラしてしもうて――次に魔理沙の命が狙われることも有り得るのじゃぞ!? なんでもかんでも推理で暴けばいいわけではない!」
こいし「で、でもダイイングメッセージは?」
マミゾウ「――妹紅には申しわけないが、魔理沙のことを指しているとは到底思えん。事実、この中で魔理沙がチルノを殺したという考えを受け止めることが出来た奴はおるのか?」
ルーミア「出来るわけ、ないじゃん。魔理沙が人殺しだなんて、考えられないよ……」
こいし「私だって、そうだし……」
マミゾウ「そうじゃろう。だったら訊かせてやるわい。DAY05の夜にあった出来事をな
妹紅「――魔理沙が共犯の交渉に訪ねてきた時の話か?
マミゾウ「そうじゃ! わしは魔理沙の話を一通り訊いた後に、交渉を一度突っぱねてやったのじゃ! わしに言わせれば、挨拶代わりの軽い挑発のつもりじゃった。『お主は霊夢に比べて心が圧倒的に弱い』、『そんな杜撰な犯行計画では話にならない』、『どうせ霊夢に断られたからここに来たんじゃろ』、とな」
霊夢「……」
マミゾウ「一度魔理沙を突き放してから、その後にきちんと交渉に応じるつもりじゃった。だからわしは一先ず一服する為に、部屋にあった灰皿を空にした。その後――何が起きたと思う?」
レミリア「……」
マミゾウ「空になった灰皿の前で火を付ける前に何気なく魔理沙の方を振り向いたら――此奴は泣きながら〈リボルバー〉の銃口をこちらに向けておったのじゃ
ナズーリン銃口を――マミゾウに向けただと?」
咲夜「そんなことが!?」
早苗「魔理沙さん……」
マミゾウ「『私は強いんだ』、『一人でも出来るんだ』、『仲間だって沢山いる』、『霊夢にだって負けないんだ』と呟きながらな。そうやって――照準が全く合わない銃を構えていた」
てゐ「なんだよ、それ……」
ナズーリン魔理沙、君は――」
魔理沙「――おい! ふざけるな! 出鱈目を言うな!」
霊夢魔理沙……」
マミゾウ「だからわしは瞬時に距離を詰めて、魔理沙を叩き伏せ、〈リボルバー〉を奪った。〈幻惑〉を使う必要すらなかったわ。更に数回打ち据えてから、こう言い放ってやった。『凶器だけ渡せ。こっちで勝手にやるから、一切手出しをするな』と。『DAY06の夜は誰かと一緒に居るか、部屋で待機していろ』とも、魔理沙には厳命しておいた」
咲夜「では、魔理沙が犯人ではないと考える理由というのは――」
マミゾウ「ああ。あの時の姿を見れば、魔理沙がまともに殺しが出来る人間だとは誰も思わんはずじゃ」
青娥「マミゾウさん」
マミゾウ「なんじゃ?」
青娥「魔理沙さんは一体どのような計画を携えて、交渉に訪れたのでしょうか?
マミゾウ「――わしが〈リボルバー〉と〈幻惑〉で妹紅を殺し、魔理沙が〈セミオート〉で青娥を殺す。そして〈リボルバー〉と〈セミオート〉をトラッシュルームで処分し、ボーナスルール未使用の魔理沙がDDSルームで二つの銃を再取得。もう一度トラッシュルームに行き、二人で弾薬を処分した後で、そのまま凶器を元あった所に戻す。捜査が開始されたら、わしと魔理沙はお互いのアリバイを証言する。こんな所じゃな。今にして思えば、弾薬を処分する理由についても一旦魔理沙に訊いておくべきじゃったが」
てゐ「ああ。だからさっき魔理沙が凶器を取得していないことも知ってたんだね
こいし「なんか、普通によく出来た計画だと思うけどなあ」
ナズーリントラッシュルームを経由することで〈リボルバー〉と〈セミオート〉の証拠品判定を消すのか。悪くない」
レミリア「完全犯罪が成立するように思えるわね――魔理沙に人を殺せる度胸があるのなら
マミゾウ「そうじゃ。いくら綿密に計画が練られていたとしても、肝心要の殺人で躓いたら話にならん」
ルーミア「でも、それならマミゾウが二人とも殺して、魔理沙がDDSルームを使えば――」
マミゾウ「なんじゃと? なんで向こうさんが手を汚さず、わしだけ二人も殺さんといけないのじゃ? そんなもん、筋が通らん。それにな、そういう卑怯な人間は大抵自分から人を誰も殺しておらずとも、裁判で良心の呵責に耐え切れず、自白してしまうのが関の山じゃ」
妹紅「だけど、私は自白したぞ?」
マミゾウ「お前さんはいいんじゃよ。まず、二回も命を投げ出したのじゃからな。それにギリギリまでわしを守る為に口を閉ざしてもくれたし、裁判の勝利よりもチルノへの友情を優先した。お主は間違いなく共犯者として、わしの期待に答えてくれた」
妹紅「――私はそんな大層な人間じゃない。竹林に隠れ棲む、一体の化物だよ」
早苗「化物だなんて、そんな……」
ルーミア「チルノちゃん、妹紅といる時、すっごくリラックスしてるように見えたよ。だから一週間も経たないうちに、殺人ゲームに対するモチベーションが下がっちゃったんだと思うな……」
妹紅「……」
霊夢ごめん、それでも私も――魔理沙が犯人だと考えている。妹紅とは別の理由でね
 

23

魔理沙「……」
咲夜「霊夢、貴方も?」
マミゾウ「――なぜそう思う?」
霊夢捜査時間中に私は、さとりの提案で青娥を解放しに行ったのよ

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さとり「ええ。そうでしたね」
霊夢私は九割ぐらいの気持ちで青娥を解放することには反対だった。だけど一割くらいは、『そうするしかない』という気持ちもあった
青娥「あら? どうしてでしょう?」
ルーミア「青娥が〈絶望〉についての鍵を握っていたから?」
霊夢「『鍵』か、ちょっと近いわね。このままでは青娥の部屋の鍵が開けられないと考えたからよ
早苗「部屋の鍵、ですか?」
霊夢「ええ。捜査時間中に必ず調べなければならなかった部屋は二つ。チルノの部屋と――青娥の部屋。チルノの部屋も鍵が手に入るか怪しかったけど、青娥の部屋の鍵は魔理沙と私で処分したことが確定していたのよ? だったら青娥の力を借りなければ、部屋が調べられないじゃない
レミリア「それはそうよね。ジュラルミンケースに鍵をして〈香水〉と〈消臭剤〉を処分したのなら、青娥の部屋の扉だって施錠するに決まってるものね。私だったらそうするわ」
ナズーリンああ。一回目の殺人事件が起きた時に、橙は青娥の部屋を訪ねてきた。橙は既にシリンダーが抜き取られたドアを交換済みのはずだ

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咲夜「あれ? でも私達が部屋を訪ねた時、青娥が鍵を再発行したり、〈壁抜け〉で錠を外したりしていましたっけ?
青娥「いいえ。〈壁抜け〉で扉の鍵なんて開けていません」
ナズーリン霊夢、そこから導かれる結論を訊かせてくれ。もう大体読めているが」
霊夢部屋の鍵は、私と魔理沙ジュラルミンケースに凶器を保管した時点では掛かっていた。だけど事件発生後は鍵が外されていた。理由は――鍵を掛け直したくても出来なかったから。鍵を処分した後ではね
こいし「出来なかった? なんで? どこに処分しちゃったの?」
霊夢青娥の部屋の中よ
ナズーリンそれは――マミゾウ達と同じ手口か!?
霊夢〈香水〉と〈消臭剤〉は今回の事件で一切使われていないわ。つまりジュラルミンケースの近くに保管しておけば、証拠品を二つまで隠すことが出来る。逆に言えば、証拠品を丁度二つ用意しておかないと〈ダウジング〉で矛盾が出てくるってことだけど」
こいし「はいはーい! 異議ありー! ジュラルミンケースをそういう使い方するのって無理でーす!」
霊夢「どうして?」
こいし「わたしも早苗達がジュラルミンケースを使うの見たことあるけどさ、ジュラルミンケースは自動でロックが掛かるタイプの錠前じゃないでしょ? だったら鍵を入れちゃったら、閉めることなんて無理だよ?

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霊夢「そうね。私もそれは確認してる。――だけど、鍵をケースに入れる必要なんてないのよ
こいし「え?」
霊夢「確かにケースに鍵を入れることが出来れば万全だけど――要はナズーリンの〈ダウジング〉さえ掻い潜ればいいの。引き出しの裏に鍵を貼り付けようが、机の下に置こうが、どこでも構わないわけよ。納得出来た?」
こいし「うん、納得した!」
咲夜「つまり、お嬢様。魔理沙霊夢に処分を託した鍵というのは――」
レミリア魔理沙の部屋の鍵だったんじゃないの? だから事件発生時、トラッシュルームを使わずに証拠品を処分することが出来た
早苗「あの、それってつまり――魔理沙さんが霊夢さんを騙した、ってことになりません? 殺人に使う道具を手に入れる為に?
ルーミア「……」
ナズーリン「……」
咲夜「……」
てゐ「……あのさ。そんな幻想郷の終わりみたいな結論、急ぐの止めとこうよ。――それに〈マスターキー〉さえあれば、部屋だろうがジュラルミンケースだろうが、鍵なんて簡単に開けられるじゃん
マミゾウ「――いや、確かに可能じゃが、その場合は余計に鍵が掛かっていないとおかしい
てゐ「マミゾウ?」
マミゾウ「ジュラルミンケースの鍵を掛けてからトラッシュルームに捨てに行くまでには、当然部屋の扉も通過する。鍵を処分するついでに部屋を施錠しないのは、可能性が無いとは言わんが、行動心理としておかしい
てゐ「いや、そもそもさ。部屋に施錠されていることって、そんなに重要? 捜査する側になって考えてみなよ? 私や早苗もいるんだよ? その気になれば青娥に頼らなくても鍵を開けることなんて――
マミゾウ「捜査時間中にDDSルームを使う? そんなこと、大半のプレイヤーが許すと思うか? 〈マスターキー〉は証拠隠滅にも使えるし、咲夜やわしの能力なら捜査時間中にも〈マスターキー〉は簡単に盗めてしまうぞ? そのような提案、真犯人ならまず拒否するじゃろうな。それにDDSルームは基本的に、『凶器を自分一人で密かに保管する』ことを前提として回収する為の場所じゃ。護身にしろ、殺人にしろな。裁判後は回収した〈マスターキー〉を処分することを皆に要求されるじゃろうし、『余程の奉仕精神を持ったプレイヤー』と『他プレイヤーからの同意を得られる状況』が同時に存在しなければ、〈マスターキー〉を手に入れることは出来んよ」
ナズーリン魔理沙自身が部屋の鍵ではなく〈マスターキー〉を入手して使った場合でも、同じことが言えるな。その場合部屋に保管された物も多少変わってくると思うが」
てゐ「――わかった。そこまで言うならもう少し反論させてね? 確か宿舎エリアにある部屋のドアってそこまで頑丈な作りじゃなかったよね? 流石に勇儀みたいに蹴破ることが出来るやつなんて他にはいないと思うけど、力を合わせれば捜査時間中にドアをこじ開けることだって出来るんじゃないの? それならドアにはジュラルミンケースと違って、犯行のための道具としてそこまでの信頼性はないんじゃないの?」

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ナズーリン「てゐ。勇儀が霊夢の部屋のドアを蹴破った時、どうしてそれを直すことが出来たと思う?
てゐ「は? 馬鹿にしてんの? 霊夢が紫に申請したからでしょ?」
マミゾウ「では青娥が自らの部屋を犯行現場に仕立て上げるためにドアのシリンダーを抜き取った後は、ドアの修理は誰が申請したと思う?
てゐ「……青娥自身じゃないの?」
青娥「はい。その通りですよ」
てゐ「ほら、やっぱりそうでしょ? だったら捜査時間中にドアをこじ開けたとしても後から青娥が――」
ルーミア――多分青娥は自分の部屋のドアなんて直さないと思うよ? だって裁判が終わったら青娥をまた拘束するつもりなんでしょ?
てゐ「え?」
青娥「……ふふ」
こいし「えー、なんで? 〈香水〉と〈消臭剤〉は明日からも青娥の部屋で管理しなくちゃいけないんでしょ? 私はもういらないけど」
てゐ「! そ、そうだった……。こいしの言う通り、DAY08以降も凶器は青娥の部屋で管理しないといけないんだっけ……。処刑されたプレイヤーの部屋の鍵やジュラルミンケースは運営に返却する決まりだったから、〈香水〉と〈消臭剤〉を勇儀や文の部屋で管理することは出来なかったんだ。だったら犯人がドアの鍵を掛けることにも、ちゃんと意味があるってことなんだ……
ナズーリン「裁判終了後に調べたところ、文と勇儀の部屋はドアの施錠が開いたままだった。てゐの言う通り、鍵とケースを運営に返却した状態でな。だからこそ我々は『文か勇儀の部屋のケースに〈香水〉と〈消臭剤〉を保管する』という選択肢はなかったわけだ。つまり――我々が捜査時間中に青娥の部屋のドアをこじ開けてしまえば、非常にまずい状況になっていたんだ」
早苗「……あのー、青娥さん。つかぬことをお聞きしますが、青娥さんって私達がドアをこじ開けた場合って、直す気はあるんすか? そもそも霊夢さんに解放されて自分の部屋の前に戻ってきた時に、施錠を外す気ってあったんすか?」
青娥「――私は確かに言いましたよね? 『皆さまの味方です』と。『貴方達を皆殺しにする』とも。つまり私の役割って探偵助手と殺人幇助犯をダブルでやっているようなものなんですよね。勝手に私の懐から盗み出した鍵で、勝手に私の部屋に凶器を持ち込んで、勝手に私の部屋のケースに入れて、勝手に私の部屋に鍵を掛けて、勝手に鍵を焼却処分した気になっていたのは他でもない貴方達ですよね? それを『部屋でもう一度凶器を管理したいから鍵とドアについて運営に申請してくれ』なんて頼まれて、私が素直に従うと思いますか? もしそう思うのでしたら、ちょっと私を買い被り過ぎかもしれませんねえ」
さとり「それだけではありません。裁判が終わった後に保管することになる凶器は〈香水〉と〈消臭剤〉だけではないんです。犯行に使われた〈ナイフ〉と〈暗視ゴーグル〉も保管場所を決めなくてはなりません。チルノさんの足元に砕け散っていた〈水晶玉〉や、地下に隠されているはずの〈リボルバー〉についても同様です。破片の処理さえしなければDDSルームに送られることはないわけですから」
咲夜「お待ち下さい。それなら結局はドアが壊れてても壊れてなくても同じような気もするんですが……。まず捜査時間中には手段を問わなければドアをこじ開けることも出来ます。ですが明日以降に青娥の部屋にある凶器を狙う何者かがいた場合、その人物だってドアをこじ開けることが出来てしまいます。無論、〈マスターキー〉がなければドアを突破出来てもケースの中の凶器を盗むことは出来ませんが」
レミリア「そうね。一見すると確かにそう思えるわね。ところで咲夜。宿舎エリアには誰にも使われていない『〈17人目〉の部屋』があるわよね? 紫に『あの場所は好きに使って貰っても構わない』と言われたら、貴方だったらどんな風に利用する? ただし『部屋の鍵は渡されず、鍵は開け放しのまま』だとしたら?」
咲夜「はい? それでしたら私なら生活全般で使用するものを部屋や倉庫からいくつか移動しておくと思います。鍵を掛けられないのでしたら、私個人として使うよりも休憩室として皆さんと共用で使うかもしれません。あるいは――」
レミリア「あるいは?」
咲夜「――深夜に誰も使うこともない、しかも他のプレイヤーの部屋にも非常に近い場所なら、犯行中誰かに見つかりそうになった時に身を隠す避難場所としても活用出来ますね。殺害対象のプレイヤーを一時的に監禁しておくことも可能です。バスタブ、あるいはベッドの下などに」
レミリア「あら、物騒なことを考えるわね。一体誰に似たのかしら?」
咲夜「お嬢様がおっしゃりたいことはわかりました。ジュラルミンケースの鍵が開けられないとはいえ、青娥の部屋に自由に出入りできる状態は非常に危険』ということですよね? ジュラルミンケースそのものは〈マスターキー〉を使うか、青娥の力を借りなければ開けることは出来ません。逆に言えばドアが開放された状態でしたら、『中身は取り出せないけどジュラルミンケース自体は持ち去ることは可能』ということですよね? 自らの所有しているケースとのすり替え、発見や回収が困難な場所へのケースの移動、あるいはプレイヤーの進入禁止エリアにケースだけを放り込んでしまう……。今私が思いついたプレイヤーへの妨害行為って全部、〈17人目〉だったら本当にやりかねないことですよね?
早苗「――あれ? そういえば青娥さんは最初の事件の後にドアの鍵を直すように申請していたみたいですけど、そもそも橙さんは『命令を受けた』って言ってたんすよね? 直したのって他でもない紫さんの命令なのでは? ゲームの運営だったら誰も何も言わなくてもドアを直してくれそうじゃないすか?」
紫「ええ。仮に捜査時間中になんらかの要因でドアが破壊されたら、私達が自発的に直すと思うわ。貴方達がゲームの外で寛いでいる間にでもね」
早苗「そうなんすか!? それでしたらあまり考えたくありませんが、今後事件が起きた際も捜査時間中に『ドアを破壊して』捜査することになっても問題ない、ってことになりません? つまり今回の事件に関して言えば、鍵を掛けておく意味ってないんじゃないですか?」
さとり「――確かに『ジュラルミンケースが保管されていない部屋』に対してはそう言えるかも知れません。しかし、先ほども話しましたが、私達が管理場所を選択しなければならない凶器は、これから四つ追加されるのですよ? その場合に凶器の再保管や鍵の回収前に青娥さんの部屋のドアを直して貰ったとしましょう。裁判終了後、ジュラルミンケースの『外側に』鍵が設置されている状態で部屋の鍵が締められることになりますが――それでも構いませんか? DAY08の朝に『一番最初に覚醒するプレイヤー』が、必ずしも私達にとって有益な選択をするとは限りません」
早苗「ゆ、紫さん。ドアは直しても、鍵は掛けないでおくってのは駄目ですか?」
紫「うふふ。どうしようかしら?」
青娥「早苗さん。端末破壊の件は忘れていませんよね? 紫さんに対してその手の交渉を持ちかけることって、私に同じような交渉を持ちかけてることと大して変わらない気がするのですが――そこはどう思います?」
早苗「で、ですよねー……」
青娥「うふふ。それともう一つ。『運営なら何も言わなくても備品を直してくれるはず』という考えからは、一つ重要な視点が抜け落ちています。それが何かわかりますか?」
早苗「へ? 自分が与えられた部屋なんですよね? 壊れた物とか失くした物は、プレイヤーに権利が残っている間なら運営に融通して貰えるんじゃないですか?」
青娥「はい。そのとおりですね。大抵の要求は通ると思います。例えば、そうですね。妹紅さんに聞いてみましょうか」
妹紅「なんだ?」
青娥「貴方は『自分から』ほぼ全ての部屋にあった備品を運営に返却していましたが――。仮にゲーム初日、手違いから備品がほぼなかった状態だったとします。その場合貴方はどうしましたか?」
妹紅「ん? まあ、別に必要ないから、家具を運んで貰ったりはしなかったと思う」
青娥「では、もう一つお尋ねしましょうか。備品が無いことに加えて『部屋の施錠が掛けられない』状態だったとしましょう。その時貴方なら運営に何かを要求しますか?
早苗「いや、流石にそれなら――」
妹紅「いいや? それだって運営には特に何も言わないと思うぞ? ドアのことを謝られたら――そうだな。うん、『別にそのままでいいや』って返すと思うな」
早苗「そ、そこは素直に交換して貰いましょうよ!? そんなの私が紫さんに言って無理にでも鍵を直して貰いますよ!?」
紫「ごめんね、早苗。ゲームの運営上、そういうことってちょっと出来ないのよねえ……」
早苗「『運営上』、ですか? なにかルールに引っかかりましたっけ?」
紫「『居住権』を持っている妹紅さん自身に『ドアを直さないでくれ』って頼まれたら、運営としてはそれに従うしかないのよ。本人以外のプレイヤーに頼まれてもドアは直せないのよねえ
早苗「まあ、それは確かにわかる理屈っすけど……」
青娥「如何でしょう? その理屈でいきますと、私の部屋のドアが何者かに壊された場合でも、私自身が運営に対してたった一言だけ、『ドアは絶対に直さないでください』とお願いすれば、裁判後も直すことは出来ないわけです。それどころか――〈香水〉と〈消臭剤〉が部屋で管理出来たことは、私自身のおかげだったということ、今ならわかって貰えません?」
早苗「え、ええ?」
青娥「もし私が拘束初日に『部屋のドアを取り外してください』と運営に申請したとしましょう。なんなら妹紅さんの部屋と同じ様に、私物も家具も処分していただくのもいいですね。そんなまっさらな部屋を目の当たりにして、それでも皆さんは『私の部屋で凶器を保管する』という手段を取りますか?」
ナズーリン「……取るわけないだろう」
こいし「ねえねえ。紫」
紫「あら、何かしら?」
こいし「文と勇儀の部屋って、今は誰も住んでないよね? 私が言えば部屋の鍵とかって貸して貰えたりする?」
紫「いいえ。住んでいるプレイヤーがいない状態の部屋の鍵は運営が保管しているけど、鍵は貸せないわね。その二つの部屋は今現在所有しているプレイヤーがいない状態になってるわね。部屋は開けてあるから、好きに寝泊まりして貰っても構わないけど」
こいし「なるほどなー。それじゃさ、もう一つ質問があるんだけどいいかな?」
紫「どうぞ?」
こいし「『〈17人目〉の部屋』の居住権って、誰が持ってるの? 運営が管理しているだけの状態?
紫「いいえ、居住権を持ってるのは〈17人目〉よ?
こいし「……へー」
ルーミア「えーと、〈マスターキー〉を使った場合と、こじ開けた場合の違いは……なんだかややこしいなあ」
霊夢「――はい、ルーミア。良かったらどうぞ」

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ルーミア「あ、ありがと……」

マミゾウ「なあ、てゐよ。仮にドアをこじ開けるしかなかった場合、今度は凶器をどの部屋に保管すればよいと思う?」
てゐ「どこ、って……」
マミゾウ「ふむ。お前さんからその答えがすぐには出てこないというだけで、犯人にとって部屋を施錠する意味は十分にあったと言える。わしだって彼女が真犯人とは考えたくないところじゃが……」
ナズーリン「そうなると最悪DDSルームで全プレイヤー交代で凶器を見張ることになるわけだが――ちょっと現実的ではない気がするな。仮に明日以降もゲームが続いたとして、会場からは更に人数が減るし、〈無意識〉を任意で解除できないこいしも見張りに参加することは難しい。多忙な咲夜に見張りを頼むのも酷だと思う。すると残りは何人になる? そもそも〈17人目〉が既に紛れ込んでいる状況で、交代制での見張りは危険だ。……てゐ、大丈夫か?」
てゐ「……」
咲夜「……あの、お嬢様。今現在青娥の部屋のジュラルミンケースの中には、何が入っているのでしょう?
レミリア「恐らくチルノを刺殺した時に返り血を浴びた服でしょうね」
咲夜「そんな決定的な証拠品が、あのケースの中に?」
青娥「もう取りにいけませんけどね」
レミリア「あの時あんたがチャチャッと回収してくれれば良かったんだけどねえ」
青娥「頼まれてもいないことは無理ですわ」
魔理沙「――あはははは! そうだ。確かに無理だ!!」
ルーミア「ま、魔理沙。どうしたの?」
マミゾウ「……」
ナズーリン「お、おい。大丈夫か?」
レミリア魔理沙。貴方、自分の部屋の鍵をここで出せる?
魔理沙「……鍵?」
 

24

魔理沙「……」
レミリア「どうなの?」
魔理沙鍵なら――ほら、ちゃんとあるぜ

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咲夜「そ、そんな!?」
てゐ「なんでさ! 霊夢の推理は間違ってたの!?」
レミリア「……」
ナズーリン「なんてことだ……。ここまで進んだ議論を根本から覆すなんて、とても……」
早苗「鍵、持ってたんですか。それなら魔理沙さんが犯人ではなかったんですね。良かった……」
魔理沙「いっやあ、なるべく黙って訊いてたが、本当に面白い推理だったなあ。マミゾウに私の失態をバラされた時は、ちょっとムカついたけど」
マミゾウ「……済まなかった」
魔理沙「別にいいさ。余計な疑いが晴れたんだし。私がチルノを殺しただって? で、霊夢はそれでも私を疑ってるのか」
霊夢「……もう、終わりにしましょうよ。魔理沙
魔理沙「あ? 何をだよ」
霊夢「――貴方が肩肘を張るのをよ。貴方は十分に頑張ったわよ」
魔理沙「はは。やっぱりお前も私がチルノを殺したと思ってるわけだ。それだったら、お前とはもう絶交だな」
早苗「え、え? ……そんな、冗談ですよね?」
魔理沙「こんな時に冗談を言うと思うか?」
ルーミア「だ、駄目だよそんなこと! そんなの、嫌だよ……」
てゐ「はいはい。絶交ね。子供みたいなことを言うねえ。魔理沙。そんなこと言ってもさあ。絶交なんてしたら、次の異変はどうするつもりなのさ」
魔理沙「は? 二度と行かねえよ、そんなもん」
てゐ「……え?」
魔理沙「先に言っておく。ここにいる連中、もう二度と異変を起こそうとしたり、あるいは異変に加担しようとは考えないほうがいいぜ? スペルカードルールがあろうがなかろうが、霊夢が――博麗の巫女が本気を出せば、ここにいる奴ら全員を無傷であっさり殺せるぐらいには強い。紫が直々に面倒を見ているからな」
紫「……」
魔理沙「――というわけでだ。私なんかいなくても、霊夢が幻想郷の秩序を守ることなんて簡単なんだよ。圧倒的な暴力でな。まあ、別にお前らと縁を切ろうとは思っていない。用があったら気軽に魔法の森を訪ねて来いよな!」
ルーミア「い、嫌だよ。二人が友達じゃなくなるなんて。う、ひっぐ、うぇえええええ……」
さとり「ルーミアさん……」
早苗「わ、私だって御免ですよ!? 絶交なんて言わないでくださいよ! これ、単なるゲームですからね!? それがこんなことになるなんて――」
魔理沙「そうかそうか。お前はこれが単なるゲームに思えるのか。紫みたいなこと言ってんなあ。さてはお前が〈17人目〉だな? だから私が盗んだ機密ファイルのことが心配になって、私と霊夢を尾行してたんだな
早苗「――え!?」
魔理沙「あっはっは! 冗談だよ! 適当に言ってみただけだ」
こいし「ね、ねえ。私って、魔理沙と友達だと思ってたけど、違うの?」
魔理沙「ん? 私はそう思ってるよ。でも、お前だって結局は霊夢に味方するんだろ?  私と霊夢のどちらかが死ぬとしたら、ここにいる全員が霊夢を生かすことを選ぶよな。ほら、どうなんだ? ここで今、私のほうにつく奴なんているのか?」
こいし「え、そんなこと言わないでよ。私、霊夢も、魔理沙も、大切な友達だって思ってるし、その――」
魔理沙「おいおい、無理すんなって。お前が考えていることなんてわかってんだから。ほら、さっさと処刑でもなんでも――」
 
バンッ!!
 
魔理沙「ん? なんだ?」
青娥「魔理沙さん――いい加減にしてください」
ルーミア「――青娥?」
青娥「貴方は私のような『悪党』とは違う。それなのに神聖な議論の場で友情を盾にすることは、人道に反していると思いませんか? 香霖堂を営む恩人の前で、人形の館で帰りを待つ親友の前で、妖怪の山で工学に励む盟友の前で、大図書館で知識を共有してくれる学友の前で、あるいは尊敬する師匠の前で――今話したことをそのまま口に出すことが、貴方には出来るのですか?」
魔理沙「人道、ねえ。どの口で言ってんだか」
青娥「なんと言って頂いても構いませんよ? 所詮私は豊聡耳様達を騙した、人間の屑に過ぎませんので。 ――お尋ねしますが、貴方は捜査時間終了直前に、どうして『あのような』証言をしたのですか?

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魔理沙「あ?」
青娥「魔理沙さんからすれば一見不利になるとしか思えないこの証言、これは明らかにルーミアさんに罪を擦り付ける為に口にした物ですよね? 言い争いの相手がわからなかった、というのは真っ赤な嘘です。それにこの証言は偽装現場の製作タイミングが23:30から23:45の間だと容易に特定可能な証言でもあります。魔理沙さん。貴方は交渉に応じて動いてくれたマミゾウさん達すら切り捨てて、自分だけ助かろうとしましたね?
マミゾウ「馬鹿な! そんなわけあるか! 魔理沙はそういう人間のはずは――」
青娥「では、どんな人間だと思っています? 少なくとも彼女は『強い』人間ではありません。それなら仲間を切り捨てられるはずがない。ところが彼女は『弱い』人間でもありません。だけどそれは、計画的に人を殺せる種類の強さとも違う。彼女は――『脆い』んですよ。外界で学校に通う普通の少女達と同じくらいには」
マミゾウ「――脆い?」
青娥「そうです。だから特定の状況下に置かれた時に、彼女は霊夢さんと違って踏み止まることが出来ないんです。つまり――目の前に状況さえ揃ってしまえば、誘惑に勝てない。一線を越えてしまうんです
マミゾウ「わしは、霧雨魔理沙という存在を見誤っていたと?」
青娥「そうなりますね。魔理沙さんに殺人を犯して欲しくなかったのなら、〈リボルバー〉を受け取った時点で霊夢さんに相談するべきでした。そこまでしなければ今回の件が無かったとしても、いずれ彼女は貴方の言う所の『義理』に従って、私をなんらかの方法で殺しに来たと思います」
妹紅「そうか。やっぱりマミゾウ一人に殺しを任せたことに罪悪感を覚えていたのか……」
マミゾウ「魔理沙との交渉は、わしの中では『凶器の提供を含めた殺人の依頼』として成立してたんじゃが……」
妹紅「だが――魔理沙はそう思ってなかったんじゃないか? それに魔理沙からすれば、私達が同意の上で片一方を殺したこと』なんて知る由もなかったんだからな」
青娥「それだけではなく、事件の動機には罪悪感以外にも――霊夢さんに対する『競争心』のようなものもあったのかもしれません。殺人という行為は私や妹紅さんのように『血生臭さ』に慣れていない人間にとって、様々な感情が心に去来するものでしょうから」
妹紅「それならなぜ、魔理沙は早苗とトラッシュルームを利用した時、凶器の部品を手放さなかったんだ? この部分は紛れもない『悪意』そのものとは違うのか?」
青娥「――私はそうは思いませんよ? チルノさんとトラッシュルームで二人きりになった時と同じです。『状況が揃ってしまったから誘惑に勝てなかった』だけなんだと思います。一人の人間の同じ体には、感情がいくつも同居します。『異変解決者でもある自分自身の手でゲームを終わらせるべきだという使命感』、『汚れ役を押し付けてしまったという罪悪感』、『複雑なトリックを成功させたという達成感』、『自らが殺人者になってしまったという絶望感』。そして、『自分を信用している人間を出し抜き、貴重な物を掠め取ることが出来たという、後ろ暗い快感』
妹紅「――っ!」
青娥「目を逸らさないでください。いいですか? 魔理沙さんが起こした今回の一連の事件は、彼女の精神構造と全く矛盾していないんです。彼女は『psychopath』でもなんでもありません。貴方が何億回と憎悪した相手もそうだったのでしょう? 同じように物を考え、穀物を食べて、心を打つ詩を詠むことも出来る、私達と何も変わらない存在だった。だからこそ貴方は『彼女』を『殺し切る』ことが物理的に難しいとはいえ、『追い返す』ことすら未だに叶っていない」
妹紅「……それは……今は……関係ないだろ…………」
青娥「――はい。確かに関係ありませんね。失礼しました」
霊夢「……」
魔理沙「くくく……青娥にプロファイリングされる日が来るとはな。でも私は殺しなんてやってないんだ。青娥の部屋の鍵なんて、あの時霊夢と一緒に捨てちまったんだから」
レミリア「……」
咲夜「お嬢様?」
レミリア「――ナズーリン『ゲーム初日に霧雨魔理沙に配られた鍵の場所』を〈ダウジング〉して
ナズーリン「いや、しかし回数制限が――」
レミリア「いいから。それで〈ダウジング〉はもう必要なくなるから。霊夢、最後の権利を貰ってもいいわよね?」
ナズーリン霊夢、どうする?」
霊夢「……お願い」
ナズーリン「! よし、わかった」
魔理沙「あーあ。最後の貴重な一回なのに。勿体ねえなあ」
ナズーリン「……よし、検索完了だ」
レミリア「結果は?」
ナズーリン「――魔理沙、その鍵はなんだ? 『ゲーム初日に霧雨魔理沙に配られた鍵の場所』で検索したら0件だったぞ
咲夜「! 今持っている鍵は、再発行された物なんですか!?
魔理沙「――ああ。そうだぜ? 少し前に無くしちまったから紫に頼んでな。みんなには言ってなかったか?」
レミリア「そう。それなら魔理沙、貴方自身が紫に申請して今ここに鍵の紛失記録を取り寄せて貰いなさい。まさか貴方の部屋の鍵が事件に関係するはずがないもの。出来るわよね?」
魔理沙「いいぜ。紫、頼む」
紫「本来は捜査時間じゃないから用意出来ないけど――今回は特別よ? ちょっと待ってて」
 

25

紫「お待たせ。これが貴方の鍵の紛失記録よ」
魔理沙「ああ、ありがとう」
早苗「ええと……昨日の朝食後に鍵の再発行が申請されているみたいですね?
ナズーリン――ん!? 例の香水事件が起きた直後くらいだぞ!?
魔理沙「ああ。確かにその付近に私は自分の部屋の鍵を紛失した。それは間違いない。だがそれとこれとは話が別だ。鍵のすり替えなんて行ってない。霊夢にはあの時青娥の部屋の鍵を渡した」
てゐ「魔理沙、もう諦めなって……」
魔理沙「え、何をだよ? それにしても――お前ら状況がわかってんのか?」
てゐ「え?」
魔理沙今私が容疑者になっているが、そうなると私の証言の効力が失われるよな? するとチルノの死亡推定時刻も変わってくる。DAY06の23:30から23:45の間にチルノが殺された可能性すら出てくる。三十分もあれば、妹紅やマミゾウにだって簡単にチルノを殺せるんじゃないのか?
マミゾウ「魔理沙……」
妹紅「お前――いい加減にしろよ?」
魔理沙「それだけじゃないぜ。証拠品の処分についてケースが使われた話が出たが、私が出来たことって、実際に鍵を処分した霊夢にも出来ることだよな? もう〈ダウジング〉は使えないだろうけど、霊夢が確実に鍵を処分したことを証明出来なければ私を一方的に容疑者扱いすることも出来ないぜ?
こいし「ちょっと待ってよ魔理沙! 霊夢が人を殺したって言うの!?」
咲夜「魔理沙! さっきも言ったじゃない! チルノを正面から殺せるプレイヤーなんて――」
魔理沙「ああ。覚えてるさ。〈氷細工〉を持つチルノを相手にすることは大半のプレイヤーには困難だ。だけどチルノは両手が塞がっていたんだろ? それなら誰だって無傷であいつを殺せてもおかしくはないぜ?
魔理沙「あ、そんな小難しいこと考えなくても、お前らは『ルールで』私を処刑することも出来るんだっけ? 怪しきは罰しろ、だっけ? なんだったっけ、忘れちまった。だったらそうすればいいんじゃないのか?」
レミリア「……紫」
紫「何かしら?」
レミリア「貴方は私達に何をさせたいの? これなら普通にみんなで殺し合ったほうが、遥かに気が楽なんだけど? 運営者は他ならぬ貴方自身じゃない。それなのに――どうして貴方はそんな悲しそうな目で魔理沙を見つめているの?」
紫「……」
霊夢「……わかったわ、魔理沙。だったら貴方の部屋の鍵については、もう何も言わない。ナズーリン。いいかしら?」
ナズーリン「なんだい?」
霊夢霍青娥の部屋の鍵』それがどこにあるのか『探し出して』?」
ナズーリン「――! ああ、いいぞ」
魔理沙「おいおい……。お前は今日既に三回の検索を済ませているだろ? 捜査時間中には『事件に関係ある証拠品』で検索し、裁判中は『〈リボルバー〉の位置』で検索し、さっきレミリア『ゲーム初日に私に配られた鍵の場所』を検索するよう頼んだ。もう能力を使えないだろ? 〈絶望〉でもない限りな」
ナズーリン――いや、レミリアに聞かれた件は〈ダウジング〉していない
レミリア「はぁ?」
魔理沙「う、嘘だ……」
霊夢裁判前、念の為にナズーリンと打ち合わせをしていてね。〈ダウジング〉の際にこっそり意思疎通する方法を考えたの
魔理沙「どうやって!?」
霊夢「それは後で教えるわ。ナズーリン、改めて言うけど、『探し出して』?」
ナズーリン「いいぞ。確か『霍青娥の部屋の鍵』だな。任せておけ」
魔理沙「……くそ!」
ナズーリン「……………………」
てゐ「……どうなのさ?」
ナズーリン「……………………」
てゐ「……ナズーリン?」
ナズーリン「…………魔理沙
魔理沙「…………なんだよ」
ナズーリン「…………霍青娥の部屋内に一件反応あり』、と出た」
てゐ「……そっか」
レミリア「――鍵がその場所にあるということは、本来有りえないわね」
こいし「それなら本当に――魔理沙がチルノを?」
魔理沙「……はは」
早苗「え?」
魔理沙「はははははは!!!」
ルーミア「ま、魔理沙?」
魔理沙「――負けなんて認めるかよ妖怪共が!!」
ルーミア「!」
さとり「魔理沙さん……」
魔理沙「仮にジュラルミンケースの中身がお前達が考えた通りの物だとするなら――ここにそれを持ってきてみろ! それを拒否して私を〈追放〉してもいいが――そんなの議論無しで私を〈追放〉するようなもんだぜ!? ほら、どうするんだ!?」
青娥「――魔理沙さん」
魔理沙「なんだよ!?」
青娥「これが何かわかりますか?」

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魔理沙「…………そ、そのジュラルミンケース。どうしたんだ? まさか、お前――
青娥「ええ。裁判直前に自室から持ってきたんですよ。魔理沙さんと霊夢さんが〈香水〉と〈消臭剤〉を保管していた物です
魔理沙「――で、でも〈マスターキー〉でも無ければ開けられないはずだ! 勇儀がいないんだから、こじ開けることも無理だ! 〈壁抜け〉で中身を取り出そうとするなよ!? みんなの前できちんと開けなければ、そのケースの中身であることを証明出来ないぞ!」
青娥「あら、御親切にどうもありがとうございます。そういえば鍵の方は見当たりませんでしたね。では運営さん――諸事情から鍵を持っていないのですが、今すぐ再発行して頂いても構いませんか? 私の部屋の鍵なのですから、今からでも申請可能ですよね?
紫「――ちょっと待っててね」
魔理沙「おい。やめてくれ。頼む。私は裁判に勝ちたいんだよ。みんなを助けるには――」
青娥「違う。今の貴方の心の大半を占めているのは、そんな殊勝な気持ちではないでしょう? 貴方は勇儀さんが受けたような処刑を、自分も受けることが恐ろしい――それだけです」
紫「はい――これが鍵よ」
青娥「ありがとうございます。では皆さん、開けてみましょうか」
霊夢「……」
ガチャ…
ルーミア空っぽの香水〉の瓶と、中身が残っている〈消臭剤〉の瓶。それと――ゴミ袋?
咲夜「折り紙や紐が少し湿ってますね。この中に氷像を削ることで出た欠片も捨てたのでしょうか?
ナズーリン「おい……これはなんだ!?」

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魔理沙「お……終わりだ……ああ」
ルーミアこれ、本物の血だよ……臭いでわかる
霊夢「――紫。投票に移りましょう。魔理沙もそれで構わないわね?」
魔理沙「……」
紫「ええ。そうしましょうか。それでは議論を終了し、犯人二人の指名を――」
妹紅「……」
 
ガシッ
 
魔理沙「ぐっ……」
妹紅「おい。巫山戯るなよ。お前がチルノを殺したのかよ? 幻想郷の外に出たことも無ぇ、●●●だって知らねえ、ケツの青い親不孝者のクソガキが!!」
マミゾウ「妹紅! やめんか!」
レミリア「気持ちはわかるけど、落ち着きなさい!」
魔理沙「あ、あ……」
妹紅「なんだその顔は!! 被害者面すんじゃねえよ! 弾幕ごっこみてえな妖怪に手加減して貰えるお遊戯が、ほんの少しうまいくらいでいい気になりやがって!! お前は地底でも山でも行って、高位の妖怪の首一つでも取ってこられるのかよ!? あぁ!? 私みたいなババアを殺すならともかく――なんでチルノなんだ!!! 私だって化物だろうが人間だろうが相当ぶっ殺して来てるが、まだ化物になる以前の、あの時の最初の殺人は千年経ったところで――」
魔理沙「…………」
妹紅「――クソ!」
早苗「魔理沙さん! ――気絶してますよ!?」
霊夢「熱も出てる!? 魔理沙! 大丈夫!? しっかりしなさい! まずは横にしないと! それから――」
てゐ「――そんなに騒がなくても大丈夫だよ。緊張の糸が切れたんだろうねえ。はいはい、ちょっと診せてね。うん、熱発してる。三点クーリングしよう。裁判場の隅に移動させて、少し寝かせてあげれば大丈夫。紫。氷枕と冷湿布を用意して。解熱剤も。今ルールがどうとか言ったら、ゲームが終わった後でぶっ殺すよ?」
紫「怖いわねえ。そんな顔しなくても、用意してあげるわよ」
てゐ「みんなも今のうちにもう一度休んでおくといいよ。裁判で疲弊してるでしょ?」
霊夢「――わかった。じゃあ、お願いね。てゐ」
てゐ「『お願い』? 『探し出して』じゃなくって?」
霊夢「……気付いてたの?」
てゐ「ナズーリンに許可を求められた場合の『言い回し』と――後は、そうだなあ。『瞬きによる検索件数の指定』って所?
霊夢「……当たってる」
ナズーリン「私が提案したんだがな。あまり複雑すぎるのもよくないと思って、そんな感じの暗号で意思疎通していた」
てゐ「いくらなんでも簡単すぎ。あんな暗号、ぜんっぜん駄目だよ。下手すると魔理沙に気付かれてたよ?」
咲夜「お嬢様、これは――」
レミリア「勝負あり、ね」
 

26

【宿舎エリア・魔理沙の部屋】DAY06 23:45
 
魔理沙「あー、遊んだ遊んだ。とりあえず早苗と仲直り出来て良かったなあ……」
魔理沙「……」
魔理沙(仲直り、と言えば――)
魔理沙チルノと喧嘩してた声、多分ルーミアだよな?
魔理沙(……たまには喧嘩することもあるか。子供同士だもんな)
魔理沙……少し様子を見に行ってみるか?
魔理沙「――いや、駄目だ駄目だ! マミゾウが妹紅を殺すのに動いてるんだもんな」
魔理沙「……」
魔理沙(でも、うーん……。やっぱり気になるなあ)
魔理沙(――ちょっと見に行ってみるか)
 
【宿舎エリア・倉庫】DAY06 23:47
 
チルノ「うぅ……ルーミアちゃんなんか……」
コン コン
チルノ「……? 誰?」
ガチャ
魔理沙「おーい。まだいるのかー?」
チルノ「魔理沙?」
魔理沙「あれ、チルノだけか。 ――泣いてたのか?」
チルノ「魔理沙……あのね、私ルーミアちゃんと喧嘩してね……その」
魔理沙「そうかそうか。まあ喧嘩する程仲が悪いって言うだろ。そう気にすんな」
チルノ「……やっぱりそうなのかなあ」
魔理沙「おいおい、冗談だって。何があったんだよ」
チルノ「魔理沙……わたし……ルーミアちゃんにひどいこと言っちゃったよ…………ひっぐ……いつも湖でやってるような喧嘩じゃなくて……もう……絶交しちゃうかも知れない……でも……ルーミアちゃんだってひどいこと私に……」
魔理沙「……チルノ、ちょっといいか?」
チルノ「……なに?」
魔理沙「昨日私は、この会場で最も信頼しているプレイヤー二人と意見の相違があったんだ。片方とは険悪な状態になっちまったし、もう片方とは覚悟を決めてから相当やばい交渉を持ち掛けたんだけど――あっさり断られちまった」
チルノ「……交渉?」
魔理沙「ああ。会場にいるみんなの為に行ったことだ。だけど恐らくあいつからは――ゲーム中に二度と信用されなくなっただろうな」
チルノ「――魔理沙も、喧嘩しちゃったんだね」
魔理沙「ああ。厳密には喧嘩ともまた違うんだが――概ねそんな感じだ。私の言いたいことはな。お前とルーミアに何があったのかはわからないが、明日には仲直り出来るってことだ。現に私だって片方とは、一応元の関係を取り戻せたぞ?」
チルノ「――明日の内に? 仲直り? 本当?」
魔理沙「ああ。お前達なら大丈夫だ。もしルーミアと話し辛いなら、仲を取り持ってやってもいいぜ? とにかく、マジでさっさと和解しておけよな。いずれ必ず、生き残っている全員で力を合わせないといけない状況が来る。私はそう考えている。その時私は居ないかもしれないがな」
チルノ「……魔理沙強いね」
魔理沙「強い? 私が?」
チルノ「……ううん。なんでもない。話を訊いてくれてありがとね。――実は魔理沙に付き合ってほしい所があるんだ。飾り付けで出たゴミを処理したいから、一緒にトラッシュルームまで来て貰っていい?
魔理沙「ん? ああ、構わないぜ。――って、おいいいいぃ!? この飾り付け、お前がやったのか!?」
チルノ「お、おかしいかな?」
魔理沙「正直言ってかなり個性的だが、なかなかその――クールなんじゃないか? 氷精だけに」
チルノ「あはは。ありがとう。……ちょっと用意するから待ってて」
 
【宿舎エリア・トラッシュルーム】DAY06 23:50
 
魔理沙「じゃ、早めに頼むぜ」
チルノ「任せて! とりあえずあたいのメダル、一枚残しで全部預かってて貰える?」
魔理沙「任せとけ。――あれ? ずいぶんメダルが少ないな。結構散財したのか?」
チルノ「うん。飾り付けに使ったからね」
魔理沙「そうだったのか。おい、間違ってもてゐからメダルを借りるなよ? 後でぼったくられるぞ」
チルノ「あはは。実は借りたことあるんだよね。うん、わかった。今度からそうする。ええとメダルを入れて――」
チャリン……
ガララララ……
魔理沙「開いたな。よし、行って来い」
チルノ「うん、行ってきます!」
魔理沙「いってらー」
チルノ「ええと、真ん中が焼却炉で、ゴミ箱は確か――
魔理沙「……ん、おいチルノ? 部屋の中央に落ちてるのなんだ?
チルノ「……え? ええ、と!? 魔理沙! 見て!」
魔理沙なんだこれ……極上の凶器の――〈ナイフ〉?
チルノ「これ、誰かの血が付いてない?」
魔理沙「! 本当だ! 何があったんだ!? ――隣にあるのは、厨房とかにあるキッチンナイフか?」
チルノ「こっちは全然血が付いてないね? それならどうして――」
魔理沙「駄目だ! それに触るな!!」
チルノ「え!?」
魔理沙「私達のいるこの場所――恐らく殺人事件の現場だ! どこかに死体があるはずだ!!」
チルノ「え、死体って、どこに? 誰が殺されたの?」
魔理沙「それはまだわからない。だけどアナウンスが流れない以上、まだ誰にも見つかってないはずだ。だったら〈ナイフ〉に一切触らずに、現場を保存しないと駄目だ!
魔理沙(いったいどうなってる!? ここでマミゾウが妹紅を殺したのか? ――だけど有り得ない! マミゾウは〈リボルバー〉を持っているはずなのに、なんで〈ナイフ〉まで落ちてるんだ!? あいつはもうDDSルームは使えないはずだろ!?)
チルノ「で、でも――」
魔理沙「まずはトラッシュルームを奥まで調べるぞ。チルノは先に入り口まで――」
ガララララ……
ガシャン!
魔理沙「――クソッ! やっぱり駄目か! 確かメダルを使ったプレイヤーしか最奥には行けないんだよな。よし、チルノ。お前が捜査しろ。私が入り口のほうから指示を出す
チルノ「う、うん!」
魔理沙「よし、ここまで戻れば大丈夫、かな?」
ガララララ……
ガシャン!
チルノ「え!? 一番手前のシャッターも下りるんだっけ!?
魔理沙「ああ。そういう仕組みなんだよな、この部屋。だけど問題ない。チルノ、トラッシュルームの奥に進んでみてくれ!
ガララララ……
チルノ「あ、今度は開いたね。じゃあ、進むよ?」
魔理沙「ああ」
ガララララ……
ガシャン!
チルノ「え!?」
魔理沙「大丈夫だ。最奥のシャッターが下りただけだ。チルノ、声はそっちに届いてるな!?」
チルノ「届いてるよ! 室内でかなり反響してるし!」
魔理沙「そうか。それならまずは焼却炉のボタンを見てくれ。赤い色の『燃焼ボタン』と、緑色の『キャンセルボタン』だ。どちらかを押さないとお前はこちら側に戻って来られない

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チルノ「うん! 確かにあるね」
魔理沙適当な物――例えばチルノが今持っている、ゴミの入った袋でも入れて“燃焼ボタン”を押せば、シャッターが開き、こちら側に戻って来られる。だけどそれだけは絶対にやめろ。なんでかわかるか?」
チルノ「ええと――」
魔理沙ここが本当に事件現場なら、焼却炉の中に何らかの証拠品が残ってる可能性が高いからだ。それなのに今焼却炉を使うのは、非常にまずい。一緒に証拠が燃えちまうからな。これから霊夢達と共に現場を捜索することになるから、下手すると私達は、証拠品を処分しようとした容疑者になる
チルノ「ええ!? それはやだなあ……」
魔理沙「大丈夫だ。私はともかくお前はみんなに信用されているから、それなら互いのアリバイを証明出来る」
チルノ「それなら、左奥にある方のゴミ箱は? レミリアちゃんがゴミ捨てに使ってるのを見たことがあるんだけど……」
魔理沙「日常で出たゴミを捨てる方だな。知ってるよ。ゴミ捨てをする時にメダルを預かって貰うにしても、焼却炉を利用すればゴミの処理をするたびに一枚のメダルを消費しちまうからな。咲夜とレミリアは調理や清掃で出たゴミを処理する際に、いつも左奥のゴミ箱にゴミを捨てて、それからキャンセルボタンで外に出ている。そうすればメダルも節約出来るしな
チルノ「じゃあこっちに――」
魔理沙「だけど、そっちにゴミを捨ててくるのもやめろ。ゴミ箱を開けて中を確認しなくてもいい。凶器の中には〈リモコン爆弾〉や〈ピアノ線〉もあるから、なんらかのトラップが仕掛けられている危険性もある。それは二人以上で、シャッターのすり抜けが可能なプレイヤーが一緒に行うことだ。トラッシュルームを出たら、お前は入り口で見張っていてくれ。私が霊夢を呼んでくる」
チルノ「うん。ゴミ箱も確認しなくていいんだね? だったら今から私はどうすればいい?」
魔理沙ゴミ箱と焼却炉の前に、何か見つからないか?
チルノ「――ゴミ箱の前辺りに、血溜まりがある!
魔理沙「そうか! 血の量はどうだ!? 気分が悪くなったら離れていいぞ!?」
チルノ「ありがとう! でも大丈夫だよ! ――ええと、血溜まりは確かに大きいけれど、もし誰かの血だとしても、致命傷、って程じゃないように見えるかなあ……」
魔理沙「そうか――一応聞くが、私くらいの体格の人間なら助かってそうな血の量なのか!?
チルノ「うん……そうだと思う。永遠亭の人達じゃないから自信ないけどね! でも私がこの量の血を流したら恐らく――
魔理沙「よし! もう十分だ! チルノ、焼却炉付近を調べ終わったら、ゴミ袋を持ったまま、キャンセルボタンを押して戻ってこい!
チルノ(そういえば……)
チルノ(ルーミアちゃんは藍を殺そうとしていたみたいけど、武器も無いのに殺しには行かないよね?)
チルノ(紫にスキマで案内して貰った霊安室。氷の保管が可能な気温や湿度が保たれている場所後で一度だけみんなに氷の彫像を見せたかったから直接氷像を運んだんだっけ
チルノ(霊安室の保管庫の一つに――龍の彫刻は保管されている。〈水晶玉〉も一緒に。自分で肌見放さず持っていても、もし取っ組み合いになったらルーミアちゃんに奪われちゃうし
チルノ(――そういえば、氷像と〈水晶玉〉は無事かな? ナズーリンの〈ダウジング〉なら場所を特定出来る。ナズーリンが盗んでいくとは思えないけど……)
チルノ(――もう、保管は無理かな。完成した氷像をみんなに見せたかったけど、氷像も〈水晶玉〉も処分しないと
チルノ(この血溜まり……この量の出血だと、私だけじゃなくルーミアちゃんも危険だよね?)
チルノ(そういえばルーミアちゃん、私が〈水晶玉〉と氷像を隠して、倉庫で喧嘩してから――どこに行ったんだろ? 部屋に戻ったのかな?
チルノ(もし霊安室の存在に気付いて、氷像と〈水晶玉〉を保管庫の一つから探し当てていたとしたら?
チルノ(――よし、氷像が無事ならルーミアちゃんの無実を証明できるし、氷像と〈水晶玉〉を持ってこよう! 魔理沙が一緒に居るなら大丈夫だ!
魔理沙「おーい! どうした立ち止まって! 早く戻ってこい!」
チルノ「……ごめん、魔理沙! すぐに戻ってくるから、そのままそこにいて!
魔理沙「え?」
チルノ「紫! 今すぐ来て!
紫「はいはーい。……ふわぁ、寝不足になりそうねえ」
チルノ「霊安室まで案内して!
紫「ええ。いいわよ」
魔理沙「え? え? 何がどうなってるんだ……」
 
魔理沙(……)
魔理沙(……ん?)
魔理沙(あれ? トラッシュルームの端末が、使えるようになってる?
魔理沙(そうか。チルノが部屋からいなくなったから、メダル使用前の状態に戻ったんだな
魔理沙(あはは。このままメダルを入れて奥まで進んだら、戻ってきたチルノを驚かせることが出来るな
 
ドクン……
 
魔理沙(…………あれ?)
ドクン……ドクン……
魔理沙部屋には何者かが残していった凶器がある。誰かが私より先になんらかの事件を起こし、それが今もまだ進行中なのは間違いない。これならもしかして――
ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……
魔理沙――もうひとつの事件に乗じて、完全犯罪が可能か? この状況でチルノを殺せば、密室を作ることも可能か?
ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……
魔理沙冷静に考えてみると――この状況全部をマミゾウが作り出した可能性もあるのか? だけど仮にマミゾウが残した物だとしても――私さえ勝ち抜ければ、みんなを救えるよな?
 
 
ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……
 
魔理沙(……)
 
チャリン……
 
魔理沙(……)
 
ガララララ……
ガシャン!
 
魔理沙(……)
 

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魔理沙(………………………………………………これなら、霊夢に勝てる)
 
チルノ「――よいしょ、っと」
 
ガララララ……
ガシャン!
 
魔理沙「……」
チルノ「ごめん! お待たせ! って、わっ!? 魔理沙じゃん! びっくりした~。どうやってここまで来たの!? びっくりするじゃん。危うく氷像を落とすところだったよ」
魔理沙「……ああ。驚かせてやろうと思ってな。もう用事は済んだか?」
チルノ「――うん! 紫。夜遅くにありがとうね」
紫(…………!!! この状況は――まさか!!?)
魔理沙「私からもお礼を言うよ。ありがとう、紫。――なあ、チルノ。この氷像、そこそこ重いな」
チルノ「だよねー。氷で出来ていても、その重さだと――え? え? あれ、どうして、魔理沙の手に」
ガシャン!
チルノ「な、なんで――」
魔理沙〈盗ませて〉貰った。――悪いな
ザクッ…
チルノ「……あ」
ザクッ… ザクッ… ザクッ… ザクッ…
チルノ「……あ、まって、まり、さ……」
ザクッ… ザクッ… ザクッ… ザクッ… ザクッ… ザクッ… ザクッ… ザクッ… ザクッ… ザクッ… ザクッ… ザクッ…
 
魔理沙「……」
チルノ「かはっ……ぐぅ……はあ……うあ…………」
紫「……」
魔理沙「――なに見てんだよ? 殺すぞ?」
紫(……魔理沙の、こんな眼。初めて見るわね)
紫「――そう。ごめんなさい」
 
魔理沙「……」
魔理沙「あ、あ、あああ」
 
魔理沙「ああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
魔理沙「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
魔理沙「ごめん!!! チルノ!!! ごめんなあああああああああああ!!! 許してくれえええええええ!!!!!」
 
チルノ「……ま……まりさ……あの…………」
魔理沙「そんな眼で見ないでくれ……わたしは……わたしは……」
チルノ(ゲームに勝って……みんなを助けたかったんだよね……? ルーミアちゃんと同じだね……。だったら……そんな辛そうな顔しないで……って言おうとしても………もう…声が……出ない……)
カチッ カチッ カチッ
魔理沙あれ!? ボタンが反応しない! チルノがまだ生きているからか!? でも服に返り血が……処分……しないと…………それなら、とどめを刺さないと……
チルノ「……」
魔理沙む、無理だよ……そんなの……私には…………
魔理沙ええと、服をここで燃やさないと――いや駄目だ、今更メダルを調達するなんて……無理だ……じゃあ、どこに捨てれば
魔理沙そ、そうだ。焼却炉! マミゾウが残した物が何か一つは――

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魔理沙「あ、あった! これを焼却炉の下に置いて……
魔理沙チルノが持ってた氷の塊みたいなのは――私が落としてバラバラにしたから、回収は無理か……
魔理沙急がないとレミリアか咲夜がゴミを捨てに、ここに来る。ああ……何からどうすればいいんだよ」
チルノ(魔理沙……なんだか凄く可哀想……大丈夫だよ……私は……魔理沙を告発しない……魔理沙さえ勝ち上がればそれで……みんなを……)
チルノ(……あ)
チルノ(……それじゃ……駄目なのかな……?
チルノ(魔理沙の持ってる〈ナイフ〉……最初から血塗れだったってことは……誰かが既に使った後……だよね? ……さっきもそう話したし……
チルノ(もし……物凄く悪いやつがゲームで勝ち抜ければ…………魔理沙が……文姉ちゃんや勇儀姉ちゃんや私を生き返らせたところで……みんな殺される…………?
チルノ(それ、なら……誰かに……私を殺したのが誰かを伝えないと……
チルノ(でも……誰に……? ……どうやって?)
チルノ(……そうだ!)
チルノ(魔理沙……ごめん…………妹紅………………後は頼んだよ…………)
ガシャン
魔理沙「な、なんだ!? 何が割れた!?」
チルノ「……」
魔理沙「……おい、チルノ? お、おい……チルノ……ああ……もう……死んでるのか……私が……あああああああああああああああああああああああ!!」
 
魔理沙「はぁ……はぁ…………」
魔理沙「ん? これは――」

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魔理沙……最後の力を振り絞って水晶玉を割ったのか? 私に証拠品を隠蔽されないようにする為? それだけか?
魔理沙――『隠蔽』? そうだ。チルノは他にも何か残しているかも知れない。確認しないと、駄目だよな? まず部屋の鍵を死体から――
チルノ「……」
魔理沙い、いや……無理だ! 死体を調べるなんて私には!
魔理沙……せめて飾り付けの入ったゴミだけでも回収していくか。急いでここを離れないと!)
魔理沙(――そうだ! メダルは!? ええと、チルノがまず一枚のメダルを使ってトラッシュルームを利用して、それからスキマで移動したから、その分は消費されたんだよな? それで、次は私がメダルを全投入して、ここに入った。だから『燃焼ボタン』か『キャンセルボタン』、このどちらかを押さないと私は出られない
魔理沙焼却炉を使えば着ている服やゴミ袋を全て処分できる。だが、メダル0枚では絶対にみんなに疑われる!
魔理沙よし――とりあえず『キャンセルボタン』でトラッシュルームを出よう殺しに使った〈ナイフ〉は――そのまま中央に戻しておくか
 
【宿舎エリア・魔理沙の部屋(シャワー室)】DAY07 00:00
 
ザーーーーーーー
魔理沙「大丈夫……大丈夫だ」
魔理沙(――こうやって血をしっかり洗い流しておかないと、後でルーミアに臭いで気付かれる
魔理沙アリバイ作りは無理だが――証拠品の隠し場所には心当たりがある
魔理沙(これから行う計画――落ち着いてやれば、10分から20分あればなんとかなる
魔理沙(――やってやる!)
 
【宿舎エリア・魔理沙の部屋】DAY07 00:05
 
魔理沙「紫! 今すぐ出てこい!」
紫「――魔理沙。大丈夫?」
魔理沙「これをどうにかして欲しいんだ!」
ジャラ…
紫「それは巾着袋ね。メダルが入ってるみたいだけど
魔理沙そうだ。このメダルを全て新品に替えろ! チルノから預かったメダルが証拠品に引っかかる! 所有権は私に移ってるから交換可能なはずだ!
ジャラ…
魔理沙「え? 袋が勝手に――」
紫「はい、袋の中のメダル、全部新品に交換したわよ? それでそのメダルは検索には引っ掛からないわ
紫(気付かなかったら気付かなかったで、証拠品の判定なんて消すつもりだったけど。裁判がつまらなくなっちゃうし
 
ピンポンパンポーン
『死体が発見されました! 一定の捜査時間の後、学級裁判を開きます!』
 
魔理沙「――クソ! 早すぎる! もう死体が見つかったのかよ!」
紫(あーあ。妹紅さん。三人に見られちゃったのね
魔理沙チルノがスキマで向かった場所を調べる余裕は無いか。だったら次は――」
 
【宿舎エリア・青娥の部屋】DAY07 00:08
 
魔理沙「紫、このゴミ袋に入っている物を確認してくれ」
紫「あら? 返り血を浴びた服と、チルノさんが飾り付けで出したゴミね
魔理沙なあ、このゴミ袋一つで、証拠品の判定は一つにならないか?
紫「うーん……」
魔理沙「頼むよ! これが成立しなければ、私は証拠品を隠せないからおしまいだ! 急いでくれ! もう時間がない!」
紫「うーん。そのゴミ袋はチルノさん自身が用意した、言うなら事件とは無関係のゴミね。大目に見て、血のついた服は全てワンセットで証拠品として判定するわ
魔理沙「――本当か!? ありがとう! 助かる!」
紫「だけど――その鍵はきちんと証拠品として判断するわよ?
魔理沙「部屋の鍵か。それなら問題ない。まず、引き出しを外してから――机の下に
紫「へえ。そんな所に。それなら大丈夫そうね」
魔理沙「――もう、みんな部屋から出てきてるはずだよな。慎重に戻らないとな」
紫「それはいいけど――部屋の施錠はどうするのよ?
魔理沙「そんなのどうでもいいだろ! 他の証拠品を見られるよりはマシだ!」
 
【宿舎エリア・魔理沙の部屋】DAY07 00:10
 
魔理沙「なんとか間に合った、のか?」
魔理沙「……」
魔理沙(恐らく問題ない。私はほとんど証拠品を残していないからな)
魔理沙あの〈ナイフ〉は一体なんだったんだ? マミゾウは〈リボルバー〉を使わなかったのか? 昨日の今日だし、動くとしたらマミゾウしか考えられないが……
魔理沙(クソ……捜査や裁判の様子を見ながら証言するしかないか
魔理沙「よし、そろそろ部屋を出るか」
 
【宿舎エリア・廊下】DAY07 00:12
 
魔理沙「おい、何があったんだ?」
てゐ「――魔理沙も今起きた所?」
魔理沙「ああ」
ルーミア「ねえ。霊夢。大丈夫?」
霊夢「……ええ」
魔理沙「おい、霊夢どうしたんだよ。何があった?」
霊夢「よく聞いて。さっき、トラッシュルームで――」
 

27

投票内容(藤原妹紅は死亡後の為投票権無し) 
藤原妹紅を殺したと思われる人物は誰か?
二ッ岩マミゾウ、12票。他0票。
②チルノを殺したと思われる人物は誰か?
霧雨魔理沙、12票。他0票。
 
結果
〈クロ〉二名の特定に成功。
『超高校級の幻惑者』二ッ岩マミゾウ→処刑。後に〈追放〉。
『超高校級の泥棒』霧雨魔理沙→処刑。後に〈追放〉。
『超高校級の不死者』藤原妹紅→裁判終了後に〈追放〉。
 生き残った他のプレイヤーはゲームを続行。
 

28

【???】DAY07 11:00
 
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「…………………………あー……」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………ここ、どこだっけ?」
早苗「……………………………………………………………………あ、私の家か」
 

29

【宿舎エリア・魔理沙の部屋】DAY00 16:31
 
トントン
魔理沙「――誰だ?」
早苗「まーりささん! あーそびましょ!」
ガチャ
早苗「じゃじゃーん! 遊びに来ましたー」
魔理沙「……ああ」
早苗「テンションひっく! どうしたんですか? そんな辛気臭い顔して」
魔理沙「当たり前だろ。これ、殺人ゲームだぞ?」
早苗「それはそうですけど――」
魔理沙「もしかしたらと思ったんだけど――部屋のどこにもマジックアイテムが無い。紫の奴、ミニ八卦炉まで取り上げやがったぞ」
早苗「私の御幣は取られてなかったんですけど、神力がごっそり抜けちゃってる感じで……」
魔理沙「それなら、霊夢も同じ感じだな。参ったなあ。この『事件』。どう考えても『異変』として処理するタイプの物じゃないよなあ。首謀者は紫だし」
早苗「『事件』? 『異変』? 流石にそれは言い過ぎでは?」
魔理沙「馬鹿言うなって。人が死ぬ危険性があるんだぞ? 早苗は紫から何か訊いてるか?」
早苗「いいえ、全く。紫さん、何を考えてこんなゲームを始めたんですかね」
魔理沙「それはこっちが訊きたいな」
早苗「そういえば、魔理沙さんって何の能力を割り当てられたんすか?」
魔理沙「ええと、『超高校級の泥棒』って奴だな」
早苗「泥棒? どんな能力ですか?」
魔理沙「早苗、部屋に何があった?」
早苗「ええと、メダルとか、ルールブックとか――」
ジャラ……
魔理沙「ああ。私と同じ枚数だな」
早苗「え!? あれ、いつの間に!?」
魔理沙「はは。こういう能力さ」
早苗「すっご! 手品みたいっすね」
魔理沙「いや、自分でも驚いてるよ。こんな簡単に盗めるなんて。――早苗の能力は?」
早苗「――私のメダルを、床にチャラチャラって落としてみてくれません?」
魔理沙「――え、こうか?」
チャリン…… チャリン……
早苗「7枚」
魔理沙「え?」
早苗「『7枚のメダルで表が出ますように』って念じたんですけど、合ってます?」
魔理沙「――本当だ! 確かに7枚ぴったり表だ! お前こんなこと出来たのかよ!」
早苗「まあ、ゲームで割り当てられた能力ですけどね」
魔理沙「あー。びっくりだ。他のプレイヤーの能力にも少し興味が湧いてきた」
早苗「魔理沙さん。ちょっと元気出ました?」
魔理沙「え? うん、まあ……」
早苗「ほら! どうせなら会場を探検しましょうよ! ほら、行くっすよ!」
魔理沙「お、おう! そうだな。元気出さないとな」
 
【娯楽エリア・娯楽室】DAY00 22:07

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魔理沙「あー、クソ! また最後の最後で外した!」
早苗「イエーイ! 私の勝ちー!」
魔理沙「そもそも全然ゼロに届かないぜ。削りきれる気がしない」
早苗「ルールを変えます?」
魔理沙「いーや、もう少しこれでやる。それにしても意外と難しいな。早苗、よくこんなの当たるなあ」
早苗「要は慣れっすよ。慣れ。幻想郷に来る前は、ネカフェに置いてあったからよく遊んでたんすよ」
魔理沙「学校の友達と行ってたのか?」
早苗「……一人カラオケに飽きた時とかにやってました」
魔理沙「す、すまん――」
早苗「あ、謝らないでくださいよ! なんだかめっちゃ惨めじゃないっすか!」
魔理沙「え? 『正直ちょっと笑いそうだった』って続けるつもりだったんだが?」
早苗「……魔理沙さん。こっちはクッソ強い凶器持ってるの、忘れないでくださいね?」
魔理沙「……くく。そういえばそうだったなあ」
早苗「な、なんすか?」
魔理沙「さーてな」
早苗「次の先行はどちらにします? ミニゲームとかやってみますか?」
魔理沙「それなら次は私が先攻で。もう一回501で――」
ガチャ
勇儀「ん? この部屋って何だ? 賭場でも開いてるのか?」
早苗「あ、勇儀さん!」
魔理沙「どうしたんだ、こんな所で」
勇儀「おう! お前ら一緒か!」
早苗「勇儀さんは一人っすか?」
勇儀「ああ。ちょっと散歩をしてただけだ」
魔理沙「――おわっ! 酒臭っ!」
勇儀「だっはっは! だけどここってあんまり強い酒無いんだよなあ。味はそこそこ良いんだけどよ」
魔理沙「酒ばっかり飲んでると、メダル足りなくないか?」
勇儀「ははは! からっけつだな! 宵越しの金なんて持たないタチなもんで! ――ところで何やってたんだ?」
早苗「ええと、的当てっすね。二人で交互に投げて点数を――」
勇儀「つまり、勝負事だな? どうだ! 二人の残りのメダル全部賭けて、私と一戦交えないか? 私が負けたら、そうだなあ。明日の朝に配られるメダル全部やるよ!」
魔理沙「へえ。面白そうだな」
早苗「勇儀さんとですか!? 絶対やばいですって!」
魔理沙「大丈夫だって! ――いいか、早苗。カウントアップ形式で勝負するんだよ。ハンデとして点数を二人の合計点にして貰えばいい。早苗も素人のふりをするんだ」
早苗「勇儀さん既に酔っ払ってますし、それならまあ――」
魔理沙「だろ?」
勇儀「おーい。さっさとやろうぜ。なんなら二人掛かりだって構わないぜ」
魔理沙「! よし来た! 勝負しようぜ」
 
魔理沙「う、嘘だろ? このルールでなんで負けんだよ……」
勇儀「わはははは! 私の勝ちだな!」
早苗「スコア1392点……で、出鱈目過ぎる……」
勇儀「なっさけねえなあ。二人で1200点くらいは取れるだろ?」
早苗「む、無理ですってそんなん!」
勇儀「そんじゃ、メダルは貰ってくぜ~。まだBARってやってんのかなあ」
魔理沙「お前――いつ酔いが覚めたんだ?」
早苗「あれ? そういえば今全然酔ってないような――」
勇儀「さーてな」
魔理沙「勇儀が一枚上手だった、ってことか」
勇儀「そういうこった。じゃあな――あ、そうだ」
魔理沙「なんだ?」
勇儀「一緒に遊んでくれた上に、メダルまでくれたんだ。ちょっと情報でも置いて帰るか。――さっき、新聞屋の部屋に、青髪の姉ちゃんが入るのを見た
早苗「青娥さんが、射命丸さんの部屋に?
魔理沙「――二人は何をしてたんだ?」
勇儀「わからん。だが二人の動向には注意しろ。この二人はゲームに積極的に参加するタイプだからな
早苗「二人のどちらかが――殺人を起こす?」
勇儀「どうだかな。ま、お前らなら大丈夫さ。じゃあな」
ガチャ
魔理沙「――私達も何か行動を起こすべきかもな」
早苗「行動? とりあえず明日からにしませんか」
魔理沙「ああ。状況を少し見守ろう」
 
【娯楽エリア・スーパーマーケット】DAY01 19:13
 
早苗「魔理沙さん。本当に、やるんですね?」
魔理沙「当たり前だろ。というか――ゲームそのものを無力化するには、これしかないだろ
早苗「うまくいくといいんすけどね」
魔理沙「大丈夫だって。青娥や文が積極的に動いている所で、結局はまだ日にちが経ってないんだから。つまり――どのプレイヤーもまだゲームに慣れてないんだよ。ほら、時間潰ししなくちゃいけないんだから、面白そうなボドゲ選ぼうぜ」
早苗「あ、夜食も必要じゃないっすか?」
魔理沙「だな。一緒に買ってくか。だけど――あんまり贅沢出来そうにないなあ」
早苗「ですねえ。深夜に二人でメダルを14枚も消費することになりますからねえ
 
【宿舎エリア・廊下】DAY02 02:05
 
魔理沙「……よーし。流石にみんな寝てるよな」
早苗「……」
魔理沙「どうした?」
早苗「最後に確認しますよ? 私達、この計画に何も『見落とし』なんてありませんよね?
魔理沙――どういうことだ? 〈マスターキー〉だって先に盗み出しといたぜ?
早苗「確かにそれと、〈盗み〉と〈奇跡〉さえあれば今からやることは可能ですけど――これが成功したとしても、更に運営と一戦交えることになると思うんです。そこはどう思います?
魔理沙「へえ、そこに気付くか。流石だな」
早苗「え?」
魔理沙「大丈夫。紫と論戦になっても問題ない。何を言ってくるかはだいたい想定してある」
早苗「それなら、もう止めませんよ。で――誰の部屋から行きますか?」

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魔理沙まずは内側の部屋から見ていくか。早苗の部屋の隣――レミリアの部屋からだな
早苗「わかりました。タイミングは、私が教えます」
魔理沙「そうか。わかった」
早苗「……」
魔理沙「……」
早苗「はい。今なら大丈夫です。多分」
魔理沙「多分、ってなんだよ。ずっこけそうだったよ」
早苗「ほら! 急いでください!」
魔理沙「はいはい」
 
【宿舎エリア・廊下】DAY02 02:15
 
早苗「……ずいぶん時間が掛かってますね」
ガチャ
魔理沙「……」
早苗「魔理沙さん!」
魔理沙「早苗、まずいことになった」
早苗「ま、まさかレミリアさんに見つかったんすか……」
魔理沙「そうじゃない。どこにも無いんだよ
早苗「無い?」
魔理沙ジュラルミンケースはあったんだよ。だけど――凶器は入ってなかった
早苗「な!? どういうことっすか?」
魔理沙「考えられる可能性は、一つしか無い。――レミリアは咲夜に凶器を預けてある
早苗「つまり咲夜さんは――みんなの前で嘘をついた?」
魔理沙「……実は昨日のデモンストレーション、私も圧倒されちまったんだが、少し不審な点もあるように思えるんだ」
早苗「不審な点、ですか?」
魔理沙「まだ確信は持てないんだけどな――まずは咲夜の部屋を確認しよう。またタイミングを教えてくれ」
 
【宿舎エリア・廊下】DAY02 02:31
 
魔理沙……咲夜の部屋にも、凶器は一つも無い。どういうことだ?」
早苗「誰かに凶器を譲渡した後なんですかね?」
魔理沙「咲夜以外の誰にだ? ここには美鈴もパチュリーも居ないんだぜ?」
早苗「あの、やっぱり止めておきませんか? なんかヤバい気もしてきたんですが」
魔理沙「逆だよ」
早苗「はい?」
魔理沙レミリアと咲夜は、昨日あれだけのことをやった後なんだぜ? その上で貴重な凶器を紅魔組以外の誰かに譲ったのなら――そのプレイヤーは紅魔組の間に入り込めるくらいの信用を得ている誰かだと言うことだ。つまりそいつには殺人への強い意欲がある、ってことにもなる」
早苗「――その凶器を見つけ出さないと、近いうちに殺人が起きる?」
魔理沙「ああ。だから私達はここでやめるわけにはいかない」
早苗「わかりました。では、次はルーミアさんの部屋ですね」
魔理沙「ああ、タイミングを頼む」
 
【宿舎エリア・廊下】DAY02 02:33
 
ガチャ
魔理沙「……見つけたぜ」
早苗「あ、お帰りなさい!」
魔理沙「普通にテーブルの上に置いてあったぜ。ジュラルミンケースもな」
早苗「不用心っすね~。ルーミアさんらしいと言えばらしいですけど。ぐっすり寝てました?」
魔理沙「ああ。ほっぺたをぷにぷにしても起きなかった」
早苗「何やってるんすか!?」
魔理沙「いや、寝顔が可愛かったんで、つい」
早苗「で、なんすかそれ? サイコ・ショッカーみたいなデザインですけど」

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魔理沙多分〈暗視ゴーグル〉だな。さっき室内で使ってみた」
早苗「へえ。確かにルーミアさんの〈暗闇〉と相性抜群っすねえ」
魔理沙「――で、ここからが本題だ。DDSルームの使い方、覚えてるよな?
早苗「はい? 凶器の番号を入力してチャレンジに成功すれば、対応した凶器を取得出来る場所ですよね?
魔理沙「そこで、だ。今からお前にはジュラルミンケースに貼られていたラベルの、凶器番号を教えてやる。〈暗視ゴーグル〉の対応番号をな。万が一の為だ。確か番号は――」
早苗「――魔理沙さん!」
魔理沙「おぅ!? そんなでかい声出すなって! みんな起きてくるだろ」
早苗「私達――凶器を使われないようにする為に、こうして盗んでるんですよね?
魔理沙「……ああ」
早苗「だったら番号なんていりませんよ。いいですか? 私の能力は〈奇跡〉ですよ? DDSルームのチャレンジなんて簡単にクリア出来るんです。凶器の番号を教えられてしまったら、つまり――
魔理沙狙った凶器を取り放題、ってことか。気付かなくて済まなかった。お前を信用してたから、つい教えそうになった。ごめんな」
早苗「いいえ。私の方こそ大きな声を出して済みません」
魔理沙「早苗。お前を相棒にして良かったぜ」
早苗「そんなの、今言わないでくださいって……。それに、魔理沙さんの相棒は、霊夢さんでしょ?」
魔理沙「……霊夢か」
早苗「え? 違うんすか?」
魔理沙あいつは今、文と一緒に動いている。それにさ、こういうゲームに対して、私と全く同じように動くのかって訊かれると、どうにも自信がな……
早苗「あの。でも、異変の解決って二人がメインですよね?」
魔理沙「異変だったら、な。だけどこれは――『異変でもない何か』だ。紫が力を封じている以上、私達にはこれを異変として処理出来ない」
早苗「……」
魔理沙「よし、次行くか。次は勇儀の部屋だ」
早苗「その後はどうします? 中央の部屋は彼女で最後ですけど」
魔理沙「それが終わったら、外側の部屋を北東から順番に片付けていこう。トラッシュルームの横から順番にな」
 
【宿舎エリア・廊下】DAY02 02:55
 
魔理沙「……くくく。いやー集まった集まった」
早苗「こうして並べると、壮観っすねえ。〈マスターキー〉を合わせて13個。DDSルームの〈ナイフ〉と〈無味無臭の毒薬〉を合わせれば――15個! やりましたね!」
魔理沙「……」
早苗「あの、レミリアさんの部屋に無かった凶器のことは、もういいじゃないですか。明日の朝、直接交渉しましょうよ?」
魔理沙「ん? ああ。そっちの心配はしていないんだ」
早苗「え?」
魔理沙早苗、トラッシュルームのすぐ横の部屋。あれ、なんだと思う?

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早苗「!」
魔理沙一体誰の部屋なんだ?
早苗「予備の部屋? とか、そういうのっすかね?」
魔理沙そんなもん、作る金あったのか? ここの会場、相当金が掛かったから、いくつか施設を削ってるんだろ?
早苗「まあ、そう言われれば……」
魔理沙「それに、予備の部屋だとすると、位置がおかしい
早苗「え?」
魔理沙仮にあそこが予備の部屋だとすると――プレイヤーが校舎エリアや娯楽エリアへアクセスしやすいように、使う予定が立っていない予備の部屋は、とりあえず東側に作っておくんじゃないのか? 地図を見てみろよ。ほら、例えばてゐの部屋の位置と入れ替えれば、トラッシュルームにも近い。他のエリアへのアクセスが一番悪いのは、てゐの部屋だろ? 凶器の中には破壊力の高い物もあるから、部屋そのものが使えなくなる危険性もあるだろうな。それはわかる。だったら予備の部屋を、てゐの部屋の位置に作ったほうが合理的だと私は思うんだ
早苗「うーん。でも、そもそもそんなに距離は変わらないじゃないっすか。そこまで場所が重要ですかねえ……」
魔理沙――提案なんだが、念の為に空き部屋を調べておかないか? 〈マスターキー〉を処分する前にな」
早苗「はい? いいですけど……」
 
【宿舎エリア・空き部屋】DAY02 03:01
 
魔理沙「うーん。ベッドがあって、ゴミ箱があって……普通の部屋だな
早苗「ですね。流石にジュラルミンケースもルールブックも見当たらないっすけど」
魔理沙「だとすると――本当に特に意味は無い部屋なのか?」
早苗「一応確認しましたけど――シャワーも普通に出ましたね」
魔理沙「……」
早苗「魔理沙さん?」
魔理沙この部屋――何か違和感があるんだが、早苗もそう思わないか?
早苗「そうでしょうか? で、どうします? もう少し調べていきます?」
魔理沙「いや。廊下の見張りだってあるんだ。捜査は切り上げようぜ」
早苗「それならまずはトラッシュルームに行きません? こっちのケース、実はめちゃくちゃ重くて……」
魔理沙「お、おう。すまん。そっちに〈グングニル〉が入ってるんだもんな」
 
【宿舎エリア・トラッシュルーム】 03:10
 
早苗「はい。今の〈ピアノ線〉でラストっす」
魔理沙「……や」
早苗「や?」
魔理沙「やったああああああああああああああああ!」
早苗「――!」
魔理沙「ついに任務完了だな!」
早苗「は、はい! 我々は成し遂げました! 隊長!」
魔理沙「よし! 端末を見に行こうぜ!」
早苗「ラジャー!」
 
【校舎エリア・廊下(DDSルーム前)】03:12
 
『施設は現在利用可能です』
『現在のストック数:15』
『ストック:ナイフ・霊体ボウガン・スタンガン・金塗りの模擬刀・セミオート拳銃・香水・葉隠流水晶・暗視ゴーグル・消臭剤・ピアノ線・無味無臭の毒薬・グングニルの槍・リボルバー拳銃・リモコン爆弾・マスターキー』
 
魔理沙「……やばい。少し泣きそうだぜ」
早苗「明日、記念に一杯やりますか? クイッと」
魔理沙「ああ、そうしよう。みんなで宴会しようぜ」
早苗「……思ったより、あっさり行き過ぎた気もしますがね」
魔理沙「そうだな。でも、ここからが重要だ。すぐに戻って、廊下の監視を始めよう
 
【宿舎エリア・廊下】DAY02 03:30

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魔理沙「はい。『徴税の路地裏』セット」
早苗「えぇ!? 1ターン目でいきなりやめてくださいよ!」
魔理沙「ははは。クロワに先攻を明け渡すお前が悪いぜ」
早苗「魔理沙さん……すっごく眠そうですけど、大丈夫ですか?
魔理沙「ゲームしてるうちに目が覚めるかな、って思ったんだけど、そうでもないな……」
 
【宿舎エリア・廊下】DAY02 04:05
 
魔理沙「……早苗。すまん。ちょっとゲーム中断しようぜ」
早苗「はい。私は構いませんよ?」
魔理沙「……少し壁にもたれ掛かるわ」
早苗「大丈夫っすか? 私が見張ってますから、少しくらい寝ても良いんですよ?」
魔理沙「大丈夫……大丈夫だって……」
 
【宿舎エリア・廊下】DAY02 04:07
 
魔理沙「……」
早苗「……魔理沙さん? 寝ちゃったんすか?
魔理沙「……zzz」
早苗「……そうですか。お疲れのようですし、少しゆっくり休んでくださいね」
早苗「……」
 
早苗「もしもーし紫さん、こちらに来てください
 
藍「……呼んだか?」
早苗「紫さんは?」
藍「就寝中だ。スキマだけお借りしている」
早苗「今、私は数枚のメダルを所有しています
藍「ああ。確かにあるな」
早苗「このメダルをこうして――
チャリン……
早苗「魔理沙さんの巾着袋に入れると、メダルの所有数は、今現在どうなっていますか?
藍「……早苗のメダル所有枚数は、現在一枚だ
早苗「そうですか。ありがとうございます。戻って頂いて結構です」
藍「そうか。では戻るぞ」
 
早苗「……」
早苗(『この場所に戻ってくるまでの間、会場にいる全てのプレイヤーが誰も起きませんように』
早苗「……」
早苗「わー!」
早苗「……」
早苗「わー! わー! わーーーーーー!!!!」
早苗「……」
早苗「ぜんっぜん起きないなあ、みんな」
早苗(本当に便利だなあ、この能力。実はタイミングを見計らったりしなくても、余裕で隠密行動が取れるんですよねえ
早苗「――まーりささん!」
チュッ
魔理沙「……zzz」
早苗「行ってきま~す。ゆっくり寝ててくださいね」
 
【校舎エリア・DDSルーム】DAY02 04:10
 
早苗「うーん。やっぱり『銃』が欲しいっすねえ
早苗「――よし! コイントスで決めちゃおっかな。今日はDAY02だから、『No.2』!」
ピンッ
早苗「あー!! 裏かぁ。それなら、これは? 神奈子様の苗字から、『No.8』!」
ピンッ
早苗「はい、表でたー! これにしよっと。端末で8番を指定して、っと」
早苗「……」
早苗(……ロシアンルーレットかあ。〈奇跡〉を持ってるのはわかってるんですが――めちゃくちゃ怖いなあ)
早苗「――よーし、やるぞー!」
カチャ……
早苗「……ふー。クリア」
ガチャン……

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早苗「おー。出てきた出てきた。リボルバー〉ゲットー!
 
【校舎エリア・廊下(DDSルーム前)】DAY02 04:13
 
バンッ!
バンッ!
バンッ!
早苗「――端末が起動しませんね。流石に、三発も弾を打ち込めば壊れますよねえ
早苗「後は〈リボルバー〉を――」
 
【宿舎エリア・トラッシュルーム】DAY02 04:16
 
早苗「リボルバー〉の処分完了、と
早苗「……あー、面倒くさかった」
 
【宿舎エリア・廊下】DAY02 04:17
 
チャリン……
早苗(メダル、預かっててくれてありがとうございました)
早苗「――魔理沙さん?」
魔理沙「……ん? うわぁ!?」
早苗「おお!?」
魔理沙「おい! 私どれくらい寝てた!?」
早苗「え? ジャスト10分ですね」
魔理沙「あー、クソ! 一睡もしないつもりだったのに」
早苗「でも、少しは休めましたか?」
魔理沙「ああ。完全に目が覚めた。早苗は? 疲れてないのか」
早苗「実は、少し疲れてます」
魔理沙「よし。お前も休めよ。私が5時くらいまで粘ればもう大丈夫だ。咲夜が起きてくるだろうからな」
 
【宿舎エリア・廊下】DAY02 04:55
 
早苗「……zzz」
カチャ
魔理沙「お?」
咲夜(ええと、家事を始める前に〈トラバサミ〉を再設置してから、まずは――)
魔理沙「おはようさん。よく眠れたか?」
咲夜「――え? 魔理沙!? 早苗!? 何やってるのよ、そんなところで!?」
魔理沙「大した用事じゃないさ。それじゃ、私達は部屋で眠るぜ。朝食が始まる頃には起きるよ」
咲夜「え、ええと。おやすみなさい?」
魔理沙「早苗ー。起きろよ」
早苗「……んぅ? あ、おはようございます。咲夜さん
咲夜「――話は後で訊くけど、とりあえず今は部屋でゆっくり休みなさい」
 
【校舎エリア・DDSルーム前】DAY02 09:55

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勇儀「――で、なんで新聞屋が凶器のリストを持ってんだよ?」
文「だから、信じてくださいよ! これは青娥さんの罠だったんですって!」
てゐ「……本当? 青娥とこっそり会ってたこと、まさか私達が知らないとでも思ってたの?」
文「だ、だからそれは、向こうが勝手に――」
勇儀「――それで、竹林の兎。お前までリストを受け取ってどうするつもりだ? 適当に言いわけして武器を取得でもしたら、お前だって誰かが殺された時点で容疑者入りしちまうぞ?」
てゐ「はぁ? あんたは〈怪力〉持ちだからそんなこと言えるけど、こっちは身を守る手段がないんですけどー? そもそも、なんで私がリストを受け取ろうとしてるってわかるのさ?」
霊夢「ほら、喧嘩はやめなさい!」
咲夜(……お嬢様。如何なさいますか? 〈トラバサミ〉について情報を公開し、処分を魔理沙達に任せる、という手もありますが)
レミリア(論外よ魔理沙達は『凶器を全て処分した』と発言したのだから。あんな場面で嘘をつくプレイヤーなんて、絶対に信用出来ないわ)
チルノ「……ルーミアちゃん。ちょっといい?」
ルーミア「なに?」
チルノ「凶器、取得するつもりなんでしょ? だったらやめたほうがいいって。死ぬ確率は、1/6なんだよ? 死んじゃう危険性だってあるんだよ?」
ルーミア「……1/6って、何パーセントだっけ?」
チルノ「ええと、つまり――」
マミゾウ「およそ16パーセントじゃ。そんな分が悪い賭け、やめとけやめとけ」
ルーミア「ねえねえ、妹紅。相談があるんだけど――」
妹紅「だ、駄目だぞ? お前の代わりに凶器を取得するつもりなんてないからな?」
ルーミア「ブーブー」
ナズーリン『射撃三発による端末の破壊』、か」
さとり「どうしました?」
ナズーリン私ならこんな手段は使わない。工具を使って静かに無力化すると思う。音が反響すれば、他の誰かに気付かれる危険性もあるからな
こいし「だよねえ。実は私、校舎エリアのトイレに居たんだよね。寝てたから全然気付かなかったけど。お姉ちゃんはどう思う?」
さとり「ナズーリンさん。この事件の謎は、解くまでの時間が何よりも大切です。殺人が起きるまでがタイムリミットでしょうね」
こいし「あー、やっぱり誰も私のこと見えないんだ。しょんぼり」
 
早苗「〈17人目〉のプレイヤー、ですか。相当厄介なことになってきましたね」
魔理沙「……」
早苗「魔理沙さん?」
魔理沙「なんてことだよ。早苗にまで協力して貰ったのに……。私、浮かれて馬鹿みたいだった」
早苗「……魔理沙さん。どうします? 交代でDDSルームを見張っていくように、もう一回提案してみませんか?」
魔理沙「いや、もう無理だ。私の行動のせいで、みんなの心が更にバラバラになっちまった……」
早苗「……」
 
【宿舎エリア・空き部屋】DAY02 12:30
 
早苗「――紫さん、来てください」
 
紫「あら? こんな所に呼び出してどうしたの?」
早苗「どうもこうも無いですよ! なんで私の部屋の鍵で、〈17人目〉の部屋の扉も開けられるんですか!?
紫「え? だってプレイヤーに対して〈17人目〉のヒントを出しておかないと、フェアじゃないでしょう?
早苗「ふざけないでください! 私は夜にあそこまで動いて運営をサポートしたんですよ!? 昨日魔理沙さんと部屋を調べた時にたまたま思いついたから、こうして試しに自分の部屋の鍵を使ってみたんですが――こんなの一人一人の鍵を調べられたら、一発でバレるじゃないですか!」
紫「大丈夫よ。他のプレイヤーはまだ『プレイヤーは全部で17人いる』って勘違いしてるでしょうから
早苗「でも――」
紫「それに、プレイヤーの誰かが殺されれば、いくら〈17人目〉が特定されたところで、もうゲームは止まらないわよ」
早苗「それは、そうかも知れませんが……」
紫「近い内に間違いなく殺人は起きるけど、しばらくは再び貴方が大きく動くことになる状況は来ないと思う。それでも〈奇跡〉の使い道については注意してね。貴方が〈17人目〉だと特定されれば、貴方を殺そうとするプレイヤーは間違いなく出てくる。多少はこっちからもサポートするけど」
早苗「――わかりました。しばらくはゲームを静観します」
紫「その代わり、他のプレイヤーからちょっとした野暮用を頼まれたら、私の代わりにやって貰えるかしら? プレイヤーへの干渉を極力控えないと、『ゲームマスター権限』が書かれているカードに拘束力が無いことがバレちゃうのよね
早苗「そのくらいは、まあ……」
紫「それよりも、貴方ルールブックは肌見離さず持ち歩いてる?」
早苗「? はい。いつも懐に――え、ルールブックが光ってる?
紫「ちょっと開いてみて頂戴」
早苗「は、はい」
 
『極上の凶器16種類中、10種類以上が処分されて一定時間が経過いたしました』
『ゲーム運営者一同、総力を挙げてゲームの円滑な進行に砕心いたしておりますが……』
『このままでは、ゲームの進行が停滞してしまうことが予測されます』
『そこで、皆さまにスペシャルなボーナスを用意させていただきました!』
『デッドリー・デッド・ストック・ルームは各プレイヤー様最大5回まで利用できる施設です』
『つまり、各プレイヤー最大5回の凶器再取得のチャンスがあることになりますが……』
『これを拡張させていただきます』
 
早苗「チャンスの、拡張?
紫「ふふ……」
 
『各プレイヤー様、最初の二回までのDDSルームご利用におきまして……』
『装填する弾丸数をゼロ、とさせていただきます』
『二つまでの凶器がノーリスクで入手できるボーナスというわけです』
『配信時刻:12:00』
 
早苗「……」
紫「どう? 貴方と魔理沙のおかげで、無事ゲームが続けられそうよ」
早苗「それは――訂正してくれませんか?」
紫「え?」
早苗「魔理沙さんは、ゲームを止める為に動いていたんです。それを否定することなんて誰にもさせません」
ガチャ…
バタン…
 
【校舎エリア・青娥の部屋】DAY02 12:34
 
コンコン
青娥「はーい。開いてますよー」
ガチャ…
早苗「失礼します……」
青娥「あら、早苗さんじゃないですか? どうかなさいました?」
早苗「私にも凶器のリスト、頂けませんか?
青娥「お断りしますわ」
早苗「な、なんでですか?」
青娥「だって貴方、凶器の番号なんて知らなくても、適当に番号を打ち込めば好きな凶器を取得出来るじゃないですか。違いますか?
早苗「そ、そんなこと出来ませんって!」
青娥「あら? それでしたら、私の勘違いでしたわね。はい、どうぞ」

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早苗「……ありがとうございます」
青娥「うふふ。ねえ、早苗さん」
早苗「はい?」
青娥「本当は貴方――このゲーム、凄く楽しんでません?
早苗「……! 笑えない冗談ですね」
青娥「そうですか。それは失礼」
 
【校舎エリア・DDSルーム】DAY02 12:40
 
早苗「ケース、おっもいなあ……。〈リモコン爆弾〉はいらなかったかなあ。ひとまずこれで私は、DDSルームをこれ以上使えないわけですね
早苗「さて、戻りましょっか」
こいし「重そうだねー。手伝ってあげよっか? よいしょ――と」
早苗「あ、あれ? 少し軽くなったような……」
 
【宿舎エリア・魔理沙の部屋】DAY02 12:45
 
魔理沙――〈無味無臭の毒薬〉、〈リモコン爆弾〉、〈リボルバー〉、〈セミオート〉。こんなに凶器を再取得してきたのか」
早苗「はい! これなら危険なプレイヤーに凶器が渡らずに済みます!
こいし「すっごーい! 凶器がいっぱいあるねー」
魔理沙お前、凶器の番号はどうやって手に入れた?
早苗「……青娥さんに凶器のリストを頂きました。独断でやってすみません……」
魔理沙〈マスターキー〉は取得しなかったのか?
早苗「それも――ごめんなさい。〈マスターキー〉は私がDDSルームに着いた時、既に誰かに再取得された後でした
こいし「ん? それって多分マミゾウだよ
魔理沙そういえば早苗は〈奇跡〉で凶器を5個取得可能だろ? なんで1回だけ回数を残したんだ?
早苗「念の為っすよ? 危険な凶器がDDSルームに送られた時の保険ですね
魔理沙「なるほどな……」
早苗「今回取得した凶器は殺傷力や取り回しとかで判断したんですけど、チョイスはこんな感じで良かったっすかね?」
魔理沙「ああ、悪くないと思うぜ。何の問題もない」
早苗「それで魔理沙さん。この四つの凶器、どうします?」
魔理沙――無力化した上で、改めて私達で保管すればいいと思う
こいし「えー!? そんなの勿体ないよ!」
早苗「そうですか。それで、魔理沙さんはどうしますか?」
魔理沙「何を?」
早苗「何を、って。魔理沙さんだって凶器の取得は出来るんですよ? ほら、ルールブックを見てください。追加ルールが――」
魔理沙「それは――とっくに見た」
早苗「だったらここでゆっくりしている場合じゃないですって! そもそもボーナスルールが無くたって、私の〈奇跡〉を合わせれば、魔理沙さんだって5回分取得することが――
魔理沙いや、私は、DDSルームは使わない
早苗「どうしてですか!?」
魔理沙みんなから凶器を盗もうなんて言い出したのは私だぜ? その私が凶器を取得するなんて――筋が通らない
早苗「確かにそうかも知れませんが、このままだと凶器は――」
魔理沙「悪い。何を言われようと、そればかりは聞けないぜ。早苗の言いたいことはわかる。だけど、今の私には、凶器を取得する資格なんてない」
早苗「――わかりました! それでは、〈無味無臭の毒薬〉を部屋で処分してから、トラッシュルームに行きましょう」
魔理沙「ああ。いいぜ」
 
【校舎エリア・廊下(DDSルーム前)】DAY05 14:25
 
早苗「……ほら、見てください」
魔理沙「……」
 
てゐ「あー、しんどい。これを後二十日以上も続けるのー?」
マミゾウ「だから見張りは、わし一人で十分だと言ってるじゃろう。ほら、これでなんか飲み物でも買ってこい」
てゐ「へえ。奢ってくれるんだ。そんじゃ行ってくるよ~」
 
早苗「どうします? てゐさんはずっと見張ってるわけではないですし、マミゾウさんだってさすがに深夜は見張りを解散すると思いますよ?
魔理沙「そうだな。深夜まで交代制でやるなら、会場にいるプレイヤー全員で見張りをするしかない」
早苗「これなら〈マスターキー〉も取得出来るんじゃないですか? 魔理沙さんもチャレンジしてくれれば、〈暗視ゴーグル〉を取得してルーミアさんの犯行を防ぐことだって出来ます
魔理沙「……とりあえず、部屋の前に見張りがいるならそれでいいさ。二人に任せよう」
早苗「本当にいいんですか? 魔理沙さんって『本当に私がDDSルームを後一回使えるのか』、ちょっぴり疑ってたじゃないですか
魔理沙「少しだけ、な。でも大丈夫だ。お前のことを信じるよ」
早苗「信じる、ですか。私だって――魔理沙さんのこと、信じてますからね?」
 
【裁判所】DAY07 03:45
 
魔理沙「――早苗。勝手に凶器を使って、本当にごめんな。私のことを信じてくれていたのに」
早苗「いいんですよ! そんなこと! 私だって謝らなくちゃいけないこと、沢山あるんですから!」
マミゾウ「いやー、久々に脳みそをフルに使ったわい。老体には堪えるのう」
妹紅「魔理沙、マミゾウ……」
紫「それじゃ、そろそろ始めましょうか。二ッ岩マミゾウ』及び『霧雨魔理沙』の処刑と、『藤原妹紅』の〈追放〉を
マミゾウ「うむ」
魔理沙「ああ。さっさと始めようぜ」
早苗「魔理沙さん、あの――」
魔理沙「おいおい。そんな顔すんなって。さっきは結構ビビってたけど、少し寝てからすっきりしたし、覚悟は決まった。みんな、後は頼んだぜ!」
チャキ…
霊夢「紫――あんた、いい加減にしなさいよ!!」

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ナズーリン霊夢! その〈セミオート〉、いつの間に!?」
霊夢「今から魔理沙を処刑するですって!? 冗談じゃないわ!」
紫「あら? 貴方にそんな武器、まともに扱えるのかしら? 針や札ならともかく」
魔理沙「おい、その中には弾が……」
霊夢魔理沙。貴方って盗むのは得意だけど、盗まれることには慣れてないのね」
魔理沙「――あれ!? 帽子の中にしまっておいた弾が……」
霊夢「紫! 今すぐゲームを終了しなさい!」
紫「何度も言ってるじゃない。誰かがクロとして勝つことが出来れば、全員生き返らせることも出来るって。処刑の記憶だって後で消すつもりよ?」
霊夢「関係ないわよ! 傷付けばゲーム外と同じ様に痛みを感じるこの場所で、プレイヤーを処刑するなんて有り得ないわ!」
紫「……ふふ。霊夢に殺されることって、妖怪としてこれ以上の幸せもない気がするわねえ」
霊夢「本当に――撃つわよ?」
紫「――どうしても?」
 
バンッ!
 
パサッ…
てゐ「!」
咲夜「霊夢!」
レミリア「――そうよね。貴方って、『やる時はやる』人間だものね」
紫「あら。この帽子気に入ってたのに」
霊夢「次は――急所を外さないわよ」
ガシッ
藍「おっと――そこまでだ」
霊夢「ぐっ……離しなさい!」
橙「霊夢さん! 動かないでください! さもないと――今から一人ずつ首を掻き切りますよ!?」
さとり「こいし!」
こいし「お姉……ちゃん……たすけ、て」
霊夢「……卑怯者!」
藍「公開処刑は取り止めだ。今からお前達を強制的に、数時間後の幻想郷に飛ばす」
紫「プレイヤー全員の一部の記憶を改竄するわ。貴方達の手に入れた情報はDAY07時点で余りにも多過ぎる」
妹紅「ざけんなよ! チルノを返せ!」
紫「それでは――皆さん、また会いましょう」
霊夢「紫! まだ話は――」
 

30

【守矢神社・早苗の部屋】DAY07 11:10
 
早苗「……」
諏訪子「おーい、そろそろ目を覚ましたかなあ――早苗!?」
神奈子「おい! もう大丈夫なのか!?」
早苗「神奈子様……諏訪子様……」
諏訪子「大丈夫? また二日以上目を覚まさなかったんだけど……」
神奈子「心配したんだぞ? 今からご飯を用意するからな。ちょっと待っててくれ」
早苗「……黙れよ。偽物共が」
諏訪子「ん? 何か言った?」
神奈子「本調子じゃないんだろう。もう少し寝てていいぞ」
早苗「はい。休ませて頂きますね」
 
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「…………………………あー……」
早苗「……………………」
早苗「………………魔理沙さん……」
早苗「……………魔理沙さん………」
早苗「…魔理沙…………………さん」
早苗「……………う………」
早苗「………うう……………」
早苗「…………うわああああん…………」
早苗「……………………」
早苗「…………………魔理沙さん…」
早苗「……死んじゃったよぅ………………」
早苗「…………………うぐ…ひっぐ………もういやだよお…」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「…もう…いっその事……みんなにバラしちゃおっかなあ…………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「……………………」
早苗「まだ最後のルールが残
 
 
 
 
【超幻想郷級のダンガンロンパ・第二章考察終了】